これ神秘は神秘でもブリテンの救世主のやつですよね? 作:あるふぁせんとーり
「ふわぁ……おはよう、ミカちゃん!」
「あっはは!まだお眠なの、先生?」
朝一番、一本の連絡が入りました。ティーパーティーの聖園ミカちゃんからです。何でも、話したいことがあるのだとか。私はヒフミちゃん達に少し外すことを伝えて合宿棟を離れました。
そしてプールサイド。あの砂浜とかに置いてあるタイプの椅子……ビーチチェアじゃなくて……そうです、サマーベッド。そこに腰掛けていた彼女は私に気がつくなり頭の上で手を振りました。足先は僅かに濡れています。きっとバタ足でもしてたのでしょう。それを示すように近くに脱ぎ捨てられた靴下と靴が置いてありました。
「いやあ、凄いねアルトリア先生!プールすっごく汚かったでしょ?こんなに綺麗になるんだ!」
「うん、ヒフミちゃん達と頑張ったんだよ。水着でモップとか掛けて……いやあ、楽しかったなぁ!」
「あはは、いいね。夏って感じ!」
「私もやりたかったなー」なんてことを言いながらミカちゃんは笑って、「あ、人払いはしてあるから安心してね!」と続けました。私はちょっとだけ息を呑みました。
「えっと……それで、話っていうのは?」
「そんなに固くならないでよ先生、多分もう知ってる話だと思うし」
「トリニティの裏切り者?」
思わず口走ってしまった私。「やっぱり知ってたんだ。ナギちゃんからかな?」と彼女が笑って聞き返してから、私はそれに気がついたのです。慌てて口を抑えましたが時すでに遅し。早とちり癖というかそういったのは中々治らないみたいです。はあ、と小さくため息を吐きました。
「……もしかして、本当に何も伝えられず「探してほしい」とだけ伝えられたの?」
「まあ、そんな感じというか……全然頭に入ってこなかったと言うか……」
「ん?何か言った?」
「ううん、何も」
「ならいいや。……それで、なんで先生は引き受けたのさ?先生は「シャーレ」の先生で、「トリニティ総合学園」の先生じゃないでしょ?」
「あー……」
なんて答えましょうか。きっとこれは理屈とかの話ではないのでしょう。しかし、いえ、だからこそそれを言語化する術を私は知りません。そして私はしばらく考えてから、自分でも分かるくらいゆっくりと話し始めました。
「えっと……その……好きな女の子がいてね?」
「あ、恋愛話?」
「あ、ううん、そういうのじゃなくて……ううん、でも、大好きな女の子がいたんだ。優しくて、強くて、カッコよくて……。……それで、こっちに来てからもずーっと考えてる。「彼女だったらどうするんだろう」「きっとこうするんだろうな」「もしかしたらこうかもな」とか。それで、もしあの子だったら、きっと助けを求める生徒を見捨てないだろうなーって。それに、きっとそれが先生っていうものなんだと思うし。まあ、私はみんなの味方っていうこと!」
「こんな答えでも大丈夫?」と自分でも少し自信なさげに首を傾げましたが、彼女は「良いと思うよ!」と無邪気に笑って答えてくれました。けれど、何故かその笑顔が素敵なヒールのあの子と重なって。
「バーヴァンシー……?」
「バーヴァン、シー?それがその子の名前?」
「あ、ううん!別にちがくて!」
「そっかぁ……あ」
そして何かを言いかけた後に彼女は僅かに頬を赤くして私に尋ねました。
「先生はみんなの味方って言ってたけど……それって、私も入ってたり……」
「もっちろん!私はみんなの先生だから!」
「……わーお。……あははっ、その言葉覚えてるからね、先生!」
その答えに心底嬉しそうに笑って、何度も何度も噛みしめるように私の言葉を呟くミカちゃん。なんだか自分がとてもキザな台詞を言ったように思えてきて、顔が熱くなっていくのを感じながら私は俯きました。
「……ふふっ、こんなこと言われちゃったら私からも何かお礼しないとね?……そうだ!」
「良いよお礼だなんてそんな……」
「先生にだけ教えてあげる。「トリニティの裏切り者」の正体」
「……え?」
思ったよりも事情は複雑かもしれません。