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違和感ばかりが、
自分が自分でない様な。
まるで自分が赤の他人である様な。
そんな、違和感。自己を失っている訳でもないのに、どこか自分を見つけられずにいる不自然。
答えは誰も知らない。誰も答えてはくれない。
否、そもそも―――答えなんて求めてはいない。
違和感はある。不自然ではある。だが、それはそれだ。
自分は自分だ。例え己の肉体が他人のモノであろうと、両面宿儺という存在に成っていようと、しかしこの魂までも両面宿儺という存在に成り果てている訳ではない。
似通っているのだろう。他者にしてみれば、きっと同じも同然なのだろう。
けれど、現実はそうじゃない。あくまでも、別人だ。
何故ならば―――そう。
「宿儺ッ!」
「―――ようやく来たか」
この彼には、両面宿儺には、決して自分を見捨てる事のない友が居るのだから。
ただ一人。この世界においてただ一人、宿儺という人物に生身のまま殴り掛かり、説教を垂れた少年。
上条当麻が、友の為に最強の戦場へと馳せ参じたのだ。
「遅い。何をのろのろとしていた」
「これでも全力疾走してきたんですけど!? 上条さんはお前や御坂と違って身体能力は高くないのですよ!」
「何の為の科学だ。足を探せ」
「運転免許も持ってないのに運転出来る訳ないだろ!?」
「知らん」
「無慈悲にも程があるだろ!」
「御託は良い。さっさと働け、貴様の見せ場だ」
相対するは、一人の最強。
両面宿儺という鬼人との戦闘を経て、己が本質を覚醒させた一人の超能力者。
だが―――上条当麻の右手は、そんな最強をすら破壊する。
「お仲間登場かァ? テメェにそんな心があるたァ驚きだな、犯罪者。学園都市指名手配犯、『両面宿儺』…鬼人なんて都市伝説もあったが、実在するとなァ」
「オカルトはもう理解しただろう? 良かったではないか、世界の広さを知れたぞ」
「チッ、その上から目線も耳障りだ。さっさとそのふんぞり返ってる玉座から降ろしてやる…!」
「戯言を。仕事だ、上条。突っ込め」
「まさかの特攻要員!?」
流石にキツイんですが!? と抗議する上条。無論、宿儺は知らんぷりである。
まず学生寮でゆったりとしていた所、空腹を訴えるインデックスに敗北して食材を買いに行こうとして珍しく無事にスーパーに辿り着いた上条。
宿儺からの慈悲―――宿儺に挑んだ
御坂妹を抱える御坂美琴と遭遇。「アイツが、アイツが一人で戦ってるの!」と、宿儺が一方通行と戦闘をしている事、宿儺の斬撃が跳ね返された事を教えられた上条は、食材をその場に捨て置いて全力で駆け付けた。
まぁ、要するに―――体力が限界寸前である。
「貴様が道を作れば後は問題無い。一秒もあれば下ろせる」
「殺すなよ!?」
「またそれか……今更増えたところで」
「だからこそ、これ以上は殺しちゃダメなんだよ。初めて会った時に言ったろ」
「…………」
拳で軽く小突かれる。
不思議と、大した不快感はない。
まただ。もう既に何人も、何十人も殺しているというのに―――これ以上、殺しを重ねるなと説教を説いてくる。
人殺しになったのだから何をしても変わらない。特別誰かを助ける様な事もしない、徳を積んでいく訳でもない。
忌み子である自分には、出来る訳もない。
そんな思考を、しかし上条はいつも消し去る。
何度も、何度も。しつこいぐらいに、上条当麻という人間は両面宿儺に教えを説いてくるのだ。
正確には上条だけではなく、小萌先生や吹寄制理も、だが。
「…疾く行け」
「はいはい、行ってやりますよッ!」
癪ではある。だが、不快ではない。
こんな自分に説教をかます人間など数少なく、そして自分がそれに憤らない事は未だよく分からない。
しかし、まぁ―――今は、そんな事を気にしている暇はない。
「御坂妹の分まで、きっちり返してやる」
「次から次へと…今日はお客が多いなァ? 面倒くせェ……邪魔するンじゃねェよ、三下ァッ!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリッッッッッッッッッッッッッッッ―――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
踏み出した右足が地面を抉り、真空の衝撃波が上条を真っ向から迎え撃たんと押し寄せる。
全身を切り刻み、肉片全てを叩き潰す不可視の凶器。神裂火織のソレと同等、或いはソレ以上の刃に対して――――――上条は、その右手を突き出した。
パキィンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
目に見えぬ刃を、まるで
最強が、その信じられない現実に目を見開いた。
「なっ――――――!?」
「歯ぁ食いしばれよ
俺の
振り抜かれた
あらゆる全てを反射する壁。それを文字通り
壁は無くなった。もはや阻むものなど何も無い。
「解」
極めて出力が落とされた、鬼人にあるまじき慈悲の刃が