青空DAYS   作:Ziz555

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話の核を抽出した結果思った以上にポンポンと話が進んでおります。

初期構想、ゲヘナ動乱だけで40話ぐらいかかると思ってたが全然そんなことはなかったぜ!


2章:災禍の狼煙 -再起の時-

 ミレニアムサイエンススクール、ゲーム開発部部室。

 

 そこでは現在、彼女達の最新作……『戦場の野望』と名付けられた、戦略シミュレーションゲームの開発の真っ最中だった。

 

「うわーん!何度やっても、先生がなんの脈絡もなく巡航ミサイルをぶっぱなしてきます!!」

「再現性が高過ぎる……何かプログラムに問題があるのかもしれないから。先生回りの数値設定の見直しはした方がいいかも」

「シャーレから巡航ミサイルがポンポン飛び出すゲームなんて出したら、どれだけ完成度が高くても炎上しそう……」

「……ひらめいた!」

「お姉ちゃんは変なシナリオにしないで!!」

 

 いつものゲーム開発部のメンバーにヒナを加えた、新しい体制の開発チームは、以前とは異なり、かなり本格的というか……ハッキリとした運営体制のもと、ゲームの開発に取り組んでいた。

 

 ゲーム開発に置いてヒナが担っているのは、スケジュールの統括管理と、各メンバーの作業進捗の統制、バランサーだった。

 

 これまでのゲーム開発部は、それぞれのメンバーが、それぞれの個性を、思い思いに爆発させ、熱意をぶつけ合いながらなんとか一つの『作品』へと完成に導いていく様な形式を取っていた。

 故に、その熱量を纏めきれずに……所謂『クソゲー』になってしまったり、逆にその『熱量』が作品のクオリティをあげ、ファンの心をとらえることもあるような、バラけた完成度となる。

 

 だが、そこに『フラットな視点』と、『組織を纏める経験』を備えたヒナが参加することで、環境は一変。

 実際に取り組んでいるゲーム開発部のメンバー達自身も、その『ゲームの作りやすさ』に感動を覚えている節があった。

 

 ヒナはそんな環境で、自分の培ってきた知識や経験の新たな意味を知り、価値を知り。世界が広がっていくような、そんな感覚を覚えていた。

 

 充実していた。間違いなく、ヒナの心は満ち足りていた。

 

 ゲームを遊び、学び、議論し、語り合い、作りあげる。

 そんな毎日が、楽しくて仕方がなかった。

 

 だから、こんな日々を共に過ごしているゲーム開発部のメンバー達には感謝をしているし、それと同じぐらいその切っ掛けを作ってくれたセンジョウとユウカにも感謝をしていた。

 

 風紀委員会にいた時の生活は、その意識の中心に常に『面倒くさい』が居座っていた。

 

 共に仕事をしていた風紀委員の面々に文句が……いやまあ、不満というか、要求はあったが。それでもヒナ自身から彼女たちに文句が合った訳ではない。

 しかしそれでも、風紀委員長としての活動の内容は『誰かがやらなければならないこと』を淡々と消化しているだけの毎日で、それはヒナ自身が自発的に活力をもって行っていけるようなものではない。

 

 だから、先生に褒めてもらいたかったと、そう感じていた記憶がある。

 

 いつの間にか、自分の中で風化していた感覚が甦るような。そんな感覚を味わいながら、ヒナは現在のゲーム開発部での日常を送っていた。

 

 

 そんな日々を送っていたある日。ゲーム開発部の扉が静かにノックされる。

 

 

 ほかのメンバーがそれぞれの作業に集中し、気づいていなかった様子だった為、ヒナが仕方なく立ち上がり、扉を開けると、そこにはユウカが立っていた。

 

「丁度よかった。……ヒナ、少し時間あるかしら」

「私?」

 

 ユウカがゲーム開発部を訪れる時の理由の大半はモモイのやらかしか、部費に関する話だ。

 今回もそのどちらかだろうと考えていたヒナは、彼女の口から自分の名前が出たことに驚き、目を丸くした。

 

 チラリ、とヒナが背後を振り返ると、ミドリと視線があう。どうやら来客に気づいたらしい。

 ヒナが自分の表情をうかがう様子に気づいたミドリは静かに頷く。どうやら、しばらく席を外しても問題はなさそうだ。

 

 

「ええ……大丈夫」

「そう。じゃあ、ついてきて」

 

 ユウカは短くそう告げると、すたすたと先を歩き始める。

 普段であればもう少し言葉がある気がするのだが、ゲーム開発部の前で話すには不都合な内容でもあるのだろうか。と、そんなことを思いながら、ヒナはユウカの後をついていった。

 

 そうしてユウカがヒナを連れて向かった先は……ミレニアムにある宿直室の1つだった。

 

 普段は鍵がかかっていて入れないその部屋に、ユウカは鍵を差し込むと、ガチャリと開けて、扉に手を掛けた。

 セミナーの生徒であるユウカが部屋の鍵を管理しているのは不思議なことではないが、なぜわざわざこの部屋なのだろうか。なんてことを考えながら、ヒナは促されるままにユウカと共に部屋に入る。

 

 

────そこは、きれいに整頓はされているものの、誰かが生活していた『跡』の見受けられる一室が、そのままになっていた。

 

 

「……ここは?」

「センジョウの部屋よ。ミレニアムにしばらくいた頃にずっと使ってたから、そのまま残してあるの」

 

 ユウカは手馴れた様子で椅子を引くと、ヒナにそこに座るように促した。

 

「ひとまず座って。適当にお茶でも淹れるから」

 

 それだけ伝えると、ユウカは手馴れた様に部屋を漁り、お茶の準備を進める。

 ヒナが座って、しばらく無言の空間に、ユウカが支度する茶器がカチャカチャと立てる音だけが響く。

 

 しばらくの沈黙ののち、ユウカはヒナと自分の前にお茶を用意すると、ヒナの対面へ座る。

 

「待たせたわね」

「大丈夫。それで、話って?」

 

 ヒナに促されたユウカは、少し真剣な面持ちのまま口を開く。

 

「センジョウがゲヘナでいろいろやってるって言うのは知ってる?」

 

 その問いかけに、ヒナは先日のゲヘナの光景を思い出す。

 ……あまり、気分のいい思い出ではない。正直なことを言えば、忘れようとしていたというのが、ヒナの実情だ。

 

「……まあ、それなりには」

 

 少し言いづらそうに、そう返すヒナの様子を見て、ユウカは表情を曇らせる。

 どうやら、思うところがある内容を放そうとしているらしい。

 

「────単刀直入に言うと、センジョウがちょっとまずそうなのよね」

「センジョウが……?」

 

 ヒナの問いに、ユウカは「そう」と短く返す。

 

「この前の夜に連絡があって、結構厄介な内容が積みあがってるから。シャーレの事を任せたいって頼まれたのよ。……当番とはまた別に、シャーレに常駐してほしいってことみたいでね」

 

 呆れたような、困ったような、心配そうな。そんな様子で彼女は言葉を続ける。

 

「勝手に一人で全部抱えこんで、シャーレもゲヘナも!ってやらなくなったのはいいんだけど、どうしても私一人じゃセンジョウのサポートはしきれないし……ゲヘナの事だから、力を借りられないかなと思って声をかけたんだけど────」

 

 ユウカは、ヒナの様子をみて、そっと目を閉じた。

 

「────その様子じゃ、難しそうね」

 

 ヒナは、いつの間にか、自分の手が小さく震えていることに気づいた。自分さえ気づいていなかった震えを見抜き、こちらの心情を察したユウカのそぶりは、どこかセンジョウを思い出す。

 

「その……」

「いいのよ。無理はしなくて。もともと今のヒナは休暇中だと思ってはいたから、正直巻き込むことは気が引けてたし」

 

 苦笑を浮かべて、ユウカは言った。

 

「きっとセンジョウも、今の貴方を巻き込むのは嫌がると思うから」

「…………貴方は、どうするの?」

「私?私は……ノアには悪いけれど、事が落ち着くまではシャーレの管理をしないといけないだろうから、ミレニアムに通いつつ、シャーレで寝泊まり……になるのかしら。掃除とか洗濯とか、料理みたいな、家事の部分もできないぐらい忙しい可能性もあるなら、その部分のフォローは必要でしょうし」

 

 そう平然と言ってのけたユウカに、ヒナは驚きの表情を浮かべる。

 

「それって大変じゃないの?」

「大変でしょうね、どう計算しても時間の帳尻があわないきがするもの」

 

 げんなりとした表情でユウカは、どこか遠くを見るような目を見せた。

 

「でも」

 

 ふと、彼女が笑みを浮かべる。

 

「センジョウがみんなを守るなら、私がセンジョウを守るって。決めてるから」

 

 

『彼がみんなを守るなら。誰が彼を守るのか』

 

 

 ユウカは、その自分の答えに、考えに。確信と覚悟を持っていた。その覚悟に、その表情に。その笑い方に。ヒナはあの日のセンジョウの姿を重ね合わせた。

 

 

 誰かのために。背負わなければならないものを、背負った人の顔だ。

 

 

────私、どうして風紀委員長をやってたんだっけ。

 

 

 ふと、そんな思いがヒナの中に湧き上がる。

 

 あんなに面倒で、あんなに苦しくて、あんなに辛くて。

 

 楽しい事なんてひとつもなくて。

 

 誰もほめてくれなくて。

 

 だれにもみとめられなくて。

 

 ずっと、ずっと一人で抱え込んできた、背負い込んできた、その責任は。

 

 

 どうして。私が背負っていたんだっけ。

 

 

 私は。強くもない私は。それでも自分に出来ることを選んで、進んでやって。

 そこに自分の意志も、誇りもなくて。

 ただ、やらなくちゃならなかったからやっていた。

 

 背負いたくもない期待と、責任と、仕事を押し付けられて。それでも私がやるしかなかった。

 ただ、その惰性だけで続けてきた筈だった

 だから、そんな『覚悟』は私にはなくて。私は強くはなれなくて。

 

 

 けれど、それでもいいんだと。あの日の彼の姿を見て思った。

 

 

 足掻いて、もがいて、戦って。

 弱くて、脆くて、不完全でも。

 

 それでも前へ進もうとする彼の姿に、私は確かに救われた。

 自分は1人じゃないんだと、そう気づけたから。

 

 私には、イオリが、アコが、チナツが。風紀委員のみんながいる。

 私が、誰かがやらなくちゃいけないことをやることで、誰かのためになっていて。それはきっと無駄じゃなくて。

 

 だから私は、あの日の後も。頑張れたんだ。

 

「ごめんなさい、ヒナ。折角新しい事に打ち込んでるのに、腰を折るようなことを」

「いいえ。……ありがとう、ユウカ」

 

 ヒナは、ユウカの謝罪に、首を静かに横に振る。

 

「私も少し、大事なことを忘れてたみたい」

 

 責任ばかり、考えていた。

 これからの事ばかり、考えていた。

 

 でも、きっと。これからの事も大事かもしれないけれど。

 

「『これから』と『この瞬間』は、同じぐらい大切だもの」

「ヒナ?」

 

 ヒナは、笑顔を浮かべた。

 

 だがそれは、ここ数日の、ゲーム開発部と過ごしていた時間の中で見せるような笑顔でも、『先生』へ向けるような笑顔でもない。

 

 彼女の瞳は、前を見ていた。

 

「ユウカ、私も手伝うわ」

「本当にいいのね」

「当然でしょ。『私がやらなくちゃいけない事』をするだけ」

 

 それは、貧乏くじといえるのかもしれない。とても面倒で、大変で、苦労することかもしれない。

 けれど、きっとまだ自分は、きっとまた自分は頑張れる。

 あの日、そうだったように。今もまた、きっと。

 

「ねえ、ユウカ」

「どうかしたの?」

 

 これから大変なことをするだろうという予測がついているにもかかわらず、平然と、落ち着いた様子で自分の入れたお茶を飲むユウカの姿を見て、ヒナは笑顔を浮かべている。

 

「やっぱり、2人ってとってもお似合いだと思う」

 

 ヒナの言葉による不意打ちに、ユウカは口に含んでいたお茶を吹き出す。

 

「げほっ、ごほっ……!きゅ、急になに!?なんでそういう話が出てきたの!?」

「さあ、どうしてかしら」

 

 ユウカの問いをとぼけて躱し、ヒナは席を立つ。

 

 センジョウとユウカが、二人と一緒なら。きっと何度でも立ち上がれると。そんな気持ちが確かに、ヒナの中には存在していた。





という訳でヒナ再起の時でした。


本編ヒナは個人的に、ある意味自己中心的な子だと思ってるんですよねぇ。
あれだけの力があれば、別に責任放棄したってあの子自身は自由に過ごせるだろうに、なんで「誰かがやらなくちゃならない事」にこだわるのかという。

私はそれを「自分が落ち着かないから」でやってるだけだと思ってます。だから「責任の放棄」ですら結局エデンの下りみたいになるのかと思ってます。

ですが、当作ではセンジョウとのやり取りを経て、今回みたいな結論へたどり着いており、その為「イオリの成長の為」みたいな理由で停学を受け入れてるんですね。
まあその辺りもちょこちょここの後の展開絡むんで全部は言えませんが。


シレっとユウカをちゃんと頼るセンジョウ君。完全に絆されてます。
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