青空DAYS   作:Ziz555

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幕間その1ということで、ヌィル・ヴァーナ回です。


主人公メカの大破後となれば……やっぱり「そう言う展開」は必須でしょう!


幕間
センジョウとNuill-Vana:その1


 アリウスでの事件から数日後。センジョウはウタハと、ヒマリに呼ばれ、ミレニアムの性能試験場へと来ていた。

 

「やあ、元気そうだね」

「……なんかデジャブだなこれ」

 

 センジョウは昔──具体的に言うなら、初めて『Nuill-Vana』を受け取った日の事を思い出していた。

 

『たしかに、良く似ているかもしれませんね』

 

 あの日と同じように、ヒマリはモニター室にいるようで、放送でセンジョウへと声をかける。

 

「……で。ヌィル・ヴァーナの修理が終わったって聞いたけど……ただ受領するならここじゃなくて良いよな?」

「相変わらず理解が早くて助かるよ。センジョウくん。左腕のデバイスでいつものように『ヌィル・ヴァーナ』を呼び出してみてくれないか?」

「ここでか、……まあ、別に良いけど」

 

 ポチポチとデバイスを操作すると、何時ものように──いつの間にか開閉式になっていた天井が開いてから──ヌィル・ヴァーナが空から飛来する。

 

 

 だが、しかし。

 

 

「…………なんか、変わってね?」

 

 これまでの『ヌィル・ヴァーナ』は、大きな四角い鉄の箱と言うような見た目をしていたが、今飛来した物体は、鉄の鳥……というより、戦闘機の様な見た目をしている。

 

 また何か勝手に改造を施したのかと、疑いの目線をウタハへ向けると、やはり彼女は自慢げで、満足そうな顔をしていた。

 

「さあ、装着してみてくれ」

「これ本当にヌィル・ヴァーナなのか……?」

 

 怪訝そうに『ヌィル・ヴァーナ』へと近づくセンジョウに対し、『ヌィル・ヴァーナ』は普段と同じ様に認証システムを起動させた。

 

 

──マスター。『蒼井センジョウ』を確認。

──装着用シークエンス、実行します。

 

 

「うおっ」

 

 それまでとはちがい、自動的に装着用のアーマーを展開し、センジョウへと装着されていき、あっという間にセンジョウは『ヌィル・ヴァーナ』を装着した姿となった。

 

 が。

 

「……あれ。なんか小さくね」

 

 

 以前と比べ、かなりスッキリしているというか、『アビ・エシュフ』のような搭乗型のパワードスーツというよりは、全身を覆う機械仕掛けの鉄鋼鎧に、最低限の武装をつけただけ。と言うような風貌をしていた。

 

 しかも、良くみれば飛来した『ヌィル・ヴァーナ』のパーツがガッツリ残っている。

 

「よし!起動実験成功!!」

「また実験かよ!!しかもこれのどこが成功してるんだよ!!」

 

──ネガティブ。装備は成功しています。

 

「うおっ!?」

 

 脳内に響いた『声』にセンジョウは驚き、身を引いた。

 

「な、なんなんだこれ……」

『ふふ。混乱しているみたいですね』

「説明は本来コトリの領分だが……今は私が対応しようか」

 

 ウタハは、懐からなぜか眼鏡を取り出し、それを装着する。

 

「説明しよう!今のセンジョウくんが装着しているのは、『Nuill-Vana』であって『Nuill-Vana』ではない!」

 

 いつの間にか手に持っていたリモコンを操作すると、何処からともなく飛来したドローンがホログラムを空中へ投影する。

 

「コアユニット以外の全てが新造され、ウェポンユニットはそのままに、同乗者へと装備されるアーマーユニットを新たに獲得した『Nuill-Vana』!!その名も────」

 

 

 様々な数値や文字の展開されたホログラムに、デカデカと文字が写し出され、ウタハはそれを力強く指し示す。

 

「『Nuill-Vana Spec-2』!!」

 

 センジョウはその言葉をきき、バイザーで隠された顔をしかめた。

 

「……要は修理ついでに超大型改造を施したんだな」

『それは少しちがいます』

 

 ヒマリがセンジョウの言葉に否定を述べる。

 

『はじめはエンジニア部も、私としても、そのまま修理を進める予定でしたが……私がコアユニットの解析を進めていると、コアユニットからこの『Spec-2』の設計図が提示されたのです』

「『ヌィル・ヴァーナ』が?」

 

──ポジティブ。マスターへの最適なフィッティングを完遂した事で算出された、『Nuill-Vana』の新たな姿です。

 

「……で。さっきからこの脳内に響く声はなんなんだ?」

 

 センジョウはコンコンとバイザーを指でつつき、ヒマリのいるモニター室を見上げる。

 

『コアユニットに内蔵されていた管理AIと思われます。……なぜ今まで起動していなかったのか、どういう目的で搭載されたものなのか、検討はつきませんが……少なくとも悪影響があるわけではないと思います』

 

──私はマスターを支援する、『Nuill-Vana』内蔵の自律型AIの『ナル』です。以後お見知りおきを。

 

「今まで自然に使ってたからその感覚薄かったけど、こいつも『オーパーツ』なんだったな」

 

 ヒマリでさえわからないことがある。というだけでこのマシンがどれ程曖昧な武装なのか、それをわからぬセンジョウではなかった。

 

「こほん。……機能の説明を続けても?」

「ん、ああ。悪い。頼む」

 

 ウタハの咳払いに意識を引き戻され、センジョウは彼女の話へ耳を傾ける。

 

 

「Spec2の最大の違いは、なんといってもウェポンユニットとの『分離』『合体』機構だ」

 

 ウタハは、合体されずに残されたヌィル・ヴァーナのパーツを指し示す。

 

「現在、センジョウくんが装着しているのはコアユニットとアーマーユニット。戦闘に最低限必要な武装と防御性能を持った部位のみで、小回りは効くだろうが、これまでのような火力や機動力はない」

 

「だが、その姿からさらに、ここにあるウェポンユニットを装着することで、従来のヌィル・ヴァーナと同じ形での運用を行うことが可能になっている!」

 

 ばばーん。という効果音が聞こえてきそうなポーズを構えるウタハに、センジョウは苦笑する。

 

「もちろんそれだけではない……ウェポンユニットにはコンデンサが増設されている。ジェネレータから供給されたエネルギーを貯蓄し、短期間であれば分離状態のまま単独戦闘を行わせることも可能……!まさに!分離合体を繰り返すその姿はロマンに満ち溢れている……!!!」

 

 さらにさらに!!と、熱のこもった様子で、捲し立てるように言葉を続ける。

 

「Spec2は単独での大気圏内飛行が可能だ!!」

「……空が飛べるのか?」

「空力学的に人型の物体が高速で飛行する事は不可能とされている筈だが……Spec2に常識は通用しないらしい。カタログ的に『可能』というだけで、実際にこの目で確認をしているわけではないのだがね」

 

──ポジティブ。厳密には、ウェポンユニットを飛行形態とした長期航行モードと、ウェポンユニットと合体を維持したまま浮遊と移動が可能な戦闘飛行モードが存在します。

 

「百聞は一見に如かずか」

 

 説明を聞いたセンジョウは、意識をウェポンユニットへと向ける。

 

──F・A(フルアーマー)形態への移行を開始。

 

 ウェポンユニットが4つへ分離し、ヌィル・ヴァーナの四肢へと接続され、ユニットが同期する。

 

──コンプリート。

 

 

「これが……フルアーマー」

 

 

 形状、見た目としては以前までのヌィル・ヴァーナに非常に近い。

 違いがあるとすれば、飛行のための滑走翼が所々に追加されている程度で、『フルアーマー』とはいいつつも、これが『ヌィル・ヴァーナ』の基本形態であることに変わりは無さそうだった。

 

 だが、感覚はそれまでの『ヌィル・ヴァーナ』とは一線を画していた。

 

 

 センジョウは感覚のままに、ふわりと機体を浮かせると、その場でぐるぐると機体を回転させたり、宙返りをしたり、シャトルループをこなす。

 

 

「おお、……本当に飛んでいるね」

『飛行実験も成功のようですね』

「だから実験をぶっつけ本番でやるなよ!!」

 

 

 

 センジョウは憤慨しつつも、安定した様子で空中で姿勢を正した。

 

──ネガティブ。『Nuill-Vana』は既にマスターへの最適化が完了しています。如何なる機能を追加しようと、私は貴方の手となり、足となり、翼となり、貴方を望む先へ導きましょう。

 

「ずいぶん優秀なAIの様だね」

『解析できないことが惜しいとさえ感じてしまいますね』

 

──ネガティブ。私を解析することは私が許しません。

 

「なに、こいつ感情まであるの……?」

 

──ネガティブ。あるわけないでしょう。

 

 センジョウは『ナル』の言葉に苦笑を浮かべつつ、床へと降り立つ。

 

「まあ、なんにせよ。これでまた何かあったときに戦えるな」

 

 なにもないに越したことは無いが。と付け足しつつ、センジョウがヌィル・ヴァーナの装備を解除しようとした時。

 

『解除される前にひとつ。貴方へお伝えしなければならないことがあります』

 

 ヒマリの声がそれを制止した。

 

『……センジョウさん。今の貴方は、意図的に《最大稼働》を引き起こせるのでしょうか?』

「あー……多分」

 

──ポジティブ。マスターと『Nuill-Vana』の同調率は93%を前後に推移しつつ、安定しています。

 

「できそうだ」

 

 センジョウの言葉に、ヒマリは少し深刻そうな表情を浮かべる。

 

 

 

 

『……であれば。もう《最大稼働》は使わないでください』

 

 

 

 

「……え?」

 

 ヒマリの言葉に、目を丸くするセンジョウ。

 

「そ、そりゃまあ。あれは身体に負担かかるし、そう気軽に使えるものじゃないのは解ってるが」

『私が申し上げてるのは、肉体的な負担が原因ではありません』

 

 ヒマリは至って真剣なまま、言葉を続ける。

 

『これまでの戦いのログの中で、判明したことがあります』

 

 ヒマリが手元のデバイスを操作すると、ウタハが投影していたホログラムに別の画像が映る。

 そこには、『Phase1』から『Phase5』までの項目が、段階的に表示されている。

 

『ヌィル・ヴァーナには、いくらかの進行度が設定されている様です。……そしてそれは、先日の戦いで貴方が発現させた《奇跡の実行》へ至るための筋道でもあります』

「奇跡の、実行」

 

 センジョウは、先日の戦いの記憶を思い出す。

 だが、無我夢中で手に取った『調整剤』を使った後の記憶は曖昧で、『ヌィル・ヴァーナ』から今までとは違う力が流れ込むような感覚と、自分に呼び掛けるユウカの鮮明な声だけが記憶に残っている。

 

『今まで操作していた《Nuill-Vana》の通常時がPhase1。そして、《最大稼働》の発現がPhase2』

 

 ヒマリの説明に合わせ、ホログラムに映る文字が強調されてゆき、説明を補助している。

 Phaseの進行は、『Nuill-Vana』とセンジョウの同調が重要な鍵となっているらしい。

 

『そして、先日の戦いで発現したのが、最終段階……《Phase5》。そして……』

 

 

『《Nuill-Vana》でさえ予想されていなかった、《奇跡のその先》……《神の領域(Phase6)》』

 

 

──ポジティブ。あの現象は、私の制御から完全に逸脱したイレギュラーです。

──暫定的に、『Phase6』と呼称しています。

 

 

 ヒマリが理解できない『Nuill-Vana』の、さらに理解できない領域。

 

 

 それがいったい、何を意味しているのか。……理解はできなくても、それがろくでもない結果を導くことは予想できた。

 

「だがそれと、『最大稼働』になんの因果関係が?」

『簡単な話です。Nuill-Vanaの段階進行の切っ掛けは貴方との同調率の上昇。つまり、最大稼働を使えば使うほど、加速度的にPhaseは進行していきます』

 

 Phase3.4の表示が強調される。

 

『今のセンジョウさんはPhase3……貴方への最適化が完了し、Nuill-Vana側が貴方へと近づいていく段階です』

「ヌィル・ヴァーナが、俺に?」

 

──ポジティブ。宣言通り、私は貴方の腕や足となるのです。

 

『しかし、それは裏を返せば……貴方の脳はNuill-Vanaを自身の肉体とそのうち誤認する危険があります』

 

 Phase4の文字が強調され。そこに記された情報は──

 

「────身体機能の、一部不全?」

 

──ポジティブ。完全同調への進行過程で、貴方の無意識かの自己意識が私と完全に同位となった時、貴方の身体は私と同一のものとなります。

 

『……つまり、Nuill-Vanaを取り外すことは、貴方の身体から腕や足を取り外すことだと脳が誤認し、Nuill-Vanaを装着していない間、身体機能が一部動かなくなる恐れがあります』

「お、おおう……」

 

 センジョウ自身、これ程の力が、ノーリスクで使えるとは思ってはいなかったが、その具体的なデメリットを聞かされると、目眩がした。

 

──警告。精神の乱れを検知。心配の必要はありません。Phase4であろうと、常に私がいればなんの問題もありません。

 

「とはいっても、その身体のままではユウカを抱くことすらままならないだろ────」

「ちょっと待て。今聞き捨てならない事が聞こえたぞ」

 

 センジョウはウタハの言葉を聞き落とさなかった。

 

「……はて?なにかおかしなことを言った記憶はないけれど」

「言ったろ!!最後に絶対言ってたよ!?俺がユウカを……その……!」

 

 モゴモゴと語尾が弱くなっていくセンジョウに、ウタハとヒマリは溜め息をつく。

 

『ミレニアムでの二人、お噂は有名ですよ?まさか本人がご存知無いとは思いませんが……』

「ユウカと朝帰りしたのだから、今後もそう言う機会はあるんじゃないかな?」

「ねぇよ!断固してねぇ!!」

 

 ブンブンと首を横にふるセンジョウ。

 

「大体アレからあいつ、俺に顔合わせる度走って逃げてくんだぞ!いくら噂が迷惑だからってやりすぎだろあれ!」

 

 ショックを受けたような、どこか悲しそうな声で怒りをあらわにする。

 

「お陰で仕事がやりにくいったらありゃしない……早く機嫌直してくれねぇかな……」

 

 がっくりと肩を落とすセンジョウに、その場の2人は顔を見合わせた。

 

 

「やれやれ。というやつだな」

『やれやれ。というやつです』

──ポジティブ。マスターはヘタレ野郎です。

 

 

「うるせぇお前ら!◯ね!そう言うんじゃないけど馬に蹴られて◯ね!!」

 

 

 

 

 顔を真っ赤にしたセンジョウは、似合わない直接的な暴言を、負け惜しみのように口にするしかなかった。





というわけでヌィル・ヴァーナのリスクが明確になりましたねぇ。

ろくなもんじゃねぇと思いつつ書いてましたが、これが彼の戦うための最後の武器なので、仕方無いですね(?)


ちなみに、センジョウの女性のタイプの考察が終わって、設定が固まったので、多分次はその辺りの話やります。
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