青空DAYS   作:Ziz555

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なんか……いつもより長くない……?


と言うわけでヒナ回。

ヒナは……なんか、こう。かなり解釈違い起きてそうなんですが、自分のなかでしっくり来るヒナちゃんこんな感じなんですよ。
なんでだろう……?


あと補足しておくと、クリスマス外伝は本編時系列から離れてるもので本来ならもう少し先になる話です。

というか、今回の下りを踏まえてのあの話と言う方が正しい。


センジョウとヒナ(とユウカ)

 シャーレの仕事だけではなく、ミレニアムのセミナーとしての仕事もこなすセンジョウには数えきれないほどのタスクがある。

 

 しかし、だからといって休日を疎かにすることはしないのが蒼井センジョウと言う男だった。

 計画性のある仕事は、計画性のあるスケジュールから。

 普段から余裕のあるスケジュールをしているならばこそ、非常事態……不測の事態にも対応できると言うもの。

 

 それが彼のポリシーの一つだ。

 

 故に。今日はセンジョウのオフ……休日を満喫する予定となっていた。

 

「うーん……」

 

 そんな休日のセンジョウは、自分の部屋で首をかしげていた。

 

 視線の先には……数着の私服。

 

「…………うううーーーん……??」

 

 深く、深く首をかしげながら、唸り声をあげていると、扉がノックされる。

 

「センジョウ。いる?」

 

 扉の向こうから聞こえてきたユウカの声に、センジョウは「鍵なら開いてるぞ」とだけ返した。

 

 すると、扉が開いてユウカが顔を覗かせる。

 

「センジョウ、今日なんだけど──」

 

 そう言いかけて、ユウカはセンジョウの姿をみて顔をしかめた。

 

「……なにやってるの?」

「ん?ああ……コーディネート?」

 

 センジョウは現在、ベッドの上に何着かの私服を広げ、その前で腕を組んで首をかしげていたのだ。

 

 普段のセンジョウでは、まず気にしないであろう行動に、ユウカの眉間に更にシワが寄る。

 

「……いきなりなんでそんな似合わない事やってるのよ」

「余計なお世話だ。俺だってらしくない自覚ぐらいある」

 

 ユウカの小言にセンジョウは困ったような表情で返すと、ユウカの方を見る。

 

「……お前はどれがいいと思う?」

「わ、私?」

 

 意見を求められると思っていなかったユウカは、一瞬戸惑いの表情を浮かべた後、センジョウの視線の先……彼の私服に目を向けた。

 

「ダサ……」

 

 そこに広げられたのは格ゲーのキャラがプリントされたTシャツや、筆でなにやら格言めいたデザインの描かれたシャツに、一番マシでも、襟つきの無地のシャツだった。

 ズボンに関しても、無駄にヨレていたり、機能性を優先したのか、作業衣のような不格好なシルエットになるようなものしかそこにはなく。

 

「ハッキリ言ってこれで悩むぐらいなら普段の制服着ておきなさい……」

 

 ユウカはそもそも、この中に選択肢を見いだすことができなかった。

 

「ハッキリ言うなぁ!!」

 

 ユウカの率直な意見を叩き込まれ、センジョウは悲壮感漂う表情を浮かべる。

 

「俺だってそんな気はしてたさ!キヴォトスに来てから私服なんて着る機会なんて殆どなかったから、シャーレの制服か、一着だけあるパーカーとこの無地の襟つき組み合わせてごまかしてたけどさぁ!!」

 

 どん。とテーブルに拳を叩きつける。

 

「キヴォトスに来る前は勉強漬けで友達と出掛ける機会もなかったから仕方ないじゃんか……!!」

 

 彼は静かに、悔し涙を流していた。

 

 あまりに無駄に熱意のこもったその嘆きに、ユウカもセンジョウを不憫に思い、ため息をついた。

 

「アンタ、今日時間は?」

「俺?……昼過ぎぐらいまでなら」

 

 元々気分転換にどこか遊びにいくことを誘う予定だったのだ。それが買い物に変わったところで、さしたる影響はない。

 

 それに、センジョウの服を自分が選ぶ、というシチュエーションに、ユウカはどこか高揚感すら覚えていた。

 

「服。選んであげるから買いにいくわよ」

「ユウカ……!!!!」

 

 感涙の涙を瞳に湛え、センジョウはユウカを見る。

 

「その代わり、お昼はおごってよね」

「当然そのぐらいは任せろ!」

 

 いつになく高いテンションでセンジョウは答え、元気よく頷いた。

 普段あまり見かけないセンジョウの子供っぽい一面に、どこか微笑ましさを覚えつつ、ユウカは仕方がない、と溜め息をついた。

 

 

 

 閑話休題(時間は過ぎて)

 

 

 場面は変わり、ショッピングモールで一通りの買い物を済ませたセンジョウ達は、その建物の上階、レストランコーナーで食事をしていた。

 

「いやぁ……本当に助かった。ありがとう、ユウカ」

「別にそこまで感謝されることでもないわよ。アンタの服がちゃんとしてる方が私も変な目で見られなくて済むし」

「…………ああ。まあ確かに、お前と出掛ける時にも着られるしな」

 

 現在の二人の服装はそれぞれミレニアムとシャーレの制服であり、私服というわけではない。

 というより、二人が私服で出掛けた事など、これまで一度もなかった。

 

 それ故にユウカがセンジョウの持つ私服が壊滅的であることを今朝把握したわけだ。

 

 ユウカは、皿に突き立てたフォークをくるくると回して、パスタを巻き付ける。

 

「そうね。あんな私服で並ばれたらたまったものじゃないもの」

 

 そう言いきり、パスタを口に運ぶ。

 

「まあ今後そんな機会があるかはわからんがな」

 

 お前と出掛ける分には制服でいいしな。と付け足してセンジョウは同じようにパスタを口にいれようとする。

 

「…………うん?ちょっとまって。じゃあ今日は何のための買い物なの?」

 

 ユウカの言葉に、センジョウは持ち上げていたパスタを皿に戻す。

 

「え?いや、休日の外出の為の私服買いに……」

「アンタ今までも休日だからってわざわざ私服で出掛けたりしてなかったじゃない」

 

 ユウカの言う通り、センジョウはシャーレの制服を嫌ってはいないし、むしろ好んで着こなしている。

 

 今回ユウカの選んだ服装も、カジュアルというよりはフォーマルな印象を与えるような、シャツやジャケットといった……センジョウの年齢以上に落ち着いた印象を与えるものだ。

 

 スターボックスのタンブラーとノートパソコンでもあわせて持たせれば、優雅な大学生にも見えるようなコーディネートは、若干ユウカの趣味は入れど、センジョウには似合っていた。

 

 だが、もしそれが、『普段の休日』の為の服装でないと言うのなら。

 

 そう考え、ユウカはセンジョウの眼を見る。

 

 逸らされた。

 

「…………センジョウ~???」

「えー。いやぁ、ほら。ちゃんと格好つけた方がいいお出かけとか、あるだろ?」

「それは、つまり。私とのお出かけは『どうでもいい』って意味かしらぁ……?」

 

 面白くない。

 

 それはとても、ユウカには面白くない発言だった。

 

 少なくともユウカは、今日の買い物は今後の自分達の外出の際に着ていく私服を選んでいるものだと考えて服を買っていたのだ。

 

 決して。断じて。センジョウが他の誰かをもてなしたり、他の誰かによく思われる為に時間を割いた訳ではない。

 

「ゆ、ユウカさん……?目が、目が怖いですよ……?」

「誰のせいだと思ってるの?」

 

 ユウカの絶対零度の視線に、センジョウは背筋を伸ばし、身を後ろへと引く。

 

「……こ、今度埋め合わせするから。な?」

「ふぅぅぅぅぅん……『埋め合わせ』が必要なことするつもりなんだぁ」

 

 墓穴を掘った男。

 

「えー、あー。いや。別にそう言うつもりじゃないというか。……というかなんで俺の外出の予定でお前に怒られなくちゃならな──」

 

 ドン!とユウカがテーブルを叩く。

 

「私に服を選んでもらわないと決めることすらできなかった、情けない男はどこの誰かしら?」

「……スミマセン」

 

 センジョウはユウカの怒りに、身を小さくして、深く頭を下げる。

 

 周囲の人間からは修羅場を見るような眼を向けられているが。彼らは気付かない。いやこれ修羅場だな……。

 

「まったく。本当に、ほんっとーに。しょうがない人ね」

 

 ユウカは前のめりになっていた身体を背もたれへ倒し、水を一口飲み込み、熱くなっていた頭を冷やす。

 

 冷静に考えれば、そう言う場でセンジョウが『安く』みられるというのも良い話とはいえない。

 それに、今日の自分のコーディネートをしたセンジョウが他の生徒に誉められるのであれば、それはすこし優越感がある。

 

 早瀬ユウカは、一時の感情に全てを流されるような、そんな浅はかな人間ではないと。ユウカは自分を納得させて、怒りを納めた。

 

「そう言うことなら先に言ってくれれば怒ったりしなかったわよ。なんで変に隠そうとするの」

「いやぁ……俺にもわからん」

 

 センジョウは気まずそうに頭を掻き、苦笑を浮かべた。

 

「それで。いつ着ていくの、その服」

 

 許しはしたが、気にならないと言うわけではない。ユウカは純粋な疑問をセンジョウに投げ掛けると、センジョウは申し訳なさそうに口を開いた。

 

「えっと……今晩、ヒナと夕食の約束が……」

「……はぁ?」

 

 

 いつの間にか、二人の頼んだパスタは冷めきっていた。

 

 

 

 

 

 夕方。センジョウはヒナとの待ち合わせの場所……シャーレの入り口の前で、死んだ魚のような表情をしていた。

 

 結局、ヒナとの夕食の情報を伝えた後、ユウカは一言も話すこと無く、手早くパスタを食べ終えると、一言も話すこと無く席を立ち、センジョウを残して帰ってしまった。

 

「(……怒らせたよなぁ)」

 

 自分がユウカに甘えすぎている自覚は、無いわけではない。

 だがそれでも、ここまで怒らせたのはやはりショックとして大きい。

 

「はぁ……」

 

 彼が深く溜め息をついていると、一人の少女が声をかける。

 

「いきなり辛気くさいと思うのだけれど。……何かあったの?」

 

 普段の黒い軍服……風紀委員長としての服装ではなく、白のシャツに、黒いコートを羽織った空崎ヒナが、そこに立っていた。

 

「ああ。ヒナ」

「お待たせ。ごめんなさい、仕事がすこし長引いちゃって」

「いや、そこまで待ってない。気にしなくて良い」

 

 センジョウの言葉に、ヒナはクスリと笑みをこぼす。

 

「恋人みたいな言い方するのね」

「……そうじゃなくても、待ってないのは事実なんだから仕方ないだろ」

 

 ヒナの言葉に、センジョウはすこし照れたように、拗ねたようにそう返す。

 

「その格好。似合ってるけど……わざわざ新しいの買ったの?」

 

 ヒナはセンジョウの私服が真新しいことに気付き、聞かれたセンジョウが自分の服装を眺める。

 

「タグのはずし忘れとかあったか……?」

「それは大丈夫。ただ、生地の様子とかを見ると、あまり使い込まれた様子が無いから、もしかしたらと思っただけ」

「よく見てるな……。そう、ユウカに相談して、選んでもらった」

「ユウカ……ミレニアムの早瀬ユウカ?」

 

 ヒナがユウカの事を知っている事実に、センジョウは眼を丸くする。

 それを察したヒナは、すこし頬を緩めて彼に答える。

 

「『シャーレの新任先生の彼女』でしょ。有名よ?」

「だぁっ!またそれか!!」

 

 悩みの種とも言える単語に、センジョウは頭を抱える。

 そんな彼をみて、ヒナはクスクスと笑みをこぼす。

 

「大丈夫。貴方の事だから、どうせそんなつもりは無いんでしょう?」

「……あ、ああ。まあ、そうだけど」

「貴方は先生によく似てるから、なんとなくね」

 

 何て事無いような表情でそう言ってのける彼女に、センジョウは肩の力が抜けるのを感じた。

 

「とりあえず。お互い積もる話は店に着いてからにするか」

「そうね。行きましょう」

 

 そうして二人は、目的の店へと歩き出す。

 

 

 

 そんな二人を、すこし離れた場所からみている影が一つ。

 

 お察しの通り、早瀬ユウカその人である。

 

「お、思わずついてきちゃったけど、本当にこれでいいのよね……?」

 

 物陰に隠れつつ二人の様子を伺うユウカの手には、ヴェリタスのコタマから借りた集音器が握られていた。

 

 遠距離からでも二人の会話を聞くためである。ストーカーかな?

 

「だ、大体元はと言えばアイツが騙し討ちみたいな方法で私にで、……で……デートの服を選ばせたのがいけないんだし」

 

 理論で正義を掲げる行為は時に人の眼を曇らせる。まさに今この少女のように。

 

「と、とにかく。もし二人がなにか妙な事をしていたら……証拠を掴んでやるわ……!」

 

 ユウカが、自分が掴もうとしている証拠が、具体的にどんな証拠なのかも理解せずに、決意を固めていると。

 

「センジョウくんもすみにおけませんね」

「本当よまったく……いつの間にゲヘナの風紀委員長とデートなん、て……」

 

 不意に背後からした声にユウカが振り向くと、そこにはノアが立っていた。

 

「の、ノア!?なんでここにいるの!?」

「ユウカちゃん、静かにしないと気付かれちゃいますよ?」

 

 ノアはいたずらっぽく片目を閉じて、口元に人差し指を立てた。

 

「朝にご機嫌そうに出掛けたユウカちゃんが、お昼過ぎにはご立腹な様子で帰ってきて、そのまま何処かへでかけたので。何かあったと思いまして」

「それは……まあ、色々あったけど……」

 

 ユウカは笑顔のノアから眼を逸らし、気まずそうに口をモゴモゴと動かした。

 

「ユウカちゃん。急がないと二人を見失っちゃいますよ?」

「そ、そうだった……!いくわよ!ノア!」

 

 ノアに急かされるままに、ユウカは二人の後を追う。

 そんなユウカの後を、ノアは笑顔を浮かべたままついていくのだった。

 

 

 

 

 センジョウとヒナが向かった先は……キヴォトスにならどこにでもある。といっても過言ではないファミレスだった。

 

 二人は思い思いの品を注文し、センジョウがヒナに頼まれた飲み物をドリンクバーからとってくると、二人は静か席で溜め息をついた。

 

「「……お疲れ様」」

 

 かつん。と二人はコップをぶつけると、飲み物をあおる。

 

「悪かったな。愚痴の席、設けるの遅くなって」

「貴方はあれだけの怪我をしていたのよ。仕方ないでしょ。……正直、私の方もエデン条約の事後処理で息をつく暇なんて無かったし」

 

 互いの労いの言葉と、謝罪に二人は苦笑を浮かべる。

 

「まあ。今日は無礼講ってことで」

「そうね。貴方も吐き出したい事があったら遠慮無く」

 

 

 そうして二人は、談笑しつつ、食事をしつつ、互いの立場の苦労や、愚痴をこぼしあった。

 

 書類が提出先ごとにフォーマットが違う。だとか、ゲヘナの端と端で同時に難題が起きた。だとか、シャーレとミレニアムの書類をとり間違える。だとか、万魔殿のするべき書類まで肩代わりする羽目になっている。だとか。

 

 そんな、他愛の無い不満を、労いと笑いに変えて、二人で消化する。

 

 互いに弱みを見せ合った仲だからこその遠慮の無さが、そこにはあった。

 

 そんな中で、ふとセンジョウは気になっていた事を口にする。

 

「……そう言えば、最近ゲヘナからはあまり要請が無いけど、なにか変わったのか?」

 

 エデン条約のゴタゴタからしばらくしたある時以降、めっきりとゲヘナからのシャーレへの要請か減り、有ったとしてもかなり整理された情報だけが届くようになっていた。

 

 それ故にセンジョウは直近のゲヘナの実情をあまり把握していなかったし、調停式襲撃事件直後からはゲヘナに訪れてもいなかった。

 

「ああ。その件ね」

 

 ヒナはすこし穏やかな表情で、食事の手を止めてセンジョウを見る。

 

「すこし前まで活動が実質休止状態だった『懲戒委員会』に、転入生が来たの」

「『懲戒委員会』?」

 

 センジョウは聞きなれない単語に首をかしげる。

 

「『懲戒委員会』は、例えるなら法の番人……。行政が万魔殿、私たちが警察だとするなら、彼女達は裁判所ね」

「ほーん……っていうか、裁判所が実質休止って……」

「常にパンクしていたような状態だったから、どうしようもないわ」

 

 ヒナは目線を逸らしつつ、溜め息をつく。

 

「お陰さまで、本来なら懲戒委員会の筈の面倒な仕事まで押し付けられていたのが風紀委員なのだけれどね」

「それは……御愁傷様です」

 

 センジョウの労いに、ヒナは軽く、ありがと。と返す。

 

「でも、この前そこに入った転入生……『宍戸(ししど)オウカ』がとても優秀なの」

 

 パッと表情が明るくなり、ヒナは彼女の事を話し始める。

 

「以前の学校でどう過ごしていたか、までは知らないのだけれど……正義感が強くて、規律に対して真摯な人でね。彼女が入ってから、風紀委員として、取り締まりをした生徒の後の事は全部懲戒委員会が対応してくれるようになったし、万魔殿のやりすぎた越権行為に対しても毅然に対応してくれるから、私達もかなり動きやすくなって」

 

 ハキハキと話す様子のヒナは、センジョウが見た事もない明るさを感じさせた。

 きっと、それだけ『宍戸オウカ』という少女によって風紀委員の仕事が改善されたのだろう。

 

「それで、今日もこの時間にゆっくりできるのか」

「ええ。……帰れるようになる時間も早くなったし、感謝してる」

 

 確かに、今のヒナは以前見た時より、すこし元気そうに見える。

 

「それなら、この愚痴の会の回数も減らせそうだな」

 

 まだ初回だが。と言いつつ、センジョウはジュースを飲む。

 忙しいであろう、ヒナの貴重なプライベートを削るのは忍びないとセンジョウは考えていた。だから、この時間はないなら無いで良いものだと。そう言うのが彼の考えである。

 

「それはそれ、別に、私が貴方を誘うのは自由でしょ?」

 

 しかし、センジョウの言葉をヒナはさも当然のように否定する。

 

「私のあんな姿を見たのは貴方だけなんだから。責任の取れない男では無いでしょう?」

「あー……。まあ、いや……」

 

 父に託されたものをこなすために必死だったと言うのはあるが。まさかここまで信頼をされているとは、センジョウ自身には誤算であった。

 

 確かに、ユウカに話せない様な個人的な不満や悩みを相談する相手として、ヒナを選び、モモトークを何度か送っていた。

 その結果、彼女とのやり取りは割と日常的に行われるようになり、軽い冗談の回数も増えてきた自覚はあった。

 

 悪い気がするわけではないのだが……センジョウは、どうにもやりにくさを感じていた。

 

「それに。……女の子にキズをつけて、逃げるなんて、先生ならしなかったわ」

 

 得意気に、センジョウが『どうしても』強く出られない言葉をヒナは投げ掛ける。

 

 これを言うと、センジョウがなにも言えなくなって自分に頷くと言うことを学んでいたヒナは、稀にこうして意図的にこの言葉を武器にしていた。

 

「……それはズルだろ」

 

 センジョウは苦笑して、ヒナの言葉を受け入れる。

 

 

 センジョウは、ヒナには勝てない。

 

 

 

 

 

 

「セ~ン~ジョ~ウ~????」

 

 

 

 

 

 

 ふと、聞き覚えの……よく聞いた声が聞こえてきた。デジャブを感じた。

 

 

 そこには、般若の表情となったユウカが立っていた。

 

 

「またお前か!?」

「またとは何よまたとは!?」

 

 

 怒り心頭と言ったようすで、ユウカはヒナを指差しながら、センジョウに詰め寄る。

 

「アンタ!いつの間に手を出したの!!アンタそれでも先生目指してるの!!」

「誤解!誤解だ!!それは絶対誤解だから!!」

 

 今回に限っては100%の誤解なので、センジョウは必死にユウカの疑いを否定する。

 助けを求めたセンジョウがヒナへ視線を向けると、ヒナは眼を丸くして彼らを見つめていたが、センジョウの視線に気付き、笑みを浮かべた。

 

「……安心して、早瀬ユウカ。彼の言う通り、私と彼はそう言う関係じゃないから」

 

 ほら!ほら!と言わんばかりの勢いでヒナを指差すセンジョウに、ユウカは静かに姿勢をただす。

 

「……貴方と彼がそう言う関係じゃないみたいにね」

 

 ピクリ。とユウカの眉が動く。

 

 センジョウは、なぜわざわざ煽る様な言葉を言うのかと、顔を真っ青にしてヒナを見た。

 

「冗談よ」

 

 眼を白黒させるセンジョウをみて、ヒナはクスクスと笑いながら席を立つ。

 

「今日はありがとう、センジョウ。楽しかった」

 

 彼女は、晴れやかな笑顔を浮かべて、センジョウに伝える。

 

「『また』。二人でご飯食べましょう」

 

 そうして、軽い足取りのまま店を後にする。

 

 そんな彼女の背中を、二人は呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 

 その後、事の経緯を1から10まで全て話して、どうにかユウカの許しを得たセンジョウだったが、後日、埋め合わせに丸々1日ユウカの買い物に付き合わされる事となったのだった。

 

 

 





『懲戒委員会』は完全なる独自解釈です。絶対今後本編と衝突事故起こすとは思いながら、やりたいことのために犠牲になっていただきます。


あとユウカちゃーん?君のくだり書くだけで2000文字ぐらい増えてるんだけどユウカちゃーん?なんでかなー?
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