青空DAYS   作:Ziz555

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道が整って筆が乗ると書き上がるまでが早いので、更新も速くなる。


ストック?
そんな……書き上がったものを熱いうちにお出ししないなんて僕にはとても……


忘れ─れし神─の──:その4

 

「……本当に、いいのか?」

 

 センジョウの答えに、驚いたように目を見開くサオリに、逆にセンジョウは眉を顰める。

 

「いや言葉の真意聞いたのそっちだろ……」

「それは、そうだが……」

 

 サオリの申し訳なさそうな視線と、その言いかけた言葉の先から、何を意図しているかは明確だった。

 

「父さんの事か?」

 

 考えていたことを当てられ、サオリは口を閉じる。

 そんな彼女の様子に、センジョウはガシガシと頭を掻いた。

 

「いいんだよ。……いや、良くはないけど。いいんだ」

 

 死んだわけでもない。それに、父の意志は、今も確かに自分の中で生きている。

 

「本当に後悔してるなら、素直に幸せになってくれ。父さんもそれを望んでる」

「それが『先生』、か……」

 

 どこか納得したように、サオリは言葉を返した。

 

「そのために力が足りないなら俺が力になる。そのために俺はシャーレの先生を受け継いだんだからな」

 

 迷いのない、力強い言葉に、サオリは言葉を失い。しばらくした後に。

 

「ありがとう」

 

 とだけ返した。

 

 

 

 

 その後、センジョウは大まかな事情をサオリから聞きつつ、ユウカへは帰りが遅くなる旨の連絡を済ませた。

 現状としては先ほど聞いた通りで、ミサキ、ヒヨリとは追撃から逃れる最中にはぐれてしまったらしい。

 

「行動してもらう上で、これを渡しておこう」

 

 そういったサオリの手には、何かの起動装置が握られていた。

 

「『ヘイローを壊す爆弾』の起爆装置だ。これがなければ、爆弾は絶対に作動しない」

「……それを俺にどうしろって?」

 

 訝しげな表情に、サオリは黙ったままソレを突き出す。

 

「どんな理由があろうと、私が過去にお前たちに敵対し……銃を向けたのは事実だ」

「だから、裏切らない証拠に自分の命を懸けるっていうのか」

 

 サオリは、その言葉にうなずいた。

 

「もちろん、それで完全に信用してもらえるとは思っていない。必要なら──」

 

 サオリの言葉を遮るようにして、装置を奪い取った。

 

「その言葉で充分だ、が」

 

 センジョウは、奪い取った装置を全力で地面にたたきつけ、車椅子の車輪で粉砕した。

 

「そういうのはナシ」

「なっ……!?」

 

 突然の行動に、サオリは目を丸くする。

 

「そんなもんなくても、もう俺はお前を信じてる。余計なものは必要ないだろ」

 

 それに。とセンジョウは続ける。

 

「『生徒』が危険物を持っていたら没収するのが『先生』だしな」

「……」

 

 あっけにとられるサオリだが、しかし。

 

 

 だからこそ、サオリは敵だった自分に手を伸ばしてきた彼の言葉を、信じたのだ。

 

 

「よし、じゃあまずはほかの『スクワッド』を迎えに行くぞ」

「……このまま向かうのか?」

 

 センジョウが車椅子を進めたところで、サオリは彼を呼び止める。

 

「……何かほかにあるのか?」

「いや、車椅子で戦場というのは」

 

 さすがに装備として心もとない……と言いかけたサオリに、センジョウは納得したように深く頷いた。

 

「安心してくれ、これ、『ヌィル・ヴァーナ』だ」

 

 バンバン、と自分の自走式車椅子をたたくセンジョウに、サオリは目を丸くする。

 

「え、いや。あれはパワードスーツじゃなかったのか……?」

「最初にお前たちの前に突っ込んだ時に乗ってたバイクも『ヌィル・ヴァーナ』だ」

「ぬ、ヌィル・ヴァーナは、何かの総称なのか……?」

 

 混乱するサオリに、センジョウは笑顔で返す。

 

「可変パワードスーツと思ってくれ。メンテナンス頼んだら、妙な機能増やされてたんだよ」

「そ、そうか……」

 

 

 妙ににこにことした笑顔でそう答えるセンジョウに、サオリは頷く他に無かった。

 

 

 

 男の子はこう言うのが好きなのだが、それがわかるほどサオリは世間には明るくなかった。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「ようやく追い詰めたぞ」「観念しろ!」

 

 アリウスの生徒に囲まれ、銃口を突きつけられるヒヨリは、青ざめた顔のまま、その場に腰を下ろした。

 

「は、はは……そうですよね、逃げきるなんて不可能だったんですね……私の人生、本当に痛いこととか、辛いことばっかりだったなぁ……」

「ヘイローを壊す爆弾はお前には必要ない。壊れるまで弾丸を打ち込み続けてやる」

「ひぃぃぃ……!そんな、そんなに痛いのなんて……どうしてこんなことになってしまったんですか……」

 

 無慈悲なまでの宣言がなされ、アリウス生がその引き金を引こうとした時。

 

「イジメはカッコ悪いって先生に習わなかったのか?」

 

 路地裏に、突如声が響く。

 

「誰だっ!」

 

 ヒヨリから意識をそらし、周辺を警戒すれば……近くの屋根の上に、その男はいた。

 

「『蒼井センジョウ』……!!」

「『先生』、な」

 

 向けられた敵意に、センジョウはニヒルに笑い、左手を空へ掲げる。

 

「マダムからの命だ!奴を見つけたなら即座に射殺して構わない!」

「何かするつもりだが、構わん!撃てぇ!」

 

 統率された陣形のまま、一斉に放たれる銃弾。しかし、それがセンジョウへ届くことはない。

 

「すべて、はじかれた……!?」

「パルスフィールド……車椅子だからって展開できない訳じゃないんだなぁコレが」

 

 当然、常時展開しているわけではないが、それでも自衛には十分な程だった。そうして彼が注目を集めているなら。

 

「警戒が甘いな」

「なっ……!?錠前サオリ!?」

 

 『スクワッド』のリーダーである彼女が接近するには、十分すぎる隙だ。

 サオリは、流れるような手際の格闘でアリウス生の意識を刈り取ると、そのままセンジョウへ合図を返した。

 

「流石に手際がいいな。火力支援要らずか」

「まだこれから本題がある。補給が望めない以上、可能な限り節約した方がいい」

「それは……まあそうか」

 

 車椅子のまま、パルスフィールドを駆使して屋根から飛び降りたセンジョウは、そのままサオリへと近づく。

 

「あ、蒼井センジョウ……?どうしてリーダーと一緒なんですか……??ま、まさかリーダーを洗脳して……!?」

「それはマンガとかの読みすぎだろ」

 

 混乱した様子のヒヨリに、センジョウは呆れたようにツッコミを入れる。

 

「安心しろ、ヒヨリ。センジョウは今は私たちの味方だ」

「……信じて大丈夫、なんでしょうか。だって、私達は……」

「生徒裏切るような真似はしないから安心してくれ」

 

 センジョウのなげやりな言葉に、ヒヨリは怯えたような視線を向けるが、サオリがそれを諌める。

 

「時間がない。……ミサキはどうしたんだ」

「えっと……リーダーとはぐれた後、いつの間にかはぐれちゃいました……すみません」

「気にするな。……生きていてくれただけで、十分だ」

「リーダー…………」

 

 ヒヨリの肩をつかむサオリの顔は、今にも泣き出しそうにも見えた。

 

 だが、今は泣いている時間すら惜しい。

 

「ミサキの居場所にアテはあるのか?」

 

 センジョウの問いに、サオリは立ち上がる。

 

「……予想はつく。急ごう」

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 サオリの案内にしたがって夜の町を駆ける3人がたどり着いたのは、破壊された橋だった。

 

 そして、その橋の上に、1人の少女がぼんやりと立ち尽くしている。

 

「……来たんだ、リーダー」

 

 橋の上に立つ少女……戒野ミサキは、自らに近づく人影に気づくと、その顔を見て溜め息をついた。

 

「ああ。……無事で良かった」

「無事?……リーダーは今の状況を本気で『無事』だとおもってるの?」

 

 冷めた声で、突き放すようにそう言い放つミサキ。

 

「アリウス全部が敵。助けてくれる味方はいない。アツコも捕まった。……私達だって、1度は捕まりかけて、バラバラ。何度やっても、また同じことになる」

 

 だから無駄だと。そう言いたげな顔でサオリの顔を見た。

 

「味方ならいる」

「蒼井、センジョウ……」

 

 かつて敵だった男。自分達の被害者であり、自分達の最大の障壁となった存在に、ミサキは顔をしかめる。

 

「────そうしてすがっても。アリウスと同じ結果になる」 

 

 自分達はまた、『使い捨てられる』のだと、そう言いきった。

 

「ミサキ!」

「こないで」

 

 ミサキは、一歩後ずさる。

 

 彼女の背後に道はなく、橋の下を流れる川は雨の影響で流れが速く、落ちてしまえば……後の結果は、想像に難くない。

 

 もう、生きるつもりはないと。こんなに苦しい生など欲しくはないと、彼女は訴えかけてきていた。

 

 

 しかし。

 

 

「……無駄だ。ミサキ」

 

 

 それでも、サオリは彼女へ歩み寄る。

 

 

「飛び込んでみるか、ミサキ。例え飛び込んだところで、私も飛び込んで、必ずお前を川から引きずり上げる。お前が何をしようと、必ず生かす」

 

 それが、自分達の呪縛から解放され、飛び立った彼女の──白洲アズサから学んだ、『より良い明日(ハッピーエンド)』へ至るための道だから。

 

 彼女はもう、迷わない。

 

 

 諦めることは、ない。

 

 

 そんな、強く、鋭く光るサオリの視線に当てられたミサキは、静かに目を閉じて。

 

 

「……はぁ」

 

 

 深く、溜め息をついた。

 

「……変わったね。リーダー」

 

 呆れたような、諦めたような。そんな声をだし、サオリへと歩み寄る。

 

「……アツコを、助けに行くんでしょう?」

「ミサキ……」

「別に、そこの男を信じた訳じゃない。私は、リーダーの事を信じただけ。それだけは勘違いしないで欲しい」

 

 ミサキに睨まれたセンジョウは苦笑を浮かべる。

 

「これからまた、辛くて苦しい事が始まるんですね……」

「全ては虚しい事、その事実が変わる訳じゃない」

 

 ヒヨリと、ミサキの言葉に。けれども、サオリは言葉を返す。

 

「……『それでも』。進み続けることで、アズサは答えを得たなら。私達もすすもう」

 

 その言葉に、二人は静かに、けれど、確かに頷く。

 

 

 その光景を見ていたセンジョウは、満足げに頷くと、車椅子を前に進める。

 

「結論は出たみたいだな」

 

 その声にサオリ達がセンジョウを見ると……すこし、驚いた顔をする。

 

「今さら何を驚いたんだ?……これで全員揃ったなら、さっさといこ────」

 

 

 

 

 

「そうね。『全員』。揃ったわね」

 

 

 

 

 

 声が。聞こえた。

 

 センジョウは、その声に体がまるで石になったかのように固まる。

 

 体は動かないのに、うるさいほどに心臓が鳴り響く。

 

「い、いまぁ……なんかぁ……、聞こえる筈のない声がぁ……聞こえた気がするんだけどぉ……」

 

 恐る恐る、振り返らないように細心の注意を払いながら、サオリ達の顔を見る。

 

 そっと、目を逸らされた。

 

 

「はっはっはっ!まっさかぁ!此処に来て小粋なジョークだよな!なぁ!?」

 

 動揺したまま、そう声を出す。

 

「そうね。まっっっっっったく、笑えない冗談だと思うわ」

 

 

 また、声が聞こえた。

 

 

 サオリは、静かに首をふる。

 

 

 恐る恐る、センジョウが振り返ると。

 

 

 

 

 

 

 般若(ユウカ)が、そこに立っていた。

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!!なんでぇぇぇ!?」

「逃がさないわよ」

 

 

 ユウカは、咄嗟に逃げ出そうとしたセンジョウの肩をガッチリとつかみ、振りほどけないように固定する。

 

「遅くなるって言っただろ!!なんで来た!!」

「突然あんな連絡寄越したアンタの考えが解らないとでも思ったの……??」

 

 ユウカは、笑顔のまま、しかし、これっぽっちも笑ってない目でセンジョウを見る。

 

「さ、流石ユウカだなぁ……」

「誤魔化しにすらなってないわよ」

 

 全身から吹き出す汗に、肝を冷やしながらセンジョウはユウカの顔を見る。

 

「……えっと……お、俺……これからちょっとぉ……急いでやらなきゃならない仕事がぁ……」

「見れば分かるけれど?」

 

 それで?という言葉の気迫に圧されつつ、センジョウは言葉を続ける。

 

「だからそのー……ユウカは、先に帰ってて大丈夫だぞ……?」

「却下」

 

 笑顔のまま、バッサリとその意見を叩ききる。

 そうして、真剣な表情のまま、口を開く。

 

「……そうやってまた。1人で危険なことに首を突っ込もうとして。私にはなにもさせないの?」

「いや……だってそれは……これは『先生』の仕事だから……」

 

 センジョウのその言葉に、ユウカは自分の中のなにかが『ブチィッ!!』とキレる音を聞いた。

 

「つきもしない格好をつけるのも大概にしなさい!貴方のそれは心配でもなんでもない!ただのエゴの押し付けよ!!」

「でも……」

「でもじゃない!!」

「はい!!」

 

 ユウカの剣幕に思わず背筋を伸ばす。それほどの凄みがそこにはあった。

 

「貴方はどうしてあの時……先生が何も言ってくれなかったあの日!無茶をしてまで1人で勝手に動いたのか覚えてないの!?」

「それ、は」

 

 ユウカの言葉に、『過去の事』として、いつの間にか無意識に忘れようとしていた自分の失敗を思い出す。

 

「どうしてこう、貴方達はダメなところばっかり似てるの……!」

 

 怒りに燃えている筈のユウカの瞳には、いつの間にか涙が滲んでいた。

 

「えっと……その」

 

 ……蒼井センジョウの人生経験において、女の子に怒られながら、同時に泣かれたことは、これがはじめてだった。

 ただでさえ、家族にばかり偏重した人間関係を築いてきていた彼には、ユウカの怒りはまだしも……『涙』の理由は、想像もできなかった。

 

「……ごめん」

「ごめんじゃない。私が欲しい言葉は、それじゃない」

 

 涙目で睨まれるセンジョウは、必死に答えを考える。

 どうすれば『許されるか』ではなく。どうしたら、『泣き止んでくれるか』を。

 

 その考えが、彼にとってどういう意味を持つのか。彼自身も解らないまま。

 

 

 けれど、考えすらまとまらない。

 

 

 どうして自分は、彼女の涙に此処まで心を乱されるのだろう。

 

 

 諦めたように、ユウカは口を開く。

 

「私は、そんなに信用できないの……?」

 

 その言葉に、彼は自らの過ちに、ようやく気づく。

 

────『先生(オヤジ)』に、なろうとしていた。その自分が、自分に向けた思いを、なぞるようにして、ユウカを傷つけていた。

 

 

「…………私は、貴方の力に成れる。一緒に戦える。……そう、伝えたのに」

 

 

「私はまだ……貴方に、信じて貰えてなかった……」

 

 

 …………いつの間にか、ユウカの表情からは怒りの火は消え去り、涙で顔を濡らしながら、けれど、センジョウを睨んでいた。

 

「ユウカ……俺は」

 

 俺は。君を傷つけた。

 

 

 だから──

 

 

 

 そう言いかけて、センジョウは左こぶしで、力強く自らの顔を殴る。

 

 

 鈍い音がし、口の中が切れた感覚ともに、血の味が広がっていく。

 

 

 彼の突然の行動に、ユウカは驚いた様子で一歩踏み出すが

 

「いきなりなにやって……!」

「俺は!!」

 

 センジョウの声が、その足を止める。

 

 

「俺は……まだまだ未熟で、半人前で!1人で出来ることなんて、殆ど無いかもしれない!親父に託されたことも!俺1人じゃ成し遂げられないから!みんなに頼った!」

 

 

 

 だけど。いつの間にか、オヤジに言われた訳でもないのに。キミの事を守れると。そう、勝手に思っていた。

 

 それが傲慢なことだと、キミは気づかせてくれた。

 

 心の中で、そう付け加える。

 

 

「だから!」

 

 

──だけど。この気持ちを、言葉にはしない。

 

 

「……頼む。ユウカ」

 

 

──きっといつか。自分らしい答えが見つかる。その日までは。

──この気持ちに、自分の納得の行く『名前』が、付くまでは。

 

 

「────俺を、助けてくれ」

 

 

 

 深く、深く頭を下げる。

 

 

「…………本当に、ほんっとうに。……世話の焼ける、しょうがない人」

 

 そう言いきる、ユウカの表情は──センジョウには見えない。

 

 

「────当たり前でしょう。いつでも、何度でも、私は貴方を助けるから」

 

 

 だから。

 

 

「『一緒に』行きましょう……センジョウ」

 

 少女は、少年に手を伸ばし。

 

「……ああ!」

 

 少年は、その手を掴む。

 




あぁ~ボーイミーツガールなんじゃあ~


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