これ神秘は神秘でもブリテンの救世主のやつですよね?   作:あるふぁせんとーり

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え待ってくださいキャストリアがイオリの脚舐めたんですか

 そして、私がキヴォトスに来てしばらく経ったある日のことです。立香みたいに見事華麗に……というわけではありませんが、アビドス高等学校という砂漠化や過疎化が進んでしまい、廃校寸前になっていた学校の借金を返すお手伝いをしたり、そこの生徒を助け出したり、ミレニアムサイエンススクールという大きな学校のゲーム開発部という小さな女の子達と一緒にアンドロイドを拾ったり、面白いゲームを作るための大冒険を繰り広げたりして、「あれ?私それなりにやれるんじゃ?」と少し自信を持ち始めた頃、私に一本の連絡が入りました。

 

 トリニティ総合学園。なんでも、この前のミレニアム、そしてゲヘナ学園と並ぶ三大学園の一つという超マンモス校なんだとか。そしてすっごいお嬢様学校でもあるそうです。お嬢様学校、何ともシャクな言葉です。田舎娘というコンプレックスを抱えた私には少し火力が高いです。ですが私はみんなの頼れる救世主で、みんなの頼れる「先生」です。生徒からの頼みとあれば断るわけにはいきません。というわけで、私はトリニティ総合学園の生徒会、「ティーパーティー」に赴くことになりました。

 


 

「うわぁ、すっごい!これバゲ子のお屋敷よりもすごいかも!」

 

 それはもう圧巻でした。ここまで来ると「くっそ〜」なんて感情すら覚えません。見上げれば豪華なシャンデリアがどーん!外を見れば大きな噴水がばーん!何処を見たって開いた口が塞がりませんでした。もはや田舎娘丸出しの観光気分。私はキョロキョロと忙しなく辺りを見回しながらティーパーティーの執務室へ向かいました。

 

「あ、きたきた!」

「お待ちしておりました、先生」

 

 そこで待っていたのは二人の如何にもお嬢様じみた生徒二人。取り敢えず、根はいい子そうなのは分かりました。桐藤ナギサちゃんと、聖園ミカちゃん。ナギサちゃんは如何にも漫画やアニメにでてくるような生徒会長と言った感じの女の子。対してミカちゃんは天真爛漫なお姫様のような女の子。そして、何処かバーヴァンシーに似ているような……いえ、やっぱり気のせいかもしれません。

 そして二人は私を歓迎してくれました。それはもう快く歓迎してくれたのですが……ここで一つ問題が起こりました。そう、テーブルに並ぶ紅茶とお菓子の数々です。なんと、私をもてなすために用意されていたのはアフタヌーンティーでした。それも盛大な。積み上がったマカロン、可愛らしいカップケーキ、香ばしいフィナンシェ……。机の上に並んだそれがどんどん私の集中力を削っていきます。そして私は堪えきれなくなって彼女達の挨拶が終わったその瞬間、つい聞いてしまいました。

 

「えっと……」

「どうかされましたか?先生」

「これって、食べても……」

「はい、どうぞ好きなだけ召し上がってください」

「ほんとに?!」

 

 嬉しさの余り、テーブルに手を付いて身を乗り出す私。衝撃で大きなテーブルが一瞬揺れました。それに気がついて私がかあっと僅かに頬を赤らめると、ミカちゃんはプッと吹き出しました。

 

「なーんだ!巷で評判になってるからどんな人かなって思ってたけど……全然私達と変わらないね!」

 

 そう言って、彼女は無邪気に笑います。私は「返す言葉もございません」と言った風に俯きながらマカロンを頬張りました。美味しかったです。

 

 それからは、ナギサちゃんがトリニティの成り立ちなんかについて話していました。お菓子を口に運ぶ手は止まりませんでしたが、それでも私の生徒の話です。ちゃんと聞き逃さないように耳を傾けていました。

 そんな中で、彼女は本題を切り出しました。

 

「頼み?」

「はい。「補習授業部」の顧問を引き受けていただけませんか?」

「補習……授業部?」

 

 補習授業部。何でも、期末テストで特に成績の悪かった五人の成績を何とか伸ばし、全三回の特別試験に合格させてほしいとのことだそうです。三回あるなら余裕じゃない?とも思いましたが、全員揃ってじゃないと駄目なんだとか。正直、少し自信はありません。勉強とか苦手ですし。しかし、生徒が助けを求めているとなれば話は別。何せ私は元救世主の先生です。困っている生徒をほっといてしまってはその名が廃ります。

 私が「まっかせて!」と元気良く答えると、ナギサちゃんはホッとしたように私にお礼を言いました。

 

 かくして、アルトリア・キャスターの大冒険、トリニティ編が幕を開けたのです。

 


 

「えっと……ありがとうございました」

「ううん、大丈夫!それに後でどうせ必要になるし!」

 

 聞き慣れた川澄綾子ボイスで笑う彼女。俺は彼女が買ってくれた参考書を抱えながらその横を歩いていた。アルトリア・キャスター先生……キャストリア先生は俺が知る彼女とほとんど違いなかったが、少し精神的に成長しているように思えた。

 

「にしても、もう補習授業部集合か……」

「なんだ、知ってたんだ!」

「あ、いえ。別に……」

 

 そう言われて、俺は慌てて誤魔化した。誤魔化す必要も無かったかもしれないが、もしかしたら……というかこの状況ではまだティーパーティーと先生、あと部長であるヒフミくらいしか補習授業部というのは知らない情報のはずだ。少しでも怪しまれないようにするのが転生者の鉄則だと考えて、俺はお茶を濁す。しかし、彼女はそんなこと全く気にせずに話を続けた。

 何でも、これから補習授業部の面々を集めに行くところだったという。なら丁度いい、と俺は彼女の後について行った。

 


 

「……あ、先生!」

「ヒフミちゃん!久しぶりだね!」

 

 補習授業部に割り当てられた教室、そこで彼女は待っていた。そして足を踏み入れた私達を見つけるなりこちらの方へ手を振る彼女にキャストリアも手を振り返す。改めて、彼女の名は阿慈谷ヒフミ。この補習授業部の部長である。自称普通の女子高生だが、その中身は何よりも自らの信念、そしてペロロ様というキモカワ系のマスコットを何よりの法とする、天性のアウトロー。確か期末テストはペロロ様のゲリラライブを優先してサボったと覚えてるが……。

 

「実はペロロ様のゲリラライブがあって……」

「……うーん……」

 

 案の定な言葉を並べるヒフミにキャストリアは苦笑いした。そう、彼女達はアビドス編の銀行強盗、そしてカイザー戦で面識があるのだ。話すと少し面倒だが、たまたまアビドスの廃校対策委員会の銀行襲撃に巻き込まれてしまった彼女はそのままなんと、アビドス廃校対策委員会改め正体不明の強盗団、覆面水着団のリーダー「ファウスト」として祭り上げられてしまったのである。そしてその成り行きのままに僅か五分で一億円を奪うことに成功。今もブラックマーケットを始めとする裏社会ではその名が語られている……かどうかは不明。

 そして、彼女はキャストリアと話し終えると俺の下に駆け寄った。

 

「はじめまして!あなたが──」

「はい、雨樹モルガンと言います」

「じゃあモルガンちゃんですね!よろしくお願いします!」

 

 彼女はぱあっと満開の笑顔を浮かべると、ずいぶん小さくなった俺の手を同じく小さな手で握った。至近距離に近づいた彼女の顔に思わず顔を赤らめる。そりゃあこんな天真爛漫な笑顔を向けられたらナギサだってヒフミに脳を焼かれてもしょうがないだろう。挙げ句の果てに「どうかしましたか?」とこっちを気遣ってくれる始末。マズい、最推しがヒフミに変わってしまう。俺達は選ばれし神の子、セイアの民だったはずなのに。

 

「あ、そういえば他の子達は……」

「はい、すぐ案内しますね!」

 

 そう言って彼女は少し勢いよく席を立ち、「こっちです!」と教室の前の廊下、その右側を指差した。次は……三人とも纏めて正実の方だっけ?確かにこの前連れて行かれた正義実現委員会の本部はあっちだったような気がする。

 俺とキャストリアは一旦置いていた荷物を背負い直して彼女の後を付いて行く。その道中、俺はとてつもなく下らない、けれど重要なことに気がついてしまったのだ。

 

「……あの、先生」

「何?どうした?」

「……脚って、舐めたことありますか?」

 

 彼女の動きが固まった。そして十秒弱の長いフリーズの後、ボンッと、それはもう景気の良いラブコメのような音を立てて顔を赤くした。




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