■ ■
「上条の家でパーティをする事にした。食材をいくつか寄越せ」
『友達の家でパーティ…! 宿儺が友達の家でパーティに参加するなんて…素晴らしいじゃないか!』
エリファス=レヴィは歓喜した。あの両面宿儺が友人の家で行われるパーティに参加しようという事実に。
幼い時を知り、そして彼を学園都市へと溶け込ませた張本人たるエリファスにしてみれば、宿儺が友人と一緒に遊ぶ事自体とても喜ばしい事だ。
親ではなく友人でこそあるが、友人であるが故にそれが彼にとっては自分の事の様に嬉しいのだろう。
「単なる気紛れだ。それ以上も以下もない」
『気紛れでも、君が友人と一緒に遊ぶ事は私としても嬉しい事さ。誰とも関わらず、ただ孤独を歩むだけだった君が変わっているのは、間違いなくその友人のお陰なのだから』
「…だろうな。あの日、奴と会ってから俺は変わった。自分でもそれが分かる」
『やはり凄いね、彼は。私もいつか実際に会って、お礼をしなくてはいけないね』
「引き籠もりが何を言う。奴への礼ならば食材を用意すれば十分だ。暴食の限りを尽くす女が居るからな」
上条さんの同居人はシスターである。一応。シスターはシスターでも『大食いの』という枕詞が付いてしまうぐらいには大食いのシスターだが。
そんなシスターと同居している為に、上条当麻は常に金欠である。不幸も積み重なって、もはやどうして生活出来ているのか不思議なくらいである。
ちなみに、インデックスと宿儺は同じ
宿儺は思いっきり否定しているが。インデックスはわりとショックを受けていたがツンデレである事を御坂妹から聞いて立ち直った。
解が放たれて打ち消されたのは言わずもがなである。
『シスター相手に酷い言い様だな君。というか私の事引き籠もりって言ったよね!? 私は別に引き籠もりではないぞ!? ただ機械開発に勤しむと外に出なくなるというだけで、普通に働いてるんだからね!? これでも数十年は小さな玩具屋営んでいるんだぞ!?』
「貴様の様な変人でも働けるのだ、世界というのは不思議極まりないな」
『変人呼ばわりは止めてくれないかなぁ!? 少なくとも
エリファス=レヴィは既に表舞台から姿を消した存在である。エリファスが魔術師として活動するのは
熊本県の町に建てた小さな玩具屋で、玩具の修理や販売などで生計を立てている、
「ジジイの間違いだろう。お兄さんなどと言われる様な年齢でもあるまい」
『見た目はお兄さんだよ! 子供達や近所の人にも人気なんだぞ私!』
「ハッ」
『鼻で嗤われた…!? まさか、宿儺は私よりモテているというのかい!?』
「知らん。興味もない」
『夢がないなぁ…男なら誰しも一度は女性に興味を持つか考える筈なんだが。好みもないのかい?』
「興味がないと言っただろう。俺には無縁だ」
『あー、出た出た。全く…
「……」
『君は忌み子だったのかもしれない。怪物と罵られたのかもしれない。けれど、君の周りには君を人として見てくれる人達が居るだろう? そうやって自嘲するのは、あまり感心しないよ』
「………同じ事を、あの
宿儺は忌み子だ。産まれて間もない時から親に捨てられた、哀れな忌み嫌われた子供だった。
宿儺本人にしてみれば、それは気にする必要もない割り切った事なのかもしれない。だが、実際には彼の心に、確かな傷を刻んでいた。
自分が忌み子であるが故に、人と関わろうとしない。忌み子であるが故に、誰の事も考えない。
ある意味では、未だ彼は子供のままなのかもしれない。
『大人というのは、君が思うよりも強いという事さ。君の担任は本当に良い教師だね、しっかりと君と向き合おうとしてくれている』
「…」
『すぐに治せ、なんて事は言わないさ。それは決して簡単に治せるものでも、受け入れられるものでもないからね。でも、同時に絶対に治す事が出来ないモノでもない。強さでそれを埋めようと、愛でそれを縫おうと、どうするかは君次第だ。君が選択すべき時にそれを選択したなら、私はそれに添って君の助けになる』
「……貴様にそれが出来るのか。たかが俺に」
『
―――もう二度と、あんな運命に苦しむのは御免なのでね。
『さっ! 暗い話はここまでにして、パーティの話をしよう! 食材は何が良い? 肉でも野菜でも、何でも言ってくれたまえ!』
「豚と鶏のパックを八つと人参、馬鈴薯、玉葱、茄子を数十、牡蠣や貝類を十…」
『うーん遠慮がないね!? 何でも言ってくれたまえとは言ったけど私の懐にも限度はあるからね!?』
この大量の注文を、エリファスは受け入れて今日中に確かに宿儺の下へと届けたのである。
そして、その後に行われた上条宅でのパーティでエリファス=レヴィのことは全く知らない上条とインデックスは、宿儺が言う『知人』に多大なる感謝をしたという。