青空DAYS   作:Ziz555

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なんか……ユウカの出番が予想していたより大分多い気がします……()


1章:流浪の旅人 -新たなる道-

 

 

 

「はい。と言うわけで緊急会議です」

 

 

 

 アポ取りもそこそこに、センジョウはミレニアムのユウカの元へ訪れると、彼女を宿直室──センジョウが以前まで使っていた部屋が、そのまま残されている──に連れ込み、テーブルに座り込んでいた。

 

「あれだけ『時間はある』って言ってたのにいきなり……?」

「スマン。俺の見通しが甘かった……」

 

 呆れるように彼をみるユウカに、センジョウは深く頭を下げる。その姿に、割りと真剣に彼が困っていることを察したユウカは、深くため息をついた。

 

「それで、現状は?」

「……実は──」

 

 センジョウはここ数日のシャーレでの日々を思い出しながら、その全てを、可能な限りユウカへと具体的に話した。

 

 

 

 

 

 

 最初は、ユウカの当番の翌日だ。

 さも当然と言う表情でシャーレへと訪れたヒナは、先日の仕事の時のように資料の整理や、スケジュールのチェックを始め、センジョウが苦笑を浮かべて

 

「そう毎日来るような場所じゃない」

 

 と伝えたが、ヒナは

 

「帰って考えたけれど……やっぱり、仕事もせずに家にいるのは落ち着かないから」

 

 と答え、「仕事をしながら考えるためにシャーレに来ている」と一蹴されてしまった。

 

 しかしまあ、それも一理はあると考えたセンジョウはヒナのやりたいようにさせようと考え、その日一日、ヒナと共に仕事を進めた。

 

 

 次の日。

 

 

 また再び、同じようにシャーレへと訪れたヒナは、前の日と同じ理由でシャーレの仕事に手を付ける。

 

 センジョウもまあ、まだ答えが見つからないのだろうと思い、そんな彼女を受け入れて共に仕事を進めた。

 

 

 さらに次の日。

 

 またまた再び、同じようにシャーレへと訪れたヒナが、もはや理由を話すこともなく自然に作業デスクに座ると、流れるように仕事を始めた。

 

 センジョウはまあ、仕事を手伝って貰えることは確かに助かっているし、力になると言った責任はあると考え、彼女を受け入れて共に仕事を進めた。

 

 

 

 そのまた次の日。

 

 日常になりつつある姿でシャーレへと出勤してきたヒナは、センジョウに確認を取るより先に仕事を開始し、後から起きてきたセンジョウは、いつの間にか仕事をしていたヒナに驚いた。

 

 センジョウがまあ、さすがに来すぎなことを暗に伝えるが、センジョウ自身が毎日仕事をしているのだから、変わらないと黙らされてしまった。

 

 

 そうして、その日は偶然、シャーレの近辺でちょっとした問題が起き、偶然当番のいない日だった為、センジョウはヒナを連れて対応に向かった。

 

 ヘルメット団やスケバンの暴走を押さえるために走り回っていると、24時を回ってしまった為、仕方なくヒナはシャーレの仮眠室で一晩を過ごす事となる。

 

 

 

 そして昨日。目を覚ましたセンジョウは、宿直室にいた筈のヒナが居ないことに気付き、ようやく帰ったと安心し──

 

「あら、おはよう」

 

 給湯室で、コーヒーを淹れるヒナの姿と。彼女が身に纏っていた『シャーレの制服』に唖然とする羽目となった。

 

「え、いや。は?おはよう?」

「なんで疑問系なの。……昨日そのまま泊まったのだから、ここにいるのは普通でしょう」

 

 それとも、ユウカじゃなくてがっかりしたとか?と、ヒナは軽いジャブを交えながら、センジョウへコーヒーを差し出した。

 

「いや……てっきり帰ったものかと」

「どうせこのまま仕事するなら、支度もシャーレでした方が効率的だもの」

「その発想が既にもうおかしいと思うんだが?」

 

 コーヒーを受け取りながらセンジョウはヒナへ苦言を呈し……その時、ふわりと鼻腔をくすぐる香りに、違和感を覚えた。

 知っているような、知らないような、そんな香りに疑問を浮かべつつコーヒーを一口付けた段階で……ひとつの事実に気づく。

 

 そう。ヒナが『シャーレの制服』を着ているのである。

 

 それが示す事実とは、恐らく、ヒナはシャーレのシャワー室を利用し、センジョウが拘りなく使っているシャンプーを使ったと言うこと。

 

 そして、センジョウとヒナではその毛髪の量に天と地ほどの差があり……それに加えて、年頃の女の子の香りが合わさり、知っているようで知らない香りがしたのだ。

 

「…………」

「口に合わなかった……?」

 

 事実に気づいてしまったセンジョウは、しかし口に出せばそれがセクハラになるだろうと考えたが、表情にその苦悩が現れてしまった。

 

「……ああ。ごめんなさい。シャワー室に有ったもの、使わせて貰ったわ」

「フガッ!?ゲホッゴホッ!?」

 

 察された事実にセンジョウは取り乱し、コーヒーでむせてしまった。

 

「だ、大丈夫……?」

「あ、ああ……いや……気にするな……。むしろコンディショナーとか用意がなくて悪かったな……」

「そこまで用意があったら、その方が悪い気がしてたかもしれないけど」

「ん?……オイ」

 

 ヒナの言葉の裏を読み、センジョウは抗議の視線に切り替えて彼女を見た。

 確かに、男所帯のシャーレで、しかもセンジョウの髪は長いわけでもなく、性格的にも普段からそう言う部分に気をかけるタイプではないなら、それが用意されていると言うことは、『普段からよく過ごす女性がいる』と言うことになる。

 

 要は、ユウカのコンディショナーを勝手に使うのは気が引けると言われたのだ。

 

 ヒナはセンジョウの抗議を軽く受け流すと、コーヒーカップを持ったまま給湯室の出口へと向かう。

 

「センジョウも支度ができたら、モーニングを食べに行くから。声掛けてね」

「はいよ。……ん?ちょっとまて、ヒナ。お前まさかその格好のまま今日過ごすのか?」

 

 すれ違ったヒナに振り返りながら、センジョウがそう問いかけると、ヒナは不思議そうな顔をしてセンジョウを見た。

 

「昨日着ていた服は洗濯中。それに、この服装なら誰がみても『ゲヘナ』じゃなくて『シャーレ』ってわかるでしょ?来客対応とかの時にもスムーズだと思わない?」

「……それは、そうかもしれんが」

 

 たしかに。確かに、仕事をする前提なら間違ってはいない間違ってはいないのだが……。

 どこかズレたヒナの思考にセンジョウは返答を失う。

 そうして、黙り込んだセンジョウに、何かを思い付いた様にヒナは口を開く。

 

「あ、そうだ。……明日から私、この服で仕事したいから……後で何着か持って帰ってもいい?」

「アッハイ」

 

 もう仕事をするのは決定事項らしいので、センジョウは思考を止めてそう返すのだった。

 

 

 

 

 

 

「────と言うわけだ」

「それは確かに緊急の用件ね」

 

 最初の内は呆れた様子で話を聞いていたユウカも、いつの間にかとても真剣な表情でセンジョウの話を聞いていた。

 

 センジョウは内心、ユウカに相談したことを、やはり間違いではなかったと満足に思っていたが……ユウカはそんなことは考えていない。

 

 

 間違いなく、ユウカにとって『由々しき事態』が起きている。

 

 

 

 何が由々しき事態かといえば。それはユウカがセンジョウへ好意を抱いた経緯に起因する。

 

 ユウカがセンジョウへ好意を寄せる理由は、何か劇的な出来事がきっかけ、と言うわけではない。

 好意を確信させるような事は何度か有ったが、それはあくまでも最後のひと押しであり、数値的たとえるなら、50が一気に100という様な触れ幅があるわけではない。と言うことだ。

 

 

 『蒼井センジョウ』の魅力は、一言で表すなら『ギャップ』であると、ユウカは語る。……いや、語ったことがあるわけではないが。

 

 

 彼に多くの人が持つ第一印象は『雑』というものだろう。

 

 以前までの彼であれば、大人ぶった外面を被っていたが、シャーレの代理となって以降は、そういった外面の使用は必要最低限になり、しかし同時に、もともと彼が持ち得ていた粗暴さは鳴りを潜めた。

 

 その結果、彼が元来持ち合わせた『雑さ』が表面化し、良くも悪くも親しみやすさのある性格が形成されている。

 

 しかしその一方で、センジョウはよく人のことを見ている。見た目や、行動においてもだ。彼は、細かな配慮と気配りができ、些細な変化に気づいてくれる。……といっても、彼自身の知らない機微に関しては例外なようだが。

 

 その結果、気さくに話せるのに、ふとした時に心臓に悪い言葉を投げかけてくる男が完成する。

 

 加えて、彼はその性格上仕事において厳格というか、強い信念と大きな器量があるそれが彼の仕事……『先生』へとむけられているものだから、生徒である少女たちにその情熱が向けられるのであるから、当然、その彼の『強さ』を知ることもできる。

 

 

 だが、センジョウはその一方で、自分たちとそう変わらない『少年』でもある。

 

 

 その事実に気付いている存在はそう多くはないが……その強さと、不安定さが『ギャップ』なのである。

 

 誰よりも側で、身体を張って生徒のためにその身を削る彼の『弱さ』が、ユウカがセンジョウから目を離せない理由だ。

 

 

 仕事で親しいのは、いい。彼に救われて憧れるのも、まだいい。

 

 だが、彼と共に日常を過ごすと言うことはつまり。『彼が手の届く存在である』と気付いてしまう可能性を秘めていると言うことなのだ。

 

 それは、それだけはユウカにとって我慢ならない事だった。

 

「何か策を考えないと……」

「だよなぁ……」

 

 センジョウとユウカは、互いに、深く考え込む。……悩んでる内容も、解決すべき事象も同じな上で、視点だけが異なっているのだが。

 

「趣味が、趣味さえ見つかればな……」

 

 因みに、ヒナの趣味は、『睡眠、休息』である。それは趣味ではない。

 

「スポーツや読書は?」

「……いや、すこしパンチが弱い」

 

 定番の趣味を提案するユウカに、センジョウは首を横にふる。

 

「恐らく、ヒナの身体能力でスポーツをやらせても、それは多分作業にしかならないし、チームスポーツにしたとしても、それだと人数が揃わない間は仕事を続けることになる」

「……ヒナって、『ゲヘナ最強』だったのよね……。確かにそうかもしれない」

「読書も、普段から書類を読んでる都合、文字を読むのは早そうだが……『仕事もせずに一人でいる』のが落ち着かないと言っていた以上、一人で向き合う読書は性質が……」

 

 センジョウの苦悩に、ユウカは冷静に思考を回す。

 

「条件を整理すると……。シンプルな運動はハードルとして低すぎて、一人で向き合うタイプの趣味は向かないのね」

「多分な。……それで平気なら、さすがに本人も思い付いてるだろうし」

「つまり、『複数人』で取り組めて、『時間的自由』が効く、『身体より頭脳寄り』の趣味……」

 

 と、そこまでユウカが口にして、二人は互いの顔を見合わせた。

 

「あるな」

「あるわね」

 

 互いに、どんな答えにたどり着いたかを察した二人は、同時に口を開く。

 

 

「「『ゲーム』!!」」

 

 

 そして幸いにも、ここ、『ミレニアムサイエンススクール』には……『ゲーム』を楽しむ専門家達がいる。

 

 

「決まりね、センジョウ」

「ああ。……ヒナの説得はこっちでやるから、ゲーム開発部の方は任せるぞ」

「ええ。任せて」

 

 二人は互いの使命を見つけると、健闘を祈って握手を交わした。

 

 

──空崎ヒナのゲーム大作戦の、開幕である。






ここに来て、空崎ヒナゲーム開発部概念がぶちこまれていくゥ!



それはそうと、折角ここまで続いてるので、pixivの方にも投稿を開始しました。

あちらはこちらをベースとした『加筆修正版』として、ゆっくり更新していきますので、もしよかったらそちらもチェックしてみてくださいね。
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