青空DAYS   作:Ziz555

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ゲヘナ動乱のプロットの調整をしてたら時間がかかりました……()

年内の更新は後一回ぐらいかなぁと思いつつ、ミカ回です。


クリスマス外伝にあった、「ミカとのお出かけ」の正体とも言う


センジョウとミカ

 アリウスに関する事情聴取と、トリニティの体制の現状の確認を含めて、数日ぶりにトリニティへとやってきていたセンジョウは、ふと聖園ミカの事を思い出した。

 

 いくら聴聞会で残存ティーパーティーの二人と、実質的シャーレの長であるセンジョウがミカの罪を不問としていても、全ての意見がそうだとは言えないし、あれだけの罪を犯した生徒を自由にする事はトリニティの面目を考えたとしても不可能な事だった。

 

 故に、ミカは聴聞会の判決が保留となっている今も、軟禁状態となっている。

 

 センジョウにとって彼女は、『自らの手が届かなかった』相手でもある。

 負い目も、引け目もあった。そして、それ以上に、言葉を交わすよりも『武力』を交わす機会の多かった相手だ。

 

 センジョウには、『争い』というフィルターがない状態での『聖園ミカ』という存在がどういう少女なのか、皆目検討もついていない。

 

 だからだろうか、ふと興味の沸いた彼は、ミカの軟禁されている部屋へと足を伸ばすことにした。

 

 

 センジョウが部屋に訪れると、ミカは椅子に座り、静かに眼を閉じていた。

 

「……ミカ?」

 

 センジョウが来たことに気付いたミカは、片目を開けて、人差し指を口に当てる。静かにしろ、ということらしい。

 

 そうして言われるままに静かに壁に寄りかかると、……かすかに、音楽が聞こえてくる。

 教会で流れるような、荘厳で、けれど穏やかな調べは、心まで穏やかにしてくれるような気がした。

 

 しばらくすれば音楽は止まり、部屋に静寂がもどる。

 

「ごめんね、来てくれたのに」

「いや、こっちこそ邪魔して悪かった」

 

 互いに謝罪をする様子に、二人は思わずクスクスと笑い出す。

 

「すこし前からは考え付かない会話だね?」

「初対面はお前の偵察、2度目は大ゲンカで、3.4はお前落ち込んでて、5度目以降もしばらくはケンカだからな」

「アレを『ケンカ』で片付けるのはセンジョウくんぐらいじゃない?」

「意地のぶつかり合いなんて全部ケンカだろ」

「気楽だなぁ……男の子ってみんなそんな感じなの?」

 

 どこか呆れたような顔で、しかし笑顔は崩さないままミカはセンジョウの顔をみた。

 

「改めて。……ようこそ、『トリニティの英雄』さん」

 

 いたずらっぽく、スカートの両端を摘まんで広げて見せながらお辞儀を見せるミカに、センジョウは苦い顔をする。

 

「あははっ。冗談冗談。センジョウくん、『英雄』って呼ばれるの嫌いだもんね」

「本当にイイ性格してるよお前」

「純粋なだけじゃ、ティーパーティーは勤まらないんだよ?……って言っても、私はもうすぐティーパーティーじゃなくなるんだろうけど」

 

 あっけらかんとそう言い放ち、ミカは両手を後ろで組んだ。

 

 ナギサやセイアと仲直りができて、あれだけの事をしても、それでもトリニティに帰れたと言うだけで、今のミカにとっては十分という事だろうと、センジョウはその言葉を受け取った。

 

「なんにせよ元気そうで良かった。この前みたく又セイアとケンカされてたりしたんじゃ、俺の身が持ちそうにない」

 

 肩をすくめ、センジョウは大袈裟に首を横にふる。

 そんな彼の言葉にミカは目を丸くすると、次の瞬間にはクスクスと笑い始めた。

 

「もしケンカしてたら、また地獄まで付き合ってくれるんだ。随分優しいんだね?もしかして、私に惚れちゃった?」

「アホなこと言える立場かお前は」

 

 今度は逆にセンジョウが呆れたように言葉を返すと、ミカは不満そうな表情を浮かべる。

 

「先生ならもっと私に優しく接してくれたと思うんだけどなぁ。それこそ、『お姫様』みたいに!」

「一周回って囚われのお姫様気分か?」

 

 ミカの軽口に、センジョウもポンポンと似たようなテンションで言葉を返す。

 

 どちらにとっても本心でない、他愛なく意味も薄い会話だが、ミカもセンジョウも、話していて悪い気はしなかった。

 

 殺伐としていない、と言う点さえ除けば、初めて敵として対峙した時の会話を彷彿とされるやり取りが、彼らのニュートラルな関係性だった。

 

「そう言えば結局、センジョウくんはなんでここに来たの?」

 

 ふと思い出したようにミカに問われ、センジョウは首を捻った。

 理由や目的があったわけではない。強いて言うなら。

 

「……聖園ミカに会いに?」

「なにそれ、新手の口説き文句のつもり?うーん……さすがにちょっと、それには応えられないなぁ……」

 

 ごめんね☆。とフラれるセンジョウ。

 

「告白したこともない相手にフラれたのはさすがに初だぞ」

「貴重な経験ができてよかったじゃんね!」

 

 笑顔で言いきるミカにセンジョウはげんなりとした表情を浮かべ、肩を落とした。

 

「ったく……。すこしでも心配して損した気分だよ」

「本人の前で言うの、よくないと思うんだけど」

「『元気そうで安心した』って意味だ」

 

 肩を落とすセンジョウに対し、ミカは笑顔のまま、一歩歩みよった。

 

「骨折り損のくたびれ儲けついでに、もう一つ儲けてみない?」

「そこまで言うなそこまで。……で、嫌な予感はバリバリにするんだが。聞くだけ聞いてやる」

 

 なんだかんだと他人に甘いセンジョウに、ミカは満面の笑みを浮かべる。

 

「『囚われの姫を連れ出す英雄さん』になってくれない?」

「…………は?」

 

 芝居のような物言いをするミカに、センジョウは間抜けな声を返すばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー!やっぱりたまには散歩もしないとねっ!」

 

 街中を歩きながら、晴れやかな表情で大きく腕を伸ばすミカの2.3歩後ろを歩きながら、センジョウはなんとも言えない表情を浮かべていた。

 

 本来であれば、現在のミカが外出など、できるわけもないのだが、『シャーレ』であるセンジョウの監視の元という条件で、数時間に限った外出の許可が下りたのだ。

 

 『英雄に連れ出された囚われの姫』というよりは、『お嬢様に付き合わされる従者』という構図の二人は、トリニティ自治区の有数のストリートへと来ていた。

 

「あ!みてみてこれ!すっごくカワイくない?私、このブランドのアクセサリー大好きなんだ!」

 

 ショーケースの中に展示されたきらびやかなアクセサリーを指し示し、満面の笑みでセンジョウへそう話題を振る。

 

「……カワイイ系ってやつか?」

「本当に何にも知らないんだ……。男の子ってそんなものなのかな……?」

 

 今一ピンと来ない様子のセンジョウに不満そうな表情に変わるが、次の瞬間には笑顔を浮かべた。

 

「まあ、知ってたところでセンジョウ君には縁無さそうだし!」

「お前本当に遠慮というものを知らないな?」

 

 ミカの傍若無人な振るまいに、センジョウはため息をつく。

 

「別にいいじゃん。相手は選んでるもん」

「オイ」

 

 遠慮する必要すらないと言われたセンジョウは顔をしかめてミカを睨むが、当の本人は既に先の店へと進んでいて、センジョウの姿など気に止めていなかった。

 

 年相応の少女のようにはしゃぐミカの後ろ姿に、センジョウはため息と共に表情を緩める。

 

 命を賭してでも守った、その光景に代えられるもの等有りはしないと。そう実感させてくれる彼女の姿に、センジョウは静に笑みを浮かべていた。

 

「置いてっちゃうよ!」

 

 いつの間にか数メートル先へと進んでいたミカに声をかけられ、センジョウはいつの間にか止めていた足を進ませるのだった。

 

 

 

 

 しばらくウィンドウショッピングを楽しんだミカは、センジョウを連れて喫茶店へと足を運んだ。

 

「楽しかったね」

「そりゃ良かったな」

 

 金銭的に自由が無いわけではないが、現在のミカは何か新しくアクセサリーを買ったとしても、それをしまう場所がない。

 故に、何かを買う事はなかったが、それでもミカは久しぶりの外出を存分に満喫していた。

 

「ここのケーキも久しぶりだなぁ……おんなじものばっかりだと飽きちゃうから、やっぱりたまには他のものも食べないとね」

「他のものって……別に刑務所の牢屋って訳じゃないんだし、多少は要望通るんじゃないのか?」

 

 罪を犯して捕えられたとは言え、ミカは『お嬢様』だ、相応の対応がされているものだとばかり思っていたセンジョウは、イメージとの違いに首をかしげる。

 

「それがね……ナギちゃんったら酷いんだよ!改めて謝罪を伝えるついでに、ちょーーーっとお願いをしただけなのに、全部ご飯をロールケーキにしちゃうんだもん!」

「さ、三食ロールケーキなのか……?」

 

 栄養が偏るとか、もはやそう言うレベルの話ではない気がするのだが、果たしてそれで彼女の健康は守られているのだろうか。

 

「本当に困っちゃうよね。ただでさえなーんにも無くてつまらない部屋なのに、ご飯でさえロールケーキだけなんて……さすがちょっと無理があるよ」

 

 果たしてそれは本当に彼女に責任がないのか。センジョウは事情を疑いつつ、静に頷きだけを返した。

 

「だから、センジョウくんが来てくれて本当に助かったよ。サンキュ☆」

 

 ミカはウインクをしながら、センジョウへ感謝を告げると、センジョウは苦笑する。

 

「強引に押し通されただけだ」

「でも、『一緒に頑張って』くれるんでしょ?」

 

 戦いの後に自分の投げ掛けた言葉を覚えていたことに、センジョウはピクリと眉を動かす。

 

 本心の言葉ではあったし、彼女がより良い未来のために尽力すると言うのであれば、それに力を貸す事に不服も意義もない。

 

 だが、戦闘後の疲れた頭で捻り出した浅慮な言葉を覚えられているとなると……センジョウは妙に居心地が悪くなった。

 

「私もちゃんと頑張るからさ。センジョウくんも、私の事ちゃんと見ててね」

 

 まっすぐに視線を向けられ、センジョウは目を逸らす。

 

「約束ぐらいは守るよ。……仮とはいえ、先生だしな」

「えー。あんなに一生懸命に落ち込んだ私の事救おうとしてくれてたのに、今はそれだけなの?」

「それはお前。あの時のお前を救うならそのぐらいの覚悟が──」

 

 そう言いかけて、ミカの表情を見て返すべき言葉を悟る。

 

「……畏まりました。仰せのままにしますよ。『お嬢様』」

 

 演技がかった、わざとらしい口調でミカにそう返すと、しかし、ミカは不満そうにセンジョウを見る。

 

「ふーーーーん。……それだけなんだ」

「……なんだよ。何が不満なんだよ」

 

 ジトッとした目でセンジョウに不満を訴えかけるミカを見て、セイアの言葉が脳裏に蘇る。

 

 意図を察したセンジョウは、露骨に顔をひきつらせ、その表情を見て、『センジョウが察した』事を察したミカは、にんまりと笑顔を向ける。

 

「ほらほら。今ならまだ間に合うよ。まださっきの言葉、聞かなかったことにしてあげるよ?」

 

 意地の悪い笑顔のまま声をかけられ、センジョウは観念して溜め息をついた。

 

 

「仰せのままに、お仕えいたしますよ。『お姫様』」

 

 

 センジョウの言葉を聞いて満足そうに、満面の笑みを浮かべたミカは深く、それは深く何度か頷いた。

 

「くるしゅうない。褒美に、私の頼んだケーキを半分上げよう。だから、センジョウくんのも半分貰うね!」

「褒美でもなんでもねぇじゃねぇか」

「『仰せのままに』なんでしょ?」

 

 したり顔で言う『お姫様』に、『付き人』は呆れたように笑みを浮かべるのであった。






 こいつら一生アイスブレイクみたいな会話してんな。

 と言うわけで、恋するミカをご期待の方には申し訳ないですが、ミカ視点どっちかと言うとセイアやナギサみたいなポジションに収まってるだろ。という話でした。

 ピンチに颯爽と現れる王子様ではないから仕方ないね。

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