これ神秘は神秘でもブリテンの救世主のやつですよね?   作:あるふぁせんとーり

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原作知識があるのに知識が足りないってマジ?

「えっと、ここは相加相乗平均で……」

 

 補習授業部結成から数日。俺は昼間はこの身体、即ち「雨樹モルガン」という生徒の所属である2-Dで授業を受け……というかBDを見て、放課後は補習授業部でまた勉強に励むというそれはそれは学生の鑑のような生活を送っていた。送っていたのだが……ここに来て一つの、分かり切っていた問題が発生したのである。

 

(最近フィリウスの奴らナギサ様がホストだからって調子乗って……)

(ナギサ様がホストの間に何とか邪魔なパテルを……)

(あー、新作のバッグ買っちゃったからお小遣い残り5万くらいしかないけどバイトの先輩ウザいしなぁ……)

(最近ムシャクシャするしまたアイツで遊ぼっと)

(あの自警団クソキショかったわ)

(ホントミネいい加減にしてほしい)

(パテルが……)

(フィリウス……)

(シスターフッド……)

 

 余りにもあんまりな悪意の山。何を隠そうこのトリニティ総合学園、非常に治安が悪いのである。いや、表面上だけはいい。みんな表面上でだけ良い子を取り繕うのはとても上手なのだ。

 問題は中身の方。もう見ての通り……見ての通り?聞いての通り?……取り敢えず、中身がドロッドロなのである。特にこのトリニティの生徒会であるティーパーティー連中。学生の身でありながら日夜政権争いに明け暮れる彼女達が腹に抱える一物は大人顔負けに真っ黒だ。そこに年頃の女子特有の妬み嫉みも加わるっていうんだからありゃしない。

 本来であれば、表に出さなければ権力闘争も女の嫉妬も好きにやってくれという感じなのだが、妖精眼(これ)があるとなれば話は別。もはや啓蒙でも高めたかと聞きたくなるほどに流れ込んで来る知らない声と授業中も休み時間も絶えず飛び込んでくる気持ち悪い本性の雨あられ。しかも原作再現と言わんばかりの拾われる感情のネガティブ率の高さ。キャストリア曇らせだキャッキャとか言っていた二部六章プレイ中の自分をぶん殴りたくなる。

 

 そしてさらに発生する第二の問題、「授業への集中不可能過ぎ問題」。書いて字の如く、本当に授業に集中出来ないのだ。流石の聖徳太子でも十人の話を聞きながら業務は行わなかっただろうに、何が悲しくて俺はクラス数十人の混沌とした負の感情に晒されながら勉学に努めなれけばならないのだろうか。数学や理科などあちらとおおよそ一致する科目ならともかく、古典や社会科に関してはマジで俺にはそこらへんの子供以下の知識量しか無い。だからこのままだと俺のせいで補習授業部が失敗という転生者の恥晒しのようなことになりかねないため、この辺の科目は死ぬ気でやらないといけないのだが……。

 

(ああもう全員心失ってくれ……!)

 

 俺は彼女達に負けないくらいの恨み言を抱きながらも目の前の問題と格闘した。

 


 

 放課後。午後3時を過ぎて俺はようやく地獄を抜け出した。そしてなるべく人と合わないようにしてコソコソと向かう少し離れた教室。

 

「では、明日の特別試験に向けて頑張りましょう!」

 

 補習授業部の教室に集まった五人は共に机に向かう。そしてそれを優しく見守るキャストリア。……まあ、ここに来ても妖精眼は絶賛お仕事中なのだが。

 

うーん、アズサちゃんは大丈夫ですか?(そろそろ新作のペロロ様浮き輪が……)

 

 ここに来て尚脳の三割くらいにペロロ様が常駐しているヒフミ。

 

ああ、問題ない(あそこで三十分は稼げるから……)

 

 原作数十話後の伏線を張るアズサ。

 

コハルちゃんは大丈夫ですか?(どうせもうすぐ終わってしまうのに)

 

 このままではバッドエンド直行のハナコ。

 

当たり前!私はエリートなの!(全然分かんない……)

 

 取り敢えずキヴォトスの外の俺と同じくらいバカだったコハル。

 

うわあ、全然分かんない……(うわあ、全然分かんない……)

 

 流石元救世主と言わんばかりのキャストリア先生。

 俺も何とか彼女達の足を引っ張るまいと古典の問題集と格闘するが、死ぬほど分からない。控えめに言って理解不能だ。何だよラテン語って。世界史の用語じゃないのかよ。

 そして頭を抱えっぱなしの俺にハナコが話しかけた。

 

何処か分からないところでも?(何で頑張るの?)

 

 その温かい目の裏に宿る空虚な思考。俺は彼女が普通の女の子であるのを知っているにも関わらずそのギャップを恐れてしまったのか、その場で「ううん、大丈夫です」と首を横に振ってしまった。ツルギといいハナコといい、当事者になって初めて分かることも多いんだな、というのが感想だった。

 そして俺達の様子を見て、嬉しそうに先生に話しかけに行くヒフミ。

 

「先生、ハナコちゃんはとっても出来る感じですし、コハルちゃんも正義実現委員会のエリート、アズサちゃんもモルガンちゃんもすごい頑張ってますし……これは明日一発合格してしまうかもしれません……!」

「ホントに?!こんなに難しい問題ばっかなのに……みんなすごいね!」

「えへへ……」

 

 嬉しそうな、照れたような感じで頭を掻くヒフミ。俺は心の中でありったけの誠意と共に謝罪した。

 


 

 そして翌日、第一次特別試験終了後。

 

「あ……えっと……取り敢えず返すね?」

 

 少しぎこちないような笑顔で教卓に立つキャストリア。その手には補習授業部の採点済み答案用紙が握られている。一通りそれに目を通した彼女は「これ70点合格だよね?」と小さく呟いていた。

 

「えっと……ヒフミちゃん。72点!」

「わあっ!何とか突破しました!ということはこれで……!」

 

 返された答案を握りしめ、嬉しそうにはしゃぐヒフミ。それが本日ぶっちぎりの最高点になるとは誰が想像したであろうか。

 

「次は……モルガンちゃん。……35点!……こっちの陛下はバカなんだ……

「はい?!」

 

 なんだか聞き捨てならないような言葉とともに返された答案用紙を俺が受け取ると共に、ヒフミは素っ頓狂な声を出す。一瞥すると、案の定取れてない古典と社会科と国語。全てのオタクが聖書履修済みと思うなよ。というか流石のトリニティ、文系科目の配点がかなり高い。ミッションスクールと言った感じだ。

 

「……難しかったな」

「そ、そんなに……ですかね?というかモルガンちゃん極端過ぎるような……」

 

「じゃあ……アズサちゃん。……32点!」

「むう、惜しいな」

「本当に惜しいの意味理解してますかアズサちゃん?!」

 

 心底残念そうな顔を浮かべたアズサに炸裂する鋭いツッコミ。正直アズサが惜しいの意味を理解してるかと聞かれたらこのタイミングでは理解してなかったと思う。

 そして、ここから怒涛のヒフミのひとりツッコミが幕を開けた。

 

「コハルちゃん。……11点!」

「ちゃんと1年生用ですよね?!!」

「だ、だって難しかったし……モルガンも言ってたし……」

「2年生とは流石に話が違いませんか?!」

「ええっと、ハナコちゃん。……2点……だよね?」

「ふふっ♡」

「にてん?!!!!」

 

 それを最後のツッコミに、ヒフミは頭を抑えてその場に崩れ落ちる。

 

「だ、大丈夫ヒフミちゃん?!」

「ああ……これじゃあ合宿が……」

 

 俺たちの戦いはこれからだ。




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