とある呪術の両面宿儺   作:全智一皆

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一方通行①

 

 

■  ■

 キンッ、パキィンッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 数多の斬撃が飛ぶ。掠ったとしても四肢が飛ぶ、確かな殺意が込められた鋭い刃が空を疾走り、たった一人の少年(最強)へと襲い掛かる。

 だが、それら全てが少年に当たる事はなく、ただ虚しく明後日の方向へと跳ね飛ばされるだけだ。

 『一方通行(アクセラレータ)』。あらゆるベクトルを操作する、学園都市最強の能力。熱量、運動量、電気量、あらゆる力の向きを自在に操る事が出来る能力は、鬼人の斬撃を反射した。

 だが、それは決して容易なものではなかったのだ。

 

(チッ。やっぱ反射が上手く機能しねェ…コイツの能力はなんだ? 酸素や窒素を利用した斬撃かと思ったが、そういう訳じゃねェ。だとしたら念動力(サイコキネシス)か…?)

(反射か。念動力(サイコキネシス)辺りかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。もっと別の…おそらく、物理現象に関連する類の能力だな)

 

 斬撃も反射も、互いの能力が何であるかを予測する為の様子見。

 宿儺は学園都市に住み、さらには暗部の研究にも実験体として携わっていた事もあるが、その能力は学園都市で解明されていない。学園都市最高の頭脳を持つアクセラレータも、未知の能力を解明する為には時間が掛かる。

 一方通行の能力は全貌こそ明かされていないが、その名前と能力自体は公開されている。超能力者(レベル5)であれば殆どが識っているが、宿儺は学園都市の能力に対する知識が科学者に比べれば乏しい。

 今の戦場は、互いに互いの能力を解明している最中にあるのだ。

 

(斬撃の精度は…目測だが、学園都市の粒子振動ブレードと同じか、それ以上。大体のものは切断出来そォだな。大気系能力者の能力だと仮定するなら、真空斬撃(エアロブレイド)と言ったところか。念動力者の能力だと仮定するなら、念動切断(サイコブレード)か。斬撃に特化した念動力と、真空の刃を作り出す能力。どっちかは断定出来ねェが、有り得るのはこの二つか)

(科学的な力で能力を開発する学園都市なら、必ず何らかの物理が働いている。此奴の場合は、おそらく物理学に直接関連するもの。先の反射、そして鉄塊を打ち上げたあの現象から予測し、有り得るとするなら―――あらゆる物体、現象に働く力そのものを操る能力か。となると、斬撃だけでは些か足りんな)

 

 宿儺は斬撃を止め、地を蹴ってアクセラレータの間合いへと馬鹿正直に飛び込んだ。

 血迷ったか。誰もがそう思うだろう。そう思わずにはいられないだろう。何故ならば、アクセラレータに対して接近戦を挑むのは、それこそ愚行に他ならないのだから。

 

「ギャハハッッ!!! 馬鹿正直に突っ込んでくれたなァ!」

「―――」

 

 パキィンッッッ!!!!

 バキッ、ボキッッッ!!!!

 

 振り抜かれた拳は、まるで拒絶されたかの様に簡単に弾かれた。それと同時に、まるで万力で骨が潰されたかの様な嫌な音が鳴り響く。

 実際、振り抜かれた宿儺の右手の骨は粉々になっていた。他ならぬ宿儺自身の力が反射され、宿儺の右手を粉々に粉砕したのだ。

 普通なら、激痛に悶え苦しむのだろう。だが、宿儺は悶え苦しむどころか、やはりな。と、笑っていた。

 まるで、確信を得たかの様な。

 

「あァ?」

()()()()()()()()()()()()()? 自分にとって有害なものと無害なものを振り分けるフィルターを設定する事で、太陽光や攻撃といった現象の反射を自動的にしている」

「…へェ。自分の能力が効かねェから血迷ったのかと思ったが、そういう訳じゃねェみてェだなァ。それで?」

「お前の能力は、あらゆる力の向きを操るものだ。力そのものを生み出す事は出来ないが、熱量、運動量、それら全ての力の向きを操る事が出来る」

「正解正解、大っ正解。ベクトル操作―――あらゆるベクトルを自在に操れる能力だ。正解したご褒美だァ、愉快な肉塊のオブジェクトにしてやるよォ!」

「ケヒっ―――宝の持ち腐れだなぁ?」

「………ア?」

 

 キンッ。

 

 捌。その一言と共に放たれた斬撃は。

 正確に。精確に。一片の曇りもなく、ただ真っすぐ、鋭く、そして速く。

 ()()()()()()()()()()

 

「―――」

「もっと魅せてみろ。貴様の本質を」

 

 唖然としたアクセラレータに、しかし鬼人は優しさを見せる事はない。

 がら空きとなったその顔面へと、鬼人は鋭い蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐばっ!? ごふっ、ごぼがぼッッッ!?!?!?!?」

 

 鉄の味が口の中に広がっていく。ゴロゴロ、ゴロゴロッッッ!!!!! と、まるで蹴り飛ばされた小石の様に転がりながら全身に激痛が迸る。

 フィルターが斬られた? 反射の設定が崩れた。何故、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故??????????????

 何が起きた? どうして斬られた? いったい、相手は何をした!?

 

「げふっ、ぼふぼっ!?」

 

 どはどばと、蛇口を捻って溢れ出る水の様に、逆流してくる血液を嘔吐する。

 口の中が熱い。殴打され続けている様な鈍い頭痛が止まない。アクセラレータは、犬の様に喘ぎながら鬼人を睨んだ。

 

(反射のフィルターが崩された…!? 野郎、何をしやがった!?)

(俺が思うに、ベクトル操作とは此奴の本質ではない。あくまでも、この男の能力の本質の副産物、或いは付加価値的なものでしかない。さぁ、お前の本質をもっと魅せてみろ)

 

 ケラケラと、鬼人は笑う。

 粒子加速機(アクセラレイター)の名を冠された少年は、その本質をいち早く覚醒させる。

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