これが、『作者』の自己満足です。
「俺は……死んだのか?」
センジョウは一人、誰もいない電車のなかで、意識を取り戻した。
窓から外を見ても、見たことの無い景色ばかりが広がっていて。今、自分がどこにいるのか。この電車が、どこに向かっているのかもわからない。
ただ、静かに、車輪が回り、車両が揺れる音だけが、耳に残る。
「……今となっては、三途の川も船じゃなく電車で越えるのか」
自分の最後の記憶は、『Nuill-Vana』をオーバーロードさせたことによる、光の奔流に飲み込まれたところまでだ。
あの景色が最後である以上……、『Nuill-Vana』の自爆は、成功したのだろう。
そして、だとするのであれば。
「……死んだ。んだよな、俺」
センジョウは、ただの人間だ。
多大なエネルギーの暴走による爆心地に肉体があれば、容易く消し飛んでいるだろう。
痛みすら感じなかったことを加味すると、塵すら残っていないかもしれない。
「……ユウカと、ナル。無事かな」
二度と会うことのない、愛する二人の事を思い浮かべ。センジョウは感傷に浸る。
そんなまま、しばらくぼんやりと残された人たちに思考を向けていたが……人間の集中力というものは、案外続かないもので。それが、見慣れぬ景色の中ともなれば、尚更の事だった。
行き先が、天国か、地獄か、予想はつかないが……なんにせよ。電車が駅につくまで、まだしばらくの猶予はありそうだ。
センジョウは、車両の中を見て回ることにした。
まずは、周囲をぐるりと見回して、つり革や椅子、車内吊り広告を見て回るが……どれも、知っているようで、知らないような。不思議な感覚がした。
「……隣の車両に行ってみるか」
どうせなら、先頭車両まで歩いてみようと。そんなことを考えて、車両同士をつなぐ扉へ手を掛けようとして──
────その手が、空を切る。
「……は?」
スカスカと、手がなにかに触れる感触もなく、まるで、ホログラムを突き抜けているかのような感覚に、センジョウは目を丸くした。
床や、椅子には触れたというのに、どうして扉には触れないのだろうか。
そんな疑問を感じつつも、センジョウは、すり抜けるのであれば。と、そのまま扉を通過する。
しかし、隣の車両も、代わり映えの無い、同じ車両だ。
同乗者の一人や二人はいないものかと、そんなことを考えながら、センジョウは次々と車両を歩いていく。
────すると、ふと、視界に人影が。2つ。
通路を挟んで、向かい合うように、彼らは座席へ座り込んでいた。
知り合いなのだろうか?とそんな疑問を浮かべながらセンジョウは二人へ近寄ろうとし……気づく。
胸から血を流す女性には、見覚えはない。
だが、そんな彼女と向かい合う、一人の男には。見覚えが、あった。
「…………おや、じ?」
確信が出来なかったのは。その男が、自分の父に似てはいるものの、どこか違う雰囲気を纏っていたからだ。
そして、そんな二人の間には、どこから、不思議な気配を感じた。
「────私のミスでした」
少女が。口を開く。
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」
それに対し、男はなにも応えない。
「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかった事を悟るだなんて……」
少女は、なにも語らぬ男へ向けて、言葉を続ける。
「……今更図々しいですが、お願いします」
「先生」
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」
その言葉は。その場にいるセンジョウを無視して。『先生』へと向けられる。
「なにも思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」
「なんの話を──」
「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」
少女の言葉は、センジョウの言葉を遮り……いや、かき消し、続きを紡ぐ。
「あなたにしかできない選択の数々」
なにかが。おかしかった。
まるで、ここに、『蒼井センジョウ』が、存在していないような違和感。
「責任を負う者について、話したことがありましたね」
いや、ちがう。
「あの時の私には解りませんでしたが……。今なら理解できます」
これは。何かを、見せられているんだ。
「大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択」
「それが意味する心延えも」
触れることも、語ることもできず。ただ、センジョウはそのやり取りを、眺める事しかできない。
「ですから、先生」
「私が信じられる大人である、あなたになら、この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……」
「そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです」
それは、まるで。
「だから先生、どうか……」
場面が。暗転する。
鋭い声に、世界が色を取り戻す。
気がつけば。センジョウは連邦生徒会のロビーに立っていた。
「は?いや、……は?」
状況が飲み込めず、周囲を見回す。……窓にかけより、そこから外の景色を見れば、そこには、見慣れた『キヴォトス』の景色が広がっていた。
「……なんだってんだよ。これ」
眼下に広がるキヴォトスには、戦いの傷跡はない。
まるで、プレナパテスとの戦いがなかったかのような──
振り向けば、いつの間にか『先生』は目を覚まし、リンと共に移動を始めていた。
「あ、ちょっ!ちょっとたんま!」
何にも触れられないセンジョウにとって、もし万が一、『先生』を見失ってしまえば、何が原因で彼を見失ってしまうかもわからない。
声が聞こえていない事実は変わらないようで、こちらを認識していない二人の後をなんとか追いかけ、センジョウはエレベーターへと乗り込んだ。
エレベーターで上がりながら、リンは『先生』に、キヴォトスの概要について話す。
どうやら、彼は今日、初めてここに来て、これからキヴォトスで『先生』となるらしい。
「……これは、オヤジの記憶、なのか?」
何かを見せられている。ということには気づいていたセンジョウだったが、それが何か。までは皆目見当が付かない。
だが、『先生』についていけば、そのうち何かが解るだろうと。そんなことを考えながら、彼の後を追う。
扉が開き、レセプションルームへ入った時。
「────ちょっとまって!」
声が。聞こえた。
「ユウ───」
「代行!見つけた!待ってたわよ!」
声の主の名をよびながら、一歩踏み出したセンジョウの身体を。すう。と、ユウカの身体がすり抜けていく。
「────」
行き場を失った、センジョウの右手は、再び空を切り。
静かに、その手を下ろした。
「…………そう、だよな」
ユウカも、当然センジョウには触れられない。
その法則は、例外ではない。
気が強く、リンを問いただす彼女の姿は……どこか、自分が初めて出会った彼女の姿を思い出させる。
やはり、自分は、過去の映像を見ているのだろうか。
呆然とするセンジョウを他所に、どんどん話は進んで行く。
どうやら、これは。『先生』の生徒達との出会いの物語であり…………謂わば、『プロローグ』なのだろう。
そうして、『先生』は、ユウカをはじめとした生徒4人を引き連れ、『シャーレ』へと向かう。
そして、センジョウがよく知るように、卓越した指揮の手腕でもって暴動を鎮圧し。サンクトゥムタワーの制御権を回復し。そして────
────『シャーレの先生』の。物語が。始まった。
そうして。『先生』は、最初にシロコに出会い。アビドスの生徒達と知り合い。
カイザーと、黒服の魔の手から、アビドスの生徒達を守り抜く。
そして、ミレニアムで、ゲーム開発部に出会い。彼女達の廃部の危機を回避するため。
アリスと出会い、C&Cと出会う。
「…………そっか、オヤジは。こんな風に────」
これまでの記憶は、センジョウがアビドスに来るより前の記憶。彼の知り得ぬ『物語』。
だが。
ここから先は。
彼の知らない。『物語』
「…………は?」
彼の前で。先生が『補習授業部』の顧問として呼ばれている。
だが。……センジョウがキヴォトスに来る気配は、ない。
いや、それどころか。『先生』が外の世界に残してきた自分を気に掛ける仕草も、失った『キョウカ』を気に掛ける姿も、一度も見ていない。
「いや、まてよ。だって、それに。トキは、ヒマリは?」
自分がキヴォトスに訪れ。シャーレで活動をはじめ。『補習授業部』を起点とした、エデン条約にまつわる一連の事件ご巻き起こる頃には。彼女達との繋がりだってあったはずだ。
そんな彼を他所に。『先生』は、『物語』を進める。
『トリニティの裏切り者』にまつわる、補習授業部と──聖園ミカとのやり取り。
そして、ミカの襲撃を──先生達は。切り抜けて、その先で、補習授業部は、合格を勝ち取る。
「……これ、は」
────『蒼井センジョウ』がいなくとも。『物語』は。定められた『筋書き』を辿る。
エデン条約。調印式の日。
────センジョウに、先生に、『訪れる』運命。
「────オヤジ!!」
先生は。サオリの銃弾に撃たれ。
そして。
「おや…………じ…………?」
────『起き上がる』。
「…………え、あ……?」
しらない。
しるわけがない。
こんな、こんな。『物語』。
だって。そんな。
これじゃあ。まるで。
────動揺するセンジョウを置き去りにして。『物語』は進み。
『生徒達』は、『先生』と共に──困難を乗り越える。
「は、はは…………」
そうして。次に、『先生』は、RABBIT小隊に出会う。
そこでの行動は。まるで答え合わせだった。
『センジョウ』がとった選択を、まるでなぞるように。いや、なぞっていたのは、『センジョウ』か。
『先生』は、『センジョウ』と同じ『選択』を繰り返し。『物語』は進んで行く。
────大事なのは、『経験』ではなく。『選択』。
センジョウの中に、段々と、『真実』が輪郭を表す。
そうして、アリウスの危機と。ミカの絶望。
そして。当然、『先生』は、それを乗り越える。
そうして、『センジョウ』のいない世界は。
あるべき姿を、示していく。
何一つ、歪みなく。
絶望の中に、希望を見いだし。
全てが、美しく。
皆が、救われていく。
ただ。ここにいない、一人を残して。
そして。
それは、自分が乗り越えるために。多くの犠牲を払った。『もしも』が、相手だろうと。
自分が、大切に思っていた人は。傷つかず。
自分のために、その身を捧げてくれた少女を贄にせず。
自分が、守るために傷つけた世界を、傷つけることなく。
────『
「…………ああ。そうか」
色彩に歪められた『蒼井センジョウ』が。なぜ、『
ようやく。符号がいった。
「──俺は、『
その。『
それが────
────『
「……だから、俺にこれを見せたんだな」
世界を。壊すために。
世界を歪め、変革し、原型がないほどまでに破壊できる。その『可能性』を秘めた。『
「────『色彩』」
なにかが。『蒼井センジョウ』を。覗いていた。
次回。青空DAYS最終章。
────『ひとつの奇跡の終着点』
やったねセンジョウ!知識が増えるよ!!
と言うわけで、センジョウ君も今回から原作知識持ちオリ主の仲間入りです。
最終編、なんとか書ききれました………。紆余曲折と賛否両論ありましたが、僕は後悔してません。書きたいものを書くだけなので……。
さて、色々語るべきところがある気もしますがあんまり語るのもネ。
と言うことで、最終編の裏話のあれこれはどっかで活動報告に纏めて投げますので、「あれ?ここどういう意味だったの?」みたいなのが気になる人はもしかしたらそっち覗いたら答え出るかもしれません。
では、次話から始まる『青空DAYS最終章』で、再びお会いできる日を心待にしております!