青空DAYS   作:Ziz555

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 最終編プロット7割りぐらいできたので、日常回の投稿です。
 戦いの後のご褒美回ですね。

 なんとミカ回です。


幕間:青春の日々へ至る道
ミカとセンジョウ:前編


 

────夢を、見ていた。

 

 夢の中で俺は、多くの生徒に囲まれ、慕われ。みんな、笑っていた。

 ケンカをすることや、泣いている生徒がいて。でも、そんな彼女達に手を差しのべて。背中を支えて。

 

────幸せだった。

 

 けれど、その夢は、長くは続かない。

 

 俺の伸ばした筈の手は、いつの間にか血で赤く濡れ、無数の死体の浮かぶ血の池の上に立っていた。

 嘲るような笑い声が響き。『彼女』の忌々しい声が聞こえる。

 

「オレを本気で『殺そう』としたお前のいるべき世界は、地獄だろ?」

 

 そんな、怨み言のような言葉と共に、顔を歪めて、ゆっくりと俺との距離を詰める。

 

「お前の『力』は。所詮破壊の力。お前は……オレの同類なんだよ」

 

 そんな言葉を黙らせるため、俺はNuilの刃を突きだして、その身体を貫く。

 そうして、静かになったそれに目を再び向ければ。

 

 

 

 

「……せん、じょう…………」

 

 

 

 

────そこには、胸をNuillの刃に貫かれた。ユウカの姿が。

 

 

 

 

 

 

 そんな終わり方で、いつもの様に、浅い眠りから目を覚ます。

 

 ……いつの間にか、シャーレのデスクで眠ってしまっていたらしい。

 寝ている間に全身から吹き出た冷や汗を吸った衣服は、ベッタリと全身に張り付き、不快感のある息苦しさを与えてくる。

 そんな風に、無意味に精神をすり減らしながら、俺は目の前の書類に問題がないかを確認する。多少折れてはいるが、破けたり、使えないほどの損傷はない。

 

「…………仕事しよ」

 

 自分が寝落ちる直前までに、どんな仕事をしていたのかを思い出すためにがさがさと机を漁りながら、ふと、夢を見始めるようになった頃を思い出す。

 最初は、目が覚める度に涙を流して、激しい動悸と、息のつまるような感覚に襲われていたが……眠る度に必ず、何度も見ているうちに、それにも慣れた。

 夢の終わりと共に、強制的に目が覚めることだけは慣れないが。仕事の多い今のシャーレにとってそれは、むしろ都合が良いと言えるのかもしれない。

 

 寝ぼけた頭と、胸に残る不快感をそのままに。俺は仕事へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 『ゲヘナ動乱』から数日。平穏を取り戻したシャーレには、貯まりに貯まった業務が山積みとなっていた。

 

 そもそも、平時からして生徒達による『当番制度』の手伝いをもってしても、常に破綻寸前といった様子のタスクが積み込まれているのだ。

 そんな中で、ユウカのフォローがあったとは言え、シャーレの現最高責任者であるセンジョウが長期間席をはずしたとなれば、その様相は妥当と言う他に無いだろう。

 

 しかし、仕事が山積みなシャーレというのは、別にこれが初と言うわけではない。

 なんなら、センジョウが初めてシャーレへと訪れた時や、彼がその立場を引き継いだ直後に比べれば、さしたる量ではないとさえ言えるだろう。

 

 では何故、わざわざ特筆するほどに『シャーレの仕事』が積まれているのか。

 

 その答えは酷く単純である。

 

 

────シャーレには、センジョウが一人。ただ黙々と仕事を進めている姿だけがあった。

 

 

 

 予定されていた『当番』の申し出をすべてキャンセルし、ユウカにも声をかけず、センジョウはただ、一人で机に向かい、黙々と書類仕事を進めていた。

 

 様々な憶測や意見、心配がセンジョウに向けられたが、彼はそのすべてを『大丈夫。気にしないで』の二言で片付け、静かに仕事に没頭していた。

 

 センジョウは、ただ。今は誰であろうと、生徒と顔を合わせたいとは。思えなかった。

 

 

 そんな、ある日。

 

 

 一件の新着メッセージが、彼のモモトークへ届く。

 誰からの連絡なのか、それを確認するべくアプリを開こうとし……『聖園ミカ』の名前を見て、センジョウは顔をしかめた。

 

 彼女からの通知の殆どは他愛ない暇潰しの会話だが、定期的に『外出の付添人』を求められることがあり……しばらくトリニティにも顔をだせていなかった事と合わせて考えると、後者の確率が高かった。

 

 故に、センジョウは、アプリを開くのをやめて、そっと端末を伏せる。

 寝ていたか、はたまた仕事で忙しいか。

 とにかく、既読をつけずに、なんとか言い訳すれば良いだろう。

 そんなことを考えて、そのまま無視をして作業を続けると、少し間を置いて、端末は再び、メッセージの受信通知を告げる。

 

 ミカがこちらの返信を待たず、立て続けにメッセージを送ってくるのは別にいつもの事であり、センジョウはこれっぽっちも動揺しなかった。

 そうして、やはり彼の予想通りにしばらく立て続けに受信通知が鳴り続けるが……。そこでようやく、センジョウは違和を覚えた。

 

 あれ?何か長くね?

 

 と。

 

 なにか普段とは違うことがあったのか、緊急事態かと頭を疑念がよぎるが、それであればミカ以外のトリニティ生からも連絡がある筈だろうとすぐさま思考を改め、いつの間にか端末に伸びていた手を引く。

 すると、丁度そのタイミングで通知の嵐が鳴り止み、静寂が訪れた。

 

 ようやく諦めたのか。と、センジョウが安堵と呆れのため息をついたその時。

 

 『メッセージ』ではなく、『着信』が入る。

 

 既読すらつけていない状況で、ミカが自分への通話を選択したことは今までの中では一度たりとも存在しない。

 だから、センジョウはなにも考えず、咄嗟に。端末を手に取ってしまった。

 

「もしもし?」

『やっぱり、気づいてた』

 

 その第一声を聞いた瞬間、センジョウは即座に通話を終了させ、頭を抱え込んだ。

 

 

─────嵌められた……ッ!!

 

 

 おそらく、普段より長いメッセージの連投も、この通話のための布石。加えるなら、連投の直後の絶妙な『間』すらある程度計算ずくでやってのけたのかもしれない。

 

 センジョウの知る限り、ミカはそう言う『強かさ』を持ち合わせていた。

 

 頭を抱えるセンジョウを他所に、端末は再び、機械的に着信を告げる。

 

 今度は、明確な拒絶の意思でもって、『応答拒否』の選択をする。

 

 どうせ近くにいることはバレているのだ。居留守を使う意味は最早存在しない。

 拒否の意図を汲み取ってくれるか、呆れるか、怒るかで機嫌を損ねて、通話を止めてくれないかと。そんな望みを込めて、センジョウは通話を拒否する。

 

 だが。切断された次の瞬間。再び端末に着信が入る。

 

 切断。

 

 着信。

 

 切断。

 着信。

 

 切断。

 着信。

 切断。

 

 着信。切断。着信。切断。着信。切断。着信。切断…………。

 

 終わらない連鎖に、先に降参したのはセンジョウだった。

 

「ハイ、もしもし?」

『やっほ。元気してた?』

 

 不機嫌を隠そうともせず、センジョウはふてぶてしく挨拶を告げると、対照的にミカは、普段通りの様子で挨拶を返した。

 

「さっきまでは、それはもう元気が有り余ってる程には」

『本当に?良かった!じゃあ今日もいつもみたいによろしくね!』

「オイまて。声で気づけ声で」

『声?……ああ、ほんとだ。確かに、ゾンビみたいな声になってるね。普段とあんまり変わらないから気づかなかったよ』

「お前に俺の普段の声は一体どんな風に聞こえてるんだ」

『えっとね…………残業でくたびれたサラリーマン?』

「お前な」

 

 ミカの表現に苦言を呈するセンジョウ。

 まだ10代である自分に使うにはあまりにも心ない表現に、思わず反論をしようとして……、ミカのクスクスと言う笑い声に気づく。

 

『良かった。思ったよりいつも通りだ』

「…………お前なぁ」

 

 その言葉に、ミカの真意を知ったセンジョウは怒るに怒れなくなり、今度は呆れのこもった声を漏らす。

 

『これでも結構、心配してるんだよ。……何があったかまでは、詳しく知らないけど、当番の子達、みんな断ってるんだって?』

「どこから……は。ナギサか」

 

 第3回聴聞会を控えたミカは、依然として軟禁状態が続いており、能動的にさまざまな情報を得ることは困難である。

 故に、センジョウは自身の事情を、ミカは知らぬものと考えていたが……そもそも、ミカとナギサは幼馴染みであり、そこから情報が伝わるのは、自明の理だった。

 

「心配してくれるのは嬉しいが。かといってこんな方法でわざわざ連絡取る必要ないだろ。騙すようなマネまでして」

『じゃあ、普通にかけたらちゃんと出てくれた?』

「…………ノーコメント」

『それ、自白と同じだよ?』

 

 ミカの言葉に、センジョウは大きくため息をついて、頭をガシガシと掻きむしる。

 

「それで。じゃあ何のためにわざわざ電話なんてかけてきたんだ。『声が聞きたかった』なんて寒気のするような答えはするなよ?冗談でもだ」

『えー。いじらしい乙女チックないい理由なのに……』

「言わなかったら冗談で使うつもりだったな???」

『ノーコメント☆』

 

 センジョウの問いに沈黙(肯定)を返すミカ。

 皮肉のこもった切り返しに、センジョウは言葉をつまらせ、ミカはその隙に言葉を続けた。

 

『センジョウくん。当番の子達みんなキャンセルしたってことは、当分フリーなんだよね』

「なんか引っ掛かる表現を止めなさい。後仕事はあるから」

『先約もナシ!ってことだもんね☆さすがの私も先約の子より私を選んで!なんて重いこと言いたくなかったからさ!』

「オイ、……オイ。なんだその表現は、止めろ、嫌な予感がする」

 

 フリー、だとか、選ぶ、だとか。

 おおよそただ予定を組む分には必要の無い使われ方をする単語の数々にセンジョウは顔を大きくひきつらせる。

 

 そうして。その『嫌な予感』は見事に的中する。

 

 

 

『じゃあ、午後からデート行こっか?勿論、二人きりで!待ってるから、ちゃんと迎えに来てね☆それじゃ、準備あるから!』

 

 

 

 ミカはそれだけ言い切ると、センジョウの反応も待たずに通話を切ってしまった。

 

 

 ただの外出の付き添いではなく、『デート』等と言う表現を使われたことは、センジョウにとっては初めての事であり、それがどんな意図や意味を秘めているのか、図り損ねていた。

 

 しかし、『お姫様(ミカ)』のワガママは今に始まったことではない。少なくとも、センジョウはそれに何度も振り回されてきた。

 

 だから、今回もきっと。気まぐれなワガママだろうと考え、センジョウは大きくため息をついた。

 

 椅子から立ち上がり、手を組んで上に上げ、ぐい。と力を込めると、固まりかけていた筋肉が刺激を受けて解れていくのを感じる。

 鏡を見れば、髪は乱れ、服はよれたまま。……とてもではないが、人に見せられる姿ではなかった。

 

 

「……しゃーない、着替えるか」

 

 姫の付き人として、恥じない程度には整えようと。そんなことを考えていた。





 当作品のユウカ、ヒナ、ミカはかなり原作から性格や態度が変わっている気がしますが、独自解釈と言うことでここはひとつ……。


 と言うわけで、デートシーンは後半へつづく。
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