これ神秘は神秘でもブリテンの救世主のやつですよね? 作:あるふぁせんとーり
「うっわぁ……ホントにお嬢様学校って感じだ……」
道行く生徒達、周りの目新しい景色、彼女の好奇心がそれらを一つでも多くその目に収めようと首を回す度、二つ結びになった長い金髪が風に揺れる。
そして周りの大体を見回した後、彼女はグッとガッツポーズを作る。
「……よし、頑張るぞー!」
確かに先生は希望のカリスマ持ちかもしれないけどさ
「はぁ……」
俺はベッドに寝転がり、大きなため息を吐いた。原作での流れでは、期末テスト→先生のティーパーティー訪問→補習授業部集合だった気がするし、だとすると今は丁度期末テストとティーパーティー訪問の中間くらいだろう。補習授業部の開幕までまだまだ時間がある中で俺は生殺し状態でビクビク過ごさないといけない訳だ。
原作知識というチートがあるだろと自分を励ましはするが、どう考えてもそれだけで上手く行きようがない。だって、さっき散々知ってるはずのツルギを見ただけで泡吹いて気絶してるんだぞ?エデン条約編の数々の陰謀に当事者として挑戦するとか……。
「あー……今からお腹痛くなってきた……」
いや仮にも救世主トネリコの身体を借りてるんだ、そんな弱気になってどうする俺、と俺は頬を叩いて自らに喝を入れる。そうだ、どうせ補習授業は受けるんだから、今のうちに参考書でも買ってこよう。多分トリニティ校内の生協的なところに売ってるだろうし。救世主トネリコ、つまりは一億QPを容易くくれたモルガン陛下だ。きっとこっちの世界でもかなり貯め込んで──。
「『残高不足です』」
「うっそぉ……」
いやよく考えたら救世主時代は不遇も不遇だっただろうが?!何早とちりしてんだ俺!というかあのキャストリアにそっくりだったはずのトネリコじゃなくて俺の髪かなり白に近いよな?!ってことはもしかしてこの身体って……。
「……闇落ち直前?」
確かに魔猪の氏族パワーと妖精妃の魔力を兼ね備えたタイミングだけど確かに兼ね備えてるけどタイミングに人の心無さ過ぎない?!え俺闇落ち寸前だったの?!俺はあっちの世界では最先端だった無人コンビニ的な店内で頭を抱える。最早薄っすらと金髪に見えるだけの白髪に、確かに154cmのキャストリアよりも少し大きな背。確かにモルガンになりかけという雰囲気はある。というか胸は最後なんだ……。
次から次へと判明する割と大きめの事実に俺の焦りは止まらない。いや、実際には対して大きな問題じゃないのかもしれないが、エデン条約編を控えててただでさえトイレに籠りっぱなしになりそうな俺のメンタルには割と特大ダメージなのだ。
「えっと……大丈夫ですか?」
危うく崩れ落ちそうになっていた俺の耳に、例えるならば乾いた土地に降り注ぐ恵みの雨のような川澄綾子ボイス。ああ、生き返る……と考えたのも束の間、俺の頭に浮かんだ一つの疑問。
(……ブルアカに川澄綾子いたか……?)
え、まさか俺がこっち来た後に実装された?え川澄綾子ボイス実装?そんなことを考えながら俺は恐る恐るその声の方向へ振り返った。
薄い水色の宝石のような瞳、二つ結びになった長い金髪、そしてついこの前鏡で見たばかりの顔。胸元にはシャーレのロゴが入ったネームプレートのようなもの。それを見て、あ……あ……と俺は思わず後退りする。
「あれ?もしかして──」
「う、嘘ーー?!!!」
「何処かで会ったことありますか?」、そんな風に問いかけようとした彼女の声を掻き消して俺の叫びが店内に反響する。彼女は「あ、そっか」とポンと手を叩いた。
「……そういえばまだ名乗ってませんでした」
間違いない、間違いない、この世界の……この世界の「先生」は……。
「私は「アルトリア・キャスター」。シャーレっていうところで先生をやってます」
それは、突然でした。黄昏の島、ブリテンを巡る大冒険、そしてとっても大好きな人の為に戦った、辛かったし痛かったけど、少し誇らしかったあの瞬間からもそれなりの時が経っていたある日のことです。
「……生、先生。起きてください」
「……え?」
私は突然、「連邦生徒会長」なる謎の人物の手によってこのキヴォトスという世界に招かれてしまったのです。それも、サーヴァントとしてではなく一人の人間として。妖精眼も無くなっているし、何故か魔術も使えなくなっていて、一体今までの私の努力は何だったんだと嘆く私の手元にあったのは選定の杖ではなく、一つのカード。きっと立香が言っていた「クレジットカード」というやつに違いありません。
そして目覚めた私を「先生」と呼んで出迎えたのは「七神リン」という少女でした。いえ、少女と言っても私よりも10cm以上背が高い子でしたけれど。そして、彼女は色々な事を私に伝えます。頭がパンクしそうになりました。それで、結局のところ私は、「シャーレ」という超法規的……まあ、すごい組織を指揮してキヴォトスの問題を解決してほしいと頼まれてしまったのです。
ここで断っておけばまだ良かったのかもしれませんが、そういうことを言える雰囲気でもなかったし、何より私は立香と……彼女達とブリテンを救った救世主です。あれから少し自分に自信を持ってしまった私はよく理解もしていないのに「任せて!」と安請け合いをしてしまいました。まあ、なんとかなるという精神です。
そして改めて彼女から話を聞くと、めちゃめちゃ困っているようでした。何でも、このキヴォトスの運営には「サンクトゥムタワー」というものが必須らしいのですが、その管理権限を取り戻すには私が必要なようです。仮にも巡礼も終えてあれから成長……いえ、身体の話じゃありません。心の話です。少しは成長した私は、まだ未熟ながらも一人の「大人」として彼女達に力を貸すことにしました。そして偶然そこに集まっていた生徒達、「ミレニアムサイエンススクール」「トリニティ総合学園」「ゲヘナ学園」と所属はバラバラな彼女達を指揮して、私が働くことになる「シャーレ」を占領しようとしている不良達と戦うことになりました。……銃撃戦で。
このキヴォトスという場所はとんでもない銃社会のようです。生徒達……つまりは高校生が一人一つは銃を持っています。聞くとその辺に手榴弾も売っていると言うし、道には戦車が走っています。なんて壊滅的な治安なんだろうと思いながらも、私のキヴォトスでの初仕事は始まりました。
とは言っても、指揮ということは要は立香みたいなことをすればいい訳です。お世辞にも上手なものではなかったかもしれませんが、私は彼女達に指示を出しました。そしてなんとか不良達を指揮していた生徒「狐坂ワカモ」という子を倒すと、無事に一件落着。リンちゃんは私をシャーレの中へ連れていきました。
「……ありました。受け取ってください」
「これ……タブレット?」
首を傾げた私に彼女は頷きます。何もかもが謎に満ちた、説明を聞く限りではとても怪しいタブレット。何やら私のものだそうです。そして、これを私が起動すれば晴れてサンクトゥムタワーの機能が回復するのだとか。
「……?」
しっかし、全く心当たりがないのです。私の挑戦は電源ボタンを探すところから始まりました。そしてようやく見つけた電源ボタンに指を触れると、私の頭の中に不思議な文字列が流れてきました。けれど、何故か私はそれに違和感を覚えることもなく呟いたのです。
「「……我々は望む、七つの嘆きを。……我々は覚えている、ジェリコの古則を。」」
すると、私はまた何処かへ飛ばされてしまったのです。
「せ、先生?!」
気がつけば、私は崩れかけた水浸しの、それでいて明るい教室。そこには「アロナ」と名乗る青い髪の小さな女の子がいました。彼女が言うにはここはさっきのタブレット、「シッテムの箱」の中だそうです。そして彼女はそのメインOSなんだとか。まあ、きっと立香が持っていたパソコンに入っていた「ウィンドウズ」的なあれなのでしょう。そして、私のお手伝いもしてくれるそうです。何でも指を合わせれば契約完了ということで、私は少ししゃがんで彼女と目線を合わせると、指先をくっつけました。宇宙人の映画みたいでした。
「ふむふむ、なるほど……」
そして、彼女に一通りの事情を話しました。すると、サンクトゥムタワーは何とか出来るそうです。おお、と思わず拍手すると彼女は少し恥ずかしそうに頭を掻きました。
こうして取り戻したサンクトゥムタワーの権限をリンちゃん……つまり連邦生徒会に譲渡すると、彼女は少しホッとしたようにお礼を言いました。本当はタブレットの中のアロナちゃんに言ってあげてほしいと思いましたが……まあ、褒められるのは悪い気分がしません。
「では、キヴォトスをよろしくお願いします。先生」
「うん!まっかせて!」
こうして、私はキヴォトスを駆け回ることになったのです。
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