青空DAYS   作:Ziz555

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前編。


……前編!?


先生の息子(ミレニアムの場合):前編

 センジョウがシャーレで働きはじめて数日。格段に仕事の処理速度が上がった事で、シャーレには珍しい突然の休日が降って沸いていた。

 

"静かだ……"

 

 シャーレの執務室で、ぼんやりとコーヒーを嗜む先生。もはやいつぶりかもわからない、仕事に追われない日を、どう過ごせばいいのか、もう彼にはわからないでいた。

 普段であれば、そういう日には生徒から何かしらの頼み事やお誘いがあり、その為に出かけるのだが、今はそういうわけにも行かない事情があった。

 

「オヤジ、休むならわざわざ事務所来なくていいだろ」

 

 執務室の扉を開けて入ってきたセンジョウは、いつものように呆れた様子でそう声をかける。

 

"センジョウが此処に泊まってるからね"

「家が決まるまでは仕方ないだろ。オヤジの家は俺が泊まれるほど広くねぇし」

"折角の家族の再会なんだし、団欒の時間は大事でしょ?"

「まあ、そこまで言うなら止めはしないが……」

 

 照れ臭そうに笑うセンジョウ。先生の人たらしは家族相手も健在だった。

 のだが。

 

「先生、茶菓子買ってきましたよ」

"ありがとう、ユウカ"

「コイツくるからなぁ……」

 

 戸を開いて現れたのは、またもや早瀬ユウカだった。

 

「仕方ないでしょ。アンタの事情知ってるの今のところ私だけなんだから」

 

 得意気な表情でそう返すユウカに、センジョウは頭を抱えて、溜め息を吐く。

 なにを隠そう、此処数日の当番は、ずっとユウカが担当していたのだ。

 理由は今彼女が話した通りで、現状、センジョウの存在を知る生徒はユウカの他にいない。

 

 先生既婚者騒動の時にシャーレにつけられていた盗聴機は全て回収されているため、センジョウの姿はおろか、声すら知らない生徒ばかりなのである。

 

 そんな状況で、当番の生徒を呼べば混乱は確実。ということで、先生は当番をユウカに絞ったわけだ。

 

 となれば、後はもうシャーレの業務の結果は決まっている。息の合ったセンジョウとユウカの連携の前に仕事はみるみる消えていき、後は先生の外回りが必要なものだけが残されていたのだった。

 

 どうしたものか。と、ぼんやりしていた先生は、ユウカをまじまじと見つめる。

 

「ど、どうしたんですか、先生?どこか変なところありますか……?」

「仕事もないのに此処にいることは変だろ」

 

 先生に見つめられてもじもじしたかと思えば、センジョウの横やりを受けて、彼を鋭く睨み付ける。白々しくその視線を受け流し、センジョウはコーヒーに口をつけた。

 

"ミレニアムに行こっか"

 

 そんな空気を読んでか、読まずか、先生はそんなことを言い出した。

 

「ミレニアムに、ですか?」

"うん。このままセンジョウの事をだれにも言わないって訳にはいかないし、みんなにちゃんと紹介したいしね"

「まあ、確かに挨拶回りは大事だと思うが……」

"ユウカがいるし、きっかけにはちょうど良いと思うんだ"

 

 先生は、センジョウの顔をみて、"それに"と続ける。

 

"先生になるなら、みんなと仲良くできないとね?"

「……まあ。頼られる先生なら、みんなから気に入られてしかるべきか」

「私はアンタが先生になれるとは思ってないけどね」

「コイツ……」

"こらこら、先生になるならそんな態度じゃダメだよ"

「うぐぅ……」

 

 先生に咎められたセンジョウを嘲るような視線で眺めるユウカに、センジョウは呻き声をあげるしかできなかった。

 

"それじゃ、準備できたら向かおうか"

 

 そんなわけで、急遽挨拶回りが始まるのであった。

 

 

 

 

~~~~ミレニアムサイエンススクール~~~~

 

 

 

 

「ここが、ミレニアム……」

「キヴォトスの『最新』は常にミレニアムにあり。技術力なら他のどこにも負けない場所よ」

"シャーレも技術面では色々お世話になってるよ"

「へぇ……」

 

 いかにも『最新技術!』といった設備が整い、近未来的なマシンがあちらこちらで実際に動いている光景に、センジョウは興味津々な様子だった。

 

「……ほぉー」

"楽しそうだね"

「ふふん。粗暴なセンジョウにはわからない素晴らしさでしょう」

 

 すかさずマウントを取りに来るユウカだが……

 

「……いや、本当にすごいな。細かい技術面はわからないが、俺の想像を遥かに越えたハードウェアとソフトウェアが使われてることだけはわかる」

「……?」

「これだけの設備と研究環境……なるほどなぁ」

「な、なによ」

 

 うんうん。と深く頷いたセンジョウは、ユウカの顔をまじまじと見る。

 

「この学校の会計担当、相当苦労してるだろ。すごいよ、お前は」

「……うぇえ!?」

 

 悪意も、他意もない純度100%の称賛をぶつけられたユウカは、面食らって変な声を出した。

 

「自校の運営だけじゃなく、シャーレの仕事の補佐まで……その努力は並大抵じゃないだろ。本当によく頑張ってるんだな」

「あ、ありがとう……?」

"(青春だなぁ)"

 

 生徒二人の青臭いやり取りに、懐かしさを感じた先生は、微笑みを浮かべて様子を見守る。だが、それをただ眺めているままでは、日が暮れてしまう、

 

"さ、ユウカ。そろそろミレニアムの案内をお願いしてもいいかな?"

「……そ、そうでした」

 

 ユウカは「んっ。んんっ!」と、かるく咳払いをして調子を整えると、先生達の前に歩み出る。

 

「それじゃあ、私に着いてきてください。ミレニアムを案内します」

"わーい"

「どっちが引率の先生か分かったもんじゃないな……」

 

 無邪気に返す先生と、それをみて苦笑するセンジョウを引き連れて、ユウカは案内を始めるのだった。

 

 

 

~~~~エンジニア部の場合~~~~

 

 

 

 

「それじゃあ、まずはこちら。エンジニア部から」

「いきなり、『らしい』所に来たな」

 

 ユウカが二人をつれて訪れたのは、工具や、なにやら難しそうな機械の散らかる、工房のような場所だった。

 

「……おや、来客とは珍しい」

「こんにちは、ウタハ先輩」

"お邪魔してるよ"

「いらっしゃい、先生。それとユウカと……?」

 

 エンジニア部部長、白石ウタハはユウカを先頭に現れた三人の顔をみて、疑問符を浮かべる。先生がつれているのだから、何かしら目的がある事は彼女にも推測は着いたが、先生と同じ背格好の男に見覚えがない。

 

「どうも。先日からシャーレに配属されました、教育実習生の蒼井センジョウです」

「これは丁寧にどうも」

"シャーレの新しい仲間の挨拶回りをしてるんだ"

「なるほど……ユウカは案内役。ということか」

「そういうこと」

 

 それならば。と、ウタハは作業中の残りの二人に声をかけ、呼び寄せる。

 

「こちら、豊見コトリと、猫塚ヒビキ」

「よろしくお願いします!」

「よろしく……」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

"教育実習生とはいえ、シャーレの生徒みたいなものだから、仲良くしてあげて"

 

 かるく挨拶を済ませると、さて本題。と言わんばかりに食い気味な様子でウタハが口を開く。

 

「それで、センジョウ君は先生とはどういう関係で?」

「どういう意味ですか?ウタハ先輩」

 

 状況を飲み込みきれていないコトリの問いに、ウタハは自身の推理を語り始める。

 

「シャーレは先生が一人で切り盛りをしている、キヴォトスでも特異な組織だ。そこに新たに人が転属される……しかもそれが生徒となれば。それは即ち、異常事態と言って差し支えがないだろう」

「ほうほう」

「そして、センジョウ君には新人特有のよそよそしさがない。先生との信頼関係ありきの関係だろうね。……そして、転属されてからの都合を加味すれば……」

 

 

 

「自ずと、彼が先生の『外にいた頃の知り合い』であるという予想はつく!」

 

 

 

 違うかい?と先生に問いかけるウタハに、先生は拍手を返す。

 

"凄いね。大正解"

「こんな一瞬でそこまで……」

「ウタハ先輩、いつも変なもの作りはするけど、頭の良さは本物だから……」

 

 称賛と苦笑。その様子は、彼女の周囲からの評価を表すには十分な要素だろう。そんな様子に、先生は説明の手間が少し省けた事を内心喜びつつ、センジョウの頭に手をのせる。

 

"これ、私の息子"

 

 静寂。次の展開が予想できたユウカとセンジョウは、そっと自分の耳を保護した。

 

 

「お、お子さんですか!?」

「……驚いた。まさか血縁とは」

「でも、先生の年齢って……」

"うん。まあ、義理の息子。でも、間違いなくセンジョウを育てたのは私達だし、センジョウは私の息子だよ"

 

 手持ち無沙汰になった先生は、わしゃわしゃとセンジョウの頭を撫でるが、センジョウはその手を払い除ける。それをユウカがすこし羨ましそうに眺めていたが。多く語るべきではない。

 

「……となると、先日の既婚者騒動は……」

"一応、ガセネタとかではなかった。って感じかな"

「ううん……なんだか複雑な話になってきましたね……」

"あはは……"

「まあ、重要なのは俺が新しくシャーレに入った生徒だって所かな……先生の補佐として今後も何かと世話になるかも知れないから。よろしく頼むよ」

「うん、よろしく。先生の息子さんだし、きっと仲良くできると思う」

 

 センジョウはエンジニア部の3人と握手をする。

 

 さて、これでエンジニア部の挨拶は終わり……かと思いきや。

 

「所でセンジョウ君」

「はい?」

「君は、ヘイローを持たない外部の人間だ」

「……そうですね」

「だが、先生と違って、年齢は私達と同じぐらい。つまり、身体能力はまだ衰える前ということだ」

「……………えっと」

「つまり、私達は君のデータを何一つ持っていない訳で、エンジニア部としては、万人に通用する物造りのためには多くのデータが必要なんだ」

「…………………………」

 

 センジョウがさりげなく、握手をほどいて手を退こうとするが、ウタハはそれを許さない。

 

「ぜひ、君のデータをとらせてはもらえないだろうか!先生のデータと比較することで、先生のための装備の開発等も捗る可能性も──!」

「わかった!わかった!今度また時間作るから!今日まだ挨拶回り中だから!」

 

 そんな二人のやり取りは、先生とユウカの仲裁が入るまで続いた。

 

 

 

 

 

~~~~ゲーム部の場合~~~~

 

 

 

「なんか一発目からどっと疲れたな……」

「情けない男ね……そんなことで先生の助手が勤まるのかしら」

「ほっとけ」

"夢中になると回りが見えなくなっちゃうだけだから"

「……その結果、ミレニアムの予算を圧迫したり、修繕費がかさむのよね……」

「……お疲れ」

「ほっといて」

"ほらほら、次にいくよ"

 

 パワフルさに振り回されたセンジョウと、日々の苦労を思い出してゲンナリしているユウカの背後で手を叩き、先生は二人を急かす。時間が無限ではないのだから仕方ない。

 

 そんな様子で三人がミレニアムの廊下を歩いていると、脇の通路から声がかかる。

 

「先生!ミレニアムに来てたんだ!」

"ちょっと用事があってね"

 

 元気ハツラツ、と言った様子の少女──才羽モモイは、ピョコピョコと動きながら先生の元へと駆け寄る。

 

「あれ。ユウカと……誰?」

「俺か?俺は、蒼井センジョウ。シャーレの新人だよ」

「……ってことは、新しい先生!?」

「見習いだけどな」

 

 苦笑しながら自分の事を語るセンジョウの表情をみて、モモイはとたんに、なにやら難しそうな表情へと変わる。

 

「な、なんだろう。人気ゲームの続編に出てきた、いかにも一癖二癖ありそ~な空気を感じるよ……」

「初対面になんつう評価しやがるこのちんちくりん」

「ち、ちんちくりん!?いきなりひどくない!?」

「どっちも似たようなもんでしょ」

 

 互いの評価で盛り上がるモモイとセンジョウを、ユウカが呆れた様子で嗜める。

 

「モモイの言葉を真に受けない方がいいわよ。この子、少しおかしな所があるから」

「ああ、それは何となく理解した」

「ひどい!」

 

 うわーん!ふたりがいじめるー!とモモイが先生に泣きつくと、先生は苦笑しつつモモイを受け止めた。

 

"そうだ、モモイ。センジョウをゲーム部のみんなに紹介したいんだけど、案内してくれないかな?"

「えぇ……」

「露骨に嫌そうにしやがるな……」

「そりゃ『ちんちくりん』呼ばわりしてくる人の事快く思わないでしょ。アンタには大人の余裕が足りないのよ」

「ぐぬぅ……」

 

 誇らしげに胸を張るユウカだが。後日。算術妖怪だのなんだのを言われた時は大差がないという事実を知ったセンジョウに死ぬほど煽り返されるのはまた別の話。

 

「いくら先生の頼みでも……こんなやつをユズやアリスに会わせるわけには……」

"でも、センジョウは格闘ゲーム凄く上手いよ?"

「……ふーん?」

"たしか、世界ランキングにも乗ってたよね?"

「世界!?」

「いや、あれは何年か前の話だし……そもそも世界つってもあの界隈そこまで規模大きくはねぇし……」

「新キャラの過去が実は強キャラ展開!?」

 

 モモイは、シュバッァ!と言う音が出そうなほどの早さでセンジョウに詰めより、先程までとは打って変わった輝きの視線で彼を見上げる。

 

「お兄さん!うちのクイーンと戦ってみてよ!」

「クイーン……?」

"UZQueen。ゲーム部の部長さんだよ。ゲームが凄く上手い子だよ"

「ダークな憎まれ役の新キャラ対、主人公チームの切り札ヒロインの対決!こんなの絶対面白いじゃん!お願い~やろうよ~」

「わかった!わかったからつかんで揺らすな!」

「ほんと!やったー!そうと決まればほらほら!はやくはやく!」

 

 コロコロと表情をかえるモモイに押されつつ、センジョウはゲーム部への部室へと向かう。

 

「意外と押しに弱いのね……」

"センジョウは根っ子が素直だから……"

 

 これからの彼の苦労を察しつつ、二人も後から部室へと向かっていく。

 

 

 

 モモイにつれられ、しばらく歩くと、目的のゲーム部の部室へと到着時、モモイは勢いのままに強く扉を開けた。

 

「たっだいまー!みんなー!新しいチャレンジャーを連れてきたよ!!」

「チャレンジャー?今までにない表現ですね、モモイ!」

「今度はなにを連れてきたの、お姉ちゃん……」

「……あー、どうも……」

 

 モモイにつれられ、控えめに部室へとセンジョウが入ると……

 一人は疑いの目をむけ、一人はロッカーへ飛び込み、一人は好奇の眼差しをむける。

 

「はじめましてチャレンジャーさん!アリスです!」

「えっと……私は才羽ミドリです。あと、……今ロッカーに飛び込んだのがユズちゃん」

「ゲーム部の誇る部長にして!最強の『UZQueen』その人です!」

「いや、殆ど見えなかったし……」

 

 どうしたものか。眉間を揉むセンジョウは、ひとまず自分の事を説明することにした。

 

「俺は蒼井センジョウ。シャーレの先生見習いだよ」

「先生見習い……?それはどんなジョブなのでしょう」

「先生になるために勉強してる生徒さん……で、いいんでしょうか」

「まあ、そんなところ」

「フッフッフッ……みんな、騙されちゃダメだよ!」

 

 ちっちっちっ……と指を降るモモイは、自慢げな表情でセンジョウを指差すと、大きく彼を指差した。

 

「お兄さんの正体は!シャーレから送り込まれた最強の刺客……真の格闘ゲーマーなのだ!」

「お前のなかで俺の設定は一体どんな尾ひれがついてるんだよ」

「シャーレの刺客……!?アリス!負けません!」

「お姉ちゃんがすみません……」

「ノリが悪いよミドリ!」

「お姉ちゃんは話が飛躍しすぎなんだよ……」

 

 モモイの突拍子もない様子に、ミドリが呆れ、アリスが目を輝かせる光景は、ゲーム部の仲の良さが一目でみて取れる場面だろう。

 そんな光景にセンジョウも、自身の頬が少し緩むのを感じた。

 

「まあ、大丈夫だよ。ゲームで勝負するって約束はしたし」

「その……無理なことであればちゃんと断って大丈夫ですからね?」

「心配ありがとう。……しかし、本当にいろんなゲームがあるんだな」

 

 センジョウは部屋のなかを見回し、様々なゲームソフトやハードを眺める。……彼も、ここに来る前は純粋な学生だったわけで。ゲームをする事も少なくなかった。

 いや、むしろゲームは好きな方だったし、幼い日に父親とゲームで遊んだ日々は、彼にとっての良き思い出だった。

 

 感傷か、郷愁か。そんな懐かしさを感じながら部室を眺めていると、彼は、床に転がる一つのソフトを見つける。

 

「ちょっと失礼」

 

 かるく頭を下げてから、一歩部室へ踏み込み、目的のゲームを手に取る。そのゲームのタイトルは……

 

「……懐かしいな。『ACカシオペ』か」

「チャレンジャーはそのゲームを知っているのですか?」

「大分コアなゲームだと思うんだけど……」

「んー、……まあ、昔取った杵柄というか。なんというか」

 

 少し良い淀むような言い方をするセンジョウ。それもそのはず、彼はこのゲームをかなりやり込んでいた。……とはいえ、このゲームはミドリが発言した通り、コアなゲームに分類されるものであり、物好きばかりが集まっていた為、あまり他人に語れる物だとは認識していなかった。

 

 しかし、だからこそ。その言葉が女王に火をつけた……

 

「……今、『ACカシオペ』って言った……?」

「うおっ……」

「ユズちゃんが自分から初対面の人に声を!?」

 

 いつの間にかロッカーからでて、センジョウの背後を取っていた少女……花岡ユズは、恐る恐ると言った様子で、しかし。明確な意思をもって、センジョウに問いかける。

 

「そ、そのゲームを『AC』と呼ぶ人は、少ないから」

「────」

 

 センジョウは言葉を失う。

 

 ユズの言葉は正しい。『AC』とは、『アーケード』の略称であり、コンシューマータイトルである『カシオペアの拳』には、正しい表現とは言いがたい。だが、その言葉は間違っているわけではない。

 

 カシオペアの拳は、元々はゲームセンターで稼動する、アーケードゲームを原点としているからである。

 

 そして、そのゲームを敢えて『AC』と言うなをつけて語るのは……

 

「久しぶりに会ったかも、しれない……『修羅』に……」

「……それは俺の台詞だな。まさか、こんなところで『強敵(とも)』に出会うとは思わなかった」

「し、しゅら?とも……?」

「なにやら、並々ならぬ因縁のような物をお二人から感じます……!」

 

 しばらく互いの表情を伺うと、ユズは静かにゲームの支度を始める。

 

「コントローラーは?」

「気が利くな。アケコンがあれば理想だ」

「わかった。……モモイ、アケコンを用意して」

「え、あ、うん……」

 

 普段とは違うユズの様子に、モモイはおとなしくコントローラーを用意し、無言で手を差し出していたセンジョウへと受け渡した。

 

「なに、この空気……」

"なんかみたこともないユズがいる気がするけど……"

「先生!ユウカも来てくれたんですね!」

 

 いつの間にか部室へとだとりついていた先生とユウカは、なにやら何時もとは違う空気の二人に気圧されつつ、後ろの方で静かに彼らを観察する。というか、なにか口を出せる状況では既になかった。

 

 

「UZQueenモード……?にしてもユズの空気が鋭すぎるというか……」

"正直、ユズと打ち解けるのは少し時間かかるかと思ってたんだけど……"

「あれ、打ち解けてるって言うんですか……?」

 

 明らかになにか別のスイッチの入った二人を、他のメンバーは見守ることしか出来ない……。

 それは、仕方のない話であった。

 

 

 ACカシオペアの拳。

 

 それは、無数のハメ技と、ぶっ壊れたキャラクター達が、様子のおかしい範囲でバランスの取れたクソゲー。

 

 そのゲームの本質に触れられるものは、ごく限られた一握りの修羅ばかり。

 

 

────もはや、骨董も骨董となりつつあったこのゲームにおいて。彼らほどの錬度の修羅が会することは。奇跡と言うに他はなかった。

 

 

 

「レギュレーションはどうしますか」

「闘劇」

「わかりました」

 

 

 もはや、その言葉の意味が通じるのはこの場に置いて。ただの二人のみ。

 

 

 

 

 

────Welcome to this crazy time ───

 

 

DECIDED

 THE

DESTINY?

 

 

 

 





続きます(白眼)
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