青空DAYS   作:Ziz555

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書くのが楽しくて書き上がったらこんな時間(深夜1時)!




─────神────:その9

 ミカとセイア、ナギサの仲直りとが終わり、ミネの手当てを受けたセンジョウは、鎮痛剤の服用により、なんとか動ける程度には回復していた。

 

「……本来であれば、貴方も要救護者です」

「わかってるよ。……それでも、後から行くと約束したんだ」

 

 ミネの指摘に、都合で返す。

 すると彼女は深くため息をつく。

 

「仕方ありません、私も同行します。その方が負担は減るでしょう」

「私も行くよ」

 

 ミネの言葉に、ミカが賛同する。

 

「罪滅ぼし、って訳じゃないけど。……今は貴方と一緒に戦ってみたい気分だからさ」

 

 気まずそうに、すこしばかり、恥ずかしそうに彼女は頬を掻いた。

 

 どんな理由であれ、今のセンジョウにとって、共に戦う仲間が増えるのは好意的に取れることだ。

 

「ありがとう。助かる」

 

 素直に感謝の言葉を二人へ返す。

 

「私達は近くまで来ている正義実現委員会に護衛をして貰ってここを離れることにします」

「折角、目的を果たしたとしても、倒れてしまっては全てが水の泡になってしまうからね」

「……ミカさん。おきをつけて」

 

 戦闘が得意ではない彼女達は、素直に後ろへ下がることを選び、ミカもそれに頷いた。

 

「……それじゃ、先へ──」

 

 

 

 センジョウが顔を上げた瞬間。視界にひとつの影がうつる。

 

 

 それは、聖徒会の複製(ミメシス)の様だったが……明らかに、『雰囲気』が違っていた。

 

 

「敵だ!!」

 

 咄嗟の言葉に、いち早く反応したのは、他の誰でもない蒼森ミネだった。

 即座に振り返り、シールドを手に取ると、次の瞬間には身体が宙を舞っていた。

 

「────ハァッ!!」

 

 全身の体重と、力を込めた一撃が床のレンガを砕き、土埃を巻き上げる。

 それから遅れるようにして、謎の複製(ミメシス)の弾丸がセンジョウ達へ放たれるが、ミネの一撃で弾丸は衝撃の壁に阻まれ、彼らへ届くことはなかった。

 

「……どうやら、ただの敵では無いようですね」

 

 床へ突き刺さっていたシールドを引き抜くと、もう片方の手に銃を取る。

 

「……ナギサ様、セイア様。私の後ろへ。お守りします」

 

 武器を構え、臨戦態勢を取るミネの横に、ミカが歩み寄る。

 

「友達を守るのも、友達の役目でしょ。二人に怪我はさせられないもんね」

 

 彼女は、迷いのない表情で不敵に笑い、武器を構える。

 

「ごめんね、センジョウくん。行くっていったけど、やっぱりナシ。私は二人を守るから」

「……構わない。自分のやるべきと思ったことをしていいんだ」

 

 センジョウの言葉に、ミカは「サンキュ」と、ウインクを返す。

 

「センジョウ様は元々の目的へ向かってください。……終わったら必ず、救護させていただきます」

 

 ミネは敵から目を逸らすことはせず、そのまま背後のセンジョウへと声をかけた。

 

「……そっちは任せた!」

 

 そうしてセンジョウは、ヌィル・ヴァーナのブースターを吹かして、先へと進む。

 

 

 遠ざかるブースターの音を背景に、二人は言葉を交わす。

 

「二人への攻撃は任せて良いよね」

「ご心配なく。何人たりとも、私の盾を貫けるものはいません」

「いいね。じゃあ、心配なしで全力でいける」

 

────身の丈ほどの銃器を両手に備えた複製(ミメシス)の周囲に、聖徒会が産み出される。

 

「任されちゃったからには……負けないよ!」

 

 数の差に怯むことなく、ミカは前へと踏み出した。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 ……センジョウは、背後から聞こえる銃撃の音に、全員の無事を祈り、先へ進む。

 

 壊れた柱の都合で大きく迂回するようにして先へ進んだセンジョウは、ようやくひとつの扉をくぐった。

 

 

「ユウカ!!みんな!!」

 

 

 目的の聖堂……至聖所は、それまでの回廊とは異なり、大きく開けた礼拝堂のような作りとなっていた。

 

 

 妙に静まり返ったその空間の、祭壇のその上。そこに、1人の少女が囚われていた。

 

「あれは……!」

 

──視界の端に映る戦闘痕、妙に静な空気。そして、捧げられた贄の少女。

 

 それはつまり。

 

 

「遅かった様ですね。蒼井センジョウ」

 

 

────ベアトリーチェが、そこに立っていた。

 

 

「お前……っ!!」

 

 すぐさま飛びかかろうとして、彼女の足元に伏せる、1人の少女の姿を見つけた。

 

 

「……セン、ジョウ……」

 

 

 全身が傷だらけで、血を流している彼女は、それでも彼の名を呼んだ。

 

「ユウカ!!!」

「おっと。そこまでです」

 

 今にも飛びかかろうとしてするセンジョウに、ベアトリーチェが制止をかける。

 

「これ以上近づけば、彼女の頭をこの場で踏み砕きます」

 

 グリグリと、ユウカの頭を足蹴にするベアトリーチェに、センジョウは強く歯を食い縛った。

 

「貴様ァ……!!」

「立場がわかっていないようですね。……貴方はもう負けているのです」

 

 足でユウカを弄びながらベアトリーチェは続ける。

 

「貴方は結局、誰1人として守れはしません。貴方をここへ向かわせるために残った少女たちも、『バルバラ』の前には無力でしょう」

 

 ベアトリーチェは、歪んだ笑みを浮かべながら、センジョウを見下す。

 

「貴方が如何に『シャーレ』を継ごうとも、所詮は子供。……貴方には、『物語の英雄(しゅじんこう)』は務まりません」

 

 そうして、ベアトリーチェがユウカの手のひらへ足を振り下ろす。

 

「うあ゛ぁぁッ!!」

「ユウカ!!」

 

 手の骨を砕かれ、ユウカは苦痛の声を上げる。

 

 

「このまま目の前で1人ずつなぶり殺して差し上げましょう。……それが、貴方の限界です」

 

 

 その声に、センジョウは全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。

 

 

────同調率、99.9%。『最大稼働』に移行します。

 

 

「ユウカを放せ外道!!」

「!?」

 

 瞬時にジェネレータの回転は臨界に到達し、全身が赤く発光する。

 

 そして、目にも止まらぬ速さでベアトリーチェへと近づいたセンジョウは、右足の蹴りを叩き込んだ。

 

 センジョウは、痛むからだを気にも止めず、その場に膝をつき、ユウカを抱き上げた。

 

「ユウカ!ユウカ!!」

「……セン……ジョウ」

「ああ、そうだよ。俺だ。助けに来たんだよ」

 

 弱々しく自分を見上げるユウカの姿に、涙を湛えながら声をかける。

 

「だ、め……にげ、て……」

「そんなこと!」

 

 ユウカの言葉を聞けるわけもなく、彼はユウカから離れようとはしなかった。

 

「……すこし、油断。しましたね……」

 

 蹴り飛ばされていたベアトリーチェが、瓦礫の中より立ち上がる。

 

「成る程。それが『人工奇跡』の力ですか。たしかに、素晴らしい力ですが──」

 

 

 

 私には。及ばない。

 

 

 

 

 次の瞬間、ベアトリーチェの身体がメキメキと音を立てて変わっていく。

 

 頭が割れ、手が枝のように伸び、足は根を張るように広がっていく。

 

 

 そうして、無数の赤い眼が、花のように開いた頭からセンジョウを覗いていた。

 

 

「……それがお前の本性か」

「ええ。貴方の持つ、陳腐な神秘もどきとは違う、まさに神々しさを伴う姿でしょう?」

 

 

 センジョウは、ユウカをそっと、床に下ろす。

 

 

「ラスボスらしくて丁度良い。人形のお前を殺すより、気分が晴れそうだからな……!」

「好きなだけ吠えなさい。……格の違いと言うものを、教えて上げましょう」

 

 

 センジョウは、振り返り、ユウカへ笑顔を見せる。

 

「必ず勝つ。待っててくれ」

「……だ、め……!!」

 

 そうして彼は、彼女の制止の言葉も聞かずに、前へと足を踏み出した。

 

 

「でかい図体で俺を捉えられるかよ!!」

 

 

 センジョウは、初めて最大稼働をした時のように、パルスフィールドのよる足場と、ブースターによる急加速、急制動を駆使して、ベアトリーチェへと距離を詰める。

 

「取った!!」

 

 そのまま、瞬時に背後へ入り込み、パルスブレードを展開する。

 

 

 そして、次の瞬間、白く長い、枝のような腕に叩き落とされた。

 

「がはっ……!!」

「ハエは所詮ハエです」

 

 地面へと叩き落とされたセンジョウめがけて、再び手が振り下ろされる。

 

「くそっ!」

 

 瞬時にブースターを吹かして距離を取り、腕を回避するセンジョウ。

 

 しかし、攻撃は終わらない。

 

「見え透いています」

 

 もう片方の腕がすぐさま彼の動きを読み、その指でヌィル・ヴァーナごとセンジョウをつかみ上げた、

 

「しまっ……!!」

 

 拘束されたセンジョウが脱出の為の手段を考えるより先に、アラームが鳴り響く。

 

────高熱源反応。回避を推奨。

 

 反応の元を見れば、花のような部位の前に、禍々しいエネルギー体が収束されていた。

 

「塵と消えなさい」

 

 

 放たれたエネルギーは爆発を伴い、センジョウの全身を焼く。

 

 

「うぐあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 自身の身を守るパルスフィールドによる減衰ですら防ぎきれなかった衝撃が、その身体を焼き、燃えるような、弾けるような痛みに、センジョウは叫ぶ。

 

 

 衝撃と共に弾き飛ばされたセンジョウは、2.3度程床を弾み、倒れ伏せた。

 

 

 すこし遅れるようにして、完全に破壊され、千切れ飛んだ両手腕部パーツが、彼のそばに落下する。

 

 

「ぐ、そっ……!」

 

 

────機体損傷甚大。戦闘維持不可能。

 

 

 残酷な現実を突きつける表示に、それでもセンジョウは身体を起こそうと腕に力を込めるが、肘をついて上体を起こすのが精一杯だった。

 

 

「わかったでしょう?これが格の違い。『大人』と、『子供』の違い……」

 

 

 異形の体躯のまま、ベアトリーチェは彼を見下し、勝ち誇ったようにその身体を広げる。

 

「私こそが、神になる存在。私は、アリウスの神なのです」

 

 傲慢な姿に、センジョウはしかし、曇りのない眼光で彼女を睨む。

 

「……諦めだけではなく、物わかりも悪いようですね」

 

 呆れたように彼女はそう言うと、ゆっくりと手を伸ばす。

 

 

 そうして、その手はセンジョウではなく……ユウカの身をつかむ。

 

「貴……様ァ……!!」

「ふふ。この少女は貴方にとって特別なようですからね。……やはり、貴方の心を折るには、これが一番良い」

 

 ユウカの頭へ、もう片方の手が添えられる。

 

「このまま、頭を潰して差し上げましょう」

「させ……る……かぁ……!!」

 

 力なくこちらを見つめるユウカに、センジョウは手を伸ばそうとするが、うまく身体が動かず、その場に倒れてしまう。

 

「そのまま這いつくばり、死に様を眼に焼き付けなさい」

「く……あ、あぁ……!」

 

 ギリギリと締め付けられ、ユウカは苦痛の声を上げる。

 

「(くそ……くそ……くそぉっ!!)」

 

 ……ユウカが目の前で苦しんでいるのに、立ち上がることすらできない。

 

 結局、自分1人では、なにもできない。

 

「(俺は……俺は!!)」

 

 

 武器を失い、力なく伏せることしか、できない自分に怒りが募る。

 どれだけ考えても、もう、手だてが見つからない。

 

 ただ嘆くことしかできない自分の惨めさに、涙がこぼれる。

 

 

 

 

 カツン。と音が聞こえた。

 

 

 

 

 ハッとして音の方へ眼を向ければ、そこには一本の薬が転がっていた。

 

 

 

 

────『調整剤』……!?

 

 

 

 

 それは、危険性故にユウカに没収され、もう使うことはないと思っていた、『切り札』。

 

 

 それがなぜここにあるのか。誰がなんの目的でここに転がしたのか。……そんなことを、考えている暇は、ない。

 

 

 センジョウは、ただ、ユウカを救う。その一心で薬へ手を伸ばす。

 

 

「ヌィル……ヴァーナ……」

 

 

 装甲は剥げ、両腕部は千切れ、まともに機能を失った、自らの武器へ、想いを馳せる。

 

「お前が……お前が、人の意思を……想いを形にするマシンなのだとしたら……」

 

 

 自らの意思に、想いに答えるように、『ヌィル・ヴァーナ』は何度もその力を見せた。

 

 

────だから。

 

 

「一度だけで良い────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────俺に!!『奇跡』を、寄越せ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 そうして彼は。薬を自分の心臓へ突き立てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────完全同調を確認。

────『魂』を接続。

────『ヌィル・ヴァーナ』。Phase5へ進行。

────『奇跡』を。実行します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼとり。と、白い手が地面へ落ちた。

 

「……は?」

 

 何が起きたかわからぬ様子で、ベアトリーチェは地面へ落ちた『自分の腕』を呆然と眺める。

 

 

「……うぎゃあああああ!!」

 

 

 切断されたことに遅れて気づき、その痛みに絶叫を上げる。

 

 

 続いて、同じように、ユウカを掴んでいた手が切断され、自らの身体から離れていく。

 

 

「何だ!何が!!何が起きている!!」

 

 

 支えを失った筈のユウカの身体は、淡い光に包まれ、なぜかその場へとどまり、そして、ゆっくりと宙を進む。

 

 

「蒼井!センジョォォォォォオオオオ!!」

 

 

 

 不可解な現象の原因である筈の、男の名を叫ぶ。

 

 

 

 

 

────倒れていた筈の彼は、その場に立っていた。

 

────彼は、背中に『無限』を描く光を背負い。

 

────彼の周囲には、切断された筈の装備の両腕が宙を漂い。

 

─────彼は、神々しい、淡い緑色の光に包まれていた。

 

 

 

 

 

「……ベアトリーチェ」

 

 

 

 

 

「『格』の違いを。教えてやる」







『ヌィル・ヴァーナ』。それは────
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