青空DAYS   作:Ziz555

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仕事が……忙しい……書く時間が……


忘れ───神─の──:その6

 ミカの襲撃を、センジョウの奥の手……パルスフィールドを意図的にショートさせることで、発光を伴う爆発を起こす、『目眩まし』を使うことでなんとか切り抜けた彼らは、どうにか目的の通路からカタコンベへと進み、アリウス自治区へと侵入を果たしていた。

 

 そのまましばらく進み、廃墟と化した教会へ彼らは身を潜める。

 

「なんとか此処まではこれたけど……」

「此処から先は言ってしまえば敵の陣地。……無策で突っ込むのは無謀」

 

 ユウカの言葉の先を補足するように、ミサキが言葉を続けた。

 

「ああ……いちど、作戦、を……」

 

 ミサキの言葉に同調するサオリだが、ふらふらと体が安定せず、どこか様子がおかしい。

 

「……大丈夫なの?」

「もんだい、ない……」

「そうは見えないけど……少しごめんなさい」

 

 サオリの変化に気づいたユウカは、彼女へ歩み寄ると、額に手を当てる。

 

 普段のサオリであれば、なんなく阻めるようなその行為も、今の彼女にはその余裕はない。

 

「熱があるわね。……作戦会議も必要だし、一度少し休みましょう」

「し、かし……」

「万全……とまではいかなくても、この状態で行軍する方がリスクが高くなるのは明らかよ。少し休みなさい」

 

 ユウカは泣かば強引にサオリを座らせると、懐からハンカチを取り出した。

 

「み、水ならわたしが……」

「ありがとう」

 

 ヒヨリは背負っていたバックから水筒を取り出し、ユウカへと手渡す。

 ユウカは受け取った水筒の水でハンカチを濡らす。

 

「これは俺の鎮痛剤だが……成分的に解熱剤と大差ない筈だ。飲んでおいた方が楽になる」

 

 センジョウは自身の骨折用の鎮痛剤を取り出し、ユウカへと渡す。

 

「怪我の功名、かしらね?」

「……次からは常備薬を持ち歩く」

 

 普段は持っていないものね?というユウカの茶々に、センジョウは気まずそうに目をそらした。

 

「ほら、飲みなさい」

「すまない」

 

 薬と水筒を受け取ったサオリは、それを飲み干すと、ユウカに促されるまま横になった。

 ユウカは彼女の額へ、濡れたハンカチを乗せる。

 

「ある程度したら起こすから、今は少しだけでも寝なさい。いいわね?」

「……ああ」

 

 ユウカは、ぽんぽん。とサオリの頭を軽く撫でると、サオリは微睡みの中で、ゆっくりと意識を手放した。

 

「……お、お母さんみたいですね……」

「リーダーが子供に見えるのなんて初めて見た」

「どうみても錠前さんの方が大人っぽいと思うのだけれど……?」

 

 優しくサオリの頭を撫でるユウカの姿に、ヒヨリとミサキは感心したような顔をして、ユウカはその感想へ小声で抗議した。

 

「いい母親になりそ──」

 

 そう言いかけたセンジョウの顔面へ水筒が飛んでくる。

 

 なんとか左腕でとっさにそれをキャッチしたセンジョウは、水筒をヒヨリへ返すと、ユウカの隣へ移動した。

 

「危ないだろ!!」(小声)

「あんたが変なこと急に言うからでしょ!」(小声)

「誉めたんだから良いだろ!」(小声)

「誉めたとは言いませんー!」(小声)

 

 サオリに配慮してか、静かに不満を言い合う二人の姿に、ヒヨリとミサキは苦笑いを浮かべていた。

 

 

 

 閑話休題(何はともあれ)

 

 

 

 スクワッドのリーダーであり、自治区に詳しい彼女抜きでの作戦会議は難しいと判断した彼らは、休憩をしつつ、互いの身の上の話をしていた。

 

 

 終わらない戦争の日々。それにより親を失った孤児達。突如現れた『大人』による支配。アツコとの記憶。サオリの戦い。

 

 

 悲惨な日常の中で、『大人』に食い物にされる彼女達の、必死に生きる記録と、記憶。

 

 だからといって彼女達の罪が消えることはない。

 

 だが、それでも。

 

────彼女達だって、被害者だった。

 

 

「……要するに、その『マダム』ってやつをブッ飛ばせばいいな」

「そんな単純な話なら苦労はしないけれどね」

 

 この世界は、『ゲーム』ではない。

 『ラスボス』を倒して、それではい。ハッピーエンド。とはいかないのが、現実だ。

 

「今回の目的はあくまでもアツコの救出。『マダム』との戦闘は……可能な限り避けるべきだと思う」

「はい。彼女はアリウスの、文字通り『全て』を支配しています……私達の、未来や、心まで……そんなものと戦うのは、どんな事よりきっと苦しい筈です」

 

 二人の言葉は、冷静に現状を分析した判断だった。だが、それでも、センジョウにはそれが、『マダム』に怯えている……彼女に勝てないと言うことを、『選択』すら、支配されているように見えた。

 

────彼女達もまだ、『マダム』に支配されている。

 

 

 そっと、センジョウの拳に、ユウカの手が重ねられた。

 

 いつの間にか、彼は自分の爪が手に食い込むほどに、強く握りしめられていた。

 

「センジョウ」

「────わかってる」

 

 わかっていた。わかっている。

 

 今の目的は『マダム』を倒すことではない。

 

 

 しかし、それでも。

 

 

「俺は」

 

────そんな『大人』を、許せなかった。

 

 

 そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、ユウカはセンジョウの拳に指をいれ、優しくその手をほどいて、包み込む。

 

「──戦う時は、私も一緒よ」

 

 手に触れる温もりに、センジョウの心に生まれた怒りが、緩やかに収まるのを感じた。

 

「……ありがとう」

 

 センジョウのその言葉に、ユウカは満足げな笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「……私達、いちゃつくダシにされてない?」(小声)

「わ、悪気がある訳じゃないと思います……」(小声)

「本気で怒ってくれてたのはわかるけど……はぁ」(小声)

「雑誌みたいなこと本当にやる人っているんですねぇ……」(小声)

 

 

 

 

 許してあげてほしい。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

「私は……また」

 

 ベアトリーチェの策謀により、『何か』に絡め取られたセイアは、白昼夢の中をただ呆然と彷徨っていた。

 

 考えているのは──友の事。

 

「……皮肉な話だ。童話だと、寓話だと友の事を揶揄していた私自身が、寓話の主題になるような過ちを犯し、挙げ句、狡猾な悪魔の手にかかるとは」

 

 どうにか抜け出せないかと、歩みを進めていた筈の彼女の足は、いつの間にか止まり、その場に座り込む。

 

「これも、破滅の未来の一部なのか……?『先生』や『英雄』の力があっても、変えられない、世界の流れなのか……?」

 

 彼女はたしかに、『エデン』の名を冠したものが、1人の大人と、その意思を継いだ少年の手によって救われる様を見た。

 だからこそ、今まで諦めずに戦っていた。

 

 しかし、結果的に彼女の成したことは、逆に友を──聖園ミカを、『お姫様』から『魔女』へと貶めることだけだった。

 

「すまない……すまない、ミカ。……すまない、ナギサ……」

 

 

 踞り、塞ぎ混んで嗚咽のような声を漏らす。

 

 だが、此処は彼女の夢の中。その声が誰かに届くことはない。

 

 

 

 

────それは、"このままでは"。の話。

 

 

 

 

「その言葉は、ちゃんと本人に伝えないと」

 

 

 

 

 突如聞こえた声に、セイアは顔をあげる。

 

 聞こえる筈のない声。もう、出番を終えた筈の彼。

 

 

 

 

────『先生』が、そこに立っていた。

 

 

 

 

「せ、先生!?」

「やあ、セイア。すこしぶり、かな?」

 

 ひらひらと片手をふって挨拶を返す彼は、間違いなく彼女のよく知る『先生』だった。

 

「ど、どうして此処にいるんだ……!だって、ここは」

「どうしてもなにも、『ここは私の夢の中でもあり、君の夢の中でもある』って言ったのは、セイアでしょ?」

 

 それに。と、『先生』は言葉を続ける。

 

「泣いてる生徒がいるのに、放っておくのは、先生失格だからね」

 

 以前とこれっぽっちも変わらない様子で、彼はそう言いきった。

 

「それに、センジョウ1人に頑張らせっぱなしじゃ、格好つかないし」

 

 託したとは言え、彼の中から『想い』や『意思』が途絶えるわけではない。

 センジョウの進む道に、彼の在るべき場所がないのだとしても。彼には彼の進む道がある。

 

 そんな『先生』の姿に、セイアは目を見開き、……しかし、その後、目を伏せた。

 

「……来てくれたことは、感謝している。だが、私を蝕む『コレ』は、そう単純なものでも、簡単なものでもない」

 

 こうして夢の中で話している間にも、セイアの肉体は大きなダメージを受け続けている。

 何をしようと、手の施し様のない、不可逆な『変質』。それが、セイアの肉体に起きている現象だ。

 

 人智をこえ、理解を越えた事象に、先生に成す術など在るわけもない。

 

「確かに、私に今のセイアをどうにかする。って言うのは、難しいかもしれない」

 

 彼は、それを静かに受け止める。

 

「ここには『シッテムの箱』もないし、私に何か特別な力があるわけでもない」

「なら、なぜ……」

 

 どうして、諦めでもなく、怒りでもなく、ただ、純粋に落ち着いていられるのか。

 

 ならなぜ、私の前に現れたのか。

 

 答えのわからぬまま、セイアは彼の顔をみる。

 

「夢とか、意識の世界とか、そう言うのは私の領分の外だけど」

 

 セイアの問いに、彼は掌を開く。

 

 なにも握らないその手になんの意味があるのか。意図も読めずにセイアが、その手を見つめていると。

 

 

 

────いつの間にか、一枚の『カード』が現れた。

 

 

「コレは、大人……というか、『私』の特権だからね」

 

 

 手品でも見せたように、自慢げにカードを手に持ち。くるくると手で遊ぶ。

 

 

「セイアは、ミカに謝りたいんだよね?」

 

 突然の問いに、セイアは止まった思考が動き出すのを感じた。

 

「も、勿論だとも。彼女があの絶望にとらわれた理由は、私に在る。私は、彼女の事を魔女にしたまま、終わりたくはない」

 

 その答えに、彼は満足そうに頷く。

 

「うん。じゃあちゃんと頑張れるね」

 

 ピッ。と、それまで遊んでいたカードを指で挟み、構えるように持つ。

 

「私にできるのは、『縁を繋ぐ』こと。私自身に出来ないことを、誰かに託して、叶えてもらうこと」

 

"だから、そこから先は、君の頑張り次第だよ。"

 

 そう、彼はセイアに笑いかけた。

 

────いつの間にか視界が光に包まれ、セイアは気がつくと、どこか神秘的な空間に立っていた。

 

 

 木で作られた建造物と、視界に広がる緑豊かな景色は、彼女が知る限りでは、百鬼夜行自治区に良く似ていた。

 

 

 

「────やれやれ、其方も厄介な事を押し付けてくれるものじゃ」

 

 

 

 そこには、白い肌に、白い髪、白い尾を持つ1人の少女が佇んでいた。

 

 

「さて、トリニティの預言者よ……」

 

 

 少女は、妖しく笑う。

 

 

「其方の覚悟。聞かせてもらおうかの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────目を開ける。

 

 

 

「せ、セイアさま!?」

 

 

 

────体を起こす。

 

 

「まだお体が……ご無理をなさらないでください!」

 

 

 周囲からの、自らを心配する声に、自分が夢から帰ってきたことを実感しながら、セイアは痛む身体に鞭をいれ、周囲の生徒へ声をかける。

 

 

「……ナギサを呼んでくれ」

「な、ナギサ様ですか……?」

「手遅れになる前に、速く」

 

 我ながら、自分らしくはないと、そんなことを考えながら、セイアは、自分の心に正直に進む。

 

「……待っていてくれ、ミカ」

 

 

 

 一度は夢の中で挫けた少女は、今確かに、自分の足で立ち上がっていた。




というわけで先生回でした。

先生とセンジョウの得意なことの違いについて書いた話だったりしますが、ちゃんと伝わってるといいなぁ。


センジョウへ『ブルーアーカイブ』が託されても、この物語はやっぱり先生とセンジョウの話でもあるので。
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