【朔也side】
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ーー5月1日・車中…
「あの…水無月先輩は、どうして俺の味方をしてくれるんですか?」
聞かない方がいいと、思うんだが…
「腹が立つからですよ!あのバカ、いつもいつも相談もなしに決めちゃって!毎回驚かされるのは、こっちなんですもの!」
そんな事で、痴話喧嘩に巻き込まれるこちらの身にもなってくれ…
はぁ…高木の言動に驚かされるというのは、よく分かるが…
「……従者としての全権は、《教育係》である高木に一任されている。相談なく判断出来るのに、わざわざ相談する訳がないだろ?」
冷たい言い方になってしまったが、間違った事は言ってない。
水無月が信用する、しないに関わらず…全てにおいて、高木が決定権を持っている。
「はい…重々、承知しております…」
「……水無月、お前の気持ちも分かっている。高木には、今後…可能な限り、相談するように伝えておく」
隣へ視線をやると、桐生が複雑そうな顔をしていた。
「朔也様、ありがとうございます……どうかなさいました?」
水無月の問いかけに、桐生が弾かれたように顔を上げる。
「え…?あ、いえ…俺が、聞いててもいいのか…分からなくて…」
何だ、そんな事か…
「……問題はない。むしろ、お前に知ってもらいたい」
誰かに自分の事を知ってもらいたいと思うなんて、少し前までの自分では考えられない事だ。
この感情は、何だ?
「あ、ありがとう。嬉しいよ。《友達》として、もっと色々教えてね……ん?《友達》……はッ…!高木先輩の問題、忘れてた!」
……………俺も、忘れてた…
「問題って、あの一撃入れるという条件ですか?」
「……あぁ、水無月なら…何らかの方法を、思い付くかと思ってな…一撃入れる方法、何かないか?」
助手席に座っている水無月の表情は、後部座席にいるこちらからは見えない。
沈黙だけが、車内を支配していた。
「大和を擁護する訳ではありませんが、あのバカが何の考えもなしに…思い付きだけで、そんな条件を出すとは思えません。大和からは攻撃する事はないので、思い切って攻撃されてみてはいかがでしょうか?」
高木からは、攻撃しない?
なぜ、水無月は断言出来る?
「……水無月、お前…高木から、何か聞いているな?」
「はい、聞いております。しかし、今は言えません。私が言えるのは、桐生様の為だという事だけです」
桐生の為…
高木からは、攻撃しない…
猶予は、10ヶ月…
10ヶ月後にあるのは、卒業…
高木の目的が、読めてきた。
自分達の卒業後、俺を守る者として桐生を鍛え上げるつもりか…
俺は…そんな事をさせる為に、桐生と《友達》になった訳ではない!
「何も知らない者を、勝手に巻き込むな!桐生…このような条件、聞き入れる必要などない。元より…《友達》と認めるか否かを、高木に決めさせる事自体が間違いなんだ!」
時代錯誤も、甚(はなは)だしい。
いつまで、旧時代の取り決めに縛られていれば気が済むんだ!
「お気持ちは、分かりますが…この条件を了承されたのは、桐生様自身でございます。条件の破棄を申し出られるのならば、今後一切桐生様と関わられてはなりません」
……ッ…!
自分の友人でさえも、自分で決める事が出来ない。
《どうか、幸せになって…》
俺が産まれた13年前の今日、お母様が俺に遺したという言葉…
何一つとして自分の思い通りにならないのに、どう幸せになれと言うんだ!
この無力さが、悔しい…
誰かに頼る事でしか、生きられない…
こんな俺と…例え3日間だけでも、《友達》となってくれた。
それだけで、もう充分だ。
「……桐生、もういい。これ以上、お前に迷惑はかけられない。《友達》になってくれて、ありがとう………嬉しかった…」
誰かと深く関われば、その人に迷惑がかかる。
最初から、分かっていたはずなのに…
「何が、もういいの?《友達》になってほしいって言ったのも、どうやったら認めてもらえるかって聞いたのも俺だよ!俺の気持ち無視して、勝手に話を完結させないでよ!」
無視したつもりは……
いや…しているかもしれない…
でも、俺は…誰かの人生が、俺のせいで狂わされるのを見たくない。
「……お前は、どうして…俺なんかに、関わろうとする!?俺には、自由なんてものはないんだ!何もかも、1人で決められない…」
もうすぐ、桐生の伝えた場所に到着する。
これでもう、最後になる…
「そんな事で、俺が諦めると思ってるの?随分と、見くびられたもんだね…」
な…何を言っている!?
「見くびっている訳ではない!俺には、自由が……ッ…!?」
なぜ、桐生は笑みを浮かべている?
どうして、この状況でそんな顔が出来る?
「美空君…《自由がない》なら、俺が自由にさせてあげる。友達になる為の条件なら、喜んで引き受けるよ」