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トリニティの医務室で目を覚ました、ツルギとハスミの前に、センジョウは立っていた。
「貴方は、たしか……」
「蒼井センジョウ。シャーレの2代目」
「あ゛ぁぁん……?」
2代目という言葉に、怪訝そうな呻き声を上げるツルギ。
「父さんは今はまだ寝てる。だから、俺が引き継いだ」
疑問に端的な答えを返すと、二人の表情が曇る。自分達では、先生を護れなかったと言う事実に、ショックを受けるなという方が無理だろう。
「……それで、先生の息子である貴方が。何をしに此処へ来たのですか?」
ハスミの問いに、センジョウは頭を下げる。
「俺に力を貸してくれ」
「力、ですか……?」
センジョウは、頭を一度上げて。二人の顔を見る。
「父さんも、俺も。まだなにも諦めてない。だから、俺は父さんにみんなの事を託された」
と、そこまで言って、センジョウはビミョーな表情へ変わる。
「……と、格好つけたはいいんだけど。ほら、俺って別に父さん程顔が知られてる訳でもないだろ?」
なんともまあ、締まらない表情で、情けない言葉を続ける。
「となると、この混乱状況でトリニティとゲヘナの抗争なんて起きたら詰むのに、俺が呼び掛けても止まらん訳で……」
「ああ……」
センジョウの弱気な発言の意味と、『力を貸してほしい』という言葉の真意を悟る。
「つまり、代わりに私達に呼び掛けてほしいと」
「端的に言えばそうなる」
だから。と、センジョウは再び頭を下げる。
「俺一人じゃ、なにもできない。だから、頼む」
深く、深く。ただ、真摯に言葉と思いを形にする。
今の彼にできることは、それだけだ。
「……悪くない」
「ええ、そうですねツルギ。……私たちの未来を託す相手としては、及第点はあります」
先生と比べたら、頼りなく、不甲斐なく、安心なんてこれっぽっちもできないが。それでも。
「わかりました。トリニティは私達が纏めます」
「本当か……!」
この男が、今、もっもとも真剣に、『明日』の事を考えていることは、二人にも理解できた。
「しかし、トリニティはともかく……ゲヘナは私達ではどうにもできません。それに、話が通じるかどうか……」
「そこはもう大丈夫」
頭を上げたセンジョウは、小さく笑みを浮かべながら、ハスミに答える。
「頼れる仲間に、託してきた」
とある医務室で、怪我の治療を済ませた風紀委員の面々は、その場にいないヒナの事を案じた時、件の相手から連絡がきていることに気づく。
「い、委員長!?今どちらにいらっしゃるのですか!?」
『アコ、出るのが遅い』
質問より先にダメ出しをされ、言葉につまるアコ。
『……今は少し、用事を済ませてる』
「用事って……、今のこの状況でそんなに優先しなければならない用事なんてあるんですか?」
『ある。私も、託されたから』
普段とは違う言い回しに、アコは疑問符を浮かべる。
『とにかく、私が戻るまで、もう少しかかるから』
「え、本当に今どちらに!?」
『そこにイオリとチナツは?』
「いるよ、委員長」
「はい、私も」
アコを押し退けるようにして、二人は端末のカメラに顔を写す。グイグイと押されるアコが呻き声を上げているが、まあそれはよしとしよう。
『……私が戻るまで。3人で頑張ってね』
それだけ言葉を残して、プツリと通信が切れる。
「……ねぇ、アコちゃん。なんか委員長変じゃなかった?」
「イオリもそう思いますか?」
「そう言う話は退いてからにしてください!!!」
「もうちょっと応援とかしてあげてもよかったんじゃないかなぁ?おじさん、あの子達の苦労を考えると少し心配だよ~」
「大丈夫よ。貴方達を送り届けたらすぐに戻るし……信頼できる仲間だもの」
「……うへぇ。風紀委員長ちゃん、ちょっと変わった?」
「そうかもね」
──少しずつ、想いが広がっていく。
先生から託された願いが、想いが、センジョウの手を離れ、キヴォトス全体へと、静かに、だが確かに。広まって行く。
「……誰かのためにという想いが、繋がって、広がって、大きくなっていく。こんな、こんなことが」
「ね?大丈夫だったでしょ?」
夢の中で、その光景を見ているセイアと先生は、その光景にそれぞれの想いを馳せる。
「……先生は、こうなることを知っていたのか?『蒼井センジョウ』という少年が、これほどの力を持っていると、知っていたのか?」
「うーん。……ちょっと違うかな」
知っていた。と言うよりは。
「信じてたから。……センジョウを」
今もまだ、託された物を繋ぐために世界を走る彼の姿を、先生は暖かい目で見守る。
「信じすぎて、見えなくなって、甘えちゃった事もあるけど。それでもやっぱり。センジョウは私なんかよりずっと強い子だよ」
「……ただ、信じる」
「水着も、下着だと思えば下着だから」
「水……は?」
先生の言葉に、混乱するセイア。
「……センジョウは、私の本当の息子じゃない。本当の弟でもない、本当の家族でもない。言ってしまえば、殆ど無関係で、だから、一人の生徒でしかない」
だから、悩んでしまった。考えてしまった。疑ってしまった。自分達の関係を。……見失っていた。
「それでも、センジョウは私の事を父と呼び、兄と慕う。……だから、血なんて繋がりはなくても、そこにあるのは、ただの偽物の繋がりでも」
「私達は、確かに家族だから」
そして、それを護り、繋げ。
他人だった私とキョウカを繋げたのは。
「……頑張れ。センジョウ」
君にはきっと。想いを繋げる力がある。
「なんとか、なりそうだな」
キヴォトス中を走り回り、託された欠片を、一つ一つ拾い上げてきたセンジョウは、最後に、トリニティの正門の前に立っていた。
最後の欠片を、受けとるために。
「…………センジョウ、さん」
振り替えると、そこには3人の少女が立っていた。
先頭に立つ少女……ヒフミが口を開く。
「アズサちゃんが……戦っています。まだ、一人でずっと」
悲壮な叫びを、言葉に変えて、想いを形にする。
「居場所が違うんだって言われて。私、なにもわからなくなっちゃって」
足りないものを。誰かに求める。
「こんな大変なことになっちゃって。先生だってまだ起きなくて、そうしたら、普通の学生の私に出来ることなんて」
それでも、少女は。
「どうすれば、アズサちゃんを……私は」
……願いは、終わらない。
「それでも!ほっとけないでしょ!!」
ヒフミの思いに、コハルが共鳴する。
「立場なんて関係ない!私は知ってる、置いていかれることとか、一人でいることの寂しさと、悲しさを。それを知ってるのに、アズサを一人になんてしていられない!」
方法なんてわからなくても。それでもと言い続ける。
「はい。そう言うのは、寂しいですからね」
誰かのために願うから、想いは強くなる。
そんな彼女達のために、センジョウは口を開く。
「これまでは、父さんが君達の道を指し示してくれていた」
それは、先生として。先に生まれ、生きるものとして。
「だけど、俺にそんな力はない。俺は、君達とそう変わらない」
蒼井センジョウは、『先生』という立場に立ったとしても、彼の父のように、歩き方を見せる事や、正しい道を指し示すことはできない。
しかし、それでも。
「それでも。俺は君達の力になる。君達が求める『未来』のために、一緒に方法を探して、道を探して、一緒に戦うよ」
『
「だから、君達が望むなら。俺は君達の進む道を切り開く」
一歩先を。誰より険しいその道を。共に歩む仲間のために。
「君達は、どうしたい?」
答えは、知っている。それでも、センジョウは彼女達に問いかける。
「……私は、諦めません。先生から教わりました。諦めなければ、きっと『
「私は……アズサちゃんを助けに行きます!会って、そして、今度こそちゃんと全部伝えるんです!」
「うん。友達を、た、助けに行かないと……!」
決意を言葉にする二人をみて、満足げに笑うセンジョウとハナコ。
「言いたいことは、ちゃんと言葉にしないと。ですよね、センジョウさん?」
「うぐっ……急に刺してくるなぁ!」
ハナコのキラーパスにセンジョウは苦悶の表情を浮かべ、胸を押さえる。
「あはは……そうですね、センジョウさんをみてると、本当そう思います……」
「私もちょっと……」
「やめろぉ!可哀想なものをみる目で俺をみるんじゃない!!前をみなさい前をォ!」
ブンブンと手をふり、視線を遮ろうと狼狽えるセンジョウに、その場にいた3人は笑顔をこぼす。
……笑えるなら。きっともう大丈夫だろう。
「それじゃ、先に向かっててくれ」
「この流れで私達だけで行かせるの!?」
コハルの驚きに、センジョウは苦笑を浮かべる。彼女の文句もごもっともだが……。
「悪い。最後に行かなきゃ行けない場所があって……」
「そうなんですか……?」
「まあ、これはちょっと、俺の私情な部分が大きいんだが……」
気まずそうなセンジョウ。そんなんだから格好がつかないんだよお前。
しかし、それでも。
「……前に進むために、ケリをつけなきゃいけない事がある」
それは、託された物ではないが。
前に進むなら、見ないふりはできない。
「すぐに追い付く。先に向かっててくれ」
センジョウは、彼女達へ背を向けて歩きだす。
此処から先は、センジョウの都合の話だ。
ヌィル・ヴァーナを走らせたセンジョウがたどり着いた先は、暗がりに潜む、例のオフィス。
普通に考えれば、拠点を掴ませないために、もう移転しているだろうが……センジョウには、確信があった。
「やっぱ、まだいるよな」
「ええ。お待ちしておりましたよ……『先生』」
センジョウは、自分の因縁との決着のために、三度。深淵の淵へ立つ。
「先生呼びとは、事情は知ってるって事か」
「ええ、まあ。私は貴方達のファンですので」
オフィスは、初めて訪れた時のように、闇に包まれ、黒服の座るテーブルだけが明るく照らされていた。
「……席へどうぞ」
「いや、遠慮しよう。長居するつもりはない」
あの時とは違い、席へはつかない。立ったまま、黒服を見下ろすままに言葉を交わす。
「『調整剤』を寄越せ」
端的に、目的を伝えれば、黒服は大きく口を歪めて笑う。
「随分な横暴ですね。確かにご用意はございますが……」
黒服は首を横にふる。
「結果はお聞きしております。『コレ』は失敗作です」
懐から取り出した、ケースにしまわれた『ソレ』を、黒服はカラカラと振る。
「肉体への負担が大きすぎる。これをそう連続で投与し続ければ、間違いなく、貴方は悲惨な末路を辿る」
それは、私の望む結果ではない。と、ケースをテーブルの上へ置く。
「それに、私は契約で『シャーレ』への干渉が不可能です。……つまり、『先生』となった貴方への干渉を行うことは不可能。……詭弁を用いた、見事な逃走経路です」
だから、渡すことはできない。と、黒服はそう言葉を結んだ。
しかし。センジョウは引き下がらない。
この先の戦いに、『切り札』は必要だ。
「違うな。間違っているぞ黒服」
そうしてセンジョウは、一枚の紙を取り出す。
「……ほう」
それは、『契約書』ではなく、黒服の用意した『宣誓書』。……『調整剤』に関する、一方的な宣言。
「俺が調整剤を用いた戦闘の結果。事態は悪化し、戦力が不足している。故に、お前にはその補填の義務がある」
「……つまり、その『補填』が」
「ソレだ」
センジョウは、テーブルに置かれた『調整剤』を指し示す。
「……言葉巧みに意味を歪め、一方的に巻き上げる……随分、『大人』のやり方がお上手になった」
「誰かさんに死ぬほど高い授業料を払ったからな」
黒服は、調整剤のケースをつかみ、センジョウへと投げつける。
センジョウはそれをつかみとると、スーツへと納める。
「では。今回のソレは私からの誕生日祝いとして差し上げます……是非とも、有益にお使いください」
「そこまで調べ上げてるのか……キモいなお前」
「クックックッ……」
シンプルな罵倒に、黒服は静かに笑う。
目的の物は手に入れた。やられた分にはほど遠いが、まあやり返すことも出来たので、良しとしよう。
それに、今の自分に必要なのは、この結果だ。
センジョウは血濡れたコートを翻し、黒服のオフィスを、後にする。
しまり行くドア越しに。
「『じゃあな』黒服」
と伝え。
「ええ、『また』お会いしましょう」
そう返された。
────全ての欠片は、ここに集まった。
全ての思いと願いを背負い、彼は、決戦の場へと向かう。
好きなロボットアニメの要素詰め込みすぎたかもしれねぇ……
別にクロスオーバーとかではなくて、ポロっとフレーズがこぼれちゃうんですよね。
グレンラガンとガンダムUCは意図的、というかそこの命題の流れ汲んでる作品なので意図的ですが。