ポケモン世界を安全に観光するなら   作:ミパデネア

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【レポート】たくさん戦うと ポケモンのレベルが

 夢のポケモンセンターでの宿泊。一泊目の朝。

 

 ビジネスホテル、とまではいかない。入院するときの個室を思わせるベッドとトイレだけの、寝泊まりのための空間。

 しかし野宿とは比べ物にならない疲労回復と安心感である。

 旅慣れしてないのもあるのだろうけれどこうして定期的にちゃんとした設備の中で寝ることはやはり重要だ。ブラック・ホワイトではキャンピングカーがあったがああいうのを手にして旅するのもいいかもしれない。でも自転車がとんでもない値段の世界なので車はさらにとんでもない値段の可能性もあるな。

 なんてくだらないことを考えながら朝の支度をする。

 ヒトカゲをボールから出して顔を濡れタオルで拭ってやる。

 ここ最近はこのルーティンを学んだのか積極的にぐいぐいと顔を押し付けてくる。たまに勢い余ってタオルを突き抜け俺の服に顔を擦り付ける。可愛い。

 しかし、こういった幼く可愛らしい姿が見られるのも後少しかもしれない。そろそろリザードに進化するレベルじゃないだろうか。

 

 この世界にもレベルという概念はある。ポケモンの成長度合いを示す物差しとして。

 ポケモンは単純な年齢よりも、バトルなどによる経験の数や質でその身体を成長させる。

 ただこの世界ではゲーム的な数字が見えて後どれくらいで次のレベル、あるいは進化するというのが見えるわけではない。

 これだけの経験を重ねて、こういったわざを十全に使えるようになったから、一般的にはヒトカゲのレベルほにゃらら相当、というような使われ方をしている。生まれたばかりの状態を1、確認されている最も成長している個体を100として。

 つまりここではレベルが上がったから進化というのは正しくなく、進化したからレベルはこれくらいだと特定するような感じだ。

 けれどどうも考えの癖は抜けないというか、俺は前述のように前世式の話し方をしてしまうので毎度ナナミさんとの会話では恥ずかしい思いをしている。それはともかく。

 

 俺のヒトカゲはトキワジム手前くらいでりゅうのいぶきを覚えた、これはスカーレット・バイオレットなら12レベルで覚えるわざである。だからレベル12になってるはず! とはいかない。

 何せまだヒトカゲはりゅうのいぶきが下手、まともに当てられないどころか吐くのもたまに失敗する。

 そう、ポケモンも生き物。物覚えの良さと成長速度は人間以上だけれど、手にしたわざを文字通り身につけるまでは相応の練習や訓練を必要とするのだ。

 ウチのヒトカゲはどうもひのこくらいはできるが口から吐き出す攻撃というのがまだ苦手のようである。サカキ戦でえんまくを自身の周囲に展開させたのはもちろん作戦の一つだけれど遠くの相手への命中精度が悪いのも関係していた。

 そう考えるとわざマシンで覚えたメタルクローは比較すると上手な方である。こっちもジムトレーナー戦では外しまくっていたが。

『がんばりや』なヒトカゲなので苦手なら物理型で戦っていくのもアリだとは思う、事実リザードに順当に進化した後もほのおのキバやきりさくなどで戦う期間は長い。

 ただ、だからと言ってレベルわざで言うとかえんほうしゃのような強力な特殊わざを手放すのも惜しい。

 何より苦手なままでは俺の抱えているわざマシンの内かなりの数が使えなくなってしまう。いや最悪換金できるけどさ……。

 ヒトカゲ、と言うよりもリザードンを選んだ理由の一つに戦法の豊富さもあるのだ。今日の野生とのバトルではできるなら克服して欲しいところだ。

 

「カ?」

 

 そんな俺の気持ちなど知らずにタオルにくるまりながらこちらを見上げてくるヒトカゲ。可愛い! バトルとかいっかもう! 

 

 準備も終わり、エントランスへ行くとすでにナナミさんがレストランコーナーで待っていた。

 

「おはよう、カシアくん」

「おはよう、待たせてごめんねナナミさん」

「私もさっき座ったところだよ。何頼む?」

 

 レストランコーナーはいくつかの四人掛けのテーブルが並ぶ軽食用の空間。もちろんポケモンも食べられるメニューも存在している。が、種類はそれほど多くない。

 

「カレーは無いか……朝カレーとかしたかったんだけど」

「かれえ、って何?」

「あー、ガラル地方の料理だよ」

「流石にトキワシティとはいえ置いてないんじゃないかなぁ、それにここポケモンセンターだし……でもタマムシシティならあるかもしれないわね」

「タマムシデパートか、行ったら確認してみようかな」

 

 とは言ったもののガラル地方でのカレーは大流行している料理って位置付けだったからまだこの時代だとマイナーな可能性が高いな。

 サンドウィッチとヒトカゲ用のポケモンフーズを注文する。ちなみにこれは食パンを使ったものでパルデア式じゃない。

 ナナミさんはすでに注文していたようで三段重ねのふわふわのパンケーキが届いた。朝からパンケーキとか子供の夢かよ、いや俺たち子供だったわ。

 ピカチュウがここにいたらアローラライチュウになるだろうなと思いながら、どこかゆったりとした朝のひと時を過ごす。

 味に関しては普通のサンドウィッチだったのだが、あのポケモンセンターで食ってるって雰囲気が美味しさをぐーんと引き上げていた。

 

 さて、腹ごなしも終えて。目的の2番道路である。

 

「よし、じゃあまずは私とフシギダネから戦うね」

「どうぞ」

 

 パンケーキを食べていた時のほわほわした雰囲気はどこへやら、昨日のように真剣な表情となったナナミさんは飛び出してきたキャタピーと向かい合う。

 俺たち二人旅のルールは自然と、一人が野生と戦っている時はもう片方が周りを警戒することになっていた。

 連携して戦うのも悪くはないが、ダブルバトルの浸透していないこの時代この地域でしかも初心者がやることじゃないな。

 まあそもそも野生ポケモンとの戦闘自体がコラッタやポッポと数戦交えただけで、基本的に二人でバトルする方が多かったのだが。

 

「つるのムチ!」

「フシャ!」

 

 当然と言うべきか、初遭遇の相手とはいえジムリーダー戦まで終えたナナミさんとフシギダネにとってはさほど脅威的な相手ではなかった。不利を悟ったキャタピーはすごすごと草むらの中へ消えていった。

 

「タイプ相性だと不利なはずだったんだけど、一撃で決着がついちゃったわ……ありがとう、フシギダネ」

「まあここら辺のキャタピーだとレベルも低いだろうし」

「それってやっぱり、あそこから追い出された個体だからかな」

「そうだろうね、見たところコクーンとかトランセルとかもいないし。成長するくらい強い個体はやっぱり森にいるんじゃないかな」

 

 ナナミさんと視線を道の先へと向かわせる、そこにはゲート施設と背の高い木々が隙間なく連なり、遠目から見ると口を開けた巨大な緑の化け物にも見える。

 自然・環境保護が特色のトキワシティ。その名を冠する森、トキワの森である。

 深くて大きな天然の迷路とも言われているそこはまさにむしポケモンの宝庫。太古を思わせるような剥き出しの自然が残っているそこはカントー地方でも珍しいピカチュウの生息域でもある。

 ゲームだと少々入り組んだ道になってること以外はむしとりしょうねんがいっぱいいる場所、みたいなイメージだが現実世界だと伝わるものが違う。

 視覚でまず圧倒され、むせ返るほどの緑の匂いは溺れそうなほどだし、騒がしいむしポケモンたちの活動音がその葉や枝で吸収されてむしろ静寂さえ感じる。

 いやあ、始まったばかりの旅だけれど、満足してしまうくらいにここに来られたことを感動している。

 

「……すごいね」

 

 隣のナナミさんもそう呟くだけで精一杯といった様子で、俺なんか言葉も出ないほどなのだ。

 ここにむしとりのために入り浸っているトキワっこヤベーな。

 

「でもここなら、手応えが感じられそう」

 

 どうしてもトレーナーとのバトルの方が強いと思ってしまうのはゲームの知識を持つもののサガ、あるいはトレーナーとしてのプライドなのかもしれないが。この森はそういった考えを塗り替えるほどの野生の力に満ち溢れていた。というかゲーム内でもやばい野生ポケモン普通にいるわ、ぬしポケモンとか、ウルトラネクロズマとか。

 

 ともかく俺たちは恐怖なのか歓喜なのか区別のできないドキドキを胸にトキワの森へと足を踏み入れる。

 当初の2番道路での育成という目的からは外れてしまったが、それを咎める気はどちらにもなかった。

 

 十数分後。

 

「ヒトカゲ! ひのこ! 何度も続けて!」

「フシギダネ! はっぱカッターを飛ばして炎を広げて!」

 

 早速キャタピーやビードルの群れに襲われた俺たちにルールも何もなかった。全力で応戦である。

 フシギダネの飛ばしたはっぱカッターへ引火したひのこが広がっていき群れへと大規模なダメージを与えていくが数が多すぎる。カロス地方ですら六匹だったんだぞ。

 

「ヒトカゲ! メタルクローでそこの倒木を割れ!」

「! フシギダネ、つるのムチでそれを投げて!」

 

 手を変え品を変えどうにか全体攻撃を再現する、ねっぷうが使えたら楽だったんだけどなあ。

 それにしても先ほどからかなりの数を倒しているはずなのだが、うじゃうじゃと次々に連鎖しているようだ。色違い厳選が楽そうだなあと、一瞬の現実逃避。

 

「フギィ!」

「フシギダネ!」

 

 どくばりを飛ばされたのだろう、フシギダネがダメージを受けてふらついている。

 

「ごめんカシアくん、一旦回復する!」

「一回立て直そう! ヒトカゲ、全力でえんまくだ!」

 

 熱の籠った黒い煙は俺たちの姿を隠してどうにか逃げ出すことに成功する。

 

「どうにか……逃げられたね……」

「最初に出会った一匹をひのこで攻撃しようとしたのが駄目だったな……多分近くにいた群れがそれで危機を感じて襲ってきた」

「フシ……」

「カギャ……」

「とりあえず疲れてるだろう二匹を回復してあげよう」

「そうだね、フシギダネは大丈夫だけどヒトカゲは毒になってない? ……ってあわわ」

「どうしたのナナミさん……ってうわ!」

 

 白く輝く光、情報生命体であるポケモンが姿を変える奇跡の現象。すなわち。

 

「進化!」

 

 しかもヒトカゲ、フシギダネ両方とも同時にである。

 ほぼ事故みたいな乱戦だったが確かに経験は溜まっただろうし、わざも色々使ったから強制的に上達しただろう。

 それにしても逃走で進化というのは。

 

「なんともしまらないなあ」

 

 新たな姿の自分に喜ぶリザードとフシギソウを前に、俺たち二人は少し疲れた顔を見せ合った。




最近レアボールチャンスこい、しか喋ってません。
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