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両面宿儺は能力者ではない。しかし、魔術師という訳でもない。
彼は学園都市という世界を象徴とする最大の特徴―――能力開発を受けていない。それ故に、彼は『書庫』にその能力が登録されていない。
学園都市においては、真の無能力者。そう呼んでも過言ではないが、それはあくまでも文面上のものだ。
能力を持っていないかと言われれば、そうではない。寧ろ彼は持つ者、天に二物を与えられた存在とも言える。
学園都市、というよりはこの世界において言うなれば『原石』。産まれながらにして『両面宿儺』という存在をその身に宿した忌み子。
かの両面宿儺は、その容姿と実力から鬼神たる両面宿儺の名で呼ばれていたというだけで、決してその真名が両面宿儺であった訳ではなかった。
しかし、彼はその真名すら両面宿儺。両面宿儺という名前を与えられた事で、その存在が両面宿儺と成った存在だ。
だが―――実際の両面宿儺と同じ様に、彼も最初から鬼神の如き強さを誇っていた訳ではないのだ。
彼は忌み子なのだから。例えどれだけ強かろうと、生まれた頃は所詮は人。
人とは、一人では生きていけないのだ。
「…あれ、もしかしなくても宿儺ですか?」
白井黒子との遊びを終えた宿儺は、暇を潰す様にふらふらと学園都市を散策していた。
売られた喧嘩は買い、無造作に薙ぎ倒して造作もなく捨て置いて、金銭を奪い取る。
宿儺が金を持っている理由はこれだ。彼は自分に襲い掛かってきたスキルアウト、単なる不良から金を奪い取るのだ。
金無くして食費無く、食費無くして食材無く、食材無くして料理無し。故に、スキルアウトなどという浅い闇に浸った者から奪い取る。
襲うなら襲われても文句は言えないだろう。やり返されて、何をされても同じ事だ。
その金で、アイスという人類が生み出した最高の甘味(by作者)を買って食していた宿儺に声が掛けられた。
「誰だ」
「いや、まず振り向いてください。人の顔も見ずに誰だ、は超失礼です」
「その喋り方―――貴様、絹旗か!」
「振り向く前に喋り方で思い出すのはムカつきますが…超久しぶりですね。相変わらず、超凶悪そうで何よりです」
ふわふわしたニットのワンピースを身に着けた、見かけ12歳程度の大人しそうな少女。
名を、絹旗最愛。
『置き去り』を利用して行われた暗部の研究『暗闇の五月計画』の被験者の一人にして、暗部『アイテム』に所属するメンバーの一人。
そして、この学園都市において両面宿儺という人間と関わりを持った数少ない人間の内の一人でもある。
「貴様も息災の様だな。アイテムとやらの住心地はどうだ?」
「彼処に比べたら最高ですよ。まぁ、請ける仕事は超汚い仕事が多いですが…宿儺の方はどうです? 学生生活を超エンジョイしてますか?」
「つまらんに決まっているだろう。だがまぁ、何人か面白い奴と出会えたのも事実だ。特に上条という奴は、中々に愉快だぞ」
「お気に入りってやつですか。その人が超気の毒です」
「それが見ていて愉しいというのだ。偶に俺の戦いに割り込んでくるのは腹が立つが…奴はいつも、俺の予想を越えてくる」
楽しげに、鬼人は笑う。
上条当麻というイレギュラー。『繋がる力』を持った底抜けた善人、敵味方無関係に結び付ける主人公。
両面宿儺にとって、唯一無二と思う事が出来るただ一人の存在。
ついでに言うなら、興が乗れば専属の料理人にしようともしている。まぁその方が生活的には楽になりますよね。
不幸に巻き込まれて慌てる上条が見れる上に上条の普通極まる料理も食える。宿儺にとっては至高である。
上条にしても、ただいつも通りに飯を作るだけで暮らしが安定するのだから願ったり叶ったりだろう。
当然の事、上条当麻はその事を知らぬのだ。
「で、貴様は何をしている?」
「見ての通り、超普通の休暇です。今から映画を観に行くんです。宿儺も来ます?」
「そうだな、丁度暇をしていた所だ。観させてもらうとしよう。だが、ポップコーンとコーラは頼むなよ」
「えー、何でですか。もしかして嫌いなんですか?」
「あれは不味い。チュロスを食べた方がまだマシだ」
「チュロスって…ぷっ。宿儺、その見た目でチュロスとか超似合わないですね」
「下ろすぞ。貴様こそ貧相な体のままではないか。それに何だ、その格好は? 貴様は何時から痴女に成り下がった? ハッ、止めておけ止めておけ。その様な格好をしていようが寄るのは変態くらいなものだ」
「超言いますね…! 相変わらず人を超煽る癖は治っていない様で超苛つきます!」
「そうか。では行くぞ」
「なっ! ちょ、誘ったの私なんですけど!」
先行く鬼人は、笑っていた。
宿儺の友人は四人だけ。