青空DAYS   作:Ziz555

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幕間最終話です。

正直自分の書き方だとかなり駆け足気味になっちゃってるから、みんなが読みたい部分がすっ飛ばされてる気がしちゃうんですよね。


かといってこれ以上凝って書こうとするとモチベーションの維持が難しそうなので、変えることもできず……。


(´_ゝ`)


それでは本編どうぞ~。


センジョウのバニーチェイス:後編

 

 少女……黒崎コユキは、ひたすらにスロットマシンのレバーを叩き、ボタンを押し込んでいた。

 

「こいこいこいこいこい……うわぁぁぁぁ!!またハズしたぁぁぁぁ!」

 

 画面に表示される結果に一喜一憂し、臨まぬ結果が出たことに頭を抱え、現実を嘆く。その行為そのものが現実逃避であるという事実には気づかないまま。

 

 黒崎コユキは、罪人ではあるが、悪人ではない。

 

 彼女は自分の持つ力に自覚がない。多くの人間が、歩き方や呼吸の仕方を意識しないように、彼女はその才能を特別なものだとは思っていなかった。

 

 故に、自分がその力を振るうことで、周囲がどうなるのか、考えたことはない。

 『何故か』みんなが怒る。その程度の認識だ。

 

 『無邪気』。とは、まさにこの事だろうか。

 

 自覚と、罪の意識がない故に、改善の余地がない。

 それが、『黒崎コユキ』に多くの人が抱く印象である。

 

 それ故に、彼女は学ばない。いや、学べない。

 

 誰しもが彼女の持つ「大いなる力」に気を取られ、その陰に隠れる彼女自身の幼さに気づかない。

 故に、彼女は学ぶ機会を持たなかった。持たないまま、ここまで来てしまったのだ。

 

 彼女に真に必要なのは、教え、説く存在。彼女に進むべき道を、力のあり方を示してくれる『大人』だ。

 

────しかし、その出会いの物語は、まだ少し先の話だ。

 

 

「────黒崎コユキ」

「はい?」

 

 コユキは、背後から聞こえた声に、振り返り、いつの間にか自分に影を落としている存在を見上げる。

 

「オートマタ……?」

「貴方に少しお伺いしたいことがあります。遊戯中申し訳ございませんが、同行願い────」

 

 見慣れぬタイプのオートマタのそんな言葉に、自分が何かしたのかと、そんなことを思い浮かべ……彼女は、答えへ至る。

 

「ヌ、ヌィル・ヴァーナ!?ということは……ユウカ先輩の旦那さん!?!?」

「誰が旦那だ!!」

 

 オートマタの正体がヌィル・ヴァーナであることを見抜いたコユキは、彼が自分の追手として放たれた刺客であることを理解し、声を荒げた。

 センジョウは、いまだに拭えぬ『有らぬ噂』がここでも立ちふさがった事実に取り乱し、声を荒げた。

 

 両者が声を荒げれば、当然周囲からは悪目立ちする訳で……。

 

「何事ですか!!」

 

 異変を察知した警備兵の1人が、2人へ駆け寄る。

 

「しまっ……」

「あっ!あーっ!この人、この人!不法侵入者です!」

「何!?……そこのオートマタ!身分を提示しなさい!」

「チィッ!」

 

 とっさにセンジョウのことを警備兵へ告げると、文字通り脱兎のごとくコユキはその場を離れる。

 警備兵に銃口を突き付けられたセンジョウは、舌打ちをする。

 

──マスター。迂闊が過ぎます。

「(うるせぇ。別にプロじゃないんだから仕方ないだろ)」

──……対象の追跡は続行中です。しかし、この人込みでは距離が離れすぎれば再び見失います。

 

 どこか呆れたようなナルの声にセンジョウはバイザーの下で苦笑を浮かべる。

 

「……悪いが、こちらにも都合があるんでな」

 

 普段より悪辣な言い回しを意識して、センジョウは閃光弾を床へとたたきつける。

 瞬間、放たれた閃光と爆音に、プレイラウンジに一瞬で混乱が広がる。

 

 悲鳴と、説明を求める声が響き、ラウンジは一瞬で混沌と化す。

 

 しかし、その中でも、サングラスをしていた警備兵はいち早く体勢を立て直す。

 

「くっ……管理室!侵入者だ!早く応援を────」

 

 応援を求める通信を飛ばす。しかし、すでに警備システムは掌握され、そのすべてがオフラインになっているうえ、管理室にいるスタッフはセンジョウに拘束されており、システムの復旧を行うこともできない。

 

「くそっ!どうなってる!こんなことがあれば……ゴールデンフリース号の名誉に傷が……!」

 

 せめて、眼前にいるはずの侵入者を取り押さえんと視線を前に向けるが……すでに、そこに彼の姿はなかった。

 どこに姿を消したのか。あそこまでの装備と、周囲に比べて一回り高いその身長であれば、そう簡単に見失うはずはない、と周囲を見回すが、対象を視界へとらえることはできない。

 どこへ身を潜めたのかと、一歩踏み出したその時。どこからともなく、1人の乗客の声が上がる。

 

「な、何か飛んでる!!」

 

 その声に、彼女が上を見上げると────

 

 

 

 

 

 

「これで問題なく追跡できるな。ナル」

──ポジティブ。……しかし、エネルギーの消費が激しすぎます。

 

 センジョウがもっとも得意とする移動方法……パルスフィールドを足場にした、空中での連続跳躍を繰返し、彼は宙を跳んでコユキの後を追っていた。

 

「どうせバレたなら短期決戦を仕掛けるしかない。多少粗っぽくても目を瞑れよ……!」

──ネガティブ。……ですが、マスターは言い出したら聞かないタイプでしたね。

 

 どこか不満げに、しかし納得したような様子でナルは続ける。

 

──ターゲットの逃走経路を予測。エネルギー残量、78%。……支援します。

「助かる」

 

 短くそう告げると、センジョウは強く足を蹴りつつ、ブースターを短く点火して加速した。

 

 

 

「なんなんですかあの移動速度!?あんなの反則!ズル!インチキ!」

 

 人ごみをかき分けながらコユキはラウンジを駆け抜けると、宙を駆ける彼の機動力を阻むために、狭い廊下へとそのまま逃げ込んでゆく。

 道すがら、警備兵にすれ違うたびに自分を追う侵入者の存在を告げ、追跡者を阻まんとけしかける。

 

 それがセンジョウの予想通りだと気づかずに。

 

「ま、こっちが飛んで追いかければそういう選択をするだろうな」

──まさか、この結果を計算して……?

「計算っていうよりは心理戦だけどな。これならパルスフィールドの展開もあとは最小限で済む」

 

 廊下へ駆け込むコユキを確認したセンジョウは床へと降りると、そのまま廊下を駆けぬけんと加速してゆく。

 

「来るぞ!増援がない以上私たちだけで食い止める!!」

「ケガをしたく無ければ退くことを勧める!」

 

 立ちはだかる警備兵たちが一斉に銃を掃射するが、センジョウはスーツの身体強化力でもって、床を、壁を、天井を蹴って廊下を3次元的に突き進む。

 

「なんだ、その動き……!?」

「じゃあな」

 

 そのまま、彼女たちの頭の上を飛び越えるついでに、閃光弾を1つ彼女たちの前に落とす。

 背後で響く爆音と、強烈な閃光を背にしたまま、彼は先へ進む。

 

 その後も、幾度となくすれ違いざまに警備兵たちをけしかけてくるコユキだったが、『Nuill-Vana Spec- 2』のスピードの前に、彼を捉えることができず、たやすくその防衛線を突破されてしまう。

 

「なんなんですかあの人!ネル先輩なみに早いじゃないですか!?」

 

 どれだけ全力で走ろうとも、全く距離の離せないセンジョウの姿に、コユキは涙目になりながら廊下を走る。

 しかしそれでも、彼女には勝算があった。

 

「屋上に……屋上にさえ出られれば、いくら跳べたって、ヌィル・ヴァーナは飛べないってことは知ってますからね……!!」

 

 いくら反省部屋に籠りきりだったとはいえ、ミレニアムで作られ、そして、長期間ミレニアムを拠点にしていたセンジョウの活躍は、嫌でも耳に入ってくる。

 そうして、コユキの知る限り、『ヌィル・ヴァーナ』には飛行機能はない。

 そもそも、人型のパワードスーツが空を飛ぶことなど物理的に不可能であることは少し考えれば分かることだ。ユウカほどの知識も計算力もないコユキだが、最低限の知識と頭脳がある。

 

 だからこそ、『常識外れ』であるヌィル・ヴァーナの力を、誤認する。

 

 

 

「ようやく追い詰めたぞ」

 

 

────あっという間に、コユキは船の屋上、ヘリポートへと追い詰められていた。

 

 しかし、コユキは笑みを崩さない。

 

「にははは!よくぞここまで追ってきましたね、ユウカ先輩の旦那さん!」

「だから!その呼び方やめろって!!」

 

 センジョウの怒声を気にも留めず、コユキは余裕の高笑いを続けつつ、用意していた小型の飛行用ドローンを展開する。

 

「残念ですがここまでです!あなたが空を飛べないことは知っていますのでもう私を追いかけることはできませんね!」

 

 ドローンに吊り上げられるままに空へと舞い上がっていくコユキは、文字通り舞い上がった表情でセンジョウを見下ろす。

 

「残念でしたね!C&Cの皆さんならともかく、ただの先生代理の貴方なんかには捕まりませんよー!ユウカ先輩もずいぶん盲目ですねぇ!」

 

 にはははは!と笑う彼女の姿を、センジョウは静かに見上げていた。

 

──マスター。

「言うな。ナル。……何も言うな」

──いえ……ですが……。

「にははははは!あまりの驚きに声も出ませんか!これが私、黒崎コユキの完璧な作せ────」

 

 高笑いをし、余裕の笑みを浮かべていたコユキがそこまで言いかけた段階で、何かがぶつかる感覚を覚えた。

 

「?」

 

 疑問符を浮かべ、コユキが頭上を見上げると。

 

 

「……あれぇ!?なんでェ!?!?」

 

 

 自身を背負っていた飛行ドローンに覆いかぶさるように、1機の飛行体……フライングボードが彼女の上に存在していた。

 

「な、なんなんですこれ!?まさか、私を捉えるために用意されたもの!?」

 

 慌てふためく彼女に、センジョウは深くため息をつく。

 

「……ナル。合体だ」

──……ポジティブ。FA形態へ移行します。

 

 コアユニットがその信号を受信すると、コユキの上からフライングボードは飛び去り、センジョウの元へと降下していく。

 そうして、コユキの眼下で、センジョウの装備へアーマーユニットとコアユニットが合体し……『ヌィル・ヴァーナ』は真の姿を露にする。

 FA形態となった『ヌィル・ヴァーナ』をまとったセンジョウは、その飛行機能を用いて、ゆっくりと空中へと浮かび上がる。

 

「エェェェェェェ!?そんなのアリですかぁ!?」

「悪いな。これが今のヌィル・ヴァーナだ」

 

 自慢げに浮かんでいたはずのコユキは、自分を宙へぶら下げるドローンにつるされるがままに、その場で手と足をじたばたと動かすが、ドローンがそれで加速する訳でもなく、無様にあがく様に早変わりしてしまう。

 対するセンジョウはそんなコユキの様子に苦笑を浮かべると、ドローンの上から、ヌィル・ヴァーナのマニピュレータでつかみ上げると、騒ぎ立てるコユキを他所に、ミレニアムへの通信回線を開いた。

 

「こちらコード:Null。ターゲット確保。ミッション完了」

『……随分手際が良かったみたいね。この際もうそっち方面の副業始めたらどう?』

「冗談は止めてくれ。極力穏便にはやったつもりだが……後始末はそっちで任せていいな?」

『はいはい。……それじゃ、あとはミレニアムで待ってるから、よろしくね』

 

 その言葉を最後に、ユウカからの通信は途切れる。

 

「……じゃ、帰るぞ。コユキ」

「うあぁああああー!なんでーぇぇぇ!」

 

 囧のような泣き顔になって嘆くコユキをぶら下げたまま、センジョウは月が沈みかけ、朝日が昇りつつある空を飛んでいくのだった。

 

 

 

 センジョウのバニーチェイス

 ~完~




《特報》





──それは、突然訪れた。




「被告!ゲヘナ風紀委員所属!」




「風紀委員長、空崎ヒナを──






────退学処分とする!」






 訪れる変革。

「ぱんぱかぱーん!レベルカンストの委員長さんが転職しました!!」

 新たなる出会い。

「どうにも慣れないんだよな……この椅子」

 受け継がれる意志。

「大丈夫ですよ。貴女がいなくても、ゲヘナには私たちがいます」

 変わりゆく想い。

「今は……私たちが『秩序』です」

 対立する、秩序と混沌。

「これではまるで……戦乱の時代ではないですか……」

 燃え広がる戦火。

「これからは力こそが全て……そのほうが、『ゲヘナ』らしいだろう?」

 闇に蠢く悪意。

────そして。




「所詮、この世は────」


「それでも、私は────」



 彼女の選ぶ答えは。






────NEXT




────『ゲヘナ動乱編』










なんていう次回予告。

千文字行かないのであとがきに書くしかなかったという。
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