ホワッツ・ミーン・『エデン』
──やあ。来たんだね。
ここがどこで、私が誰か。気になる人もいるかもしれないけど……それはあまり、重要なことじゃない。
だから、自己紹介はしないでおこう。私はきっと、貴方が想像する誰か。それぐらいで十分だ。
きっと、ここにいる君は、青空のような青春の日々を求めてたんだろうけど。
申し訳ないけど、ここから先は君の求めてるような話にはならないかもしれない。
雲ひとつ無い空なんて、早々無いように、
世界って言うのは残酷で、苦しくて、どうしようもなくて。悲しい現実って言うものばかりだから。
平和とか、幸せとか。そんなものは一時の幻みたいなものなのかも知れないね。
それは多分、失って始めて気づくような、小さくて、脆くて。気を抜けば見失っちゃいそうな、小さな欠片達。
それでも、私達はそんな些細な幸せの溢れる日々が大好きで、憧れて。求めてる。
時には、そんな憧れを求めて、他人の幸せを羨んだり、憎んだり、奪い取ろうとしたり、勝ち取ろうとしたり。
そんなもの、形にもならない、有るかもわからない、そんなものなのに。
誰もが願う幸せの為に、誰もが不幸になっていく。誰もが涙に濡れていく。
守りたかった筈のものを見失って、なにもわからなくなって、自分のしていたことすらわからなくなって。自分すら見失って。
もがいて、あがいて、叫んで、殴って、蹴って、刺して、撃って、裂いて、割って、千切って。
バラバラに砕け散った、儚いそれを、それでも求めて。
人って、傲慢で強欲で、罪深い生き物。……そうだと思わない?
誰かのためにと掲げる言葉は、誰のため?
みんなの為にと捧げる命は、誰のもの?
君の為にと願う思いは、誰のもの?
願いや思いは、強いほどに捻れやすい。
捻れて歪んでひねくれて。
元の形なんて、もう誰も思い出せなくなってるかもしれない。
それはさ、悲しい事だと思わない?
……私は、どうしても悲しくなる。
願って、祈って、言葉にしても、これっぽっちも伝わらなくて。
それでもきっと、
その言葉や祈りが、誰から発された物なのか、わからなくなるほどの時間が経って。歪んでしまって、呪いに変わってしまうかもしれない。
そんなすれ違いのような悲しみが、人間の本質で、どうやったって交わらない、人と人の心の内側の真実。
これから先は、そんな話。
それでも、この先に進むなら忘れないで。
始まりはきっと……些細な、けれど、確かな、優しい祈りだったと言うことを。
本来とは異なる因果、世界、絆を持って。彼は行く。
───エデン条約編。開幕