星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~   作:健全なMTYK

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#6 ウサギ、ボス部屋へ

「俺達があんだけ時間をかけて此処まで来たのに……」

 

「そう?そんなに難しい難易度のダンジョンではなかったよ」

 

「ちょっと何を言っているのか分からないですね……あ、此処です」

 

「これは……ボス部屋への扉だな」

 

 

 二人が足を止めると目の前に周りとは雰囲気の違う大きな扉が佇んでいた、最深部への扉である

 カグナが扉に手をかけて開くと、ギギギという音を立てながらゆっくりと扉が開いていく。

 最深部のエリアに入ると、そこはまさにボスモンスターが出ますよと言わんばかりのドーム状に広がったボスエリアだった。

 そして入るとすぐに戦闘が行われていると思わしき光景がカグナの目に入ってくる。

 広場の中心にガーディアンゴーレムがおり、そのゴーレムの目の前に居る金髪の少女騎士に向かって攻撃を繰り出している。

 少女騎士は立派な剣を構えてガーディアンゴーレムの攻撃を上手に受けたり躱したりして攻防を繰り返しているようだ。

 ボスエリアの横に目をやると、負傷したとも思わしき男とケガを治そうと回復魔法をかけ続けている女の子がボスエリアの端っこに居た。

 

 

「ふむ、なるほどね」

 

 

 カグナは状況を理解した。

 少女騎士がガーディアンゴーレムと戦いヘイトを自分に向けて、その間にヒーラーの少女が負傷した男を治療して動けるようになったら脱出しようという算段だろう。

 しかし思いのほかヒーラーの少女の魔法の効果が表れていないようだ、少女の回復魔法の腕がそこまで高くないのか、それとも魔力が足りないのか。

 

 

『しかしなぜ、あの方たちはボスエリアから脱出してから回復に専念しないのでしょう?ここに居たままでは危ないと思われますが』

 

「此処がある意味で安全だからかな?ボスエリアに雑魚モンスターは出現しないし近づかないからな」

 

『なるほど、ボスだけに注意しておけば他の雑魚モンスターにまで気を付けなくてよい、ということですか』

 

「そういうこと」

 

 

 このダンジョンの道中のモンスターは、ワラワラと数で攻めてくるような感じだった。

 もしアイの言うとおりにボスエリアから脱出してダンジョン道中で休息をとっていたら雑魚モンスターがやってきたことだろう、それも大量に。

 そんなことになるくらいならボスモンスター1匹だけ相手したほうがまだマシだと、ゴーレムと戦っている少女騎士は判断したのだろう。

 そして、このパーティの中で脚が一番早いロランが全力疾走して救援を呼んでくる。

 悪くはない作戦だとカグナは思った。

 そんなことができるのもガーディアンゴーレムと単身で戦っている、あの少女騎士の実力あってこそ出来た作戦であろう。

 おそらく、このパーティの中で一番の実力者が彼女だ。

 

 

「サラ!ダリアン!!」

 

「え、ロラン!?」

 

「ロ……ラン?」

 

 

 ロランがボスエリアの端っこで佇んでいる二人の名を呼び駆け寄っていく。

 その声を聴いた二人は振り返ると助けを呼びに行った仲間が戻ってきており、傍らに白銀の髪をしたウサミミ少女が一人佇んでいるのを見た。

 

 

「助けを呼んできたぞ!」

 

「助けって……あの人が?」

 

「あぁ、心配するな。カグナさんの実力は本物だ」

 

「ほんものって……おまえ……」

 

 

 カグナが二人の様子を見る。

 サラと呼ばれた桃色の髪をした妖耳種(エルフ)の少女は、白いローブを着た僧侶のような恰好だ。

 彼女がこのパーティの回復係(ヒーラー)なのであろう。

 横たわっている黒髪の純人種(ヒューマン)の男の方は、ダリアンと呼ばれていた。

 彼の身に着けている装備からして拳闘士(ファイター)系の戦種(クラス)なのだろう。

 だが全身血まみれで肩で息をしており、見た目よりもかなりのダメージを負っている様子でサラが回復系の魔法で痛みを和らげているといった感じであった。

 

 

(ふむ、ここはアレを呼んで……)

 

『主、あちらの戦況が危ないようです』

 

「へ?」

 

 

 カグナがどうすべきが思考しているとアイがガーディアンゴーレムと少女騎士の様子を告げた。

 それと同時にガーディアンゴーレムの攻撃により少女騎士が吹き飛ばされて地面に倒れ込む姿が見えた。

 

 

「ぐはぁ!!」

 

「アリシアさん!!」

 

 

 吹き飛ばされた純人種(ヒューマン)の少女騎士の悲鳴を聞いたサラが彼女の名前を叫ぶ。

 アリシアと呼ばれた少女騎士は、左腕の装甲部分が破損して真っ赤な血が滴り落ちている。

 一つに纏められた長い金髪のポニーテールも乱れ、呼吸は荒々しくなっており手に持っている剣もヒビが入って今にも砕け散りそうだ。

 

 

「これは、まずいな」

 

『このままですと、彼女はガーディアンゴーレムにやられます』

 

「そのようだ、”地魔縛鎖(グランチェン)”!!」

 

 

 彼女は、もう長くは戦えない状態だと判断したカグナは即座に杖をガーディアンゴーレムに向けて魔法を叫ぶ。

 すると地面から岩の鎖が飛び出してきてガーディアンゴーレムの身体を拘束して動きを封じた。

 

 

「はぁ…はぁ……これは……?」

 

 

 ガーディアンゴーレムと戦っていたアリシアは突然の出来事に戸惑い、振り向くと自分よりも小さな少女が目の前の出来事を行った本人であると瞬時に理解した。

 アリシアは肩で息をしつつも警戒を解かずに、いつでも動ける体勢を崩さずにゆっくりと後ろに下がる。

 ガーディアンゴーレムは何とか抵抗してはいるものの、岩の鎖に巻き付かれて思うように身体が動かない。

 

 

「よし、これでしばらくは時間稼ぎができるな」

 

「アナタは一体……?」

 

「ん~ただの通りすがりの助っ人かな?」

 

「え?」

 

 

 アリシアは何がなんだか分からないという顔をしている。

 しかしそんな彼女の心の内など気にしていないカグナは杖に魔力を集中させて次の呪文を唱える。

 

 

「さて次は、”召喚(サモンズ)ヒコナ”!!」

 

 

 カグナが召喚魔法の呪文を唱えると足元に魔法陣が出現し、そこから小さな真ん丸としたデフォルメされた可愛らしい白毛の羊が1匹飛び出してきた。

 名前をヒコナといい、カグナが使役する召喚獣の1体であり回復系の魔法に特化した個体だ。

 

 

「んあぁ~おひさしぶりですぅ~あるじさまぁ~。ごよぉ~ですか~?」

 

「あぁ、そこに横たわっている彼と騎士の少女をヒコナの力で回復してくれ」

 

「んまぁ~おやすいごようですぅ~」

 

 

 カグナから命令を受けた羊のヒコナは、ふわっとした返事をした後トコトコと小さな足で負傷したダリアンの元に駆け寄ると白い体毛が金色の光を放つ。

 するとサラの魔法のおかげで辛うじて死んではいなかったダリアンのケガが跡形もなく消えていくのだ!

 これにはロラン達三人は驚きを隠せない。

 

 

「なっ!?」

 

「す、すげぇ!?」

 

「うそでしょ……」

 

 

 その光景を少し離れたところから見ていたアリシアも絶句した。

 さっきまで自分が身体を張って守っていた仲間が、可愛らしい羊の力によって復活したのだからだ。

 

 

「な、なんですの、あの羊は……まさか……」

 

 

 後ろの様子を見届けたカグナは、もう大丈夫だろうと判断しガーディアンゴーレムの元へと歩み寄る。

 すると丁度ガーディアンゴーレムの身体に巻き付いていた岩の鎖が砕け、ガーディアンゴーレムは拘束から自由になった。

 自由の身になったガーディアンゴーレムは、ゆっくりと近づいてくるカグナを見つめている。

 

 

「なっ!貴女、お待ちなさい!そのガーディアンゴーレムは、魔導士が一人で相手できるようなヤツでは!!」

 

「大丈夫大丈夫、キミは後ろで休んでて」

 

「何を言って……危ない!!」

 

 

 アリシアが叫ぶ!

 ガーディアンゴーレムが自分の元にわざわざ歩いてきたカグナに攻撃を仕掛けたからだ。

 巨大な腕から繰り出される攻撃をまとも喰らえばタダでは済まないということをアリシアは知っている、それで仲間が瀕死の重傷になったのだから。

 鍛えた男の冒険者でさえ直撃すれば死にかけるのだから、それよりも華奢な身体のカグナが攻撃を喰らえばぐちゃぐちゃになってしまうと、アリシアは思っていた。

 だがしかし想像したモノとは違う光景が目の前で繰り広げられる。

 ガーディアンゴーレムの拳はカグナに当たる寸前で止まったのだ。

 

 

「なん……ですって」

 

 

 カグナの前に魔法で出来た光の障壁が、ガーディアンゴーレムの拳を防いだのだ。

 自分でも躱すしかできなかった攻撃をいとも簡単に止め、さらにカグナは余裕の表情を見せている。

 アリシアは目の前の出来事を素直に受け入れきれない様子で、只々見ていることしかできなかった。

 ゴーレムも自分の攻撃がカグナに当たるどころか止められて困惑し、そしてカグナから得体のしれない何かを感じ取ったのか1歩後ずさりをしてしまう。

 

 

「さぁ~て、ガーディアンゴーレムくん?」

 

「ゴ?」

 

「ここからは選手交代ってことで、ヨロシク」

 

 

 ガーディアンゴーレムに近づき見上げているカグナは、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

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