「……どんな…一言で言うなら、変態?いや、変人か…」
どっちも、いい意味じゃないよ…
『変態』や『変人』って言われる人って、ますます想像つかないんだけど…
「えっと…主治医の息子でハーフで、大学の医学部に通ってて…変人?余計、分かんなくなったよ…」
「……ならば、直接会ってみればいい。桐生の都合のつく日に、家に招待する」
招待!?
先輩達の意見聞かずに、そんな事言って大丈夫なのかな?
「都合なら、いつでもつくけど…高木先輩に、反対されない?」
睨まれたら、怖いんだよね…あの人…
それだけあの人にとって、美空君が大事だって事なんだろうけど…
「……問題はない。俺が決めた事に、反対はさせない。家に来てくれるなら、都合のつく日を教えてほしい」
いや、本当にいつでもいいんだけどな…
明日から、ゴールデンウィークだし…
ん?ゴールデンウィーク?
「それだ!」
いきなりの大声で、美空君を驚かせてしまった。
「……それって、どれだ?」
そういう意味の、『それ』じゃないよ。
「びっくりさせちゃって、ごめんね。5月5日は、どうかな?用事とか、あったりする?」
誕生日のお祝いは駄目でも、《こどもの日》のお祝いならいいよね。
「……5日は…特に、何もない。来るなら、迎えに行こう」
「あ、ありがとう。何時にする?お昼過ぎの方が、いいかな?」
何か、質問ばっかりしてるなぁ…
迷惑じゃないかな…
でも…まだまだ、知りたい事いっぱいある。
「……昼……………すまない。水無月がいないから、時間の予定が分からない。放課後、車まで一緒に来てほしい」
水無月先輩が、スケジュール管理してるんだ…
「分かった。あ、そうだ。美空君の家って、鯉のぼりとか兜とか飾るの?」
「……鯉のぼり?兜…?何の話をしている?」
まさかの、知らないってアリ!?
端午の節句まで、やっちゃいけないとか言われるんじゃ…
勘弁してよ。
「チマキとかも、食べないよね?」
……と言うより、食べた事ないだろうな…
「……チマキとは、食べ物なのか…いるなら、作らせる事は出来るぞ」
チマキの存在自体、知らなかった…
「どこからどう話せばいいのか、分かんなくなってきた…」
「……すまない。6歳から半年前までアメリカにいたから、日本の行事を知らないんだ。差し支えなければ、教えてくれないか?」
あ…噂で、帰国子女だって聞いた事ある。
そっか…
ーーーーーーー………
ーー5月5日・16時00分…
美空君の家に着いて、正直驚いた。
まず最初に感じたのは、『何時代の建物!?』って事で…
呆けていた俺を見かねて、高木先輩が…
『古そうに見えても、7年半前に大規模な改修をしています』と言った。
そして今…俺は茶室と呼ばれる部屋で、なぜか高木先輩からのおもてなしを受けている。
何が、どうしてこうなった!?
「あ、あの…美空君は、どこに?」
迎えに来てもらってから、さっきまでいたのに…
家に着くなり美空君はどこかへ行って、俺はこの部屋に通された。
その後すぐに来たのが、高木先輩で…
「朔也様は、お着替えをなさっております。今しばらく、お待ち下さい」
き、着替え…?
迎えに来てくれた時の格好だって、別に着替えなきゃいけないようなものじゃなかったのに?
「はい…」
丁寧な動作で、高木先輩が茶を点てる。
本当、何でも出来るんだな…この人…
茶碗にお湯を入れて、何かの道具でかき混ぜてる。
小さな、箒(ほうき)みたい…
「この道具が、気になりますか?」
「……ッ…!?な、何で?」
この人、本当怖い…
「何でって…ずっと、視線が手元に集中してましたから」
見過ぎてて、バレたのか…
気にはなるけど、聞きづらいな…
でも…そんな事ばかり言ってても、何も始まらない!
「あ、あの!その、箒(ほうき)みたいなの何ですか?」
箒じゃないだろうけど…
他の表現が思い付かなかったから、最初に感じたままを言葉にした。
怒られるかな…
「これは、茶筅(ちゃせん)と呼ばれる道具です。茶碗に入れた茶葉と湯を、よく混ざり合うようにかき混ぜる為の物ですよ」
怒られなかった…?
そればかりか、今分かりやすいように解説された?
「あ、ありがとうございます」
人間とは、不思議な生き物だ。
苦手な人が少しでもイメージと違う事をしただけで、印象が180度変わってしまう。
高木先輩が点てたお茶を飲み終わった頃、足音が近付いてきた。
音もなく障子が開いて、着物姿の美空君が茶室に入って来る。
「朔也様、こちらへ」
高木先輩が差し出した座布団にゆっくり座った美空君の後ろで、1人の男性が障子を閉めた。
大人の人…?
外国人?
あ、まさか!?
「あの…あなたが、クリア…さん…?」
格好いい…
全然、変態や変人には見えないけど…
「初めまして。神野 クリアと申します」