暗い。昏い。
其処には、
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える「人間」。
学園都市の最大権力者。学園都市の統括理事長。それでいて―――
その名を、アレイスター=クロウリー。本来ならば生命維持の槽の中に逆さで漂っている筈の存在が、其処には居た。
いや、違う。アレイスター=クロウリーは、今も尚、生命維持の槽の中に存在している。
だが、しかしそれが此処に居るアレイスターを別人であると決定づける証拠にもならない。
アレイスター=クロウリー。その魂は、極彩に輝いていた。
今は、それだけで良い。それだけの説明で、済ませる事にしよう。
『人間』は、僅かな苛立ちを隠さずに問い掛ける。
「いったい、何が目的だ」
前には誰も居ない。後ろにも誰も居ない。
右にも、左にも。上にも、下にも。
360度、何処を見ようと其処にはアレイスター=クロウリー以外の生命は存在していない。
存在して、いなかった。
「何が目的、ねぇ。それは君がよく解っている筈だがね、
ソレは、人間の隣に居た。
だが、同時に前にも居た。
だが、同時に後ろにも居た。
もみあげに灰色が混じった、銀髪を思わせる白髪。青空を思わせる綺麗な碧眼。右耳に、結晶石の様なものを加工して作られたイヤリング・ピアスを付け、目にはスクエアタイプのサングラスを掛けた、青年と思わしき容姿をした男。
「答えろ―――エリファス=レヴィ」
「遂に考える事にすら
エリファス=レヴィ。
ある意味では、アレイスター=クロウリーの先輩にもなる魔術師。近代西洋魔術を復興させるに至った、偉大なる魔術師の一人。
そして、両面宿儺の友人。両面宿儺という鬼人を、
「もはや貴方が生きていた事には、何ら疑問はない。私の様な存在が生きていたのだ。貴方が生きていても不思議はなかった」
「初対面なのに信用されている様で、嬉しい事だ。まぁ、だから何だという話ではあるけどな」
「だが、アレは何だ? アレは魔術師ではなく、能力者でもない。分類としては
「そう言うなよ、アレイスター。アレはお前の
「それは何を根拠とする? 我々『黄金夜明』と違い、
「どちらもであり、それ以外にも」
ケラケラと、エリファスは笑う。
訝しむ様に、アレイスターは顔を顰める。
最高と最高。互いに魔術師としての頂に立つ者―――否。
0と1で表現不可能な高次的存在と、単なる伝説。
魔術を極めておきながら、しかし人という枠に収まっている両人は、互いに全く違う感情だった。
「アクセラレータの能力の本質は早く覚醒した。だが、
「……『
「正解。少しばかり借りさせてもらったよ。まぁ、正確に言えばパクったかな? どうでもいい事だが」
「……」
「此処に来てしまって言うのもなんだが、俺は別に道筋に関わろうとするつもりはない。俺はあくまでも部外者だ、決して本筋に関わるべき人間じゃない。本筋を進めるのは宿儺や上条当麻達だからな。俺は裏に徹するだけだ。巻き込まれた場合は別だけどな。俺が自らお前の計画を邪魔するつもりはないよ」
「なら、アレは何だ?」
「アレを学園都市に溶け込ませたのも、全ては俺の目的の為だ。だが同時に、俺の目的はお前の目的と同じでもある」
「―――まさか」
この時、初めてアレイスターは苛立ちを消し去り、そして人生において久しく表情を崩して驚いた。
エリファスは笑みを消して―――まるで機械的で、感情を消し去ったかの様な無情を浮かべて、しかし燃え盛る炎の様な決意をその目に宿して、アレイスターに自らの目的を告白する。
「