星ウサギの異世界迷宮探索 ~元社畜が、ウサ耳巨乳美少女の姿でVRMMOだった世界へ~ 作:健全なMTYK
「さぁ、食べな!アンタたち!!」
「うほぉ~待ってましたぁ!!!」
「腹ぁ減ってんだ!!食うぞ!!」
「あ!てめぇ!それは俺が狙っていたんだぁ!!」
「へッ、早いもん勝ちってな!!」
村の酒場を切り盛りしている体格の良い女将が、店の厨房から大量の食事をテーブルの上に次々と並べていった。
豪勢な料理が運ばれてくるたびにゴーゼの部下たちの歓声が酒場に響き渡る、そして食事に飢えた男たちは料理が目の前に並べらると、すぐさま手に取り豪快に食べていく。
村の周辺の調査で歩き回っていたせいか、普段よりも食欲が増加しており次々と食べ物が皿の上から消えていった。
「お前ら、もう少し上品に食えんのか!?」
「隊長ォ、俺達はこれでもお上品に食ってますよ!!」
「「そーだそーだ」」
「てめぇら……」
ゴーゼと部下たちの声が酒場に響いており、それをカグナとアリシアたちは自分たちの料理を待ちながら見ていた。
ゴーゼ曰く毎度のことらしく、賑やかな一団だなとカグナは思った。
しばらく彼らの様子を観察していると、厨房の方から料理を持った酒場の女将がやってきてカグナ達のテーブルにも料理を並べていく。
「あははは、いい食べっぷりの連中じゃないか!アタシたちも作り甲斐があるってもんさ!!」
「すまんな、村の貴重な食糧だろ?」
「気になさんな。こんな辺鄙な村のために、わざわざ来てくれたんだ。持て成さないと死んだ亭主に怒られちまうよ」
「そうか……なら、お言葉に甘えさせてもらおうか」
出された料理をカグナは口に運ぶ。
旨かった、久々に旨い料理を食べたような気がする。
美味に餓えたカグナは、黙々と料理を食べ続けた。
カグナが腹を満たしていると、ゴーゼがダンジョンについて聞いてくる。
「さて……それで、お前さんたちのダンジョン調査の成果はどうなんだ?」
「そうですね、まずは……」
アリシアがゴーゼにダンジョンのことを説明する。
道中のモンスターのこと、ガーディアンゴーレムのこと、そしてカグナのことを。
特にガーディアンゴーレムとの戦いでアリシアたちが絶体絶命のピンチに陥った詳細を聞いたゴーゼは眼を見開いて驚きの表情になった。
「そんなことになってたのか……運が良かったな、お前ら」
「えぇ、カグナさんが来てくださらなかったら、どうなっていたことか……本当に感謝しています」
「俺からも礼を言わせてくれ。アリシアたちを助けてくれて、ありがとう」
ゴーゼはアリシアたちを助けてくれたカグナに頭を下げ、それを見たカグナは社畜だった時の癖か低い腰で受け答えしてしまった。
そんなやり取りをしつつカグナ達は食事を続けていると、サラがカグナに助けてくれたお礼について聞いてきた。
「あ、そういえば助けて頂いたお礼ですが、どうしますか?」
「明日でいいよ、今日は疲れてるでしょうし。それに急ぎではないからさ」
「そうですか、わかりました」
カグナは手元のコップに注がれた水を一口飲み、サラの質問に答えた。
そんな二人を見ていたゴーゼは、皿に盛られている肉を食べながらダンジョンに対する愚痴をこぼした。
「しッかし、話しを聞く限りじゃ随分とチンケなダンジョンのくせして迷惑度合いはバカにできないってか……面倒だなチクショウ」
「はい、なんらかの対策をとるにしても問題が山積みですわ」
「金がかかるからな……」
「お金がかかるんですか?」
ゴーゼの一言に、ウマウマと食事を楽しんでいたカグナが疑問を声に出した。
カグナの疑問を聞いたゴーゼは一瞬考えたあと頭を掻き、手に持ったコップの酒を一口グイッと飲んでカグナの疑問に答える。
「あぁ、ダンジョンの脅威から村を守るためには人手と資金がそれなりにいるからな……防衛費ってのはケチると後々問題がおきるんだよ。ケチった村が大惨事になるのを何度か見たからな……」
「あぁ~なるほど」
防衛費と聞いて、カグナは納得した。
細かい内訳は分からないが、防衛費という単語の意味からして疎かにしてはいけないもの、そして決して安価で済ましてよいものでもないことも容易に想像できる。
ままならないものだなぁっとカグナが口をモゴモゴしながら考えていると、ゴーゼが話題を変えてきた。
「ところでよ、さっきから気になってるんだが」
「はい、なんでしょう?」
「お前さんの……その横に浮いているのは、一体なんだ?」
「横に浮いてる……?」
カグナがなんのことかと思って顔を横に向けると、カグナの横でぷかぷかと浮いているアイの小さな目と目が合い、小さな猫耳がピクリと動く。
ゴーゼはアイのことが気になっているようだ。
「あ、わたしもソレ気になっていたんです!」
「見たこともないんだが、一体なんなんだソレは……?」
サラとダリアンも気になっていたようで、食い気味に聞いてくる。
サラに至っては目がキラキラと輝いているようだった、まるで可愛いモノを見つけたかのような顔をしていた。
『私は主のサポートAI、個体名をアイと申します』
「さぽーとえーあい……なんだそりゃ?」
「と、とりあえず精霊とか……そんなモノだと思っていただければ……」
「ほぉ、精霊ね。珍しい姿の精霊だな」
アイの説明を聞いたゴーゼは、やはり理解できていなかったのでカグナがアイは精霊であると誤魔化そうとする。
そしたらアイが主人であるカグナのことをジト目で睨み訴えた。
『あるじ……?』
「仕方ないだろ……AIとか言っても、たぶん理解できないだろうし……」
『……はぁ、わかりました』
カグナの誤魔化しにアイが文句を言ってくるが、なんとか宥めた。
その様子をアリシアは黙って見つめている。
アイについて言及されると面倒なので、カグナは急いで話題を変えようとする。
「と、ところで村のダンジョン対策はどのようにするので?」
「あぁ~それはだな……」
「それは?」
「わからん!!」
「はぁ?」
「ぶっちゃけると俺達だけでは、どう対処するかなんて簡単に決められん。冒険組合の本部に持ち帰って対策を考えてもらわないといかん」
「でも、それは……」
「お嬢ちゃんの言いたいことはわかる。だが俺たちの仕事は、あくまでも調査なんだ。この村の人たちには悪いが、村をずっと守り続けるのは契約外だ」
「…………」
ゴーゼの言っていることは、社会人として過ごしてきたカグナは良くわかる。
契約したこと以上の仕事をする義務はないし、もしもするのであれば追加で報酬を貰う必要がある……ましてや命を懸ける仕事であるのなら、なおのことだ。
だからと言って、このまま何もしないというのも後味が悪い感じがしている。
「まぁ……組合や王国が、どうするか決めるまではきちんと村を守るさ……それが俺達の仕事だからな」
「そうですか」
ゴーゼはそう言って手に持った酒を飲み干す。
ダンジョンのモンスターからの護衛という仕事をカグナはまだよくわかってはいないが、目の前の男の反応からして村を見捨てるのはしたくはないという感じではあった。
「あぁ~~~ちんけなダンジョンなんて消えてなくなっちまえば、俺達も楽なんだけどなぁ!!」
「あはははは隊長ぉ、ダンジョンが消えるなんてありえませんよ!おとぎ話じゃあるまし!」
「おとぎ話にも、すがりつきたいくらいだ」
ゴーゼは酒の影響で真っ赤な顔になって愚痴をこぼしている。
彼の部下たちは、酒と食事で盛り上がっているが同じ気持ちである。
一緒に食事をとっているアリシアたちも同じ気持ちを抱いているのであろう、表情にうっすらと出ているから。
そんな彼らを見ていたカグナは、誰にも聞こえないようポツリと呟いた。
「ダンジョンが……消える……か」
カグナは酒場の窓の方を見ると、そこには荒れた村の様子が見えた。
酒場でどんちゃん騒ぎをしているが、村の危機が解決したわけではないのだから……。
*
*
*
「トイレとシャワーのないビジネスホテルだと思えば十分すぎる部屋だな。ベッドも思いのほかフカフカだし」
食事もひと段落した後、酒場の女将が宿泊の部屋を用意してくれたのでカグナは案内された部屋で休むことにした。
部屋はベッドと小さな棚があるだけだが、今のカグナにとっては十分である。
社畜時代に会社の椅子で寝たことや、この前の野宿に比べれば身体を伸ばせて眠れるベッドは最高だ。
「あぁ~食事美味かった。できれば俺も酒が呑みたかったんだがな……」
社会人であるカグナは酒を所望したが、女将に断られた。
おそらくまだ酒を呑んでいい年齢ではないと見た目で判断されたのであろう、童顔美少女のアバターで作った弊害である。
『このまま、おやすみになりますか?』
「そうだな、お腹いっぱいになったし。今夜は気持ちよく寝れそうだ」
『でしたら、少々お待ちください』
「ん?」
アイがカグナを制止すると、カグナの足元に魔法陣が展開された。
カグナが何事かと思っていると魔法陣は足元から上昇していきカグナの頭の上まで通過していく。
するとカグナの格好が先ほどまでのノースリーブホットパンツニーソックスフード付きジャケットの姿から、寝間着のようなラフな服装へと変化していのだ。
よく見ると髪型も下の方で纏めたサイドテールであり、身体の前に垂らしていた。
「これって……」
『そのままの格好で就寝させるわけにはいきませんので』
「驚いた。アイ、こんなこともできるのか?」
『私は高性能のサポートAIですので、むふー』
このサポートAI、どや顔である。
アイにより寝間着姿となったカグナはベッドに横になると、村の様子を思い出す。
この村の惨状を引き起こしたのが先ほどのダンジョンのせいだと聞いた時から、カグナの心の中で一つの感情が訴えかけている。
(ダンジョンのモンスターが外に出てきて村を襲った………それは俺のようなプレイヤーが道楽で作ったダンジョンが、今この世界の人々を困らせている……ということなのか?)
ダンジョンを作る、それはアナザーワールド・オンラインのプレイヤーが遊んでいたコンテンツの一つであり、簡単で気軽にできるゲームを楽しむためのシステムだ。
だが現実となったアナザーワールド・オンラインの世界で、プレイヤーが娯楽として楽しむために作ったダンジョンが脅威になっているなんて当時は思いもしなかっただろう。
(まさかこうなるなんてことを当時は考えてもいなかった……そりゃそうだ、ゲームの世界が現実になるなんて思うわけがないんだから)
ダンジョンのことを考えていると、ふとかつて所属していたクランの仲間たちを思い出す。
カグナは本型のメニュー画面を開き、カメラ機能で撮影して保存していた
クランの仲間と一緒に写った写真や、ふざけている瞬間をよく撮っていたものだ。
「……なつかしいな」
カグナが写真を眺めていると、廃墟となった自分の拠点から持ってきた写真が目に入った。
カグナと種族の異なる子供3人が一緒に写っている写真だ。
『ツクヨ様とスサノ様、アマテル様のお写真ですか?」
「……あぁ、そうだ」
アイが写真に写っている子供の名前を言う。
小さな角と悪魔の羽が生えているピンク色の髪の
カグナが子供たちに名付けた名前だ。
高度なAIを搭載したNPCであり、育てた者の影響を強く受けるとカグナに押し付けたクランの仲間は言っていた。
教育を押し付けられて名付けもして、あれこれといろんなことをカグナは教えたのだ。
NPCとはいえ、多少の情が湧いていたのを思い出しくる。
「探す……とは言ったが、何処にいるのかも分からないし……そもそも本当に……この世界に居るのかすらも分からないのにな……」
『でも、お探しになるのですよね?』
「そうだな……会えれば……なにか……わか…………る」
あれこれと考えていると、満腹状態でベッドに横になっているから強い眠気に襲われる。
眠気に勝てなかったカグナは、野宿の時とは違うふかふかのベッドの上で重い瞼を閉じたのであった。