ポケモン世界を安全に観光するなら   作:ミパデネア

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【レポート】トキワはみどり

 1番道路はなだらかな坂が連続する道で、ゲーム画面で見るそれより遥かに長く広い道のりだ。マサラタウンの例を思えば当然ではあるが、ゲーム上の地理を過信してはならない。相対的な位置情報とかはそれなりに信頼してもいいのだろうけど。

 ともかくトキワシティへの道のりは子供の足というのもあるだろうがそうそう簡単に踏破できるものではなく、現在マサラタウンから旅立ち二日目である。初めての野生ポケモンとのバトルやテント泊やら書き記したいと思ったことは多々あれど何よりも優先すべきは同行人のことだろう。

 

「カシアくん、上を見て! ポッポの群れ!」

「おお、すごい数だ。急いでるけど何かから逃げてるのか?」

「そうそう、ポッポって戦うのが嫌いですぐに逃げちゃうの。おじいちゃんの図鑑にも書いてあったわ」

「流石にヒトカゲの『ひのこ』じゃ届きそうにもない距離だなあれは」

「それよりも前にあんな群れに喧嘩しかけたら流石に負けちゃうと思うよ」

 

 どうしても群れバトルは効率がいいっていう成功体験から抜け出せない。

 と、それは関係なく。

 なし崩し的に始まったナナミさんとの旅は少なくともトキワシティまでは続きそうだ。

 始めは道中でバトルの経験を積んだり、解像度の上がったポケモン世界の寄り道に忙しい俺とは自然に距離が離れていくものと考えていたが意外というべきかナナミさんはそのどちらにも積極的でときには俺の方が彼女に付き合っているという状況も少なくない。

 そもそもナナミさんはゲーム本編での描写は非常に少ない、重ねて表すがライバルの姉ちゃんという印象がほとんどである。

 少なくともポケモンバトルはしないわけで、確か春のポケモンコンテストの総合優勝とかいうのを成し遂げたのを聞けたくらいだ。

 しかし、やはりオーキド博士、ポケモン学、いやこの世界に合わせるなら携帯獣学の権威である方の血縁であるからなのかバトルの面でも知識の面でも非常に貪欲である。

 あのナナミさんも若い頃はやはりマサラのトレーナーらしい時代があったのだなと未来に向けて過去を想い馳せるという中々妙な体験をしている。

 まあ、それだけならば問題はなかったのだが。

 

「しかしナナミさん、まさかタウンマップを忘れてるなんて」

「う……だってトキワシティなら何度か行ったことがあるから大丈夫と思ったの」

「それだって車に乗ってとかでしょ?」

「ううん、ピジョットの空を飛ぶ」

「余計にダメでしょそれなら!」

 

 どうも抜けているところがあるというかおっとりしているというか……それとも子供らしいというべきなのか。頼りになる姉ちゃんも、まだ成長途中というわけか。

 しかしいくらポケモン世界とはいえ地図もなしに子供を一人ほっぽり出して旅をするわけにもいかない。

 というわけで少なくともナナミさんがタウンマップを手に入れるまではこの二人旅は続けることになったのだ。

 まあ、こういうのも旅の醍醐味だ。何よりまだバトルの対人経験値が少ない俺たちにとって暇さえあればバトルができる環境というのは中々に理想的。

 相性的に勝ち越すことが多いが、ナナミさんのバトルセンスもかなりのもの。フィールドの草原を使って姿をくらましたりとゲームでは見られない戦法にやられたり勉強の連続だ。

 

 夕方になるとさっさと良さげな場所を決めてテントの設営と夕食の時間だ。

 焚き火はヒトカゲの仕事、今日も私に任せてといった感じで胸を張る。可愛い。

 フシギダネがツルで集めてくれた乾いた枝に向かって彼女は「ひのこ」で点火する。

 バトルを繰り返してはいるが二匹はこれでどうも仲がいいらしい。不思議だね。

 ライバルの関係というのはポケモン界にもあるのかもしれない、あるいは普通に遊び相手なのかも。

 俺は荷物から鍋を取り出してシチューの用意を始める、調理しているとタケシのシチューが食べたくなる。多分ゲーム基準っぽいこの世界だと厳しいだろうけど。

 

「昨日から思ってたけど……どうやってそのバッグに収納してるの?」

「厳しい旅の中では収納術一つで拾える命があるかもって試行錯誤してたからね」

 

 言いながら今度は野菜パックを取り出して中身をぶち込んでいく。

 

「本当に旅が好きなのね。私にもその収納術教えて」

「いいよ、とはいえ大容量カバン買うのが一番だけどね」

「CM見た! なんでも無限に思えるくらい入れられちゃうんでしょ。モンスターボール技術の流用とかおじいちゃんは言ってたけど」

「かがくのちからってすげー! ってヤツだね、リーグからの賞金が貯まったら買いたいものナンバーワンだよ今のところ」

「そうだ、トキワシティ着いたらお買い物しましょう! それまでの賞金を使って」

「初心者同士のバトルだしどれだけ貯まってるかな……」

 

 そう、この世界で驚いたことがある。賞金は相手からお小遣いを巻き上げてるわけではなくポケモンリーグが所属しているトレーナーに対して払っているシステムなのだ。

 図鑑等の各デバイスにトレーナー同士のポケモンのバトルは記録されていてそれがリーグに送信される。バトルの情報からポケモンの研究が進められており、それへの対価が賞金なのだ。当然ハイレベルな戦いであればあるほど得られるデータは多く賞金が上がる。

 初めて知った時はこれを利用すれば働かずとも旅ができると喜んだものだ。まあ悪用がされないように様々な制約や他のシステムも絡んでいるのだが長くなるのでまたその時が来たら紹介する。

 とりあえずプレイしていた時と同じで全滅せずに勝ち続ければ富豪ということは間違いない。

 

 それにしてもトキワシティ、いきなりの難所と見るべきか早めに済ませれて助かるというべきか。

 ジムリーダーへの挑戦はガラル地方のように順序が決まっているわけでもなく自由に行うことが可能だ。ゲーム内では様々な事情によりそれが叶わないだけ。

 なのでトキワシティで初のジム戦というのがマサラタウンから旅を始めたトレーナーのよくあるルートなのだが。

 ここで問題なのはトキワのジムリーダーサカキ、言わずと知れたロケット団の首領である。

 初心者の間なら目をつけられることはない、とも言えるし。

 手持ちが育ち切ってない今はもしものことを考えると避けるべき、とも言える。

 いや本編三年前である今、サカキが正体をバラす可能性は低いだろうし心配しすぎだろう。

 そもそも多少の知識による背伸びがあるとはいえ俺は一般的な新人トレーナーでそこら辺のたんぱんこぞうと変わらないのだから。

 

 ただそれでも問題がある。

 

「何使ってくるんだろうなあ、じめんタイプ……」

「トキワジムの対策? 私も考えてるわ、やっぱりイワークが出てくるのかしら」

 

 サカキの初心者用の手持ちが分からない。

 ヒトカゲを使ってる以上弱点タイプなので事前の作戦が重要なのに、唯一俺の武器である知識が使えないのだトキワジムは。

 

「どうだろうディグダって説もあると思うな。あとサイホーンは確定だと思う」

 

 イワークとダグトリオどっちも使ってるんだよなサカキ……流石に手持ちは二匹で代名詞でもあるサイドンの進化前であるサイホーンはいると思うけれど。

 

 そんな話をしながら夕食ができるまでを過ごす、というか食事をしながらも議論は続く。

 それなりにポケモンが好きと密かに自負していた俺だけれど、やはり本場の人間は熱量が違うと感心するばかりだ。

 いや単純に若さか? 赤・緑をリアルタイムで体験した世代だしなとテントで寝ながらしんみりした。

 

 そうして翌日の昼頃、ようやくトキワシティに到着。

 マサラタウンより発展してるのは見て取れるがさらに緑化運動が活発なのだろう、街中だというのに自然が多い。そういやゲームでも林か森みたいな木が集合している部分があったな。

 転生してマサラタウンを出たことがない俺は目に映るものに一々心奪われてしまい完全にお上りさんである、来たことがあったと言っていたナナミさんは得意げだ。

 とりあえず二人ともポケモンセンターへ。

 原作よりも大きく広いと言っていたマサラタウンだがポケモンセンターは存在しない。いや、ポケモンの治療所とかはあるけれどポケモンセンターというのはもっと複合的な施設なのだ。

 前提として病院のようにポケモンの治療や健康診断、それに加えてトレーナーが利用できる食事・宿泊施設としての側面もある、ポケモンリーグとの通信や各種手続きも可能で市役所の立ち位置もある、単純に市民の交流の場としても開かれているから公民館とも言える。

 こうして上げるとスーパー複合施設だな。

 

 なので初のポケモンセンターに二人ともドキドキしながらヒトカゲとフシギダネの様子を見てもらう。ボールには最低限の生命維持装置としての機能がある上に、道中のバトル後はキズぐすりを使用していたから大きな問題は起きてないだろうがそれでも不安になるのだ。

 

 PCおねえさん、この呼び方よりもどうしてもジョーイさんのが慣れてるな、ともかく「みんな元気になりました!」の言葉を受け取って安心して。

 

 さて、何をするかである。

 

「ポケモンも元気になったから、やっぱりジム戦に挑戦したいわ!」

 

 それに勝てば賞金で買い物に余裕もできるし。と呟くように続けたセリフでお分かりの通り、ポケモンセンターで判明した道中でのバトルでの賞金はお小遣い程度であった。

 どうやらサカキもどこかへ出かけているということもないようで問題なく挑戦可能らしく……にげられない!

 いや勝負の最中に相手に背中は見せられないと言った方が正しい。

 せめて隣でワクワクしているライバルに間抜けな姿を晒さないように頑張ろう。




賞金システム、ゲーム中だと実際にぶんどってるっぽいですがこの宇宙ではこうなってます。
ナナミさんからぶんどるの可哀想なので。
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