~絆~大切なモノ   作:高部裕加

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《中学1年生編》

【桐生side】

 

え…!?今、味噌汁飲んだ?

クリアさんの予想外の行動に、その手にある茶碗を凝視してしまった。

お、お腹空いてたのかな…?

「これ、気になる?」

俺の視線に気付いたクリアさんは、味噌汁の入った茶碗をテーブルに置いた。

「はい…意外だったんで…」

「クスッ…ちゃんと説明してなかったから、驚いたかな?とりあえず、冷めない内に食べよう」

説明…?

あ、やっぱり何か理由あったんだ…

 

ご飯と味噌汁を持って自分の席に戻っても、クリアさんは食べずに廊下へ視線をやっている。

『冷めない内に食べよう』と言ってたのに、高木先輩達が来るまで待ってるつもり?

「……クリア、お前が食べないと桐生が気にする。先程の説明も、まだしていないだろう?」

美空君にそう言われて、クリアさんは俺の方へ向き直した。

「そうですね…桐生君、さっきの事だけどさ…何か、変な物が入れられてないか確かめてたんだよ」

 

それって…

もしかして…もしかしなくても、毒味じゃないの?

「……いつもは、高木がやっている事なんだ。俺は、やらなくてもいいと思うが…」

「駄目ですよ。それが、大和のお役目なんですから」

古くから続く家では、しきたりっていうものが存在するって聞いた事ある。

そのしきたりが、自由になりたい美空君を苦しめてる。

『お役目』って言葉に、美空君は箸を置いて俯いてしまった。

「……ッ…戻ってきた…!」

 

「え…?美空君!?」

俯いてた顔を急に上げたかと思ったら、突然障子に向かって歩き出した。

その行動を見たクリアさんは、何も言わず自分の背後にある障子を開けた。

美空君が廊下に出て、母屋のある左方向を見る。

「朔也様ッ…!」

女性の声と走ってくる足音が聞こえて、俺はやっと美空君の行動の理由が分かった。

それからすぐに水無月先輩の姿が見えて、俺は力が抜けて座り込んだ。

「……怪我などは、してないか?」

 

「はい…ご迷惑を、おかけ致しました…」

よ、よかった…

無事に、帰ってきて……ん?

「あれ…?高木先輩は?」

助けに行った高木先輩の姿が、部屋の中にいる俺から見えなかったから何かあったのかと思った。

「あ…大和でしたら、ゆっくり歩いてますよ。早く、早く!」

「急かすなよ…そんなに、大した距離じゃないだろ…」

水無月先輩に急かされながら姿を見せた高木先輩の服は、所々破けていて腕には擦り傷まであった。

 

「そ…その怪我、大丈夫なんですか!?」

高木先輩があまりにも平然としてて、痛くないのかなって一瞬思ったけど…

「問題は、ありません。お見苦しい姿ですが、見た目程大した痛みはないです」

あ…ちょっとは、痛いんだ…

そりゃ、そうだよね。

いくらロボット染みていても、生身の人間なんだから…

そんな失礼な事を考えてる間に、クリアさんが高木先輩の体に出来た傷口を診る。

「擦過傷、12ヶ所…どの傷も、浅いな」

 

浅くても、痛そうな事に変わりない…

水無月先輩も心配そうに、高木先輩の傷口を見てる。

「……クリア、その他には異常ないのか?」

美空君に聞かれて、クリアさんは落ち着いた声で答えた。

「骨や筋肉など、異常は見られません。傷口から血が流れているせいで酷いように見えますが、既に血は固まっていますから大丈夫です。本人が言っていた通り、大した事はないでしょう」

そう言って、クリアさんは部屋に戻ってきた。

 

テーブルに置かれた水が入ったピッチャーを手に取ると、再び廊下に出て縁側にそれを置いた。

「クリア様、何をするおつもりですか?」

一連の動作を不思議に思った高木先輩が、クリアさんに問いかけた。

「手当てに、決まってるだろ…大和、こっちにおいで。楓ちゃん、棚から救急箱取って。朔也様達は、食事を続けて下さい」

指示に従って縁側に出た高木先輩を座らせて、傷だらけの右腕に容赦なくピッチャーの水をかける。

 

「……ぅ…ッ…!」

水をかけられたのが相当滲みたのか、高木先輩が小さな声で呻いた。

うわ…痛そう…

俺だったら、間違いなく叫んでるよ…

「はい。我慢、我慢……っと、拭く物忘れてた……お?」

立ち上がりかけたクリアさんの目の前に、救急箱を持った水無月先輩から真っ白なタオルが差し出された。

「そう言われると、思いました。ちゃんと準備をなさってから、手当てを始めて下さいな」

「ごめんね。使わせてもらうよ」

 

苦笑してタオルを受け取ったクリアさんは、高木先輩の手当てを再開した。

「……桐生、見ていても俺達には何も出来ない。とりあえず、今は食事をしよう」

「あ、うん…そうだね」

短く答えて、手当てを受ける先輩に背を向ける。

俺は、こうすれば血を見ずに済むけど…

対面に座ってる美空君からは、ばっちり見えちゃってるんじゃ…

そんな事が気になって顔を上げたら、美空君と目が合った。

え…?俺の方を、見てるの?

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