【桐生side】
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ーー部室棟・裏…
人気のない部室棟の裏で、先輩達に財布を奪われる。
「チッ…コレっぽっちしかねぇのかよ」
そ、そんな事言われても…
「小遣いなんて、そんなに貰えるワケ……ッ!?」
ーードゴッ…!!
鈍い音がして、先輩の足が俺の腹にめり込んだ。
「お前、何か勘違いしてんじゃねぇの?」
勘違い…?
「ゲホッ…!ケホッ……どういう…」
ーーバシッ…!
どういう事か聞く前に、今度は右頬を思い切り叩かれた。
「バカッ!外から見える所を、叩くんじゃねぇよ!」
俺の腹を蹴った人が、俺の頬を叩いた人を怒っている。
「桐生ちゃんさぁ…俺達は、お前に『親の金盗んでこい』って言ったんだぜ?約束破ったらどうなるか、忘れた訳じゃないよなぁ?」
3人目の先輩はさっきまでの2人と違って、すぐに暴力は振るわなかったけど…5人いる先輩達の中で、1番目が怖かった…
『金盗んでこい』なんて、一方的に言われただけで約束なんてしていない。
でも…それを言ったら、絶対殴られる…
「お…おい!ヤバい事になった!お前ら、今すぐ逃げろッ!」
「あ…?何言ってんだ?ふざけた事抜かしてねぇで、てめぇは言われた通り見張りやってりゃいいんだよ!」
『逃げろ』と言ったのは、見張りをやらされていた2人の先輩の1人…
相当焦ってるから、もしかしたら先生が来たのかも…
「まさか、先公来たんじゃ!?」
「落ち着けよ!こんな場所に、先公が来る訳ねぇ!」
先輩達が焦り出したのを、どこか冷静に見ている自分がいた。
「ちげぇよ!先公なんかより、厄介な奴なんだって!もう1人が捕まって、こっち向かって来てんだよッ!早く、逃げろ………ッ!?」
何を、驚いているんだろ…?
『逃げろ』と言った先輩は、曲がり角の所にいる。
当然だけど、俺の所から曲がり角の向こうは分からない。
「おいッ!何を見てんだよ!ちゃんと、分かるように言いやがれ!」
「私から、ご説明致しましょうか?」
その場に似つかわしくない、丁寧口調で現れたのは…
「た、高木…!?何で、こんな所に…」
本当に、何で高木先輩がここに?
「無駄話をする為に、来た訳ではない。お前達の背後にいる奴から、手を引いてもらいたい」
あれ…?この声、高木先輩じゃないよね?
「おい、桐生!てめぇ、いつから美空とツルんでやがった!?」
え…あの声、美空君!?
いつから、ツルんでたって…
「そんな…話した事もないのに…」
俺の言葉に逆上した先輩が、俺の胸ぐらを掴み上げる。
「ふざけた事、抜かしてんじゃねぇ!」
「話した事もねぇ奴を、わざわざ助けに来る奴等じゃねぇんだよ!」
そ…そんな事言われたって、俺にも何が何だか分からない…
「俺は、知り合いでも何でもない。通りがかっただけだ」
分かってた事だけど、実際にそう言われると泣きたくなる…
「はぁ…朔也様、そのような嘘はいけません。ここへ『案内しろ』とご命令なされたのは、他ならぬあなた様ではございませんでしたか?」
ため息と一緒に、高木先輩の呆れた声が聞こえた。
「………………人の揚げ足を、取るんじゃない」
そ、それって…やっぱり、助けに来てくれたって事!?
「何、嬉しそうな顔してんの?」
「傑作だな、桐生よぉ。お前等も、何ビビってんの?単なる御曹司の気紛れに、まんまと踊らされやがって…」
御曹司の気紛れ…
先輩達の心ない言葉が、次から次へと俺の心に鋭く突き刺さっていく…
「ははッ…ははははは!気紛れ…気紛れか…おい、桐生!てめぇなんかを本気で助けに来る奴なんて、腰抜けばかりのこの学園にいる訳ねぇんだよ!」
教室でのクラスメイトを、思い出す。
『先生を、呼んできた方が…』と言っておきながら、自分達に被害が及ぶ事を恐れて結局何もしない。
確かに、腰抜けばかりだ…
「なぁ、御曹司。物は相談だが…ここで俺達を見逃してくれたら、コイツが持ってくる金の3割…いや、半分をアンタに渡すよ!御曹司って言っても、金はあって困るもんじゃねぇだろ?」
呆れた…
美空君を、買収しようとしてる…
「下らない。お前達に、この俺の何が分かる。これ以上俺の機嫌を損ねるつもりなら、退学どころか…お前達の親類共々、この街に住めなくなる事を覚悟しろ」
美空君にそう言われて、先輩達の表情が青ざめていくのが見えた。
「も、もうやめるッ!もうやめるから、どうかそれだけは…!」
「おい!早く、逃げるぞ!」
ーーバタバタバタッ…!
俺をイジメてた先輩達が、情けない程慌てて走り去って行った。
「あの…美空君、助けてくれてありが……あ、待って!」
お礼を言い切る前に、背中を向けて歩き始めた美空君を呼び止めた。
「まだ…何かあるのか?」
うぅ…取り付く島もない…
でも、今言わないと…
「あ、あの…俺と友達に…」
「それは、不可能だ」