青空DAYS   作:Ziz555

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投稿時間とか考えた方がみんな読みやすいと思うんですよ。

でもそこまで気が回らんのですね。

自分が楽しいので


エマージェンシー・デストロイヤー

──システム、正常に作動。

 

──ジェネレータ稼働率、100%。

 

──機体損耗率、7%。動作に影響無し。

 

 

──バイタル安定。人体負荷計算終了。

 

 

──『最大稼働』終了まで、残り300秒。

 

 

 頭に直接、情報が流れ込んでくる。

 

 透き通るように頭が冴えて、まるで、自分が透明になったような感覚。

 

 

────気分がいい。今なら、どこまでも飛べそうだ。

 

 ヌィル・ヴァーナと、自分の身体の境目が希薄になっているのを感じる。悪くない気分だった。

 

 

「3分で終わらせる」

 

 

 宣言ではない。これは、確定事項だ。

 

「また大口叩いて、恥をかいても知らない──」

 

 目の前の敵が口を開いているが、待ってやる義理もない。

 

 体を前に、進ませる。

 

 

 

 次の瞬間。ミカの身体は宙を舞っていた。

 

 

 

「(…………へ?)」

 

 

 ミカは一瞬、何が起きたのかの理解ができなかった。何も見えなかった。ただわかるのは、自分の左半身からくる激痛と、自分が凄まじい力で吹き飛ばされた事だけだ。

 

 次の瞬間にはグラウンドの地面に叩きつられ、天と地が目まぐるしく入れ替わる。そこではじめて、自分が屋根から叩き落とされたことを理解した。

 

 地面を転がりながら、腕を使って身体を跳ね起こし、地面を足を立てて勢いを殺す。

 

 自分が飛んできた方向を見れば、そこには脚部を上げて、蹴りの残心をしているセンジョウの姿があった。

 

 

「(蹴り飛ばされたの?一瞬で?)」

 

 

 思考を巡らせる。あり得ない、さっきまでとはまるで何もかもが違う。なにかが、起きている。

 

 次の瞬間、センジョウの姿がブレる。

 

「こっちだ」

 

 背後の声に振り返れば、そこにセンジョウがいた。

 

「やっば……い!」

 

 ミカは本能的な危機感に、それまでの滑らかな回避とは違い、大地を転げ回るようにしてその場から身を動かした。

 

 振り下ろされたヌィル・ヴァーナのアームが大地へ振り下ろされ、凄まじい風圧と衝撃を伴う。

 

 

 速度も、威力も、先程までとは比べ物にならない。

 たかが、見た目が変わっただけで。何がこんなに変わるのか。ミカは、その変化に恐怖すら覚える。

 

 

 対して、センジョウの心は無気味なまでに穏やかだった。

 

 『調整剤』の効果により、ヌィル・ヴァーナとの同調率が限りなく100%……つまり、完全な同一化へと近づいたことにより、センジョウの脳内には、ヌィル・ヴァーナの全てが流れ込んできていた。

 

 武器を搭載したマニピュレーターは、自らの腕のように動く。足も同じだ。脚部裏にある、移動用のパルスフィールド装置でさえ、指先のひとつを動かすように繊細に出力を動かせる。背中にあるバーニアは、自分に翼がないのが嘘のように、空を飛ぶ感覚を自分に与えてくれる。

 

 それに加えて、ヌィル・ヴァーナの見せる戦況予測は、センジョウから得られる情報の制度が上がることで、数秒程度の先を見せる『未来予知』の領域に至っている。

 

 

───自由だ。

 

 

 肉体が精神の檻である。等という考えを信じているわけではないが。それでも、普段の自分の身体がどれだけ不自由なのかを感じてしまう。

 

 だが、だからこそ。

 

 

「……へぇ。やっぱり、その力はダメな感じなんだ。そうだよね、そんなズル。ありえないもん」

「お前を倒すには十分だ」

 

 ……バイザーから、そして、鼻からボタボタと血を流すセンジョウを見て、ミカは確信する。

 

 外傷によるものではない。身体が、ヌィル・ヴァーナのもたらす負荷に耐えきれていない証拠だ。

 

 3分という宣言は、勝ちを確信したものではない。自分の戦える限界時間なのだと。

 

 そう、誤認した。

 

 

「続けるぞ」

 

 

 センジョウは再び、バーニアを吹かし、加速する。

 

 グラウンドへミカを叩き込んだのは、『逃げ場を与えないため』だ。

 

 

 脚部パルスフィールドの出力を変化させ宙を蹴り、バーニアで加速と急制動を繰り返し、縦横無尽に、不規則な軌道を描いて、単独でミカを包囲する。

 

 

「今度はちょっと……気合い入りすぎだとおもうな!」

 

 

 ミカは動きを予測し、センジョウが足を止めた一瞬を狙って引き金を引く。

 だが、弾丸がそこへ届く頃には、もうそこにセンジョウはいない。

 

 

 センジョウは高速機動を維持しつつ、腕部マシンガンをミカへ向けて掃射する。

 

 

 不規則な軌道を描く弾幕を、ミカも必死に避けようと身体を捻るが、回避した先には既に次の弾丸が打ち込まれている。

 

 

 一発一発のダメージはさほど大きくなくとも、痛いものは痛い。そして、痛みは集中を削ぎ落としていく。

 

「女の子にこんなことして……!」

 

 そんな悪態を受けるが、それでもセンジョウは無慈悲に弾丸を浴びせ続ける。

 

 

 だが、それだけで勝てるほど、ミカは甘くない。

 

 

──両腕武器、残弾0。パージします。

 

 

 ミカの体力と精神力がつきるより先に、センジョウの武装の弾丸が尽きる。

 グラウンドへ落下する武装を見て、ミカは笑顔を浮かべる。

 

「ようやく弾切れみたいだね、それじゃあ次は……」

 

 弾丸がなくなったならば、残っているヌィル・ヴァーナの武装は一つしかない。

 それに、これほどの高速機動が肉体に負荷をかけない訳がない。

 

 つまり、相手の行動は一つしかない。

 

 

 ミカの予想通り、センジョウはバーニアを吹かし、真っ正面から突撃を仕掛ける。

 

 銃撃が通用しないとしても。確かに肉弾戦の一撃は通じていた。

 

 そんな相手が、真っ正面から突っ込んできていた。なら、その速さも上乗せして、迎撃してやればいい。

 

 

 そう考え、ミカは拳を突き出した。

 

 

「悪いが、その拳は届かない」

 

 

 ……それすら、見えてる結果だった。

 

「……あはっ。ちょっと不公平すぎない?」

 

 ミカの拳は、パルスフィールドに止められ、センジョウへ届くことはなかった。

 

 ジェネレータの出力が上がれば、防壁の強度も上がる。考えれば、当然の思考。

 

 センジョウが倒せもしないミカを相手に銃弾を撃ち続けたのは、思考を奪うための策だった。

 そこまで含めての、『3分』。

 

 センジョウは、ミカの頭をマニピュレーターで逃さぬように掴む。

 

「……っ!?」

「終わりだ」

 

 全身のブースターと、ジェネレータの余剰エネルギーでさえ、その全てを推力へと変換して、加速する。

 

「う……ぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」

 

 速さだけではなく、全力の一撃を込めて、前へ進む。加速する。何よりも速く。

 

「俺のォ!!」

 

 そうして、その勢いのまま、ミカを壁へと叩きつけた。

 

「勝ちだァ!!」

 

 圧倒的な速度と質量を伴った突撃は、壁を容易く粉砕し、ミカをその建物の内へと叩き込む。

 

 勢いは止まらず、何度が床をバウンドしたミカの身体は、そのまま対面の壁に叩きつけられ、そのまま倒れ伏す。

 

「……痛いなぁ……。全身、ぼろぼろだし、指一本動けないや……」

「……」

 

──敵戦力の沈黙を確認。『最大稼働』を終了します。

 

 ヌィル・ヴァーナのジェネレータは稼働を落とし。赤熱していた装甲は排熱を伴い、本来の黒い色を取り戻していた。

 

 だが。

 

「ダサいなぁ……なんで勝者のキミもそんなにボロボロになってるの?」

「むしろなんでお前はそんなに余裕そうなんだよ……」

 

 バイザーを非戦闘マウントにすると、センジョウの素顔は、血と汗でぐちゃぐちゃだった。

 

 だが、確かに。それでも勝者はセンジョウで、敗者はミカだった。

 

「……ここまでだ、聖園ミカ」

「あーあ、まさか、本当にキミに負けるなんてなぁ」

 

 そんなことを言うミカの言葉には、どこか清々しさのような物を感じた。

 ……彼女にも、何か思うところが有ったのだろうか。センジョウも、悪意を感じた訳ではない。だが、それでも罪は罪だ。

 

「……お前には、まだ聞きたいことがある。悪いが、オヤジから許可を得て正式に拘束するまでは……」

"やっぱり、ここだったんだね"

 

 声が響く。

 

 ミカとセンジョウがそちらを向けば、先生がこちらへ歩いてきていた。

 

「オヤジ。勝ったぜ、それで、ミカの今後なんだが……」

 

 語りかけるセンジョウを無視して、先生はミカへと駆け寄る。

 

「────え?」

"ミカ、大丈夫?"

 

 ミカへ寄り添い、傷のようすをうかがう先生に、ミカも目を見開く。

 

「え、あれ?なんで、どうしたの先生?」

"どうしたも何も、こんなに傷だらけの生徒を心配するのは当然だよ"

「で、でも。だって、私は先生を騙して、傷つけようとして」

「そ、そうだ。だから、俺は、オヤジを守るために」

"センジョウ"

 

 先生は、振り返り、センジョウを『睨み付ける』。

 

"少し黙ってて"

「……!?」

 

 明らかな怒りがそこには滲んでいた。

 

「ど、どうしたんだよオヤジ……?何をそんな怒ってるんだよ」

"なにを?"

 

 そんなこともわからないのか。とでもいいたげな様子で、センジョウを見ることもなく、ただ的確にミカの応急処置を始める。

 

"キミは、守るべき生徒を傷付けておいて。なんで嬉しそうなんだい"

「なんでって……俺は、オヤジを守って」

"私は、生徒の味方だよ"

 

 それは、つまり。

 

 

 

"生徒を傷付けるなら、センジョウだとしても私は許さない"

 

 

 

「……わーお」

 

 

 ミカは、その言葉に目を見開き、センジョウは、言葉を失う。

 

 

 

「嘘だよな……オヤジ。だって、俺は、オヤジのために」

 

 うわ言のように、震える声で問いかける。

 

"頼んでもいないことを勝手にやって、誉めてもらえると思ってるの?"

 

 突き放すように、冷たく応える。

 

「……っ!?」

"勝手な真似で、他人を傷付けて、自分も危険に晒して。……そんな子に育てた覚えはないよ"

「育、てた……?」

 

 

 

 

 その言葉に。センジョウは自分の何かが切れるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるな!育てた?あんたが?俺を!?」

 

「俺がどうして、あんたに拘るのか!どうやってここに来たのか、あんたは何も知らない!!」

 

 塞き止めていた感情が、濁流となって溢れ出す。

 

「姉さんが死んだとき!あんたはなにもしなかった!仕事が忙しかった?俺と家庭を守るために?違うだろ!!」

 

「逃げたんだ!あんたは!弱っていくだけの姉さんを見ていられなかったから!」

 

「今回だってそうだ!守るふりをして!理由をつけて!自分から遠ざけて!目を逸らして!自分で背負い込んだつもりになって見逃して!」

 

 声が裏返り、喉が張り裂けそうになる。

 

「俺は!それでも!姉さんが愛して、信じた、兄さんを!託されたから!不甲斐ないあんたを、一人にさせないために!俺は!!」

 

 それでも、センジョウは。

 

「どうしてあんたが……!!!!兄さんが!!!俺を!!!」

 

 

 

 

 

"センジョウ"

 

 

 

 

 

 

"しばらく、シャーレから離れなさい"

 

 

 

 

 

 

 息を飲む。

 

 呼吸ができない。

 

 今、目の前の男は、なんと言った……?

 

 

 

 

 

 

「────あんたまで、俺を捨てるのか」

 

 

 

 

 

 

 思わず、センジョウはその場から逃げるように走り出した。

 

 

 

 

 今は。もう、とにかく。

 

 

 

 

 逃げたかった。

 






その後、シスターフッドへミカの身柄を預けた先生は、ヒフミ達をつれて、試験会場へ向かいます。

めでたしめでたし
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