ポケモン世界を安全に観光するなら 作:ミパデネア
無事ニビシティでバッジをゲットしたカシアとナナミ。
カシアとの届かない力量差を感じ取ってしまい落ち込んでいたナナミが新たな仲間プリンをゲット。
次のハナダに向けてみずポケモン対策のかみなりパンチを覚えたリザードの活躍で二人は楽々お月見山を突破した。
ポケモン世界で水の都といえばあえて言葉にするまでもない、アルトマーレだ。
翠色の水面、その上を滑るように飛ぶラティアスとラティオス、レースをするポケモンやサトシ達に無限のワクワクを感じたものだ。
カントー地方で水といえばハナダシティ、果たしてあの感動を塗り替えるような風景が見れるだろうか。
洞窟を抜けた先、まず感じたのは潮の匂いだった。
まだハナダシティの影は遠くにあるというのに風が運んできたそれは俺の心のワクワクを加速させるのに十二分な刺激で、隣に立つナナミさんも例外ではなく先に進んで「ねえ早く行こうよ」と待ちきれない様子だ。
早歩きになりながら考える。マサラタウンにも水路があり、海が流れ込んできてはいるが周りの木々による緑の匂いが混じっていた。ここまで混じり気のない海を感じたのは転生してから初めてかもしれない。いや、むしろ記憶にあるどの海より濃く感じる。それは単純に前世の記憶が薄れているのかもしれないが、ポケモンという命が繁栄している分だけ海が濃くなっているのかもしれない。あるいは、単純にお月見山を背にしたことで風が止まっているのか。
「ここがハナダシティ! 夢見た通り、すっごくオシャレな街!」
いつになくテンションが上がっているナナミさんの方が珍しい、なんて思う暇もなく俺もその「オシャレな街」に心奪われていた。
曲がり、四番道路までの水の道、それを生み出すようにハナダシティはある。
ここまでが陸の領域で、ここから先は海の領域だと表すかのように、ハナダシティを起点に切り替わるように世界が分かれているかのように感じる。街の入り口近くは木々の緑で溢れているのにそこから先は途端に青の比率が跳ね上がるのが理由だろう。
街には例のポケモンと仲良くなれる噴水や、街を囲うほど大きなものではないが水路があちこちにあるようで時折みずポケモン達が顔を覗かせこちらを見つめている。
特徴的なのは家屋や施設に限らずどこも必ず一塊になることを避けるように間を空けており、それが流れこむ潮風が途切れず駆け巡らせる作りになっている。水だけではなく風すらも流れていくハナダシティは、自然すら取り込んだ街と言えるかもしれない。
「大きかったりたくさんだったり、特徴的な窓に青い屋根! ハナダに来たってカンジ」
建築様式までは気が回らなかった。ナナミさんの話によるとカントー地方では有名なものなんだとか。だってゲームだとそこまで描写されなかったし……。
さて、道中二人とも何回も眼を奪われながらもポケモンセンターに到着、一休み。
「どうする、早速ジムリーダーに挑む?」
思ったよりもお月見山道中が順調に進めたため、体力的にも時間的にも余裕がある。ニビシティではこちらの希望を優先したし、ナナミさんの希望を優先しようと思ったのだが。
「え……ううん、大丈夫。私も先にいろんなところ見て回りたいから」
どうやらナナミさんも今回は観光優先のようだ。まあ、あの目の輝きを見ていたら納得だ。反応が鈍かったのも心が浮き足立っている証拠だろう。
ハナダシティというのはどうもカントーでは憧れの街、という立ち位置らしい。
というわけで向かったのは。
「すっごーい、ほんとにキンキラなんだね、それに見て、下にも水ポケモンがいっぱい!」
「この橋の陰が棲家になってるのかな……おいおいリザードあんまり覗き込むと危ないぞ」
「ザ!」
ゴールデンボールブリッジである。やはりハナダの名所といえばここだろう、大きな川幅に見合う巨大な橋、金の装飾を多用しているのにそれが下品な輝きには見えないのはそれを受け止めるこの水という自然の魅力が共にあるからだろうか。
広い道幅なこともあり、あたりはポケモンを連れ歩いているトレーナーが多い。なので俺たちも手持ちを外に離して観光である、普段はボールに入れていることが多いのでリザード達も新鮮な光景に興奮している様子だ。
「ああ潮風に煽られてプリンが! フシギソウ、捕まえてあげて!」
「ふうせんポケモンなだけあるなあ……」
多少のトラブルはあったものの楽しいのんびりとした時間だったのだが。前述した通りここは中々広く、そしてポケモンを連れているトレーナーが多い、つまり。
「そこのお前! バトルだ!」
「なら、私はそっちのおねーさん! バトルしましょ!」
「まあこうなるよなあ」
「ええ!?」
そう、ゴールデンボールブリッジといえば観光よりもバトルの名所として有名なのだ、驚いているあたりナナミさんは知らなかったようだが。
ゲームでは商品つきの勝ち抜き戦……に見せかけたロケット団に勧誘する優秀なトレーナーの見極めを行なっていたがどうやら現在はそんなイベントはなく。あれは元々こうしてバトルのメッカとなっていたここを利用したロケット団員の作戦だったのだろう。なんにせよ、安心してバトルができるわけだ。
さて、バトルの結果は特に苦労もなく連戦連勝である。もちろんナナミさんも。
まあ勝率の裏側には俺たちと同じように他のところから来た観光のトレーナーが多く、地形を利用するようなトキワの森での作戦を用いたバトルのパターンは少なかったこと。そして少数のハナダのトレーナーはタイプ相性、ナナミさんはフシギソウ、俺はかみなりパンチ、それとそもそもポケモンのレベルで作戦に持ち込まれる前に圧倒できた。
旅の最中続けて来たナナミさんとのバトルは思った以上に互いのポケモンを成長させていたらしい。
さてそんな感じで何戦か終えると強いトレーナーと認識されたのか、いきなり声をかけられることは無くなった。
「カシアくんお疲れ様、ってあんまり疲れてる様子じゃないね」
「そういうナナミさんだって」
「まあ、そうなんだよね……不思議だけど」
足元のフシギソウが呼んだ? と首を傾げるのに手を振って否定するナナミさん。
「俺たちのレベルもそれなりに上がったんだろうね。まあ、それと」
バトルしている間、俺たちを囲んでいたギャラリーが向かったもう一つの人混み。先ほどから俺たち二人より人を集めているそれを見つめる。
「手強いトレーナーはあっちに行ってたのかも」
当然のように気になった俺たちも人混みへと突っ込んで誰が戦っているのかを見ようとする。
「おおさっきのカップルじゃないか、見たほうがいいぞこれは」なんて勘違いも含まれている言葉にけれど道を譲ってくれたので感謝の言葉を返しながら先へ進む。
人混みの果て、円形に切り抜かれた空間に彼女はいた。
まず目についたのは陽光をそのまま取り込んだかのような明るい髪色。
なるほど、これだけのギャラリーが集うのも理解できる。俺だって彼女の戦いなら最前席で見たい。
どうやら戦いは終盤、対峙しているのは男、エリートトレーナーだろう彼が操るのはガルーラ。見て分かるほど育て上げられている、少なくとも現状の俺やナナミさんの手持ちよりレベルは上だろう。
しかしそのガルーラはすでに満身創痍、男の方も視線を左右に動かして落ち着きがなく焦燥している。
「くそっ、当たりさえすれば……」
彼女の前にいるのは、無傷のヒトデマン。
「みずでっぽう」
トドメ、いやすでに限界だったのだろう。ガルーラは吹き飛ばされてノックダウン。エリートトレーナーは駆け寄りボールに戻している。
「全く、あたしを口説くならせめてもう少し強くなってよね」
記憶よりも若い、いや幼い。最早少女とも言えるような、というか事実少女なのだろう。
だってどう見ても今の俺たちと同年代なのだから、なるほど彼女はアイリスに並ぶほどの天才だったわけだ。
「あたしはカスミ! ハナダのジムリーダーなんだから」
ギャラリーはその言葉を待ってましたとばかりに歓声を送る。
「それで、次の挑戦者はきみ?」
と、どうやら前に出過ぎたようで勘違いされてしまった。
「いやいや、確かに俺たちはジムへ挑戦するつもりでハナダに来ましたけど。ここ自体は観光で、ねえナナミさん」
「ほ、本物のカスミさんだ」
隣のナナミさんはしかし完全に舞い上がっていた。この時期のカントー地方でタケシさんもカスミ……さんもアイドル的な存在らしいので仕方ないか。
「ふうん、ジムの挑戦者……」
ジロジロとこちらを上から下まで見つめてくるカスミさん、いやなんかどうも違和感がある、だって見た目だけでいえばカスミちゃんとも言えるレベルだぞ。
「それで、七個目? それともラスト?」
「え?」
「だからバッジの数よ、あたしに挑むくらいだし。見たカンジ、ケッコーできるみたいだからそれくらいかと思ったんだけど」
いやいや、今回が三個目……と答えながら違和感を覚える。カスミさんが俺を評価して、というのは置いておいてその前。まるで俺の強さを評価する前から、そもそも自身の難易度を高く見積もっているかのような発言。
「へえ、三個目。もし今なら手加減とかしてもらえると思っての挑戦なら甘いわよ、一個目ならともかく。もうバッジ持っている相手にレベルは合わせても手加減も手抜きもできないのあたし」
だって、と一呼吸置いて。
「ここハナダシティはね、カントーで最強のジムリーダーが就任するように決まっているんだから」
なるほど、確かにもしものことを想定すれば、そりゃ最強のジムリーダーを置くのは当たり前だ。
「さあバトルするわよ」
おてんば人魚に相応しい、強引さと超然を併せ持つジムリーダーがあらわれた!
更新が少々空いてしまったのであらすじを前書きに置きました。
というわけで魔改造というべきか独自解釈カスミちゃん登場です。
アオキはゼロゲートに一番近いチャンプルタウン担当なのは実力者だからみたいな妄想が大好きです。