星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
氷の大蛇が顎を閉じたまま、天を仰ぎ静止している。
カグナが放った強力な魔法、”
魔法を放ったカグナは、疲労しているのか息が少し荒い。
『大丈夫ですか、主?』
「だいぶ
カグナの召喚獣であるゴズが結界を張り、守っている花園からカグナ達の戦いを見守っていたシャルクは、巨大な氷の蛇にジャイアントパープルが丸呑みされたのを見て唖然としていた。
「や、やったのか……?」
「その台詞、今言うべきではないと思うでござるよ」
カグナ達の戦いを見ていたシャルクは、ジャイアントパープルが氷の大蛇に飲み込まれる光景を目の当たりにして思わずつぶやく。
ただそのフラグ的な台詞にたいして、チュウゾウが思わずツッコミをする。
やはりシャルクの台詞がフラグだったのか、氷の大蛇に異変が起きた。
「ん?」
『主、
”
そして大蛇の形をした氷が割れ、なんとジャイアントパープルが出てきたのだ!
「キ、キシャァァァァ!!!」
氷から解放されたジャイアントパープルの咆哮が響く。
だがジャイアントパープルの翅や身体のところどころか凍結したままである。
カグナは、”
「やっぱり、まだ生きてたか……さすがは秘境ボス」
『しかし大分削られたようです』
「いかがなさいますか、我が主?」
「そうだな……あと一撃大技を当てられれば……」
ジャイアントパープルの体力は残り少ないうえ、
そのため防御力をある程度無視できる高威力の技を当てれば倒せるであろう。
そう思い、カグナは魔杖に魔力を込めようとした……だが。
「あッ……」
『どうされました主!?』
「ヤバイ、魔力が足りない」
シロカブリを登る行為に先ほどまでの攻防、さらに”
ジャイアントパープルが這い出て来たというのに、カグナが魔法を使って追撃をしないことにシャルクたちも疑問に思っている。
「どうしたんだ……なぜ彼女は魔法を使わないんだ?」
「これは、主の魔力が枯渇したか?」
「なに!?」
「なんと!もしや主殿ピンチでござるか!!?」
「いや、我が主だぞ。奥の手は、きちんとある」
ゴズがカグナの魔力枯渇を当てると、シャルクとチュウゾウが慌てふためく。
魔法が主体の魔導士にとって魔力枯渇は、由々しき事態なのだから。
しかしゴズは慌てていない、カグナには奥の手があることを知っているからだ。
「仕方ない……出すか」
『もしや、主……アレをお使いになるのですか!?』
「ここで出し惜しみしている場合じゃないしな。それに使うのは一つだけだ」
カグナが手をかざすと、足元に小さな魔法陣が出現した。
ゴズとメズの時よりも小さな魔法陣だ。
小さな魔法陣が光りだすと、カグナがその名を呼ぶ。
「こい……”
カグナが、その名を呼ぶと足元にうっすらと光り輝くウサギが1羽現れた。
それと同時に、ウサギの周りに少し草花が生え始める。
まるでギョクトと呼ばれたウサギから、あふれ出す生命力で草花が生えて来たかのようだ。
現れたギョクトは、カグナの元へと駆け寄り頭を擦りつけた。
するとギョクトから発せられる光が、そのままカグナに伝わりカグナも光り始める。
光がカグナを覆っていくと、今度はギョクトが光と共に消えていく。
『ギョクトを一つ消費し、消耗した主の魔力が増加したのを確認しました』
「よし……魔力回復」
カグナは、身体に力がみなぎる感覚を覚える。
それと同時にギョクトが完全に消えると、カグナの身体から枯渇していたはずの魔力が溢れ出した。
カグナが呼びだしたギョクトの様子を結界の中から見ていたシャルクは、何が起きたのか分からずにいる。
「い、いったいどうなったんだ? それに、あの兎は一体?」
「あの兎の名はギョクト。我が主は、ギョクトを一つ消費して減った魔力を回復したのだ」
「魔力回復……一体どういうことだ?」
「あのギョクトは、主が魔法を使わない時に溢れ出て垂れ流している魔力を回収し貯めこむことができるのだ」
「つまり魔力タンク、というのでござるな!」
ギョクトとは、カグナが使役する召喚獣の一つであるが他の召喚獣たちと違い自我を持たない。
そして、その特徴としてカグナの魔力をため込む性質を持ち、貯蓄量はカグナの最大魔力量とほぼ同じだ。
カグナの
その捨てられるはずの魔力を回収し貯蓄して、いざという時に魔力回復手段として使い捨てするのがギョクトの役割というわけだ。
ただしギョクト1羽作り出すのに、時間がかかるのが欠点である。
「それじゃ、やるぞ。メズ」
「ハッ!!」
カグナの垂れていた兎耳がピンと立ち上がり、回復したばかりの魔力が身体をほとばしる。
そして手をジャイアントパープルの方へとかざし、魔法の詠唱を始めた。
「汝、時を告げる蟲なり――汝、翼を束ねる大鷲なり――汝、力を喰らいし山羊なり――汝、目覚めし
魔杖に魔力が収束する。
今から発動させようとしている魔法は、カグナが
かつての友人から教えてもらった
「切り札は我が手に!我が
準備は完了した、あとは魔法の名を叫び、発動させるだけ。
カグナは大きく息を吸い叫ぶ。
「”
カグナが魔法を発動させると、目の前に5枚の魔法陣が連なるように展開される。
それを見たメズは、左手に自身と同じぐらいの大きさの装飾の付いた黒い和弓を構えた。
「我が名はメズ!狙い射抜くは月夜の
メズが装備している弓の名は”
放たれる矢の高威力であるが、メズのような剛力でなければ弦を引くことすらできない弓だ。
カグナの召喚獣マヒトツの最高傑作の一つである。
メズは弓張月の弦を引き、矢をジャイアントパープルに向ける。
「落ちろ!”轟矢一閃”!!!」
メズが矢を放つ。
放たれた矢は、カグナが出した”五輪王陣《ロイヤル》”の陣を順番に潜り抜けジャイアントパープルに向かって一直線に飛ぶ。
陣を潜り抜けるごとに矢にバフのエフェクトが追加される。
一つ目をくぐれば矢の威力が上がり、二つ目をくぐれば速度が上がり、三つ目をくぐればクリティカル率が上がり、四つ目をくぐれば一定防御値無視効果が付与され、最後の陣をくぐれば矢が堕とされることはない。
明らかに異様な雰囲気を放ち高速で向かってくる矢を、翅が凍ってまだ上手く飛べないジャイアントパープルは避けることが出来ず反撃も出来ずに命中し、矢はジャイアントパープルの腹に大きな穴をあけていった。
「キシャァァァァァ……!!」
腹に大きな穴をあけられたジャイアントパープルが、悲鳴を上げる。
そして命の灯が小さくなっていくごとに翅の羽ばたきは弱弱しくなっていき、地面へと落ちていく。
地面に落ちたジャイアントパープルは命尽きる寸前まで藻搔いていたが、やがて眼から光が失われていった。
『ジャイアントパープルの生体反応消失。仕留めました』
「ふぅ……これでやっと一件落着……かな?」
アイがジャイアントパープルの討伐完了を確認し、カグナは一息をついた。
メズもどこか満足そうな雰囲気だ、ジャイアントパープルという強敵との戦いに満足したのであろう。
「此度は、なかなかに楽しめたと思います。我が主」
「そう?ならよかった」
『よろしいでしょうか、主』
「どうした、アイ?」
『シロカブリの古城を警備しているゴーレム達が集まってきている気配を感知しました』
「…………マジ?」
『おそらくジャイアントパープルとの戦闘を嗅ぎつけたようです』
「…………」
アイの報告を聞き終わると、花畑とは反対方向から何やら音が聞こえてくる。
カグナ達が戦っていた広場に警護ゴーレム達が向かってくる足音のようだ……。
音の規模からして、相当な数のようである。
「メズ!蹴散らすぞ!!」
「ハッ!!!」
とりあえず、もうひと踏ん張りすることになった。
【TIPS】
召喚獣:ギョクト
カグナの召喚獣のひとつ。
見た目は他の召喚獣とことなり、リアルなウサギの姿をしている。ただしうっすら光る。
また明確な自我がない。
役割としては魔力タンクであり、ギョクトを消費することで失った魔力を回復することができる。
カグナは、常時魔力回復スキルで魔力を常に回復させることができるが戦闘などがないときに魔力が最大の場合でも回復スキルは動いており、最大値から超えた魔力は切り捨てとなるため
その切り捨て分をかき集めたのがギョクトである。
1羽作るのにも数日かかり、最大で8羽まで作成できる。