青空DAYS   作:Ziz555

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今日の夕方から思い付きで書き始めました。

滑り込みギリギリセーフとさせてください。


「ハッピーバースデー、ユウカ」

 久しぶりな人も多いだろう。なんなら、この語り口なら、はじめましてでもいいのかもしれないが。まあ、なんにしたってまずは自己紹介をさせてくれ。

 

 俺の名前は、『蒼井センジョウ』。キヴォトスに暮らす、先生見習いだ。

 

 キヴォトスに赴任したオヤジの後を追って、手伝いをしにここへ来て。なんだかんだと、色々あった果てに、まあ。自分なりの答えと決着をつけてから、俺はこうしてこの『世界』で生きている。

 

 そんで、今日は3月14日。世間じゃホワイトデーだなんだと賑やかな日になるが。俺にとっちゃ、それじゃ済まない。代え難い、年に一度の大切な日だ。

 

 最愛の人。早瀬ユウカの誕生日。

 

 これを祝わずしてなんとするか。盛大にやらねば男が廃ると言わざるを得ない。情けないと揶揄されて、間が悪いと批難され、女心がわからないぼんくらだと怒られたこともあるが。そんな事はこのさいどーーーーだっていい。

 

 形振りなんて構ってられない。俺は、この日に、ユウカの誕生日を、祝うのだ。

 

 それはもう、盛大に。

 

「で。パーティーの準備に熱中しすぎて、肝心のプレゼントを買いそこねた。と」

「うぐっ」

「うーん。大切にしてるのはわかるけどさ。それは流石に間抜けじゃん?ねぇ」

「ぐふっ……」

「挙げ句自分ひとりで決められなくて私達に相談。……愛想つかされても、私はユウカの味方をするわ」

「うわぁぁぁぁ!クソッ!!わかってるよ!わかってるんだからそこまで言わなくてもいいだろぉ!?!?!?」

 

 両脇の少女に手厳しい指摘を喰らい、俺は頭を抱えて絶叫する。

 

 そう。俺はパーティーの準備と仕込みに意識を払いすぎた結果――ユウカに渡す誕生日プレゼントを、買いそこねたのだ。

 

「バカね」

「バカだよねー」

「う……っ……うう……」

 

 俺を挟んで「ねー?」とあきれた様に顔を見合わせるのは、聖園ミカと空崎ヒナ。どちらも俺とユウカの共通の縁の深い友人であり、俺達の関係をよく知っているからこそ、俺は彼女たちを相談相手に選んだのだ。

 ……正直、ボロクソに言われる覚悟はしていたのだが、実際面と向かってブスブスと言葉の槍を突き刺されると俺の心にもくるものがあった。

 

「それで、時間はどのぐらいあるの?タイムリミットも分からないんじゃ、手伝いも何もないのだけど」

「ヒナ……!」

「ま、プレゼントがありませんでしたー。で一番悲しむのはユウカちゃんだしね。不甲斐ない『英雄(ヒーロー)』の手助けをしてあげるのも、いい女の子としてのたしなみじゃんね」

「ミカ……!」

 

 悲しみに暮れながら地面にうずくまり、涙にぬれる俺へと、二人の手が差し伸べられていた。

 

「ありがとう……この恩は必ず返す。なんとしてでも、絶対に!」

 

 俺の言葉に二人の表情が一瞬固まる。

 

「「“何としても”ね?」」

「……えっ?」

 

 

 

 拝啓、天国の母さん。

 何やら俺は、地雷を踏んでしまったのかもしれません。なんだか、目の前の二人の視線が、どこか恐ろしいもののようにも感じられてしまいます。

 僕はもうすぐ20を超えるというのに、いまだに女心が――わかりません。

 

 

 

 


 

 

 

「ユウカはとりあえず、今はナルと一緒にご飯とか映画館とかに連れて行ってくれてるから、夕方のパーティー本番までの時間はある。パーティーの仕込みも、Naillで済ませたから帰ってから用意する必要はない」

「あれ、今しれっとNaill使ったって言った?」

「人には過ぎたものだからあまり使わないと言っていたと思うのだけど……」

家庭環境(一つの世界)の危機だぞ、そりゃ使うだろ」

 

 いたって真剣な俺の発言に、ヒナとミカは再び顔を見合わせてから呆れた様に首を横に振った。

 

「真面目なんだか、バカなんだか……」

「良くも悪くも、なりふりを構わなくなった弊害。という事かしらね」

「な、なんだよ。悪いかよ」

「いーんじゃない?わ、た、し、は。こーんなに愛されてるユウカちゃんがちょぉぉぉぉぉぉっっっと、羨ましくなっただーけ」

 

 露骨に不満そうな視線を向けるんじゃない。いったい俺に……いや、その。まあ、確かに俺はミカじゃなくてユウカを選んだけども。その、でも、うん……。

 

「謝らないでね。そういうの、ダメだよ」

「……ハイ」

 

 眉間に皺を寄せながら、ミカは人差し指を俺の口の前に近づけた。これ以上は言うなと、そういいたいのだろう。

 俺はつい、逃げるようにして反対側を歩くヒナの表情を伺った。

 

「私も羨ましいと思うけど」

「うっ」

「べつに。貴方の選んだ選択でしょう?私はそれでいいわ、今の形でも十分だから」

 

 俺の視線に気づいて、こちらを見上げたヒナは、小さく微笑みながらそんな言葉を俺に告げた。

 

「私の気持ちは、もう伝えてあるもの」

 

 そんな言葉を残して、彼女は、あまり見せないいたずらっぽい笑みを浮かべて振り返った。

 

「今、貴方の隣を歩いているのは、私でしょう?」

「……」

「あー。ちょっと、私もいるんだからね????」

「はいはい、3人で協力して、ユウカのプレゼントを選ぶ。そうでしょ?」

「……なんかむかつく」

 

 ベー。と、ヒナに対して舌を出すミカ。しかし、ヒナはそんなミカの様子を気にも留めずに前を向いていた。

 

「……と、とりあえず。まずは俺の候補からだな!」

 

 何とも言えない空気に耐えかねた俺は、一先ず俺の考えうる最優先候補の商品のある店へと、二人を連れてゆくのだった。

 

 

 

「却下」

「本当にセンス無いのね」

「アイツ電卓新しいの欲しいって言ってたんだけどォ!?」

 

 

 

「みてみてこの下着!可愛くない?」

「……あなた、自分の物選んでない?」

「あのぉ……そのぉ……俺此処周囲からの視線がぁ……」

 

 

 

「……枕?ああ、ユウカちゃん、不眠症なんだっけ?」

「ええ。睡眠は大切だもの。悪くないと思わない?」

「それ、俺がこの前買ってユウカにとられたやつ……」

 

 

 

 「き、きまらねぇ……!!」

 

 一通り店をめぐり、それで尚光明の一端すら見えないこの状況に、俺は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。

 

「まあ、一緒に暮らしてるセンジョウくんが見当つかないっていうんだから、なかなか難しいものはあるよねー」

「私達の趣味も一致している訳ではないというのも大きいかもしれないけれど」

 

 フラッペのストローを咥えながらぼやくミカに、ヒナがコーヒーを片手に同意を示した。

 

「ほんと、なんでプレゼント忘れちゃったの?」

「……それは、その」

「ミカ。センジョウの詰めが甘いのは昔からでしょう?理由を聞いても知ってる答えしか返ってこないわ」

「それもそっか」

「ぐふぅ……!」

 

 このひとたちおれにあたりきつくないですか?

 

「そろそろ、ナルとユウカのお出かけの時間も終わるわね」

「いい加減決めないとねー。……というか、今ナルちゃんの行ってるプランってさ、もしかしてセンジョウ君が行く予定だったデートプランだったりしない?」

 

 ッスゥー。

 

「図星だ」

「図星ね」

「だってさぁ!」

 

 言い返す言葉も見つからず、俺は思わず泣きそうになりながら2人の顔を見上げた。

 

「誕生日にデートにもいかずに、他の女の子とお出かけかぁ……うわ。結構最悪かも」

「あら、今気づいたの?結構悪手よ」

「気づいてたなら言ってくれませんかねぇ!?!?!」

「そんなこと言われても……ナルとユウカがデートしているって話聞いたのは合流してからだし、言ってももう遅かったと思うけど」

「センジョウ君、本当に間が悪いよね」

「好き好んでやってるわけじゃねぇ!!」

 

 いつも俺はそうだ、重要な時にいっつも似たような失敗を繰り返して、いつまでも成長しない。

 

 俯せになって泣き伏せる俺の頭を、ヒナが軽く撫でていた。

 

「まあ、もう時間もないし。後はあなたの気持ち次第じゃない?」

「気持ち……?」

「まあそうかもね。センジョウ君がこういうのダメなのはユウカちゃんも知ってるところだろうし、下手に考えるよりも直感でいいかも」

「そうなの……?」

「考えすぎなのよ」

 

 ぺしん。と、軽く俺の頭が叩かれる。

 

「大体、プレゼント一つで愛想尽かされるなら、私フラれてないじゃんね」

「それ。どんな気持ちで言ってるの?」

「やけくそ」

「……ま、今晩、ユウカのパーティー終わったら話し位聞いてあげてもいいけど」

「余計なお世話だよー」

 

 ヒナの発言に、ミカはいー、と歯を見せて威嚇するような仕草をする。

 

「ほら、後はもう私たちじゃどうにもできないから、一人で行きなさい」

「私たちは私たちで何か折角だしプレゼント追加で選んでみるから、気にしなくていいからね」

「ヒナ……ミカ……」

 

 やれやれ。とでも言いたげな表情でこちらを見る2人に、俺は改めて大きく頭を下げる。

 

「――すまん!迷惑かけてごめん!俺、行ってくる!」

 

 その言葉を残して、俺はプレゼントを買うために店を飛び出した。

 もう、こうなったら俺のやることは――1つしかないのだから。

 

 

 

「ほんと、不器用だよね」

「それを隠さなくなったのは、いい事だと思うけど。……あなたのおかげ、かもね?」

「あははっ。そーかもね」

 

 

 


 

 

 そんなこんなで、俺はプレゼントを買って、パーティー会場であるシャーレへと帰還した。

 ヒナやミカ、ほかにもノアなど、俺がパーティーに招待したメンバーはすでにシャーレへ集まっており、後はユウカを待つのみ。といった様子だった。

 

 ケーキや飾りつけなど、ナルも手伝ったそれに、ユウカは「やりすぎ」と呆れつつも感謝を述べて、その盛大なパーティーをみんなで楽しむのだった。

 

 

 

 そして、片付けが終わり、みんながそれぞれ帰った後。

 

 

 

「悪いな、お前の誕生日パーティーだったのに片づけ手伝ってもらってな」

「いいのよ。こういうの、嫌いじゃないし」

 

 シャーレに残ったユウカと俺は、パーティーの為に散らかったシャーレのレクリエーションルームを片付け、俺が飾りつけを、ユウカが食器を片付け終えた頃。台所に隣接したカフェへと訪れていた。

 

「それに」

「うん?」

 

 ユウカがジト目を俺に向ける。

 

「コレ。半分はセンジョウの自己満足でしょ」

「……まいったな、お見通しか」

「当然。いったいどれだけ一緒にいると思ってるの」

 

 ユウカの指摘は、何も間違ってはいない。

 

「去年は……ドタバタしてて、祝えなかったからな」

「まあね、私たちも出会ってからそう長くなかったし」

 

 ユウカは俺が用意したコーヒーを受け取ると、近くの椅子に腰を下ろす。

 俺も、その隣へと腰を下ろした。

 

「……一年、か」

「そうね。ずっと長くいた気がするけど。まだ二年目なのよね、私たち」

 

 ぼんやりと、過去の事に思いをはせる。

 

 俺がキヴォトスにきて、初めてユウカに出会って、それから――いろいろなことがあった。

 

「ユウカ」

「なに?」

 

 俺は、忘れることができない、たくさんの思い出で胸をいっぱいにしたまま、隣のユウカへ語り掛ける。

 

「楽しかったよな」

 

 少なくとも、俺は。すべての事をひっくるめて、今、笑ってる。

 

「……ええ。私も、楽しかったわ」

 

 それは、ユウカもおんなじで。

 満面の笑みを浮かべて、俺を見ていた。

 

 今しかないと、そう思った。

 

「ユウカ、これ」

 

 俺は、懐にしまっていた小箱を取り出して、ユウカへと差し出す。

 

「……センジョウ。これって」

「受け取ってくれ」

 

 ユウカは、俺が差し出したそれを見て、目を丸くしてから、頬をわずかに赤く染める。

 

「……いいの?」

「ああ、……だって、今日は特別な日だろ?」

「そう……ね。うん、そうよね」

 

 おずおずと、ユウカは俺の手からその箱を受け取った。

 

「……開けても、いい?」

「当然。そのために渡したんだぞ」

「じゃ、じゃあ……開ける、わね」

 

 妙に緊張した様子で、ユウカは大きく一度深呼吸をしてから、俺の渡した小箱を両手で丁寧につかみ――。

 

 

 

「……へ?」

 

 

 

「ハッピーバースデー、ユウカ」

 

 俺の渡した――“腕時計”を、受け取った。

 

「……腕時計?」

「ん?ああ、ほら。セミナーの仕事で時間確認大事だろ?折角なら正確で高性能、おしゃれな腕時計を着けてりゃ便利になるかなーと。シックにスマートで、ユウカにぴったりのデザインのやつだぜ?」

「…………」

 

 ユウカは、俺の言葉に対し。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 

 

 感謝するでもなく、涙するでもなく、深く、いやもうそれはありえん深いため息を吐いた。

 

「そうね、そうよね。貴方はそういう人だったわね……」

「な、なんだよ……」

「いや、いいわ。別に、冷静じゃなかった私がいけないから」

 

 「よく考えたら、ちょっと箱大きかったし……」などとぼやきつつ、片方の腕を額に当てながら、呆れた様に首を横に振る。

 

「……わるい、その。プレゼント、とか。選んだことなくて、さ」

「センジョウ?」

「やっぱ、ダメ、だったか?」

 

 ……正直、自身はなかった。

 俺にアクセサリーのセンスがないのはミカに聞いて重々承知だったし、かといって安易なものを送ることは俺が許せなかった。

 だからせめて、邪魔にならない、普段使いのいいものを。とそう思って選んだ。

 だが、これは。これでは――。

 

「バカ」

「いてっ」

 

 俯いていた俺の頭に、ユウカのチョップが突き刺さる。

 

「別にダメなんかじゃないわよ。ありがとう、嬉しいわ」

「で、でも――」

「センスも間も最悪なのは確かだけどね」

「ハイ……」

 

 けどね。と、ユウカは優しい笑顔を浮かべて、俺を見ていた。

 

「私は、貴方が懸命に私の事と思ってくれたっていう、その事実がうれしいの」

「……ユウカ」

「だから、心配しなくていいの」

 

 ユウカは箱を大事にしまうと、俺の手を握る。

 

「ありがとう、センジョウ」

 

 その笑顔は、決して作り物なんかじゃない。それは、俺が一番、よく。知っていた。

 

「……ああ、その。どう、いたしまして」

 

 俺は、そんなユウカの、最高に可愛い笑顔に胸の高鳴りを覚えながら、しどろもどろな返事を返した。

 

 そんな俺を見て、ユウカは静かに俺の傍へと顔を寄せ――、耳元で、小さくつぶやいた。

 

 

 

 「それはそれとして。……私、待ってるからね」

 

 

 

 ――何を、かなんて。聞く必要は、ありはしなかった。






ヒロインに振り回されてるセンジョウを久しぶりに書いて最高に楽しかったです。


ユウカ、お誕生日おめでとう!!
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