~絆~大切なモノ   作:高部裕加

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《中学1年生編》

【桐生side】

 

ーーーーーーー………

 

ーー7月16日・放課後…

 

夏休みまで、あと少しという時期の今日…

俺は、朝からずっと緊張してる。

5月5日に初めて美空君の家に行って、そこで美空君のお爺さんにも会って話をした。

嫌な印象は、全くなくて…

その後で部屋に入ってきた美空君が焦ってた事を、不思議に思ってたくらいだ。

説明はクリアさんがしてくれたけど、要は孫可愛いさのあまり干渉しちゃうんだよね。

 

クリアさんが『言われた事を守っていれば、大丈夫』って言ってたけど、本当にそれだけでいいなら美空君があんなに焦ってたのは…どうして…

「……桐生…?何か、考え事か?」

「え…じゅ、授業は?」

慌てて周りを見渡しても、教室には俺と美空君しかいなかった。

今日は、土曜日で半ドン※。

(※半=半分、ドン=ドンタク【オランダ語で休日の意】半分休日だから、略して半ドン。昔は、土曜日は昼までの授業でした)

 

「……授業など、とっくに終わったが…もしかして、今日家に来るのが嫌になったのか?もしそうなら、言ってくれ」

俺が朝から緊張してる理由が、この美空君の家への訪問だ。

嫌じゃない…嫌じゃないんだけど…

美空君のお爺さんと話した時に、『いつでも泊まりに来ていい』って言われた。

言われた時点では、喜んでたけど…

それからクリアさんと話して、第2段階だと教えられた。

いつの間にか、第1段階が終わってた…

 

お爺さんに言われたお泊まりの日が、今日という訳だ。

本当に母屋に行かないだけで済むなら簡単だけど、そんなに単純な事じゃない気もする…

「だ、大丈夫だよ!ちょっと、緊張してただけ。クリアさんに色々手を尽くしてもらって、お泊まりが今日に決まったんだから…絶対に、大丈夫!」

まるで自分に言い聞かせるような誤魔化しをして、急いで帰り支度をする。

家に帰って着替えと昼食を済ませて、15時に美空君が迎えに来てくれる。

 

なのに…俺が緊張してボーッとしてたせいで、もうすぐ13時になっちゃう。

「……俺も、出来る限りの事をする…お前を信じてるから、俺の事も信じてくれ」

「うん、信じてる!必ず、お爺さんに認めてもらうから!」

まだ緊張してるけど、覚悟は最初から決まってる。

これまで、ずっと考えてた。

いっその事、諦めたら楽じゃないのかって…

それでも友達になりたいと思ったから、今日のこの俺がいるんだ。

 

ーーーーーーー………

 

ーー15時30分・東屋…

 

美空君の家に来て、1番に見たかった物がある。

それが、この菩提樹だ。

5月に見た時とは、全く違う姿を見せてくれてる。

淡くて黄色い小さな花が、沢山咲いていて…

「すっごく、綺麗だね。2ヶ月、ずっと楽しみにしてたんだ。見れて、嬉しいよ」

カメラ、持って来ればよかったなぁ…

素直にそう思えるくらい、本当に綺麗だった。

「いらっしゃい。暑いでしょ?」

 

聞こえてきた声の方を見ると、クリアさんがお盆を持って立っていた。

そのお盆を東屋の中央にあるテーブルに置いて、氷とジュースの入ったコップを手に持って近付いてくる。

「あ、ありがとうございます。頂きます」

美空君は、椅子に座ってからコップを受け取る。

それに倣って、俺も向かいの椅子に腰掛けた。

「……クリアが、作ったのか?」

「やっぱり、分かります?」

たった一口飲んだだけで、誰が作ったか分かるの!?

 

凄いなぁ…

そう思いながら、俺もそのジュースを飲んでみる。

「美味しい…」

何て言う名前のジュースなんだろ?

喉が渇いてたから、すぐに飲み干してしまった。

「ありがとう……クスッ…気に入ってくれた?良かったら、おかわりあるよ」

クリアさんはそう言いながら、テーブルに置かれたお盆からジュースの入ったピッチャーを持ち上げた。

「あ、すみません…頂きます」

注がれたジュースが、氷を溶かしていく。

 

それを見越してか、お盆の上には氷の入った器もある。

美空君は……………

「……どうかしたのか?」

「え?あ、あのね…美空君は、喉渇いてなかったのかなって…」

美空君のコップに入ったジュースは、少ししか減ってない。

暑くて、汗をかいたはずなのに…

「……渇いては、いるんだが…」

「どうやら、君の事が心配で喉を通らないみたいだよ」

言葉が途切れた美空君の代わりに、苦笑したクリアさんが教えてくれた。

 

俺の心配を、してくれてたんだ…

「……どうして、お前が先に言うんだ…」

「クスッ…すみません」

美空君に謝りながら、俺にはウィンクをしてきた。

そういう事をして、格好良く見えるって凄いよなぁ…

さすが、ハーフ…

「……桐生は、今日も道場へ行くのか?」

どこか寂しげに呟いて、美空君は俯いてしまった。

この2ヶ月間、週3回のペースでクリアさんの指導を受けてる。

そういえば、美空君は道場に来ないな…

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