とある呪術の両面宿儺   作:全智一皆

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一方通行②

 

 

■  ■

 一方通行(アクセラレータ)は学園都市最強の能力者である。それが疑われた事は数あれど、しかしアクセラレータが最強であるという現実が覆った事は過去無かった。

 幼い頃より強力無比な能力として覚醒していたアクセラレータは、同学年の子供何人に殴り掛かられようが大人数十人に弾丸を撃ち込まれようが、しかし決して傷付く事はなかった。

 ベクトル操作。学園都市最強の称号を欲しいままにしているその力が、アクセラレータという子供を守り続け、そして悪党へと走らせていた。

 だが、ここで断言させてもらおう。

 アクセラレータが学園都市の超能力者、その序列1位に君臨しているのは、決してその能力が―――ベクトル操作という力が最強であるからという訳ではないのだ、と。

 そもそもとして、学園都市における序列とは強弱ではなく『どこまで研究に貢献し、利益を生み出す事が出来るか』という点にこそあり、だからこそ妹達(シスターズ)の元である御坂美琴は第三位なのだ。能力の強弱というのは、あくまでも研究に貢献し利益が出るか否かの付加価値的なものに過ぎない。

 だからこそ、それら全てを含めて―――アクセラレータは第1位なのだ。学園都市統括理事長―――「アレイスター=クロウリー」が計画する目的の為の第一計画(メインプラン)なのだ。

 ベクトル操作とは、あくまでもアクセラレータの能力、その本質から副産物的に生み出されたものでしかないのだから。

 

「ほら、どうした? 頑張れ頑張れッ!」

「ッの、クソ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッ!!!!!!!!!!!」

 

 ごごごごごごごご!!!!!!!!!!!!

 

 地面が隆起する。

 其処にある石ころ、鉄塊。とにかく、地面にあるもの全てがまるで津波の如く空に上昇し、たかが一人の人間を飲み込み、すり潰してしまおうと、意気込む様に嵐の雄叫びを上げた。

 人はそれを天災と形容するだろう。それ以外に、今こうして鬼人の前にある光景を表すに相応しい言葉はないと言っていい。

 だが、それは避けるにすら値しない。

 キンッ、キキキキキンッッッッッッ!!!!!! と、空気を斬り裂く鋭い音が重なる様に奔る。

 隆起し、その土地にあるもの全てが津波となった筈の天災は、しかし跡形もなく全てが塵と化した。まるで十字を刻むかの様に、縦と横に綺麗な一線が入った瞬間に、それら全てが崩れて消えた。

 まさに、千切り。人の手には追えないであろう天災を、両面宿儺は無数の斬撃を用いて完膚なき迎撃をしてみせた。

 

「コレもかよ…!(コイツの斬撃には底がねェのか!? 地面を丸々使った攻撃すら粉々にしやがった! クソッ、反射を斬り裂いた斬撃の予測も………いや、待てよ。まさか、そもそも種類が違うのかァ? さっき放った斬撃には反射が効いた。反射を斬り裂いた斬撃とは別モンだ。コイツが放つ斬撃は二種類あると仮定すれば、辻褄が合うか…!)」

「必死だなぁ? 良いぞ、もっと考えろ。纏まるまで何度でも甚振ってやる」

「あァ、そうかい。さっさとその余裕振った態度ぶち壊して、泣かせてやンよクソ野郎ォッ!」

 

 アクセラレータの頭脳は学園都市においても有数であり、その有数の中でも最高峰。

 もはやスーパーコンピュータと何ら遜色はなく、12次元まで及ぶ反射能力にはその頭脳による強力な演算能力が関係している。

 ()()のアクセラレータは、その演算能力をこれから少し先で手放す事となり、外部に任せっきりにする事になる。それから数ヶ月の時を得て、ようやくその本質に気がつく。

 だが―――両面宿儺という強者。魔術とは似て異なる呪術を用いる鬼人を相手にしたからには、その予定も意味はない。

 アクセラレータは鬼人の激しい攻撃を耐え忍びながら、その頭脳をフルで回転させる。

 

(―――集中しろ。フィルターを組み換えろ。未知のベクトルへの反射は、既知のベクトルを使って足せば十分だ。念動力、空気中のベクトルを演算する限り斬撃の観測、感知は出来る。ベクトルも存在してる。『解』つったか? それが通常の斬撃、粒子振動ブレード並の切れ味を持っている斬撃だ。それから、反射の壁を破った斬撃。『捌』つってたな。反射のフィルターを潜り抜けた…? いや、フィルターそのものを斬り裂いたってところかァ…? 設定した筈のフィルターが纏めてバラバラになってたのは、フィルター本体が壊れちまったからだ。なら、それらを全部『そういうもの』の括りで再定義しちまえば良い。そうすれば―――)

 

「捌」

 

 キンッ―――と。斬撃が空を跳ねる。

 最適の一太刀。フィルターそのものを斬り裂き、アクセラレータ本人を無防備へとさらけ出す最悪の攻撃。

 それは、反射という絶対の壁を再び斬り裂く―――

 

 パキィンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 事は、できなかった。

 

「ほお」

「……完全じゃねェが、問題はねェ」

 

 ()()()()()()。完璧な反射ではなかったが、しかし確かに弾かれた。

 『捌はフィルターを斬る斬撃である。ならばフィルターそのものに対するベクトルに反射という機能を設定すれば良い』―――そう、捌を定義した。

 宿儺は笑った。

 自らの斬撃、その中でも特に強い斬撃が簡単に弾かれたにも関わらず。

 ついさっきまでは、弾かれずに壁を斬り裂いていた筈の鋭利な刀が呆気なく鈍らと化したのだ。それにも関わらず。

 両面宿儺は―――その能力の本質を、ようやく魅せられた。

 

「テメェの能力は、学園都市の能力じゃねェ。もっと別の…そうだなァ……この学園都市に無い様な……科学の力じゃねェ、()()()()じみた、もっと別の力だ」

(あぁ、やはりか。コイツの力は、ベクトル操作などという能力は単なる付加価値だ。コイツの能力、その本質とは―――

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事…!!!)

 

 一方通行(アクセラレータ)とは、ただ単体の能力では意味がない。アクセラレータ本人が持つ高い頭脳と合わせる事で、ようやくその真価を発揮する力だ。

 自らが観測した未知の現象を、自分が持ち得る全ての知識で逆算し、その未知の現象に限りなく近い推論を導き出す。

 それらを用いて、遂にアクセラレータは両面宿儺の『解』と『捌』の理解に辿り着いた。

 

「反撃開始だ、クソ野郎」

「ケヒっ。やってみろ、アクセラレータ!」

 

 人間と鬼人が、激突を再開する。




 
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