ポケモン世界を安全に観光するなら 作:ミパデネア
さて無事に二つ目のジムバッジもゲット、何より重要なサインを手に観客席のナナミさんの元へ向かう。
どうやら先日のトレーナーズスクールの団体客も見学していたようで、ナナミさんは集団の誰かに手を振りながら見送っていた。
この短期間で仲良くなった人がいるのは流石ナナミさんである、ポケモン相手に心を通わすのが得意なのだから人間なら尚更だろう。
さて、ナナミさんもバッジをゲットしたようで二人ともニビシティでの目標は達成、となると次の目的地なのだが。
「買い物に行こう、ナナミさん」
「確かに食材の補充をしないとね。トキワシティでは結局お買い物しなかったし」
「いや、それよりもまず装備を整えないと」
ニビシティからハナダシティに向かうにはお月見山を通るのだが、岩山の洞窟であるそのルートは少々ハードだ。十分な装備を整えなければ立ち往生する羽目になる。
現状ナナミさんの服装はファイアレッド・リーフグリーンの女の子主人公を思わせるスカートスタイルの服装だ。ランニングシューズはキマッているが靴は専用のものを用意するべきだし、洞窟内の気温を考えたら羽織るものが欲しい。
ちなみに俺の服装は長いコートを羽織ったバックパッカーだ。コートに関しては家族の趣味で出発祝いに渡されたのだが中々重宝している。
「それにしても準備の多いカシアくんが靴持ってないなんて意外」
「元々ニビシティで買うつもりだったんだ、店側も手慣れてるだろうし」
というわけでニビデパートで買い物である。
まずは二人とも必須である靴から。
この世界のアウトドア用品の品揃えは現実世界と比べると力が入っているように感じる。
少年少女が旅をするのが当たり前の世界なので需要の違いが大きいのだろう。
まあマサラタウンとここくらいしか見ていないのだが、田舎といってもいいマサラタウンですら専門店と疑うほど品揃えは豊富だった。
ニビは輪をかけてである、果たしてタマムシデパートはどれほどになるというのだろうか。
「ねえねえカシアくん、この靴、赤と緑ならどっちがいいかな?」
「その二つなら、ナナミさんには緑の方が合ってると思う」
公式でも緑系統の服装だったし。
「じゃあ緑に……いや、単純にカシアくんの好みならどっち?」
「赤か緑なら赤派だよ俺は」
そして金か銀なら銀である。結局両方買うのだが。
「うーんどうしよう……」
「お客様そちら新色の青と黄色のご用意もございます」
「ええっ」
さて、ナナミさんが新たな選択肢を与えられて困惑してるのを尻目に俺も物色だ。
俺は荷物も多いしどうせならハイカットかつソールの硬いものにしようかな。
試し履きなどをしている間に、ナナミさんは店員さんとの激闘を終えたらしい。選んだのは最初の緑色のもの。うむ、ナナミさんといえばやはり緑である。
「フシギソウともお揃いだしね」
俺は何も関係のないグレーのを買ってしまった。リザードがいじけないといいのだが。
服選びに関して時間がかかるのは想定通りだった。が、想定外だったのは。
「ねえカシアくん、次はこれ着てみてよ」
「さっきのもそうだけど、これポケットの数少なくない?」
「カシアくんは実用性だけで服を選びすぎ! 次は水の都ハナダシティなんだから、とびきりオシャレしていかないと田舎モノだって笑われちゃうよ」
いやオシャレ自体は好きだ、X・Yから続くファッションは毎回楽しんでいる。
ただ自らが旅に出る場合はどうしても機能美を重視して選んでしまうのだ。洗濯とか手間が増えるとそれだけでミスやらを誘発しやすくなるからなるべく素材や色などを同じものにしたり。
しかし、言われると着替えを楽しまないと言うのもそれはそれで旅に対して不誠実だろう。新たな街で必ずアイテムを確認していたあの頃の、ウインディTシャツに所持金全ベットをしていた俺を思い出すべきだろう。
「じゃあ俺も見た目で選んでみようかな」
「うん、それがいいよ」
「あ、これかっこいいじゃん。見てタケシさんとイワークが描かれてる」
「私が選ぶからカシアくんは大人しくしてて」
何でだよ、かっこいいじゃんタケシさんとイワーク。
まあともかくその後も食料品や消耗品などの様々な買い物が終わり、このまま三番道路に向かうことになった。
お月見山の踏破は一日で終わらせたい、そうなると麓のポケモンセンターで一泊して早朝から出かけるのが理想だ。
と言うわけで、どちらにせよ足止めが必ず発生するなら早めに進んでおこうという結論になった。
「うん、何だか歩きやすい気がする」
穏やかだが起伏のある山道、やはり装備を整えておいてよかった。
しばらく歩いていたが、踏破した道のりと比べて足腰に蓄積された疲労はまだそれほど多くは感じない。
とはいえそれはこうそくいどうにはならない、すでに日は暮れ始めている。
「安全確保、今日はここら辺でキャンプにしよう」
「うん、何だか久しぶりだね」
「トキワの森でのキャンプは流石に厳しかったからね」
ボールからリザードを出して設営を手伝ってもらう。
靴には気づいていない、もしくは気にしていないようでホッとする。
きのみをたくさん入れてシチューを作る、きのみの水分を用いれば水を大量に使わなくともできるのがシチューのいいところだ。
あと食べ盛り二人と二匹なのでおかわりが楽。
さていい匂いが漂いだしたらリザードのケアを行う。
先程の設営で爪が汚れているのをブラシやタオルで擦って綺麗にしてやる。
うちのリザードはお利口なのでふふんというお姫様のような感じでこちらのやることを邪魔したりはしない。世話に慣れていない俺にはありがたいパートナーだ。
ナナミさんはケアの手際の良さは当然だが、同時にスキンシップを取るのを忘れていないのが流石だ。今もフシギソウのお腹を揉んでじゃれあっている。
見習わないといけないなあ、と俺もリザードのお腹を揉んでみる。噛みつかれた。ナナミさん曰くデリカシーがないと、まったくもってポケモンは難しい、ポケパルレを思い出して撫でるように触ると機嫌が直ったのでよかったが。
さて無事シチューも出来上がったので食べようと鍋を囲む。
「はいナナミさんとフシギソウの分」
「ありがとう、はいフシギソウ」
「フ!」
「はい、これはリザードの分」
「ザ!」
「それでこれはプリンの分」
「プ!」
「……プリンの分?」
ピンク色のまるいぽよぽよが受け取った器を掲げたりまじまじと見つめてそこにいた。
「プリンだ! って、このコ野生のコだよね? 私もカシアくんも捕まえてないし」
「シチューの匂いに誘われて来たんだろうね」
ソード・シールドでもカレーの匂いに誘われて野生のポケモンが遊びにくることがあったがまさかシチューでも起こるとは。そういえば三番道路はプリンの出現地域である。
「か、かわいい~私プリン見るの初めて!」
あらためて自分の分を用意しながら行く先を見ているとナナミさんが笑みで顔を崩しながらプリンに触れようと手を出したり引っ込めたりと忙しくしていた。
プリンはカントー地方だとここにしか野生が出ない珍しいポケモン、それにマスコット的可愛さも相まってすでにナナミさんはメロメロのようである。
その後もシチューを食べる世話をしたり勇気を出して撫でてみた感想を俺やフシギソウに伝えたりと完全に舞い上がっているナナミさんをしばらく観察して。
「捕まえないの?」
「え、でもこのコはカシアくんのシチューに来たし……カシアくんだって捕まえたいでしょ?」
まあ捕まえたいか捕まえたくないかでいうとそりゃ捕まえたいが、カントー以降も長い旅の予定があるので今でなくともチャンスはある。それに世話の問題もあるし、ナナミさんの方がプリンにとってもいいだろう。
「俺は今手持ちを増やす気がないし、後はプリン次第だよ」
そう言われるとナナミさんはボールを取り出してプリンに問いかける。
「あの、プリンちゃん。私と一緒に来てくれる?」
ナナミさんの手に持ったボールをプリンはしばらく見つめた後、こつんと自ら頭をぶつけた。
「っ! よろしくねプリンちゃん!」
ボールに入ったプリンをしばらく抱き締めてやったあとはしゃぐナナミさんは年相応で、まるで子供の頃の自分が、ポケモンをプレイしているのを見つめてるようだった。
いや、別に大人になってからもあれぐらいははしゃいでたな俺。
ポケモンゲーム内のテキスト集が索引つきで欲しい……