青空DAYS   作:Ziz555

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幕間らしい、他愛のない会話回です。

たまにはこういうのもいいですねぇ


センジョウとオジサン

 

 ある日、アビドス近辺での仕事をこなすため、アビドスの廃校対策委員会のメンバーと協力をした日の事。

 

 仕事の事後処理も概ね済ませ、後は帰って書類に纏めるのみ。と言った状況の中、センジョウに近づく存在があった。

 

「や。今日は仕事お疲れ~」

「ホシノか、こっちこそ手伝ってもらって悪かったな」

「いやいや。先生代理のお手伝いぐらい、頼まれればちゃんとやるよ」

 

 日が傾き、夕日の差し込む教員室の入り口で、ホシノはセンジョウへとヒラヒラと手をふっていた。

 

「それで、センジョウくんは、今日はもう帰りかな?」

「んー、……まあな」

 

 帰る。とはいっても、結局未だにミレニアムに間借りをしているだけのセンジョウは、キヴォトスに『自分の家』があるわけではない。

 

 そう考えると、『帰る』と言う表現が間違いな気もするが……。まあそれは別の話ではある。

 

「それじゃ、この後は時間あるってことだねー」

 

 のんびりとした様子でそう語りかけるホシノに、センジョウは疑問符を浮かべて彼女の顔をみた。

 

 すると、彼女は指でなにかをつまむような仕草をして、それを口元で傾ける。

 

「どう?オジサンと仕事上がりに一杯やってかない?」

「本気でオジサンみたいなこと言うなよ……それに、酒は飲めないだろ」

「まあまあ、そう固いこと言わないで。オジサン、良い店知ってるんだ」

 

 へらへらと笑うホシノに、センジョウは軽く溜め息をつく。

 

「まあ、たまにはいいか」

「お。いいねぇ。そう来なくっちゃ」

 

 提案を受けて、ホシノはイタズラっぽく笑う。

 

 生徒と親睦を深めるのも、先生としては必要なことである。

 

 

 

 

 

 日が沈んだアビドスの町を、ホシノにつれられて歩いていくと、目的の屋台が見えてくる。

 

「ま、やっぱりここだよな」

「仕事の打ち上げと言えば屋台って言うのは定番だからねぇ」

 

 二人は暖簾をくぐり、その先にいる大将へと声をかける。

 

「大将ーやってる?」

「お久しぶりです、大将」

「いらっしゃい。今日は二人だけかい?」

 

 屋台……ラーメン柴関の大将は、読んでいた新聞をたたみ、二人の顔をみた。

 

「いやぁ。今日はオジサンとサラリーマンの二人で仕事の打ち上げ。って感じで、子供のみんなはおうちでお留守番なんだぁ」

「俺まで年齢を勝手に引き上げ……いや、サラリーマンはあながち間違いでも無いのか……?」

 

 ぶつぶつと考え込むセンジョウに、大将とホシノは苦笑を浮かべる。

 

「それで。注文は?」

「柴関ラーメン2つ!片方は特盛で~」

「特盛?ホシノ、随分食べるんだな」

 

 センジョウの言葉に、ホシノはキョトンとした顔を見せる。

 

「特盛はセンジョウくんだよ?」

「は?」

「育ち盛りの男の子なんだから、ちゃんと沢山食べないとね」

「……勝手に頼むなよ……いや、食べるけど……」

「食べるんなら問題ないよね。ってことで大将、よろしくー」

「あいよ」

 

 

 

 注文を受け、ラーメンを作り始める大将を眺めつつ、二人はお冷やを傾ける。

 

 

「で、センジョウくん。最近彼女さんとはどうなの?」

「ブブォ!?」

「うわっ」

 

 突然の言葉にセンジョウは口に含んでいた水を吹き出す。

 

「ゲホッ……ゴホッ……」

「ありゃー。大丈夫?」

「お前のせいだろ……」

 

 センジョウはホシノの差し出した布巾を受け取り、吹きこぼした水を拭く。

 

「誰から聞いたんだその話……?」

「先生の息子に彼女ができた。って噂、結構キヴォトスだと有名だよ?」

「事実無根だし……ミレニアムならともかく、なんで外まで広がってんだ……」

 

 センジョウは噂の対策を考えつつ、身なりを整える。

 

「いやぁ。年頃の女の子はそう言う話題大好きだから」

「お前も年頃の女の子だろ」

「おじさんはおじさんらしく、若い子の青臭い話に茶々入れしたいだけだから」

「変わらねぇよそれ……」

 

 センジョウはカウンターに肘を付き、手に頬をのせる。

 

「無駄かもしれないけど言っとくと、ユウカ……その噂の相手のヤツとはそう言うんじゃねぇよ」

「ありゃ?そうなの?」

「仕事仲間……どっちかと言うなら、『相棒』とか、『パートナー』って表現の方がしっくり来る」

 

 センジョウはふたたびお冷やをのみ直し、コップをカウンターへ置く。

 

「大体、どうせ彼女作るならあんな女よりもっといい人探すわ」

「はへぇー……あんまり好みじゃないんだ」

「可愛いとは思うし、嫌いな訳じゃないけどな」

「それ結構好きじゃない?」

「なんかなぁ……そう言うんじゃねぇんだよ」

 

 ────センジョウも一人の男の子。それも、性に旺盛な10代後半だ。彼女がほしくないのかと言えば、嘘になる。

 

 黄昏た表情のセンジョウをみて、ホシノはニヤニヤと笑う。

 

 

「ねぇねぇ。おじさん、センジョウくんの好み一つ当ててみても良い?」

「あん?……まあ、聞くだけ聞いてやるよ」

 

 どうせ当たらないだろうと、たかをくくってそう答える。

 

「おっぱい大きい子好きでしょ」

「んがっ!?」

 

 見事に言い当てられ、変な声が出た。

 

「やっぱりねぇ。……チラチラとノノミちゃんのおっぱい見てるなぁとは思ってたんだぁ」

「やめっ……やめろぉ!思ってても本人の前で言うなぁ!!」

「まあまあ、そう恥ずかしがらなくても良いじゃない?おじさんの下らない話なんだからさ」

「自称でしかないだろ!?自分より背丈の小さい女子に言われる男子の気持ちを考えられんのかおじさんはぁ!!」

 

 けたけたと笑うホシノに、センジョウは顔を真っ赤にして反抗する。

 

「大丈夫大丈夫。解るよ、ノノミちゃんのおっぱい大きいもんねぇ。あれは夢とロマンがぎっしり詰まってて、ふわふわで暖かくて、気持ちいいよぉ?」

「ぐっ……同性なのを良いことに、堪能した感想を話すんじゃない……!」

「おじさんに聞いたからって、ノノミちゃんにお願いしたりしたらダメだよー?ノノミちゃんはアビドスみんなのお母さんだからねぇ」

「しねぇよ!そこまで節操無しじゃないわ!」

「センジョウくん。そう言う方面ヘタレっぽいもんね」

「こいっつ……!よくもまあずけずけと……!!」

 

 ぐぎぎ……と歯を食い縛るセンジョウをみて、ホシノは楽しそうに笑顔を浮かべる。

 

「盛り上がってるとこ悪いが、ラーメン2丁お待ち。麺が伸びないうちに食べちまいな」

 

 話の腰を折る。と言うよりは、センジョウへの助け船だろうか。ちょうど良いような、悪いような。そんなタイミングで大将がラーメンを作り上げた。

 

 ホカホカと湯気のたつ、出来立てのラーメンを前に、二人はカウンターへと姿勢を直す。

 

「やっぱり大将のラーメンは何時見ても芸術品だねぇ」

「かなり久しぶりだけど……やっぱり旨そうだな」

 

 

「「いただきます」」

 

 

 

 二人は手を合わせ、一礼をすると、ラーメンへと箸を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 ラーメンを食べ終わり、一息をついたホシノが、再び口を開く。

 

「で。センジョウくんのタイプって結局どんな人なの?」

「その話終わってなかったのか……」

 

 あきれつつ、観念したようにセンジョウは口を開く。

 

「……タイプ。タイプねぇ……」

 

 物心ついたころから、母代わりの姉と、父代わりの義理の兄に育てられていた彼は、その人生の殆どを両親のために尽くしてきた。

 故に、恋愛とはこれっぽっちも縁がなく、自分が果たしてどんな女性が好みなのかを考える機会も少なかった。

 

 皮肉なことに、母を亡くし、父が倒れ、彼は初めて自分個人と向き合う時間を得たのだ。

 

 ぼんやりと考える中で、何となく浮かんできたものを並べる。

 

「……多分。面倒見がよくて、優しい人かな」

「ありきたりだなぁ……というか、それもう彼女さんじゃないの?」

「なんか違うんだよな……」

 

 うーん。と首を捻るセンジョウに、ホシノが納得したように手を叩く。

 

「おっぱい足りないんだ」

「だから!そう言……」

 

 そこまで言って、ふとセンジョウはとあるミレニアムの女性を思い浮かべた。

 

 面倒見がよくて、優しく、気配りができて、聡い女性。

 

 センジョウ自身が少し気になってはいるが、あまり話す機会のない少女。

 

 

──各務チヒロは、割とセンジョウ的にはストライクだった。

 

 

 そうして、ユウカとチヒロを脳内で比較すると……。

 

 

「………………」

「うへぇ。センジョウくんも男の子だねぇ」

「うるせぇ」

 

 否定もしきれず、照れ隠しにセンジョウは水を口に含んだ。

 

 そう考えてみると、琴線にふれるというか、『いい』と思う女性の好みも次第に輪郭を帯びてきた。

 

 

 まだ出会って長くはないが、山海経の『朱城ルミ』『春原シュン』などの二人は魅力的に見える。……シュンに関しては、すこし、目のやり場に困る格好なのが気になるところではあるが。

 

「……なんか、改めて考えると嫌になってくるな……」

「別に、『そう言う気持ち』は悪いものじゃないと思うよ?」

 

 ホシノは柔らかく笑いながらセンジョウを見る。

 

「結局、そう言うのがあるから新しい命は生まれてくる。勿論、『それだけ』って言うのはよくないと思うけど」

 

 からん。と、溶けた氷が崩れ、グラスを鳴らした。

 

「センジョウくんは、もう少し自分の事をちゃんとみてあげて、考えてもいいと思うよ」

「自分の事。か……」

 

 

 それが、具体的にどういう意味なのか、今の彼には解らなかったが、ホシノの言葉にも、思うところはあった。

 

「若者の悩みを聞くのもオジサンの役目だからねぇ」

「だから、あんまり変わらないだろ」

 

 何時も通り、緩い笑顔を浮かべるホシノに、センジョウは苦笑を返し、席を立つ。

 

「まあ、話ができてよかった。誘ってくれてありがとうな」

「いいのいいの。また来たら、今度はみんなで食べに来ようねー」

「ああ。……大将、ご馳走さま」

 

 センジョウは財布から2人分の代金をカウンターに置いて、屋台を後にする。

 

 

「……若いっていいねぇ。大将」

「そりゃ俺からすればお前もまだまだだがな」

「うへぇ。大将に言われちゃ否定しようもないなぁ」

 

 ホシノも荷物を纏め、屋台を後にする。

 

 

「ご馳走様、大将。又来るよ」

 

 

 ホシノはそう言い残し、アビドスの夜の町へと、見回りへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 その日、避けていたことを詫びるついでに、夕飯を一緒に食べようと考えていた、ユウカの完璧な計画は崩壊し、センジョウは理不尽に怒られるのだった。





と言うわけでセンジョウくんは胸が大きくて包容力のある女性が好み!
と言う感じになりました。

ストーリー展開的に出番がなかっただけなのでちーちゃんは出番あげてもいいかもなぁなんて考えてます。
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