とある呪術の両面宿儺   作:全智一皆

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能力者狩り④

 

 

■  ■

 両面宿儺は忌み子として産まれ、遂には史上最強の呪術師となった。あの世界において、両面宿儺という存在はそういうものだった。

 この世界では、まだそうではない。彼は最強にはなっていない。それこそ、鬼神と呼ぶに相応しい実力すらまだ備えていない。

 まだまだ経験が足りない。まだまだ死線が足りない。この世界では、彼はまだまだ成長の余地がある。それ程までに、あの世界とは比べ物にならない程の強敵が存在しているのだ。

 しかし、まぁ―――此処、学園都市においては、彼を強くしてくれる程の敵は片腕の指で数え切れる程度しか存在しないのだが。

 

「…」

 

 絹旗最愛を担いで追手から逃れ、文句を垂れる彼女を逃げた先で置き去りにした宿儺は、帰路の途中で目撃者となった。

 複数の男達が、廃ビルの中でケラケラと薄汚い笑みを浮かべている。そして微かに、恐怖に怯えて小さな息を漏らす女の声も。その中には、反抗する意思を持つ声も存在していた。

 

「くだらん…俺は彼奴とは違う」

 

 自分は関係無い。面倒事に自ら巻き込まれにいく必要はない。頭の中で、あのツンツン頭の少年を浮かべながらも、宿儺は知らんと歩を進める。

 誰でも助ける突き抜けた善人。それが敵であろうが何であろうが、救わんとする繋がる力を持った者。そんな彼とは、決定的に違う。

 別に誰かを救いたい訳ではない。誰かを助けたいなど、思った事もない。そんな事が出来る訳もないのだから。

 弱者が死ぬ。弱者が虐げられる。それは仕方ない事だと割り切っている。弱肉強食がこの世の理であるからだ、と。

 悩むまでもなく、宿儺は帰路を辿った―――その直後。

 

 ビュウッッッ、バリンッッッッッッッ!!!!

 

 強い風が其処を吹き抜け、廃ビルに残されていた硝子を砕き、そして一人の男が無様に落っこちた。

 宿儺は足を止め、直ぐに廃ビルへと視線を戻す。激痛に呻く男、砕けた窓からは狼狽える男達が目に見えた。

 どういう事だ、とか。無能力者じゃなかったのか、とか。そんな言葉ばかりが聞こえてくる中で、小さく。

 

「―――何もかもを吹き飛ばせば良い。打算も勝算もなく、とにかく、何でも吹き飛ばせば……」

 

 まるで、譫言の様に呟かれたその言葉を、しかし宿儺は確かに拾ったのだ。

 くつくつと、宿儺は笑った。

 

「そうか、あの女か。これは面白いものが見られそうだ」

 

 帰路を辿らず、宿儺は風が吹き抜けた廃ビルの窓目掛けて跳び上がった。

 腰を落とすでもなく、ただ足に力を込めて地を蹴れば、それだけで数メートルの高さを越えて、鬼人はビルの中へと入り込めた。

 

「なっ」

「だ、誰だテ」

「喧しい。口を閉じろ、下衆が」

 

 一蹴。宿儺から放たれたその言葉だけで、口を開きかけていた全員が口を閉じ、恐怖に慄きながらもその場から動こうとしなかった。

 否、正確には―――動けなかった。動いてしまえば自分が死ぬ、絶対に死ぬという確信を抱いたからだ。

 それで良い。宿儺はそれだけを言って、佐天涙子の方へと歩む。

 

「あ…貴方は」

「先の風は、お前がやったのか?」

「え…? あっ、はい。たぶん…私が」

「中々に良かったぞ。団扇以上に心地良い風だった」

「あ、団扇以上なんですね…」

「扇風機並、といった所だな。しかし、まぁ…前の見るに耐えんものに比べれば、見ていられる様にはなったな」

「ど、どうも…私としては、結構がんばったほう…なん………」

 

 言い切る前に、少女はぷつりと糸が切れた様に膝から崩れ落ち、倒れ込んだ。

 宿儺は反射的にそれを受け止め、はぁぁぁぁ…………と、重たい溜め息をながーく吐きながら、心底面倒くさそうに佐天涙子を、無造作に、しかし起こさない様に静かに柱へと寝かせた。

 そして―――

 

「おい、囲碁。いつまで呆けている」

「誰が囲碁ですの!? というか何で囲碁!?」

「貴様が白黒だからだ。それすら分からんのか?」

「貴方に人を名前で遊ぶ心がある事に驚きですの…!」

「どうでもいい。さっさと此奴を連れて行け。貴様ら揃いも揃って邪魔だ」

「いきなりやってきて邪魔って何ですの!? 貴方はいっつもそうですわよね勝手にやってきて好き勝手した挙げ句に後は全部丸投げでこっちがどれだけ苦労したと思ってますの巫山戯ないでくださいましこっちも暇じゃねぇんですのよっっっ!!!!」

「はぁ…うざっ」

「キィィィィッッッッッッ!!!!」

 

 感情が爆発して奇声を上げて発狂する白井黒子を放置し、宿儺は周囲に群がる男達へと冷めた視線を向ける。

 じりっ…と、男達が一歩下がる。包み隠さない殺気に、爆発寸前まで恐怖が膨れ上がる。

 小さな溜め息を零すと共に―――鬼人が一人の眼前まで迫った。

 グシャッ、と。肉々しい音が木霊する。

 一瞬にして眼前にまで迫り、その顔面を掴んで最高速で脆い壁へと打ち付ければ、脊椎に罅を走らせ脳は揺れる。頭蓋にも少しばかり罅が走ったかもしれない。

 当然の事―――意識はない。

 

「やはりつまらんな。何処までも、貴様らはつまらん」

 

 ただ淡々と。つまらないとだけ告げる。

 スキルアウト。弱者の集団。強者に抗う事を、自ら強者を下す事を諦めた者達。

 能力がないから戦わないのか? 能力者には勝てないから鍛えないのか?

 忌み子である自分ですら、鍛えたのに。此処に立っているのに。この名前に殆ど引っ張られた様なものだが、それでも自らの力を鍛える事を止めた事は一度もない。

 能力者にも、高みを目指す者は居た。あの風紀委員が姉と敬うあの能力者が―――あれは、中々に出来る女だった。

 能力者ですら努力を怠らなかったというのに、眼の前の人間は能力の有無を言い訳に何もせずにのたうち回っている。

 だからこそ―――つまらない。

 

「解」

 

 殺しはしない。だが、手足の何れかは失うだろう。

 斬撃の嵐は、しかし僅かな慈悲を宿して彼らを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死者は無し。しかし、負傷者は漏れなく大きな病院へと運ばれる事となった。

 風紀委員と一般生徒は無傷だったが、一般生徒は瞬間的にレベルが跳ね上がった事による脳への負荷によって気絶する事となったのだった。

 そして、指名手配犯である宿儺はと言うと――――――

 

「正直、助かったわ。ありがとね」

「助けたつもりなど欠片もないがな」

 

 ファミレスの中で、チーズが乗せられたハンバーグを食していた。よく電気を垂れ流す女子中学生と共に。




宿儺のご友人四人衆

上条当麻
?????
?????
絹旗最愛

これとは別に、宿儺自身が『(在り方や強さに関して)結構良いな』と思う人が何人か居ます。
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