とある呪術の両面宿儺   作:全智一皆

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一方通行③

 暗い。昏い。(くら)い。そこはまるで宇宙の様であり、銀河の様であり、もはやビルの中であるとは誰も思わないし、考える事もないだろう。

 其処には、()が立っていた。

 男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える「人間」。

 学園都市の最大権力者。学園都市の統括理事長。それでいて―――()()西()()()()()()()()()()()()()

 その名を、アレイスター=クロウリー。本来ならば生命維持の槽の中に逆さで漂っている筈の存在が、其処には居た。

 いや、違う。アレイスター=クロウリーは、今も尚、生命維持の槽の中に存在している。

 だが、しかしそれが此処に居るアレイスターを別人であると決定づける証拠にもならない。

 アレイスター=クロウリー。その魂は、極彩に輝いていた。

 今は、それだけで良い。それだけの説明で、済ませる事にしよう。

 『人間』は、僅かな苛立ちを隠さずに問い掛ける。

 

「いったい、何が目的だ」

 

 前には誰も居ない。後ろにも誰も居ない。

 右にも、左にも。上にも、下にも。

 360度、何処を見ようと其処にはアレイスター=クロウリー以外の生命は存在していない。

 存在して、いなかった。

 

「何が目的、ねぇ。それは君がよく解っている筈だがね、()()

 

 ソレは、人間の隣に居た。

 だが、同時に前にも居た。

 だが、同時に後ろにも居た。

 もみあげに灰色が混じった、銀髪を思わせる白髪。青空を思わせる綺麗な碧眼。右耳に、結晶石の様なものを加工して作られたイヤリング・ピアスを付け、目にはスクエアタイプのサングラスを掛けた、青年と思わしき容姿をした男。

 

「答えろ―――エリファス=レヴィ」

「遂に考える事にすら()()する様になったか? アレイスター」

 

 エリファス=レヴィ。

 ある意味では、アレイスター=クロウリーの先輩にもなる魔術師。近代西洋魔術を復興させるに至った、偉大なる魔術師の一人。

 そして、両面宿儺の友人。両面宿儺という鬼人を、()()()()()()()()()()()()その人。

 

「もはや貴方が生きていた事には、何ら疑問はない。私の様な存在が生きていたのだ。貴方が生きていても不思議はなかった」

「初対面なのに信用されている様で、嬉しい事だ。まぁ、だから何だという話ではあるけどな」

「だが、アレは何だ? アレは魔術師ではなく、能力者でもない。分類としては()()に区別されるが、我々が知るモノとは少々異なるものだ。そして、私にとっての余分だ」

「そう言うなよ、アレイスター。アレはお前の()()の手助けをするさ。他ならぬ()が断言する」

「それは何を根拠とする? 我々『黄金夜明』と違い、()()()()()に掛かっていない事からか? それとも、アレと長年の付き合いだからか?」

「どちらもであり、それ以外にも」

 

 ケラケラと、エリファスは笑う。

 訝しむ様に、アレイスターは顔を顰める。

 最高と最高。互いに魔術師としての頂に立つ者―――否。

 0と1で表現不可能な高次的存在と、単なる伝説。

 魔術を極めておきながら、しかし人という枠に収まっている両人は、互いに全く違う感情だった。

 

「アクセラレータの能力の本質は早く覚醒した。だが、()()()()だ。彼の未来が変わる事はないし、彼が傷付く事も変わらない。結果として御坂美琴が研究所を破壊しなくなっていたが、それは今の話であって後じゃない。御坂美琴は動くさ、そしてアイテムも動く。両面宿儺というイレギュラーが働いてこそいるが、安心しろ、アレイスター。アレは()()を歪ませこそするが、崩す事はしない。結果としては本来の形に収束する。アクセラレータが起こした天災のお陰で、()()()も動き始めているさ」

「……『滞空回線(アンダーライン)』か」

「正解。少しばかり借りさせてもらったよ。まぁ、正確に言えばパクったかな? どうでもいい事だが」

「……」

「此処に来てしまって言うのもなんだが、俺は別に道筋に関わろうとするつもりはない。俺はあくまでも部外者だ、決して本筋に関わるべき人間じゃない。本筋を進めるのは宿儺や上条当麻達だからな。俺は裏に徹するだけだ。巻き込まれた場合は別だけどな。俺が自らお前の計画を邪魔するつもりはないよ」

「なら、アレは何だ?」

「アレを学園都市に溶け込ませたのも、全ては俺の目的の為だ。だが同時に、俺の目的はお前の目的と同じでもある」

「―――まさか」

 

 この時、初めてアレイスターは苛立ちを消し去り、そして人生において久しく表情を崩して驚いた。

 エリファスは笑みを消して―――まるで機械的で、感情を消し去ったかの様な無情を浮かべて、しかし燃え盛る炎の様な決意をその目に宿して、アレイスターに自らの目的を告白する。

 

()()()()()()()()()。両面宿儺が持つ術式を用いて―――いつか辿り着く高み(世界を斬る斬撃)をモノにして、俺は魔術を絶滅させる」

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