青空DAYS   作:Ziz555

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戦闘シーン難しすぎて笑っちゃった


ブレイク・アンブレイカブル<illegal enemy>

 古聖堂地下、カタコンベ。

 

 

「……やはり、追ってきたか……」

 

 その奥で、サオリは一人、アズサとセンジョウを待ち受けていた。

 

 

「サオリ……」

「私は、認めない。認められない」

 

 静かに、サオリが銃を構える。

 

「私たちは、同じ場所で生まれ、育ち、教えられた」

 

 怒りと、憎しみと

 

「それなのに何故、お前は進み続けられる」

 

────哀しみを宿して。

 

「何故だ!答えろ!アズサ!!」

「……私は、先生に、ヒフミ達に教わった。……努力することの意味、友にいることの楽しさ、友達のためになら、どんなことでも、仲間と一緒なら、乗り越えられること」

 

 だから。

 

「私は、何度だって立ち上がる」

 

 強い意思を宿した瞳に、サオリは気圧される。

 

「もう終わりにしよう。……お前は、破壊を楽しんでる訳じゃない。世界に絶望するのは……なにか心に望みがあったからだ」

 

 センジョウは、サオリへと歩み寄る。

 

「虚しさに心を病んで嘆くのは、その心に優しさがあるからだ。誰かの、幸せを願う、心があるからなんだろう?」

「……黙れ」

 

 俯くサオリの表情は、帽子で隠れている。

 

「虚しさを嘆くのは、現実の不条理に憤るのは。お前自身だって『より良い明日(ハッピーエンド)』を願っているからだ」

「黙れ!!」

 

 サオリは、顔を上げ、銃を突きつける。

 

「私には……もう……そんな明日を望む権利すら……残されていないんだぞ……!!」

 

 涙も枯れた表情で、それでも泣きそうな彼女に。センジョウは言葉を失う。

 

 カタカタと震える、銃を持つ腕が、センジョウを捉える。

 

「それなのに、何故お前は……私たちとそう変わらないお前が……理不尽に奪われたお前が……なんで、そんな顔をするんだ……!」

「……今にも泣きそうな子を前にして、かける言葉も見つけられない。そんな自分が不甲斐ないからだ」

 

 苦悩の表情のまま、センジョウは言葉を続ける。

 

 

 

「人は。弱い」

 

 自分の感じた思いを、言葉に変える。

 

「弱くて、不完全で。思い一つだってちゃんと伝えられない」

 

「なりたい自分や、望んだ世界を目指しても、ちょっとした勘違いで、みんなが不幸になることだってある」

 

「一人一人の力は、世界を変えるには、あまりにも不十分で、与えられた時間は、あまりにも短いから」

 

 

 だから。

 

 

「だから、人は願いを、想いを。託すんだ。託されて、歩き続ける」

 

 

「……誰かに頼ることとか、助けを求めることは。悪いことなんかじゃない」

 

「俺は────君の事も、助けたい」

 

 そうして、サオリに手を伸ばす。

 

「間違えたっていい。ぶつかる事だってあるかもしれない。……『より良い明日(ハッピーエンド)』を願う権利は、誰にだってある筈だから」

 

 父に託され、思いに共鳴する。託されて、受け取った想いは、自分の想いと同化して、より大きな力になる。

 

「だから。君には、この手をつかんでほしい」

 

────俺は。誰かの力になりたいんだ。

 

 

「わ、私、は…………」

 

 

 サオリは、今にも壊れそうな表情のまま、差し出されたセンジョウの手をみる。

 まるで、その先にある『何か』を恐れるように。

 

 

 

 

「…………私達の負けだよ」

 

 

 

 

 洞窟の奥から、一人の少女が現れる。

 

「アツコ……」

「姫……!?」

 

 現れた少女は、震えるサオリの手を、そっと押し戻す。

 

「姫、どうしてここに!それに、喋れば『彼女』が……」

「大丈夫。もう、全部終わりだから」

 

 少女は、優しくサオリを抱き締める。

 

「もう、やめよう。サオリ。こんなことは」

「やめる……?アリウスに帰るのか……?帰ったところで、私達は殺されるだけ……」

「どちらにせよ、彼女は私達を生かして置くつもりはないよ」

 

 アツコは、呆然とするサオリの顔を見つめる。

 

「だから、逃げよう。みんなで」

「逃げる……?」

「うん」

 

 疑問を浮かべたままのサオリに、アツコは言葉を続ける。

 

「アズサが教えてくれた。……私達がいつからか持っていたこの憎しみは……私達の憎しみじゃない」

 

 アツコは、アズサを見て言葉を続ける。

 

「この憎しみを、私達は習った。そして、自分のものだと思っていた。……けれど、アズサは気づいていたんでしょう?」

「…………」

 

 アツコの言葉に、アズサは口を閉じたまま、無言で肯定を返す。……彼女にその確信があったわけではない。確信を持ったのは、補習授業部の仲間達と、先生とであったからこそだった。

 

「アズサは、色んな事を学んで、色んな経験をした。……そうして、自分の居場所を見つけた」

 

 その全てが、アツコにとっては、羨ましい出来事だ。だから、それを友であるアズサが得たことは、喜ばしい事でもある。

 

「…………いい大人に、出会ったんだね」

「……ああ。私もそう思う」

 

 アツコの言葉に。アズサは力強く答える。

 

「だから、サオリ。……逃げよう、この場から、アリウスから」

「逃げる……だ、なんて……そんな……」

 

 

 ……友の言葉に揺れるサオリの姿をみて、センジョウは胸を撫で下ろす。

 

────なんだ。ちゃんと心配してくれる友達がいるじゃないか。

 

 

 彼女達が去ったなら、きっとこの戦いも落ち着くだろう。

 ……その先に、彼女達の苦難があるとしても。いまは、争いの終結に安堵する。

 

 

 

 

 

────素晴らしい。成る程、確かに偽りとは言え、あの者の息子ということでしょうか……!

 

────知識も、経験も、品格も。そのいずれもが不足していながら、高潔なる『魂』を受け継いでいる!!

 

────貴方ならば、きっと私の『崇高』を、より高みへ誘っていただけるのでしょう!!!

 

 

 

 

 

 大地が、揺れる。

 

 空間が歪み、この世の理をねじ曲げる『力』が形を得る。

 

 

「なんだ……こいつは……!」

 

 赤いローブを纏った、無貌の怪物が、顕現する。

 

「そんな、これは……あの、『教義』が完成した……?」

 

 アツコは、その姿を知っているのか、恐れた様子で怪物をみる。

 

「……これは、レベルが違う」

 

 

 立っているだけで肌に伝わる、本能的な『死』の恐怖。

 

 存在そのものが、『理不尽』のようなそれが、彼女達の前に立ちふさがる。

 

 

「ダメだ……センジョウ、あれは、戦っちゃだめだ!退こう!」

「背中向けてもダメだろ。こんなの」

 

 センジョウは、乾いた笑みを浮かべ、一歩前へ出る。

 

「センジョウ!?」

「アズサは先に逃げててくれ。これはなんとか俺が食い止める」

 

 ヌィル・ヴァーナの武装を確認する。幸い、昏倒と速攻を優先させていたお陰で、弾薬に不足はない。

 

 

「……2本目は、やったこと無いから勘弁してほしかったけどな」

 

 

 センジョウは、懐から『切り札』を取り出す。

 

 

「……行くぞ、ヌィル・ヴァーナ」

 

 

 覚悟を決めて、再び左の胸へ、『調整剤』を突き立てた。

 

 

──搭乗者とのリンク率、上昇。

 

 

 そうして彼は、再びその扉を、こじ開ける。

 

 

──『ヌィル・ヴァーナ』最大稼働モードへ移行します。

 

 

 

「う、オオオオオオォォォォォ!!!」

 

 

 

 全神経を焼き切らんばかりの激痛に、センジョウは獣のような唸り声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

────あれが!あれこそが!人知を越えた『ヌィル・ヴァーナ』の真の力……!!

 

────素晴らしい……!人を、人ならざる者へと変容させる、禁忌の力!

 

────自らの存在その物を代償として産み出される、その力!

 

────黒服が熱を上げるのも頷ける!!

 

────さあ、見せてくれたまえ……少年

 

────君の払う対価と、その輝きを!!

 

────私の作品に、全力で答えてくれたまえ!

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、化け物。これが俺の……とっておきだ」

 

 その身を、命を、存在を。『ヌィル・ヴァーナ』の炉にくべて、センジョウは力を漲らせる。

 

 その『熱』に共鳴するように、ヒエロニムスが吼える。

 

「挨拶代わりだ!!」

 

 センジョウはヌィル・ヴァーナの全砲門を開き、小型ミサイルと、腕部マシンガンを叩き込む。

 

 弾の出し惜しみをする時間も、余裕もない。

 

 放たれた弾丸は、全てが吸い込まれるようにヒエロニムスへと直撃し、爆裂する。

 

 

 直撃した上で、ヒエロニムスは身じろぎ一つせず、手に持った錫杖のような武器を振り下ろす。

 

「ちいっ!」

 

 瞬間的にブースターの出力を引き上げ、攻撃から逃れたセンジョウは、ヌィル・ヴァーナの解析結果を確認する。

 

「ダメージは通ってる。通ってる上で、……相手がタフすぎるって、とこか、これは……!!」

 

 下手に対策があることより、余程厄介な情報に、センジョウは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

 装甲が厚い、バリアがある、回避される。

 

 それらの理由があれば、理由さえ取っ払って終えば、効率的に大ダメージを与えられる。

 

 だが、目の前の怪物に、その理論は通用しない。

 

────最大稼働に制限時間のあるセンジョウにとって、最悪のパターンだった。

 

 

 そして、最悪な展開は、まだ終わらない。

 

 ヒエロニムスを守護するように、数体の聖徒会が呼び出され、それらがセンジョウへと弾丸を放ってきた。

 

「ちいっ!」

 

 余計な被弾が増えるより前に、距離を積めて、パルスブレードでそれらを処理する。

 

 だが、しかし。それらは、無限の尖兵。

 

「あー!そうだよな!クソっ!」

 

 斬り倒したところで、新たにどこからともなく現れる。

 それらの攻撃は、所詮銃撃。ヌィル・ヴァーナのパルスフィールドを貫く程の攻撃力は持ち得ない。

 とはいえ、完全に無視をして攻撃をし続ければ、如何に最大稼働のパルスフィールドだとしても、いずれはその弾丸がセンジョウへと届くことに間違いはない。

 

 加えて、ヒエロニムスが時折放つ、地面を引き裂くような衝撃波は、センジョウが例え何処へいようとも、必ずその『足下』を狙ってくる。故に、センジョウは常に動き続け、回避し、適度に生徒会を切り払い、合間を縫って、弾丸を当て続けるか、パルスブレードを叩き込む必要があった。

 

 一つ一つの行動は単純でも、その全てをこなし続ける事はそう簡単ではない。

 

 ましてや、センジョウは人間であり、疲労と言う集中力の限界も存在している。

 

 

 

────『調整剤』の過剰摂取による、焼けるような全身の痛みと、ヌィル・ヴァーナの高速機動による、肉体にかかる過度な重力負荷は、想像以上のスピードでセンジョウの集中力を削り取っていた。

 

 ヌィル・ヴァーナの見せる短期予測に応じ、とにかく身体を動かし続ける。

 

 彼は既に、身体中の至るところから血を流し始めていた。 

 

 攻撃は受けていない。それは全て、『ヌィル・ヴァーナ』の全力に、身体が追い付いていないことによる『自壊』。

 

 

────苦しい。

 

 息をしている筈なのに、呼吸がくるしい。

 

────痛い。

 

 全部避けているのに、身体が内側から引き裂けるような痛みが止まらない。

 

────怖い。

 

 ヒエロニムスの強力な一撃を受ければ、どうなってしまうのか。想像に固くない。

 

 

 

 それでも。

 

 

 

「それぇ゛………で、も゛ぉ……ッ!!」

 

 

 血を吐きながら、最早まともに声すら出せぬ身体になろうとも。

 

 

「う゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁッ!!」

 

 

 彼は、止まらない。止まるわけには行かない。負けるわけには、行かない!

 

 

 

 命を、決意を、意思を、『ヌィル・ヴァーナ』の炉にくべる。

 

 

 己自身を、燃やし尽くしてでも。

 

 

「俺がァァァァ!!」

 

 

 

────けれど世界は。願いや意地だけで変わるほど、優しくはない。

 

 

 

 

 がくん。と、突然センジョウの左足が動かなくなる。

 

──何が……ッ!!

 

 あらぬ方向へ曲がるそれをみて、理解する。

 

 

 機動に耐えきれず、いつの間にか折れていた。

 

 常に全身に走る激痛で、その予兆に気づけなかったセンジョウは、一瞬。動きが完全に止まる。

 

 

「や、ば────」

 

 

 無慈悲に、ヒエロニムスの腕が振り下ろされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「光よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

─────放たれた一条の閃光が、ヒエロニムスを直撃し、体勢を崩す。

 

 

「失礼致します、センジョウ様」

 

 

 その隙に、人よりも大きい腕が、ヌィル・ヴァーナを掴み、センジョウを引き寄せる。

 

 そうして、攻撃に何とか当たらずに済んだセンジョウは、その場にいる筈の無い顔ぶれに、目を丸くする。

 

「と、トキに……アリス!?」

「はい!アリスが緊急参戦しました!」

「センジョウ様のピンチとお伺いしましたので、パワードスーツの先輩として、助けに参りました」

 

 さも当然。といった様子でそう答える二人に、センジョウは目を白黒させて、驚く。

 

 

 

「また無茶ばかりして。……そんな格好になってたら、いつまで立ってもお父さんは越えられないわよ?」

 

 

 

 聞き馴染みのある声に、振り替える。

 

 

「ユウ……カ……?」

「待たせてごめん。……助けに来たわ」

 

 

────本人には無自覚の。もう一つの切り札……、託された絆ではない。彼自身の紡いだ『絆』が。そこにはあった。





 焦がれた背中は遠くても。

 かかげる願いは曇りを知らず。

 進める道が無いのなら。

 開いて見せるさ友のため。





──俺は、一人じゃない。


 だから
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