青空DAYS   作:Ziz555

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実は自分は、ブルアカ原作のなかでも『先生』って結構好きなキャラなんですよね
この作品でほぼ原作通りの先生が活躍してるのはそんな理由もあったりします。

因みに最推しは守月スズミです。出番が……ねぇ……!!(この作品にもない)


アイ・トラスト・ユー

 

 数日の時が過ぎ、第二次特別学力試験が開かれた。

 

 場所は、ゲヘナのとある廃墟で行われる──予定だった。

 

 該当する廃墟は《運悪く》、何者かのテロ行為に巻き込まれ、爆発による《事故》が発生。

 結果、答案用紙を紛失したことにより、補習授業部のメンバーは、怪我こそ無かったものの、全員が不合格となってしまった。

 

 

 当然、現場に居合わせた先生も爆発の被害を受け、頭に衝撃を受け、気絶。病院へ搬送された。

 

 大事には至らなかった為、意識は翌朝には回復しており、そのまま退院する運びとなった。

 

 

 しかし、当然その知らせはセンジョウの元にも届いていた。

 

 

「オヤジ!!」

"センジョウ?わざわざ来なくても良かったのに"

 

 病院から出てきた先生が最初に見たのは、息を切らせながら自分に駆け寄るセンジョウの姿だった。

 

「テロにあった父親の見舞いぐらい普通に来るだろ……」

"ははは……それじゃあゲヘナだと見舞いラッシュになりそうだね"

「それはゲヘナの治安の問題だろ……というか、いくらゲヘナとは言っても、四六時中爆発沙汰のテロ起きてる訳じゃないだろう」

 

 冗談を返せる様子の先生に、安堵の息をつくセンジョウ。"それもそうだね"と返した先生は、ふと、数日前に偶然会った、ヒナの言葉を思い出す。

 

──別の視点。

 

"なんだか、久しぶりに会った気がするけど、センジョウは大丈夫?"

「大丈夫って、……ミレニアムで上手くやれてるか、ってことか?」

"うん。キヴォトスに来てから、それなりに経つけど、完全に一人で過ごすのって初めてだし、何か困ったこととか"

 

 怪我をしているのは自分だというのに、他人の心配を優先する先生に、センジョウは肩をすくめた。

 

「なんだかんだ楽しくやってるよ。ユズとゲームしたり、エンジニア部のテストモニターやったり、色々してるけど」

"ユウカとは仲良くやれてる?"

「あー……最近ちょっと喧嘩したけど、まあ。いつも通り」

"怒らせるような事をしたらちゃんと謝らないとダメだからね"

 

 センジョウの頭を小突く。

 

「わかってるよ。……オヤジの方はどう?っていっても、テロに巻き込まれたんじゃ……」

"まあ、万事大丈夫!……とは言いがたいかな"

 

 ……センジョウは、先生から見ても視野が広いと感じる瞬間があるし、細かな違和感に気づけるだけの集中力も持ち合わせている。

 自分の見落としを、気づいてくれるだけのセンスがあるし、普段の仕事でそれに助けられていることも事実だ。

 

 だが、今の事情を話してしまえば、間違いなく危険なことにセンジョウを巻き込みかねない。命に関わるかもしれない危険なことに、無理に巻き込む必要は、ない。

 

"……でもまあ、きっと大丈夫だよ。補習授業部のみんなは良い子だし、あの子達なら必ず乗りきれると、私は信じてる"

「…………」

 

 センジョウに要らぬ心配をさせぬよう、努めて笑顔でそう語る。

 

「そっか」

 

 センジョウは、その言葉を聞いて、空を見上げて呟いた。

 

「なあ、オヤジ。俺、すげぇ武器を手に入れたんだ」

"ヒマリが言ってた、自衛手段の事?"

「ああ。まだちょっと使いこなせてないから、練習中だけど、確実にオヤジの度胆を抜くような物だぜ?」

 

 イタズラっぽく笑いかけるセンジョウに、先生もつられて笑顔になる。

 

"そっか、それは実際に見るのが楽しみだな"

「ああ、任せとけって」

 

 自身ありげに笑うセンジョウに、けれど先生は釘を刺す様に続ける。

 

"でもねセンジョウ、忘れちゃダメだよ。……その武器は、誰かを倒すための物じゃない"

「わかってるよ。これは、守るための力だ。傲って、偉ぶって、振りかざして誰かを傷つけるための物なんかじゃない」

 

 センジョウは左腕につけている端末を眺めながら、先生の言葉の先を読む。

 

「だから、これからは俺がオヤジを護るよ」

"…………ありがとう、頼りにしてるよ"

 

 先生は、センジョウの言葉に満足そうな笑みを浮かべる。ああ、この子は、本当に立派に育ってくれた。

 

"じゃあ、私はそろそろ行くよ。みんなを待たせてるからね"

「ああ、気を付けてな。一人で抱え込んで無理はするなよ?」

"お父さんかな?"

 

 トリニティの方面へと歩き出した先生の背中を、手を振りながら、センジョウは見送る。

 

 数歩進むごとに振り返っては、センジョウの顔を心配そうに伺い、センジョウが前を指しては前に向き、またすぐ振り返っては……何て事を、5、6回ほど繰り返した後、先生の姿は見えなくなっていった。

 

 そうして、先生が見えなくなった頃。センジョウは手を下ろし、先生が去っていった道をボンヤリと眺める。

 

「大丈夫、か」

 

 

 

 

────センジョウが黒服から渡された資料には、百合園セイアがアリウスの生徒に襲撃され、『ヘイローを破壊する何らかの手段』を用いて殺害された事実と、その詳細な記録が記載されていた。

 そうして、今となっては情報を集めることすら困難なアリウスについての記録。そして、『スクワッド』という、アリウスに所属する、正体不明の実働部隊に関する情報が記されていた。

 

 どこからそんな情報を入手したのか。何処までが真実で、何処からが虚偽の情報なのか。

 確認する手段もなければ、誰かに相談の出来る内容でもない。

 

 最早、情報の精査の出来る内容ではない。荒唐無稽で、突拍子の無い内容だ。

 あの信用できない男の出任せだと、全てを切り捨てても構わないような、そんな情報。

 

 最早そんなものは情報ですらない。そんなことは、センジョウも理解していた。

 

 

 しかし、それでも。ほんの少しでも、その言葉に真実があれば、先生に危機が迫っているのも事実だった。

 

 

 

 

──そうして、皮肉なことに。その事実を信じさせるだけの状況証拠が、先生の行動に隠されていた。

 

 先生の笑顔は実に良くできていて、生徒なら誰もがその言葉を信じただろう。それに、嘘をついている訳でもなかった。

 だから、これは、家族だからわかる、センジョウだけが気づける、過去の記憶。

 

 

 先生が、センジョウを頼ろうかと悩んだ一瞬。しかしそれでも、彼の安全を考え、その案を切り捨てる刹那。

 

 

 その、違和感が。センジョウの疑念を確信へ変えた。

 

 

「……俺はそんなに頼りないかよ、オヤジ」

 

 

 それが、自分への思いやりだということはわかっている。自分だって、危険なことに大事な人を望んで巻き込む覚悟があるかと言われれば、その時は先生と同じ事を選択するかもしれないという共感。それがあるからこそ、その事実に怒りは覚えない。

 

 ただ、信頼されてない事への絶望。不甲斐ない自分への嫌悪。

 

 

 だが、今の彼は。それでは止まらない。止まれない。

 

 

 あの日とは違った。今の彼のは、力がある。そうして、選べる選択肢がある。

 

 

 失う事への恐怖が、彼の背中を駆り立てる。

 

 

 

 センジョウは、携帯端末を取り出し、とある連絡先を選択する。

 

 それを耳に当てれば、数回のコールの後、通話が接続された。

 

 

『……ご連絡お待ちしておりました』

「お前の望み通りだ。何処まで狙ってる」

『さて……私は、ただ純粋に貴方と先生の安全のために、動いているに他なりません』

「なら、その言葉、約束してもらうぞ」

『……ほう』

 

 

 

 

「契約は受ける。だが、一つ条件を追加する」

「《連邦捜査局シャーレに対する不可侵》」

 

 

 

 

『……それでは、シャーレに属する貴方への補助も行えないのではありませんか?』

「これは俺個人として受ける契約だ。この契約で俺が行う戦闘行為は、シャーレとして行われる物じゃない」

『成る程。詭弁ですが……落とし所としては悪くありません』

 

 それは、自らの退路を断つような行為。しかし、それでも。この危険な契約のリスクを、先生へと関わらせるわけにはならない。

 

 それが、《蒼井センジョウ》としての覚悟だった。

 

『では、書類を再作成しましょう。確認を兼ねて、先日お越しいただいたオフィスへ再度お越しください』

「わかった」

『資料として渡した物から、すこし状況に進展がありました……率直に申し上げると、時間がありません』

「望むならこれからそっちへ向かう」

『ご厚意、痛み入ります』

 

 それだけ聞くと、センジョウは通話を一方的に切り、病院から離れて歩き出す。

 

 

 左腕の端末を操作し、『ヌィル・ヴァーナ』を呼びだすと、オートパイロットモードの大型フロートバイクがセンジョウの前に現れる。

 

 

 数日前にセンジョウがヌィル・ヴァーナを起動したことにより、メインシステムへの干渉が可能となった。そうして、これの解析中に発見された、ヌィル・ヴァーナの変型システムへ手を加えたことで新たに誕生した形態、『ヌィル・ヴァーナ:ビークル』。それがこのフロートバイクの正体だった。

 

 ちなみにBluetoothでイヤホンと連動し、運転しながら音楽が楽しめる。

 

 

 ……こんなSFマシーン。オヤジが見たら大喜びだろうな。なんて、そんな事をおぼろげに思うが。そんな事をしている暇はない。

 

 そんな、平和な日常を護るためにも、自分は地獄への道を選んだのだ。

 

 

 ヘルメットを取り出し、ヌィル・ヴァーナに跨がると、センジョウは目的地へ急ぐ。

 

 

 朝焼けの町を漆黒の鉄機を駆り、走り抜けていけば、目的の場所へはすぐにたどり着いた。

 

 あの日と同じようにエレベーターでビルを上がり、オフィスへと訪れる。

 

「随分とお早い到着ですね」

「優秀な足があるからな」

 

 以前とは違い、太陽の明かりが差し込むオフィスは飲み込まれるような闇に包まれてはいない。

 センジョウは無遠慮に椅子の一つに腰を掛けると、黒服がコーヒーを差し出す。

 

「私はブラックばかり嗜みますから、砂糖やミルクはございませんが、いかがですか?」

「……問題ない」

 

 どうせそこまで長居するつもりもない。そんな些細な要求をする必要も感じなかった。

 

「ここまで早く到着されるとは思っていませんでしたから、契約書も今完成したばかりになります。先日のような持て成しの支度が出来ておらず、申し訳ない」

 

 あの黒い部屋、もしかして趣味なの?何て事を考えながら、センジョウはコーヒーを飲む。

 豊かな香りが広がる。……こちらは、悪い趣味ではないらしい。

 

 黒服は、コピー機から排出された契約書をセンジョウへと手渡し、自らのデスクからいくらかの資料を取り出して席へつく。

 

──契約の内容に異論はない。穴もない。言ってしまえば、先生を護るための私兵契約。先生を護るため以外には、なんの効力もない契約書。……極端な話、この契約があっても、センジョウは黒服になんの制約もなく攻撃を出来るような、そんな内容。

 

「同意いただけますか?」

「問題ねぇよ」

 

 ペンを取り出し、その書類にサインする。……これで、この瞬間から、センジョウと黒服は、先生を護るための協力者となった。

 

「……それでは、ブリーフィングと参りましょう」

「ブリーフィング?……随分癖のある言い方をするな」

「ええ。実はあまり、時間がありませんので」

 

 黒服は資料をテーブルへと広げる。

 

「今回の問題は、その原因が『アリウス』へと集約されます。『エデン条約』の成立阻止。その為に暗躍する者と、それを防ぐための桐藤ナギサの『補習授業部』……それが今回の構造です」

「トリニティ……エデン条約を妨害する裏切り者を牽制するための『補習授業部』。って話だったな」

「ええ。桐藤ナギサの目論みは、半分成功していると言えるでしょう。百合園セイア襲撃の実行犯……白州アズサは、このグループへと組み込まれ、見事に先生の管理下にあります」

「……それで半分なのか?」

「『実行犯』でしかありませんから」

 

 それはつまり、他に警戒するべき相手がいる。ということを意味している。

 

「アリウスと手を組み、百合園セイアを排除し、桐藤ナギサをも排除した時。……果たして、最も得を得るのはどなただと思いますか?」

「そんなの……いろんなやつが……」

 

 そうして、一つの記憶がよみがえる。

 

「────聖園、ミカ」

「ええ、その通りです。ティーパーティー最後の一人。そして、白州アズサをトリニティへ招き入れた張本人でもあります」

 

 センジョウは、彼女と交わした会話を思い出す。まるで、こちらを探るような言葉、『味方』という単語。……全てに、裏があるように見えてしまう。

 

「聖園ミカは、ゲヘナ嫌いと聞きます。エデン条約を妨害する理由としては弱いですが……矛盾はしません。彼女は、アリウスと共同し、桐藤ナギサを排除し、トリニティを思うように変えるつもりなのかもしれません」

「つまり、警戒するべき相手は聖園ミカということか」

「理想としては、彼女ではなくアリウスその物を叩くべきですが……我々の戦力ではそれは不可能でしょう」

「だけど、相手はトリニティのトップだ。下手にこっちから手を出せば立場が悪くなるだけだぞ」

 

 証拠を提示しようにも、それができるなら現状にはなっていない。つまり、今の『聖園ミカ』に対して有効打は存在しない。

 

「ええ。ですから、我々が狙うは一つ……迎撃戦です」

「現場を押さえるのか」

「恐らく、桐藤ナギサへの襲撃を行う瞬間にはアリウスを率いつつ、疑心暗鬼の桐藤ナギサを捉えるために自身を囮とするでしょう。そこを叩くのです」

「白州アズサは……必要ないか」

「ええ、彼女には先生がついています。彼女が敵に回ることは考えなくても良いでしょう」

 

 奇しくも、両者の見解は一致していた。根拠は違えど、この場に先生と生徒の関係を疑う存在はいない。

 ……話を戻せば。いくらミカが不可侵とはいえ、現場を押さえてしまえばいくらティーパーティーとは言え、その地位は意味を成さないだろう。

 

「……決行はいつだ」

「桐藤ナギサの護衛が薄くなり、最も油断する可能性の高い日に実行すると考えるのが自然です」

 

 

「つまり」

 

 

 

「……第三次特別学力試験。その機会を狙ってくるでしょう」

 

 

 

 

 

────それぞれの決戦の日は、近い。




「私たちのチーム名、実は考えていまして」
「なんだそりゃ……要らねぇだろ」
「クックックッ……名前というのは存外、侮れません。その存在を定義するものでもありますから」
「……じゃあ、言ってみろよ」
「『先生親衛隊』なんていかがでしょう」
「却下」
「クックックッ……」(意気消沈)
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