青空DAYS   作:Ziz555

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るんるーん


イン・トゥ・ザ・スカイ<Blue-sky-Archive>

 

 古聖堂跡。そこにはアズサはいた。

 

 たった一人で、スクワッドと対峙する。……かつて、共に歩んだ家族を。敵に回しても。

 例え、人殺しの宿命を背負おうとも。

 

────彼女には、護りたい世界があった。

 

 悲痛なまでの想いと願いを武器に、彼女は虚無と言う絶望に立ち向かう。

 

 

 だが、それでも。彼女はサオリに、敵わない。

 

 冷たい雨のなか、ふと、足の力が抜ける。

 

 ぐらり、と姿勢を崩した彼女が倒れそうになる時……

 

 

 

 そこには、友の支えがあった。

 

 

 

 いるはずのない彼女の姿に、アズサは目を見開き、驚く。

 

「ヒフミ……、どうして、来たんだ……此処は、君の来るところじゃない」

「そんなこと、ありません。私は、アズサちゃんを……友達を助けに来たんです」

 

 それは、当然の事だと。ヒフミは断言する。

 

「それに、アズサちゃんは、私が普通の学生だから、すむ世界が違うって言うけれど……そんなことはないんです!」

 

 そう言って、鞄から紙袋を取り出し。覆面のように頭から被る。

 

「私は、覆面水着団のリーダー……ファウストです!ブラックマーケットにその名を轟かす、強盗団のリーダーなんです!」

「ひ、ヒフミ……?」

「だから!私達のすむ世界が違うなんてことは、無いんです!」

 

 一歩。ヒフミが歩み寄る。

 

「私は、アズサちゃんのそばにいます!」

 

 想いも、言葉に、形にする。

 

「こうして、隣で、すぐに触れる場所にいるんです!」

 

 だから、貴方は一人ではないと、そう伝えるために。

 

「……ありがとう、ヒフミ。けれど……そんな嘘をついたところで────」

 

 しかしそれでも。あと一歩、言葉は彼女に届かない。……それは、アズサの決意の固さ、絶望の現実味が、ヒフミを巻き込むまいと、聞き入れる事を拒絶する。

 

────だから、そのために。彼は託され、託したものに、力を借りる。

 

 

「何が嘘だって?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス対策委員会が、友のために一芝居を打っている、少し後方に彼らは立っていた。

 

「なんとか、間に合ったわね」

「……悪いな。助かった」

 

 アビドスのメンバーを此処へつれてきた張本人……ヒナは、センジョウの礼に溜め息を返す。

 

「親の日記を勝手に持ち出して、秘密を無理やり共有させて。『助っ人を説得してくれ』、なんて。本当に悪い事を託してくれたものね」

 

 ヒナは、懐から『先生』の日記を取り出し、それをセンジョウへと返した。

 

「だから謝ってるんだって。……俺が本当なら直接行って、頭下げるべきだったんだろうけど、そんな時間は無かったし」

 

 かといって、片手間に連絡しても信じて貰える自信もなかったのも事実だ。

 

 『覆面水着団』の繋がりは、センジョウの知るところではない。それは、彼の父の記録から見つけた、借り物にすぎない。

 

 アビドス対策委員会とは、顔の面識はあっても、さして親しいわけでもなく。父の名前を振りかざすだけのやり取りで力を貸りたとしても、それは互いにとって望むところではないだろう。

 

 そこで、センジョウはこれまた父親の日記からみつけた、『アビドスとゲヘナ風紀委員』の因縁に眼を付け、ヒナを頼ることにした……と言う訳だった。

 

「私があのまま立ち直らなかったらどうするつもりだったの?」

「まあ、それはその時考えてたさ」

 

 考え無しなのか、それとも、自分が立ち直ることを信頼しきっていたのか。どちらとも取れる態度に、ヒナは白い眼差しを向ける。

 それに気づいたセンジョウは、気まずそうな顔をする。

 

「……まあ、良いけど。コレで貸し2つね」

「わかっ……2つ???なんか一つ多くない???」

 

 身に覚えのない『貸し』に、センジョウが慌てる姿を見て……、想像はついていたが、やっぱりそれを見たヒナはクスクスと笑う。

 

「初めてあった時に、私の事を嵌めてビルから落としたのは誰だったかしら?」

「あっ」

 

 忘れてた。とでも言わんばかりの間抜けな表情を浮かべるセンジョウ。しかし、忘れていたのであれば、それも埋め合わせを要求するべきか。

 

「じゃあ、忘れてた事とあわせて貸し3つ。必ず返して貰うから」

「……ぜ、善処します……」

 

 いつの間にか増えていた自身の負債に、顔を青くしながら、センジョウはヒナをみる。

 

「それじゃ、私は私の場所に戻るから……後は、任せる」

「ああ。ありがとうな」

 

 そうして、自身の居場所……ゲヘナの風紀委員の元へと去っていくヒナの背中を見送る。

 

 

────ヒフミ達のほうを見れば、彼女が正に、自分の想いを。願いを、世界に向けて宣言せんとする姿が目に映る。

 

 

 それは、彼女達の物語。夢と、希望のつまった、青春の日々(ブルーアーカイブ)

 

 

 それが。それこそが、センジョウが父から託された物語の形。これから、センジョウが共に歩む物語。

 

 

 それは時に暗く、寒く、闇に覆われる時もあるだろう。

 けれどそれでも、いつかは光輝く日々が来る。

 

 やまない雨は無い様に。

 天気のように移り変わる、『空色の日々』。

 

 

 

 彼女の願いが届いた、今の空に広がる、美しい『蒼』に、応えるために。

 

 

 そっと、彼女達の前へ進み出ると、世界へ向けて、高らかにつげる。

 

 

 

 

「────今ここに宣言する」

 

 

 

 

 

 それは、未来への宣誓。決意の表明。

 

 託された、責務を果たそう。

 

 

 

 

「俺達が、新しいエデン条約機構(ETO)

 

 

 

 

 例えそれが、どんなに険しい道であっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは、このやり方は……」

 

 セイアは、その姿に驚きと、……ほんの少しの、恐怖を覗かせる。

 

「……条約の内容を、曲解し、歪曲させ、望んだ通りの結果を引き出す。それは、間違いなく『大人』のやり方だ」

 

 それを、『蒼井センジョウ』という、『少年』が成し遂げる。

 

 その事の意味を。セイアは理解している。

 

 彼はまだ、子供だ。子供であるはずなのだ。だが、それでも。託された希望に応えるように、望みに応じるように。成し遂げた。

 

「……彼はもう、子供には戻れない」

 

 それは、彼に託された『業』。

 彼が望んで、受けとることを選択した『呪い』。

 

 しかし、それでも。

 

「…………」

 

 彼は。ただ、センジョウを信じる。

 他の誰でもない、センジョウの信じた、センジョウ自身の未来を。信じ続ける。

 

「頑張れ。センジョウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……奇跡?そんな筈……!」

 

 ──センジョウが成しとげた、『新たなエデン条約』により、アリウススクワッドに従っていた『ユスティナ聖徒会』の複製は安定を失い、その存在がぶれ始める。

 

「ど、どうなってるんでしょう……?」

「戒律が……歪められた?……だって、彼は、取るに足らない未熟な子供の筈……」

 

 予想外の展開に狼狽えるミサキとヒヨリ。

 しかし、そんな中で、サオリだけが、震える拳を握りしめていた。

 

「ふざけるな!ハッピーエンドだと?そんな都合の良い世界があるはずがない!!」

 

────悲劇を、嘆きを、悲しみを。それが、世界の全てだと教えられていたサオリにとって、その宣言は、その言葉は。これ以上無い侮蔑だった。

 

 故に、怒り狂い、感情を露にする。

 

「世界は不条理で満ちている!不公平で満ちている!だから、世界に憎しみは尽きない!終わらない!無くならない!!」

 

 それは、彼女の知る真実。

 

 いや、それこそが世界の真実なのかもしれない。

 

「……確かに。世界は、こんなにも思い通りにならない」

「ならば、何故!!」

 

 サオリは、目の前に立つ、大人ぶった理想論者に、怒りの全てをぶつける。

 

「けれど、それでも。その誰もが、『より良い明日(ハッピーエンド)』を願うなら。明日はきっと、今日より少しだけ、良い日になる筈だから」

 

 だから、例えそれが、ほんの少しでも前に進むなら。

 

「俺は──俺達は諦めない」

 

 それが、託された者にできる、託した者への最大の敬意だから。

 彼は───進み続ける。

 

 

 

「来い!ヌィル・ヴァーナ!!」

 

 

 

 センジョウの声に応え、ヌィル・ヴァーナが天より降り立つ。

 

 

「センジョウさん」

「センジョウ」

 

 ヒフミとアズサが、センジョウの隣に立つ。

 

「センジョウくん」

「センジョウ」

 

 ハナコとコハルが、少し後ろで決意を固める。

 

「……行くぞ、アリウススクワッド。もうこれ以上、何も……奪わせない!!」

 

 ヌィル・ヴァーナの炉に火が入り、センジョウは武器を構える。

 それは倒すためではない。明日を掴むために。今、戦う為に。

 

「良いだろう……正面から叩き潰し、絶望を教えてやる!」

「……やるんだね、リーダー」

「痛いことが続くんですね……みんな、これからもっと痛い思いをすることになるなんて……」

 

 サオリの号令と共に、ユスティナ聖徒会が、古聖堂を中心に、一気に出現する。

 

 だが、センジョウ達には、共に戦う仲間達がいる。

 

 正義実現委員会、ゲヘナ風紀委員、アビドス対策委員会。

 

 その全てが。みんなが、『より良い明日(ハッピーエンド)』を目指し、信じていていた。

 

 

 

 

 

 先陣を切ったのは、センジョウだった。

 

 ユスティナ聖徒会の銃撃を、パルスフィールドで受け止め、銃撃ではなく、左腕に搭載された近接武装……『パルスブレード』でなぎ払う。

 

 波形によって形成されたブレードは、岩盤すら容易く切り裂く破壊力を持ってユスティナ聖徒会を一度に3人ほどまとめて切り飛ばす。

 

 とてもではないが、人に向けて使用できる武装ではない。だが、相手は虚ろな実体の形無き尖兵。容赦の必要は、存在しない。

 

 弾丸であればいくらか耐えるそれらも、パルスブレードの一撃の前に紙切れのように容易く撃破されて行く。

 

 

 しかし、アリウスもただそれを眺めているだけではない。

 

 

「あの突破力……さすがに厄介だね。リーダー」

「やれ」

 

 サオリの号令に、ミサキは武装……大型のランチャーを構えると、大きな弾頭を発射する。

 

 咄嗟に放たれた弾頭をブレードで切り払おうと試みるが……剣先が触れる直前で弾頭が分裂し、無数の小型爆弾がセンジョウを襲う。

 

「くそっ……!」

 

 連続する爆発に勢いを殺され、足の止まるセンジョウ。

 

 当然、最前線で足を止めた敵を見過ごすほどいても愚かではない。

 

 

「ヒヨリ」

「は、はいぃ!!」

 

 サオリの指示に合わせ、背負っていたライフルの照準をセンジョウへ合わせる。

 

 

──だが、センジョウも一人で戦っている訳ではない。

 

 

 

「ぺ、ペロロ様!!お願いしますッ!!」

 

 ヒフミが取り出した円盤を投擲すると……そこから突如、戦場には相応しくない音楽と、ペロロ様人形が出現する。

 

 虹色に光るペロロ様に視界を遮られ、ヒヨリの照準がぶれる。

 

 

 そして、それだけセンジョウ達が眼を引いているのであれば。

 

 

「──後ろかッ!!」

「反応が早い……!」

 

 

 ハナコとコハルの銃撃支援を受け、ユスティナ聖徒会の包囲網を潜り抜けたアズサが、サオリへと銃口を向ける。

 

 当然、それを察知したサオリも、同じように銃口を向ける。

 

 

「「vanitas vanitatum, et omnia vanitas……!!」」

 

 

 両者は、同じ言葉を、同じように口にする。だがそれが、さし示す意味は全く異なる意味を持っている。

 

 片方は、その『虚しさ』を相手の絶望とするため。

 片方は、その『虚しさ』にそれでも抗い続けるため。

 

 

 放たれた銃撃は、互いに急所を外し、しかし身体へと直撃する。

 

 

「アズサちゃん!」

「リーダー!」

 

 それぞれ、ヒフミとミサキが声を上げる。

 

 しかし、その隙を見逃さない。

 

「痛そうですもんね、気になりますよね……大丈夫です、きっとその痛みはすぐにわかりますから……」

 

 直後、ヒヨリのライフルから、一発の銃弾が放たれ、ヒフミへと突き刺さる。

 

「あ……くっう……!」

 

 強烈な一撃にヒフミは足が止まり、その場にうずくまる。

 

「ヒフミ!大丈夫!?」

 

 即座にコハルがヒフミへと近づき、すぐさま手当てを始める。

 

「……そんなことさせると思う?」

 

 となると当然、広範囲武器を持つミサキが、二人へと照準を合わせる。

 

「させると思うか?」

 

 直後、爆風から飛び出してきたセンジョウが脚部パーツでなぎ払い、ミサキは構えていた武器を取り落とし、吹き飛ばされる。

 

「っ!!ミサキ!!」

 

 サオリは吹き飛ばされたミサキに声をかけるが、返事はなく、すぐに戦闘に戻るのは厳しそうな様子だった。

 

「ハナコ!ヒフミとコハルを頼む!」

「わかりました!センジョウくんは前を!」

 

 怪我をしたヒフミのために二人を残し、センジョウはさらに前へと踏み込む。

 

 

「ひ、ひぃいい!!あんなのに蹴られてたら痛くて気を失いそうです!!」

「狼狽えるなヒヨリ……!」

 

 アズサの弾丸をうけ、傷を庇いつつも、ヒヨリの身体を掴み、後方へ下がるサオリ。

 

「逃がすかよ……アズサ!」

「わかってる……!」

 

 アズサは、距離をはなそうとするサオリ達との距離を詰めるべく前へと走る。

 

 だが当然それを阻むように聖徒会が現れる。

 

「邪魔だ!」

 

 しかし、それはセンジョウのパルスブレードの前に一撃で無に霧散して行く。

 距離は──離れない。

 

「ちいっ!!」

 

 すかさず、反撃のために、サオリはアズサへ向けて発砲する。だが、センジョウがそれを阻む。

 

「どこまでも邪魔をするか……蒼井センジョウ!!」

「ああ、するさ!言ったろう!なにも奪わせはしないと!!」

 

 視界の端で鳴り響く、パルスフィールド損耗のアラートを無視し、アズサの盾となりながら真っ向から突き進む。

 

「世界は虚しい……どんなことがあろうと!何をしようと!全ては、無意味で!無価値で!」

「それでも、私は抗う!」

 

 センジョウの背後から、アズサが飛び出し、銃口をサオリへ向ける。

 

「戦って抗って、護り抜いて見せる!」

「そうだ、例えそれが、どんなに辛い道であっても、俺は……俺達が!未来を切り開く!!」

 

 サオリを守る為に再生する聖徒会を、センジョウが全て切り伏せる。

 

 

 アズサの進む道を、センジョウが切り開く。

 

 

「vanitas vanitatum, et omnia vanitas……!」

 

 アズサはその警句を、再び口にする。

 

「だけど…………」

 

 しかし、もう。彼女にとってその言葉は、これで終わらない。

 

「『それは、諦める理由にはならない!』」

 

 放たれた銃弾は、サオリへと向かって行く。

 

「リーダー!!」

 

 しかし、その弾丸は、サオリを守るために覆い被さるようにして割って入ったヒヨリへと直撃する。

 

「ヒヨリ……!」

「い、痛いです……リーダーは……だい、じょう……」

 

 ゆっくりと力無く倒れるヒヨリに、サオリは表情を強ばらせる。

 

「ヒヨリ!!」

 

 アツコ、ミサキ、ヒヨリ──大切な、友が。みな、自らを守るために、傷ついていく。

 

 どうして。何故。なぜ、こんなにも世界は思い通りにならない。

 

 力を得て、力に従い、最善と思える選択をしてきた筈だった。

 

 それなのに、何故。私は、こんなにも苦しまなければならない。

 

 それなのに何故、お前だけが、『より良い明日(ハッピーエンド)』に近づいていく……!!

 

 

「アズサァァァァァァ!!!」

 

 

 その声は。怒りか、憎しみか。それとも……嘆きか。

 

 

 悲痛な叫びに、アズサは──悲しそうな、顔をしていた。

 

 

「──お前とアズサの違いは一つだ……!」

 

 

 センジョウは。サオリの懐へと潜り込む。

 

「お前は、『全ては虚しいだけ』と諦めて、明日へ進む足を止めた……!」

 

 そうして、『自分の拳』を握りしめる。

 

「アズサは、それでも前に進んだ!」

 

 ヌィル・ヴァーナのトリガーから手を離し、力一杯、腕に力を込める。

 

 

「歯ァ食いしばれェ!!」

 

 

 センジョウは、そのまま、サオリの頬へと自分自身の拳を叩き込む。

 強烈な一撃に、サオリの身体が宙を舞った。

 

「ぐ……く、そっ……!!」

「……」

 

 ぼろぼろの身体を、それでも起こして、全力でアズサを……センジョウを睨み付けるサオリ。

 

「まだ、だ……まだ、終わらない……!!私は……認めない……!!」

「気合い入れたつもりだったけど、まだわからないか」

 

 うわ言のように、憎しみの熱にやられた瞳で、サオリはアズサとセンジョウをにらむ。

 

 そうして、すぐさま懐からなにかを取り出し、投擲する。

 

 それは、『爆弾』のように見えた。

 

 アズサが、大きく眼を見開く。

 

「センジョウ!!それから離れろ!!」

 

 もし、それが。『ヘイローを壊す爆弾』なら……!

 

 そこまで考えた頃には、爆弾が起動し、凄まじい爆炎と爆風が巻き起こる。

 

 

 そうして、センジョウが飲み込まれる。

 

 

「そんな……っ!!」

 

 

────しかし、爆発が巻き起こした煙の中で、彼は立っていた。

 

 

 

「センジョウ!!」

「……威力は大したことはない、目眩ましだ」

 

 全身が少し煤け、所々に爆風でできたであろう火傷と切り傷を持ってはいたが……センジョウは無事だった。

 

 

「…………逃げられた、な」

 

 

 しかし、煙が晴れた先には、サオリの姿が無い。

 

「……きっと、この下にあるカタコンベに向かったんだろう」

 

 アズサは、心配するような、不安そうな瞳で、サオリがいた場所を眺める。

 

 

「アズサちゃん、センジョウさん……」

 

 

 いつの間にか、怪我の手当てを済ませたヒフミ達が、側にまで来ていた。

 

 周囲に、聖徒会の影は、ない。

 

 

「大丈夫か、ヒフミ」

「アズサちゃんこそ、大丈夫ですか?」

 

 互いの怪我を心配し合う二人を他所に、センジョウはコハルとハナコへ、向き合っていた。

 

「ヒフミの怪我をみてくれてありがとう」

「友達だもの、当然でしょう!」

「コハルちゃんの言う通りです。……センジョウくんは」

「俺は、いい」

 

 大丈夫だ。と、そう言いかけて、センジョウは膝から崩れ落ちる。

 

「だ、大丈夫なの!?みた目通りぼろぼろなんじゃ!」

「──少し、疲れが出た、だけだ」

 

 

──搭乗者とのリンク率、30%以下へ低下。システム、戦闘モードの維持を強制的に終了します。

 

 

 戦闘で疲弊したセンジョウは、既に、ヌィル・ヴァーナを動かすだけの精神力を使い果たしていた。

 

 だが、しかし。

 

「……センジョウ。私は地下へサオリを追う」

 

 決意の瞳を。アズサは浮かべる。

 

 

 まだ、先へ進もうと言うなら。その道を切り開くのが。……『蒼井センジョウ』の役割だ。

 

 

「……わかった、俺も行こう」

 

 

 彼は、懐から、『調整剤』を一つ、取り出す。

 

 

 それを、以前のように自らへ投与する。

 

 鼓動が早まり、肉体にあった疲労感を感じなくなって行く。

 

 

 

────リンク率、67%へ上昇。システムを回復します。

 

 

 

「センジョウさん……」

 

 満身創痍ながら、立ち上がったセンジョウを、ヒフミが心配そうに見上げる。

 

「ヒフミたちは、ここで。……アズサが帰ってきた時に、ちゃんと迎えられるように待っているんだ」

「あんたは……それで、あんたはどうなるのよ……?」

 

 ……センジョウの行った『投薬』が、まともな行為だとは、この場の誰もが思ってはいない。それが、どれ程危険なのかまではわからずとも、彼が『なにか』の代償を払ったことだけは、明らかだった。

 

 

 それでも。

 

 

「大丈夫。……必ず全部終わらせて、アズサと一緒に帰ってくる」

 

 

 センジョウは、歩みを止めない。

 

 

「……ああ、行こう」

 

 

 アズサの言葉に、センジョウは強く頷く。

 

 

「今度こそ、全部。終わらせて帰ろう」

 

 

 

 

────終わりの時は、近い。




戦闘シーンが割りと難産でした。

ヒフミコハルとハナコの戦闘描写……?ってなりながら書いてみましたが、どうでしょう?


後方から指揮をする父に対して、最前線で盾となり道を切り開くセンジョウくん。

彼らのコンビネーションを見る日は来るんだろうか……
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