青空DAYS   作:Ziz555

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種自由見てきました。

先に言っておくと、影響されてる部分もありますが、基本的な大筋は影響受けてません。見る前から決めてました!!


3章:戦火動乱 -守護者-

 

 誰もが寝静まる丑三つ時。

 本来であれば、多くの人が眠っているであろう時間に、しかし、現在のゲヘナには、ちらほらと光が灯っていた。

 それらは、夜通しで仕事をする、『眠らない街』というようなものではなく……争いの結果の火災や、銃器が火を噴く瞬間の光である。

 

「……いくらゲヘナの治安が悪いって言っても、ここまでだったことは初めてじゃない?」

「まさか、ここまで治安が悪化してるなんてね」

 

 闇夜に紛れつつ、目的地であるゲヘナ学園の校舎を目指す『天魔68号作戦(2度目のクーデター)』(命名:センジョウ)の実行チームは、誰にも見つからないように、慎重に夜の街を進んでいた。

 普段であれば、そこまで意識的に隠れることをせずとも問題のない時間であるはずなのに、町中のそこかしこから戦いの気配が聞こえ、人の気配がする。

 もちろん、すべての人が起きている、という訳ではない。

 

 けれど、寝込みを襲うもの、襲撃者を撃退するもの、巻き込まれぬために警戒するもの。

 

 そういった思惑が交差し、疑念と暴力がこの町を覆っていた。そんな状況はいくらゲヘナであったとしても健全とは、言い難い。

 ゲヘナは治安が悪いとは言うが、それはあくまで『一人一人の生徒が自由すぎる』ことに理由がある。

 荒事を起こす生徒たちも、別に『誰かを傷つけてやろう』などとは、ほとんどの場合考えてはいない。ただ、自分のやりたいことに素直すぎるだけなのだ。

 その結果、周りが見えなくなり、周りへの被害を考えず、暴走してしまう。『無責任な自由』……それが、ゲヘナの治安の悪さの正体だった。

 

 しかし、今の現状は違う。

 

 今のゲヘナに蔓延するものは、文字通りの純粋な『暴力』。

 

 力のままに、相手を征服し、蹂躙し、他者を思うままにしてしまいたいと言う。原始的なルールに、支配に、ゲヘナの『秩序(ルール)』は、置き換わってしまっていた。

 

「……急ぎましょう。時間はあまり残されていないみたいだから」

 

 アルは、その現状をみて、ヒナの危機感を知る。

 たしかにこれは、このままでは。ゲヘナその物が無くなりかねない。

 よしんば名前が残っていたとしても、そこに残る『ゲヘナ』は、今までのゲヘナとはその本質が全く異なる、醜悪な組織が君臨することになるのは、疑いようがなかった。

 

 アルの言葉に、チームのメンバーは静かに頷き、前を急いだ。

 

 

 

 彼女たちの目指すのは、懲戒委員会が臨時生徒会を敷く、旧万魔殿執務室。

 そこにいるであろう、『懲戒委員会委員長 岩動キヨミ』の捕縛と、捕らわれている筈の『万魔殿』の主要メンバーの解放だ。

 指名手配でこそあるが、政治的に意味を持たない『便利屋68』を中心に組織されたチームが『懲戒委員会』を抑え、『万魔殿』の生徒達を解放さえできれば、『懲戒委員会』の暴挙はひとまず押さえられる。

 それですぐにこのゲヘナの混乱が収まるとは思えないが……『万魔殿』の議長である羽沼マコトは、バカではあるが間抜けではない。そして、その政治手腕には評価すべき点がたしかに存在している。

 彼女の生徒会復帰さえ達成できれば、後は風紀委員会とシャーレの助力を用いてゲヘナを元に戻すことができるはずであると。

 

 しかし、そんなことは懲戒委員会側も百も承知。

 

 故に、『懲戒委員会』の切り札は。彼女たちの前に立ちはだかる。

 

 

「────やはり来ましたね。空崎さん」

 

 

 アル達がゲヘナ学園の第一校舎裏口へたどり着いた瞬間。彼女達を待ち構えていたと言わんばかりにサーチライトに照らされる。

 10人以上の部下を従えた、『断罪部』の長……宍戸オウカは悠然と前に歩みでる。

 

「お伝えした筈ですよ。今のゲヘナにあなたの居場所は──」

 

 そう言いかけて、目の前に立つ少女の姿に、オウカは眉間にシワを寄せる。

 

「…………もしかしてふざけてます?」

「なんのことかしら」

 

 そこには、ガスマスクを装着し、『便利屋六八』とデカデカと書かれた、白いコートの下に白地のクッソダサいTシャツを着こんだ……白い髪がめちゃめちゃに長い、小柄な少女が、黒いマシンガンを片手に立っていた。

 

「あの。いや。なんですかその格好」

「私もやめておいた方がいいって言ったんだけどね……」

「くふふ。ひ……じゃなかった。マオちゃん、譲らなかったもんねぇ」

「私はマオ。便利屋68の新入りよ」

「すみませんすみませんすみませんすみません……!私がちゃんとした服を用意できなかったから……!!」

 

 『マオ』を名乗るヒナの、なんとも言えぬ奇妙な格好と、彼女のつれた3人の少女達の姿に、オウカは大きくため息をついた。

 

「……成る程。風紀委員会としてではなく、あくまで無関係な一個人としてこの状況に介入する、と言うことですか」

 

 オウカは、チラリと周囲を見渡す。

 

「……『先生』の姿が無いようですが。シャーレの力は借りなくてもいいのですか?」

「"なんのことかしら"」

「成る程、『答えるつもりはない』ですか」

 

 深く、大きくオウカはため息をつく。まるで、期待はずれと呆れるように、嘲るように。

 

「そんな、どこの馬の骨とも解らぬ戦力にまですがるなんて。貴女も随分落ちましたね」

「………………へぇ。カヨコっち、聞いた?私達、『馬の骨』らしいよ?」

「ムツキ」

「あははっ……。大丈夫、ちゃーんと。ちゃーんと冷静だよ」

 

 言葉とは裏腹に、攻撃的な笑みを浮かべてオウカを睨むムツキだが、対照的にオウカは、冷ややかな目で彼女達をみていた。

 

「断罪部。前へ。空崎ヒナは私が対処します。残りの雑兵はそちらで適当に処理しなさい」

「し、しかし……」

「数で勝っています。無策とは思えませんが……、こうも容易く感情を乱されるような相手です。取るに足らない。指揮はまかせます」

「解りました……」

 

 指揮をまかされた断罪部の生徒は、周囲の部員達を率いて戦闘陣形を敷く。

 

 そして、その陣形から取り残されるように、ヒ……マオと、オウカが対峙する。

 

「助けに行かなくてもよろしいので?」

「ええ。先輩方は強いもの」

「……そのキャラ、似合ってませんよ」

 

 オウカは、腰から愛銃である『失黒鉄』をゆっくりと引き抜く。

 

「一対一。ゲヘナ最強と呼ばれる貴方とこうして戦えること、光栄に思います」

「別人なのだけれど。……空崎ヒナなら、そんなことに興味はないと言うんじゃないかしら」

 

 白い髪を持つ2人の少女は、互いに黒く光る武器を構え、相手を見据える。

 

「……お手柔らかにお願いしますよ、『先輩』」

 

 その言葉と共に、オウカは姿勢を低く、マオへと向かって全速力で駆け出した。

 マシンガンであるマオの獲物に対し、オウカの武装はハンドガン1丁。ミッドレンジ以降の戦闘には、明らかにマオへ分がある。

 故に、オウカの選択は順当かつ王道。故に、マオは警戒を強めた。

 

『読まれている前提でも尚、勝てる算段がある』

 

 オウカの選択は、その事実を言葉より雄弁に語っていた。

 

 故に、マオは直接彼女を狙うより彼女の策を挫く行動を取る。

 銃口を進行方向へ向け、その進行を阻むべく、弾幕の壁を形成する。

 

 デストロイヤーが唸りをあげ、込められた弾丸が放たれた。

 

 瞬間。ダンッ!とオウカが強く地面を蹴り上げてその弾幕を上へと飛び退ける。

 障害物のない銃撃戦においての禁忌の一つは、動きを止めること、予想のつきやすい動きをしないことである。

 故に、『飛び上がる』事は予想がつかない、絶対的な回避行動足り得るだろう。

 

────『空中』に飛び上がったならば、後は落下する他に無いからだ。

 

 飛び上がった瞬間、その一瞬だけは回避として強くとも、その『後』はその限りではない。

 直線的な第1手。短絡的な第2手に、マオは自分の考えに疑念を抱く。彼女の戦闘スタイルは、思慮深いものではなく、力押しなのではないか。と。

 

 だが、それこそがオウカの術中。

 

 その一瞬の迷いが、マオの銃口を鈍らせた。

 

 マオが追撃のために武器を持ち上げた瞬間。オウカは体を大きく捻り、左手の『失黒鉄』を右手のグローブへ押しつけ────引き金を引いた。

 

 ズガァン!!

 

 およそハンドガンとは思えぬ爆裂音が響き、オウカの背後で小さく爆発が起こり、彼女の落下する軌道が変化する。

 その音と変化に、2度。マオの思考が止まる。

 

 2度目の、思考停止だった。

 

「遅い」

 

 マオを大きく飛び越え、背後へ着地したオウカは、一歩の跳躍でマオへと肉薄する。

 迎撃のために彼女が振り返った頃には────彼女の視界を、黒い掌が覆っていた。

 

「しまっ────」

「貴女の頑丈さはよく知っていますので。対策ぐらいあります」

 

 ガッチリと、オウカの掌がマオのガスマスクを捕らえる。

 そうして、左腕のハンドガンがそのグローブへと添えられた。

 

「爆ぜろ」

 

 ガチリ。と撃鉄が下ろされ、ハンドガンが火を吹いた。

 すると、黒いグローブに、火が走り、膨らみ────

 

 ドガァン!

 

────炎の華が咲いた。

 

 熱と衝撃を受け、マオが吹き飛ばされて地面を転がる。

 

 オウカは、そんなマオの姿を見下ろしながら、右腕の残り火を振り払う。

 

「どうですか?コレが私の『本来の戦い方』……」

 

 左手でくるくると漆黒のハンドガンを弄びながら、彼女は言葉を続ける。

 

「普段は掴んで、回避をさせない『0距離射撃』の攻撃ですが。……本来は、『失黒鉄』を用いて、この特性の火薬グローブの爆撃を炸裂させる、『0距離爆破』」

 

 ガチャリ、左手の『失黒鉄』を構え、右腕のグローブを半歩引いて構える。

 

「────ガスマスクが功を奏しましたね?」

 

 視界の先で立ち上がるマオ。……オウカの攻撃を受け、ガスマスクが吹き飛ばされ、その下の素顔が露になったヒナが、そこには立っていた。

 

「…………貴女の自信。よく解ったわ」

「解ったところで、防げる攻撃ではない」

 

 オウカは、鋭い視線をヒナに向け。ヒナはそんなオウカに、相変わらず冷ややかな視線を向ける。

 

「一撃を受けて、危険性は解ったと思うのだけど。……それでも尚、そんな目か」

「どんな目に見えているのか解らないけれど。私の貴女に対する考えは変わらない」

「……そうですか」

 

 オウカは、ふたたび姿勢を深く、低く下げる。

 

「次はその目を、鼻を、口を焼きます」

「随分物騒ね。……はぁ、『めんどくさい』」

 

 すぅっと。ヒナの視線が冷たくなり、オウカは自分の背筋にゾクリと緊張感が走るのを感じる。

 

────来る。

 

 ヒナの気迫が膨れ上がり、デストロイヤーが唸りをあげる。

 

 1発1発に込められた気迫と殺意が、弾丸の重さを増し、破壊の雨となって横殴りに吹き付ける。

 

 だが。オウカはそれでも、前へ踏み出した。

 

 デストロイヤーは広域殲滅、制圧が本領、しかし、それでも尚ヒナがタイマンに強いのは、あくまでも本人の打たれ強さと、冷静で徹底した戦闘スタイルに理由があるにすぎない。

 

 そして、オウカの戦闘力はヒナのソレと、贔屓無しで評価して同等クラス。

 ならば、その二人の勝敗は一重に、『間合い』によって決まる。

 

 多少の被弾を覚悟の上で、今度は飛ばずに、オウカは両手を背後へ回した。

 

 ガチリ。と引き金を引く。

 

 ズガン!ズガン!ズガン!

 

 グローブに仕込んだ火薬の量を調整し、その炸裂を小刻みに繰り返すことで、ジグザグに爆発で加速を繰り返し、ヒナに狙いを定めさせない。

 弾切れを狙って近づく選択肢もある。だが、それでは接近中にリロードを許してしまう。

 故に、オウカの選択は一つ。

 

 前進勝利のみ。

 

「本当にめんどうね」

 

 デストロイヤーの『圧』に怯えること無く、怯むこと無く、最小で最短の経路を駆け抜けるオウカに、ヒナはいたって冷静に──銃撃を止める。

 

 弾切れにはまだ早い。何かの策があると踏んだオウカだが、彼女は至近距離戦(クロスレンジ)に絶対の自信があった。

 どんな小細工だろうと、力でねじ伏せる事が出来る確信をもって、ヒナの懐へ真っ直ぐに突撃する。

 

 加速、接近のために放った弾丸を加味して残弾は残り3発。

 

 オウカは、後ろに回していた左手を前へと構え直す。

 

 そうして、ヒナへ向けて1発。

 

 ズガァン!!という爆裂音と共に放たれた弾丸は、ヒナの脳天へ直撃し、その衝撃で微かにヒナは上体を仰け反らせた。

 

 すかさず、今度は後ろ手に回し、グローブに火を入れる。

 

 ズガン!と言う音共に、瞬間的に加速したオウカは、ヒナの懐へ入り込み、右腕を突きだし────

 

 

 瞬間。ヒナの左手が懐から『何か』を取り出した。

 

 

「……!」

 

 咄嗟にオウカは姿勢を起こし、ヒナへの接近を止めるために足を突き立てる。

 しかし、加速した身体はそう簡単には止まらない。

 

 ヒナは、左手に構えたソレ──拳銃で、オウカの右腕を狙い打つ。

 引火を防ぐためにオウカは右手を庇うように身体を捻り、弾丸を回避する。

 しかし、ソレはヒナに背中を向けたままの接近をするような構図となっていた。

 

「逃れることは出来ない」

 

 当然、その隙を見逃すヒナではない。

 

 脇に抱えるようにして右腕に構えた『デストロイヤー』の引き金を引くと、弾丸の嵐が再びオウカを襲った。

 

「チッ……!!」

 

 オウカは咄嗟にグローブを地面へ向け、失黒鉄の引き金を引く。

 

 最後の弾丸を用いた変則回避は、片手で狙いの定めきれないヒナの弾丸を回避するには十分な機動力で距離を離し────。

 

 両者の距離は、振り出しに戻っていた。

 

「……驚きましたね。そんなものに手を出しているとは」

「私も生徒だから、成長するの。知らなかった?」

 

 ヒナの新たな戦闘スタイル。それは、『大型マシンガンと拳銃による変則二丁』。

 

 みんなを守るために敵を打破する『デストロイヤー』。

 自分自身を守るための盾となる『ガーディアン』。

 

 それが、ヒナ出した、新たな『答え』の形だった。

 

「随分と傲慢で、我が儘で、独り善がりで、不安定な姿ですね。……まさに、今の貴女そのものだ」

 

────オウカの指摘するように、今のヒナの姿は、その両方の性質を持つがゆえに、その両方の性質が疎かになっている。

 

 『デストロイヤー』は片手で運用するにはあまりに大きすぎる為、以前に比べ場その破壊力は半減している。

 『ガーディアン』においても、ヒナの得意とする中距離戦においては射程が短すぎる上、取り回しを最優先としたソレは、自衛用にしてもあまりに軽すぎる。

 

 一人で全てをこなそうとした結果。その全てが疎かに、不安定になっている様にも見える。

 

 だが、しかし。

 

「そう?私は、結構、今の私の事、気に入ってるんだけど」

 

 ヒナは、穏やかに笑みを浮かべて言いきった。

 そんな彼女の表情に、オウカは顔を歪める。

 

「────貴女は、過去の貴女より弱くなった」

 

 オウカは、苛立ちを隠さずに弾丸を再装填する。

 

「全てを破壊する、純粋な『力』。そんな貴女を、私は尊敬していた。今の貴女は、貴女ではない…………私がそれを、証明しましょう」

「私は、『そんなこと』に興味は無いけれど」

 

 対するヒナも、デストロイヤーの弾丸をリロードし、『デストロイヤー』と『ガーディアン』を構える。

 

 

「────絶対的な『力』こそが、全て」

「力だけでも、想いだけでも。……答えは見えないと、私は知ったから」

 

 

────二つの力が、激突せんとしていた。




変則二丁拳銃、良いよね
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