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「……それで、桐生を置いてきたと…?」
覚悟はしてたけど、結構堪えるなぁ…
「人聞き悪いですよ。何も、とって食われる訳じゃあるまいし…」
身の安全は保証されてるし、置いてきても問題にはならないはず…
「……バカ者!お祖父様の性格を分かった上で、そんな事を言っているのか!?桐生に何かあったら、お前とは2度と口利かんからな!」
僕が開けたままだった障子から、勢いよく走って行く。
『2度と口利かん』って…
……朔也様なら、実行するよね…絶対に…
「なぜ、このような事を?」
ジト目で、こっち見ないでよ。
「なぜって、お前に勝たせる為さ。今のままじゃ、一撃なんて夢のまた夢だからね」
う~ん…そろそろ、僕も様子見に行った方がいいかな…
朔也様のご機嫌とらなきゃいけないし、桐生君も心配だからね。
「クリア様、お待ち下さい。桐生様を、鍛えるおつもりですか?ご隠居様にまで、会わせて…」
あ~もう!説教は、聞きたくない!
「僕は、忙しいの!説教は、また今度ね」
桐生君の様子を、見に行かなきゃいけないんだから…
朔也様と桐生君の味方をするって言っても、大和の敵になる訳じゃないんだ。
みんなが幸せになる為に、僕はどんな汚れ役でも引き受けよう。
……………朔也様に、嫌われない程度にね…
さて…今頃、桐生君はどうなっているのかな?
楽しみ半分、心配半分…
あれ…ちょっと、嫌な予感…
ーーご隠居様の部屋…
障子が、開いてる。
……って事は、深刻な事態にはなってないって事だよね。
上手くいったのかな?
「お祖父様ッ!!何を、考えておられるのですか!」
「美空君、落ち着いて!」
もしかして…もしかしなくても、ヤバい状況…?
ここで僕が入ったら、更にややこしくなる。
何よりも、状況把握が第一。
「心配無用。悪いようにはせん。桐生とやら、いかがかな?」
「あ…えっと…迷惑じゃ…」
何、この会話…
首尾よく事が運んで、次の段階行っちゃった?
「迷惑かけとるのは、孫の方だ。それと…クリアよ、いつまで盗み聞きしておる。こちらに、来んか!」
あちゃ~…バレてた…
障子越しじゃ、影が見えるか…
「クリア!お前が、お祖父様に入れ知恵を!?」
「濡れ衣ですよ。いくら僕でも、次の段階に進むなんて予想出来ませんって!」
桐生君をこの部屋に残して、まだ20分しか経ってない。
それなのに…
【朔也side】
ーー10分前…
クリアに、啖呵をきって走り出した。
着物を着ているせいで、裾が脚にまとわりついて走りにくい。
裾を捲り上げる事も考えたが、これからお祖父様にお会いするのに着物が着崩れていては叱られる。
そんな理由もあって、自然と小走りになるのは否めない。
遠くない事が、唯一の救いか…
走り出してから、ものの数分でお祖父様のお部屋に着いた。
躊躇なんか、していられない。
ーーガラッ…!!
勢いよく障子を開けると、桐生が驚いた表情で振り返った。
「美空君!?どうしたの!?」
「慌ただしいのう…断りもなく、障子を開けるでない」
お祖父様と桐生の間に置かれた将棋盤に、詰め将棋が並べられている。
おかしい…
お祖父様の問答に、将棋が出てくる事はないはず…
この状況は、どういう事だ?
「……お話は、終わったのですか?結果は…?」
「話をしてただけで、俺は何も分からないんだけど…」
会話のどの部分が問答だったのかは、お祖父様にしか分からない。
そのお祖父様は、俺を見ている。
「朔也よ…お主は座っている者に、立ったまま物を訊ねるのか?客人に失礼な態度をとるような教育を、私はした覚えはないぞ」
「……ッ…!!……申し訳、ございません…」
焦りすぎて、礼儀を欠いてしまった…
心配そうな桐生の隣に腰を降ろし、お祖父様の次の言葉を待つ。
問答は終わったのか、それともまだなのか…
「朔也…お主の友人は、中々に興味深い。少しばかり、お人好し過ぎる所もあるがな…まぁ、お主には丁度良かろう」
たった10分程の会話で、桐生の性格を見極めたのか?
やはり、お祖父様は恐ろしい…
「……それは、つまり…俺の友人として、屋敷への出入りを許可して頂けるという事でしょうか?」
俺の言葉にお祖父様が頷いたのを、この目で確認した。
「但し、母屋へは行くでないぞ。何があっても、責任は持てんからな」
許可が、出た。
桐生と何を話したのかは分からないが、どうやらお祖父様に気に入られたらしい…
「……ありがとう、ございます…桐生、俺の部屋に行こう」
礼を告げて立ち上がろうとした俺は、次に続いたお祖父様の言葉に中途半端な体勢で固まってしまう。
「桐生殿、いつでも泊まりに来ていいぞ。最高のもてなしを、用意させよう」
……なッ…!?
なぜ、そんな話に?
「お祖父様ッ!!何を、考えておられるのですか!」