星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
シロカブリの背に乗っかっている大地から見える砂漠の地平線から、うっすらと光が漏れ始めている……朝が訪れようとしているのだ。
ジャイアントパープルとの戦闘後に集まってきた警護ゴーレムの相手も終わり、カグナはシャルク達の元へと戻る。
「シャルク王子、蜜は集まりましたか?」
「あぁ、キミたちのおかげで邪魔されずに収穫できた」
カグナ達が警護ゴーレムと戦っていた時にも、せっせと月光草の蜜を集めていたようで彼らの足元には蜜が詰まった瓶が沢山置いてあった。
「主殿!拙者もたくさんあつめたでござる!」「「ござる!!」」
「あぁ~よしよし、よくやった」
「えへへへ、主殿に撫でられたでござる」
頑張ったと言い張るチュウゾウをカグナは優しくなでなでする。
撫でられたチュウゾウの顔は、えへへともぐでぇーとも言いそうな顔だ。
カグナはチュウゾウを撫でながら、シャルク達を守っていたゴズにも感謝を伝える。
「ゴズも助かったよ、ありがとう」
「いえ、我は主の命を全うしたまででございます」
ゴズには、ずっと結界を張ってもらい花畑とシャルク達を守ってもらっていた。
先ほどまで一緒に戦闘していたメズは先に送還しており、ゴズとチュウゾウも後を追う形で送還した。
シャルクは月光草の蜜を入れた瓶を詰め込んだ鞄を背負う。
ここでの目的は達成したので、あとは帰るだけだ。
「ところでシャルク王子」
「ん、なんだ?」
「帰りは、どうするつもりだったので?」
「…………」
カグナがシャルクに問いかけると、しばし沈黙が流れた。
帰還の方法……このシロカブリは来るのも大変だったが地上に帰るのも、また大変である。
あの高い高い足を、今度は降りなければならないのだから。
それも道中の
カグナの問いを聞いたシャルクからの返答は、まだない。
「もしや……ここに来ることにばかり考えていて帰還のことは、あまり考えていなかったのでは?」
「…………あぁ」
どうやら月光草の元まで来ることばかり考えて行動していたようで、無事に帰る方法は後回しにしていたようである……。
カグナも思わず王子であるシャルクの前で溜息が漏れてしまう。
「……わかりました。なんとかしましょう」
「本当か!?」
やれやれと言う顔をしそうになったが、なんとか我慢して魔杖に再び魔力を込める。
カグナ達の前に魔法陣が展開されていく、召喚獣を呼びだす魔法を使う。
「”
カグナが魔法を唱えると魔法陣が光り輝き、大きな影が現れる。
その背には人を乗せることを前提とした座席のようなものが取り付けられており、規模から数人は乗れそうである。
そしてゴーグル付きの飛行帽を被っており、真っ赤な
呼びだされた影の主はコケーッ!と鳴くと鋭い目つきでカグナのことを見る。
「お呼びか、ボス」
「でかい……鶏!?」
カグナ達の目の前に現れたのは、人を楽々と乗せれるくらい大きな鶏だ。
シナツヒコと呼ばれた鶏の召喚獣は、渋い声で喋りだしカグナのことをボスと呼ぶ。
シャルクは、カグナが呼びだした巨大な鶏の姿を驚きながらマジマジと見る。
「彼の名は、シナツヒコ。彼の背に乗って、街に戻ります」
「乗って戻る? これに乗って飛んで帰るというのか!?」
「えぇ、彼の飛行能力なら此処から街までひとっ飛びですよ」
カグナはシナツヒコと呼ばれた大きな鶏の背に乗り、街まで飛んで帰ると言い出した。
それを聞いたシャルクは思わず叫ぶ、鶏の背に乗って飛んで帰るなど聞いたこともないからだろう。
しかしカグナの表情から冗談ではないと悟る。
シナツヒコが周りをキョロキョロと見渡し、片方の翼を広げ風を確認していた。
「ボス。此処は随分と高い場所のようだが?」
「あぁ、此処はシロカブリの上だ」
「なるほど、お帰りは俺の出番というわけか」
「そうだ。頼むよ」
「OK、フライト承った」
カグナが状況をシナツヒコに説明して、彼は呼びだされた理由を把握した。
そしてカグナは、シナツヒコの背に飛び乗る。
シナツヒコの背にある座席は、思いのほか座り心地がいい。
「さぁ、王子乗ってください」
「わかった……」
カグナはシャルクに、自分と同じようにシナツヒコの背に乗るよう催促する。
シャルクも困惑しつつも、何とかシナツヒコの背に乗る。
「疑っているわけじゃないが……本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。私は何度も彼の背に乗って飛んでいるので」
「そうか……キミを信じよう」
覚悟を決めたシャルクは、シナツヒコの背の座席に腰を下ろす。
蜜を詰めた大事な瓶を入れた鞄は、落とさないようにしっかりと抱え込む。
それを見たカグナは、シナツヒコに号令をかける。
「シナツヒコ、飛べ」
「了解!」
カグナの命を受け、シナツヒコが走り出す。
その姿は、まさに走る鶏……思いのほか早い。
どんどんと加速していき、ある程度の速度に達するとシナツヒコは翼を広げた。
すると脚は宙に浮き、地面スレスレを滑空する。
途中、シロカブリの古城を警護していた警備ゴーレムに見つかるも、シナツヒコは振り切った。
「これは……凄いな!!」
その様子を眺めていたシャルクは思わず興奮した。
宙を飛ぶという経験なぞしたことがなかったのだろう、かくゆうカグナもシナツヒコに乗って初めて空を飛んだ時は興奮したものだ……。
「この者がいれば、もっと楽に来れただろうに……」
『それは、無理です』
「何故だ?」
シャルクがシナツヒコの快適さを感じ、彼が居ればもっと楽に来れたと呟いたが……カグナの横で浮いていたアイが、それを否定した。
同じく聞いていたカグナが、すぐに捕捉をする。
「単純に、シナツヒコが目立ちすぎます。シナツヒコに乗って近づけば、
「なるほど……たしかに」
シナツヒコは大きすぎて目立つと、カグナは説明した。
目立てば目立つほど、シロカブリの周辺にいる敵に気づかれ集めるだけ……そのためシロカブリの攻略するには出来る限り目立たずに隠密行動をするのがベストなのだと。
それを聞いたシャルクは納得するしかなかった。
そしてシャルク達が雑談をしている間に、シナツヒコはシロカブリの古城のある大地の端へ、たどり着く。
このまま空へと飛んでいくと思われていたが、シャルクはとんでもないことを耳にする。
「ここから急降下する。舌を噛まないようにな」
「え?」
シナツヒコの言葉をシャルクは一瞬理解できなかった。
しかし理解する間もなく、シロカブリが背負っている大地の端にたどり着いたシナツヒコは翼を折りたたみ下に向かって弾丸のように加速した、まるでジェットコースターの最初の下りのようだ。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
凄まじい降下速度にシャルクは叫び声をあげつつ振り落とされないようしがみついている。
カグナは経験済みなので冷静だ。
途中、
登った時は時間をかけたが、降りるときは数分だ。
ある程度降下すると、シナツヒコは急降下を止め真下に向かっていた身体を起こし地面と平行に飛行を始める。
砂漠には、ものすごスピードで駆けていく巨大な鳥の影が映り込む。
先ほどよりもスピードが落ち着くと、シナツヒコの背に乗っているカグナは、落ちないようにしがみ付いていたシャルクの方を見る。
「あそこには、大量のドローンヤドカリが待ち構えています。それを振り切るためにも、あのような加速が必要だったのですが…………大丈夫ですか?」
「そ、それならそうと先に言ってくれ!!」
「あぁ~それは……申し訳ありません」
イケメンのはずのシャルクの顔はものすごいスピードによる急降下を体験した恐怖に染まり涙目だ。
さすがに悪いことしたかもな……と、カグナは謝罪を言うのであった。
*
*
*
サンディヒル王国の王都外壁にある門に門番達が立っていた。
任務をこなしつつ噂話などで暇を潰していると、一人が砂漠の地平線の向こうに妙な影があるのを見つけた。
「ん、なんだ?」
「おい、どうした」
「いや……向こうから、何かが近づいてくる」
「何か、ってなんだよ」
「わからねぇ……鳥か?」
門番の1人が目を凝らし、近づいてくる影を凝視する。
他の門番達もつられて砂漠の向こう側を見てみると、何かが王都にどんどん近づいてくることに気づく。
「お、おい!!バカでかい何かが街に飛んでくるぞ!!」
「鳥か?モンスターか!?」
「いや、あれは…………鶏!?」
影が近づいてくるにつれて、その正体が分かった。
それは大きく翼を広げて飛んでいる鶏だった。
門番達は困惑した、砂漠で巨大な鶏が飛んでいるのだから。
「ハッ……!き、緊急事態!緊急事態!!巨大な鶏が王都に向かって飛行中!!繰り返す――」
いち早く我に返った門番の1人が、すぐさま緊急警報を鳴らし他の者たちに知らせた。
突然のことに王都を守る兵達は慌てふためいていたが、すぐさま武器を持ち門へと集まっている。
しかし巨大な鶏は、そんな兵達に眼もくれず王都の上空を通過し、ひときわ目立つ大きな建物へまっすぐ飛んで行った。
「きゅ、宮殿に巨大な鶏が!!」
「なんだと!?急いで宮殿へ向かうぞ!!!」
街を巡回していた兵達は、空飛ぶの鶏を見て驚いていた街の住人をどけて宮殿へと走り出していく。
そのころ宮殿の中庭に着地した鶏ことシナツヒコは翼を器用に使い、付けていたゴーグルを外す。
「指定の場所に着きましたぜ、ボス」
「あぁ、ご苦労さま」
「本当に、あっという間に着くとは……」
カグナがシナツヒコの背から飛び降りると、同じく背に乗っていたシャルクが顔を出す。
砂漠を徘徊する巨大なシロカブリの所に、十数分前まで居たとは思えないからだ。
カグナ達が到着して少しすると、街の警備兵たちが集まってきた。
「おい!鶏の背を見ろ!誰か乗っているぞ!!」
集まってきた兵がシナツヒコの背に人が乗っていることに気づく。
そして、その乗っていた人物が誰なのか、すぐに理解した。
「あれは、まさか……シャルク様!?」
「シャルク様が、お戻りになられた!!」
「でも、なんで鶏に乗って!?」
鶏の背に乗っていた人物こそ、自分たちが使える王族であり第一王子のシャルクだった。
シャルクは自分が宮殿に戻ってきたことと、シナツヒコの周りを囲うように集まってきた兵達を見て状況を把握する。
「兵達よ、沈まれ!この
シャルクが兵達に向かって叫ぶ。
それを聞いた兵たちはすぐさま武器を下ろし、膝をついた。
これが王族のなせることなのかと、カグナは彼の顔を見ながら思う。
シナツヒコの背から降りたシャルクは、月光草の蜜が入ったカバンを背負い宮殿へと早足で向かう。
そして宮殿内のとある部屋の扉を開け、躊躇なく入っていった。
カグナも、その後をついていくと部屋の中には国王シャムスダラが居た。
「父上!ただいま戻りました!!」
「帰ったか、シャルク!心配かけおって」
「申し訳ございません……しかし、あの者のおかげで目的のモノを入手することが出来ました!」
シャルクは背負っていたバッグを下ろして広げて中身を父シャムスダラに見せた。
バッグの中には、手に入れた月光草の花蜜をたんまりと入った瓶がたくさん入っている。
それを見たシャムスダラはシャルク達がどれだけの苦労したのか理解したのであった。
そしてその功績には、金二星の冒険者であるカグナのおかげであることも……。
「そうか……カグナよ、余の息子が面倒をかけた」
「いえ、たいしたことではありませんので」
「そうか……だが、礼は言わせてくれ。息子を助けてくれて、感謝する」
国を治める立場の男から頭を下げられカグナは、どうすればいいのか一瞬悩み硬直してしまった。
そんなとき、一人の少女の声が部屋に響く。
「シャルク兄さま!!」
「おぉ、シェノラ!!」
シャルクの妹であるシェノラが兄の元へと駆け寄ってきた。
シャルクも大切な妹と再会し、親愛のハグで受け止める。
「申し訳ございません。私なんかのために、危険なことを……」
「気にするな。家族一人救えずして、この先……我が国の民をどうして救えようか」
「兄さま……」
二人の様子を見たカグナは、自然と笑みが浮かぶ……本当に仲の良い兄妹のなんだなと。
そんなことをカグナが想っていると、シャムスダラが動く。
「さて………居るか、
「はっ!ワシめは、此処に」.
シャムスダラが手を叩くと、何処からともなく老人が現れた。
会話から察するに姫の薬を調合している薬師なのだろう。
「シャルクが持ち帰ってきた月光草の蜜を使ってシェノラの薬を作れ」
「ハッ、ただちに……と申したいのですが、少々時間をいただきますゆえ」
「構わん。今日呑ませる分だけでもできるのであれば、よい」
「承知いたしました」
老人が、シャルクが持ち帰った蜜入りの瓶を受け取ると早足で部屋を後にする。
会話の内容から、蜜で薬を作るが時間がかかるようだ……。
シャムスダラと老人の会話を見ていたカグナは、何を思ったのか魔杖を取り出す。
「ここまで乗りかかった船ってやつだ……もう少し役立つことしてみるか」
『何をなさるおつもりですか、主?』
「ちょっと手助けできるヤツを呼ぼうかなって」
『……まさか』
アイはカグナが何をしようとしているのか、すぐに理解した。
アイとしては、その方法は止めてほしいと思ったが……サポートAIとして主人の決定に異を唱えることはしないのである……。
「陛下、少しよろしいでしょうか」
「ん、なんだ。カグナよ」
「先ほどの話しを聞く限り、姫様へのお薬を作るのに時間が必要みたいとのことですが……」
「あぁ……古くから余に仕えている薬師である
「でしたら、私の召喚獣に薬作りに詳しい者がおりまして……今ここに呼ぶことができます」
「それは、まことなのか!?」
「えぇ」
カグナの言葉を聞いたシャムスダラは、カグナが宮殿で召喚魔法を使用することを許可する。
許可を得たカグナは魔杖に魔力を込めて地面へと突き刺す……すると魔法陣が現れ光り輝く。
「”
呼びだしたのは、薬作りのエキスパート。
女性の上半身に蛇の下半身を持つラミア体型の召喚獣である。
そして―――
「んあぁぁぁあああぁぁぁぁカぁぁぁぁグぅナぁぁぁぁさまあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「ぐへぁ!!!」
今度は大丈夫だと何故か慢心したカグナは、自身が呼びだした召喚獣キヨノヒメの下半身である蛇の尾に強く巻き付かれたのであった……。