「また説明かよ…あ~…めんどくせぇな…御子息様らしきガキを見付けた時にさ、そこのガキも一緒にいたんだよ。アンタの命令通り、御子息様を確定するまでは殺す訳にいかないから気絶させようとしたら…」
ボクのとなりにいる男の人が、カタナをもった男の人を見る。
「……チッ…!このガキ、鳩尾(みぞおち)殴っても気絶しなかったんだよ!更に殴って気絶させて、女のガキと同じ様に柱にくくりつけようとも思ったが…いつ目を覚ましやがるか分かんねぇから、連れて来るしかなかったんだよ!もう、これでいいだろ!」
やまとお兄ちゃんが《くさかべ》と言ってた人は、男の人2人のセツメイを聞いてわらってうなづいた。
「ああ、充分だ。ご苦労さん。折角連れてきたんだ。少し、大和君と話がしたいな。刀を降ろして、手を離してやれ」
「…………チッ…!」
メイレイどおり、やまとお兄ちゃんの首から手がはなされた。
「乱暴な事をしてすまなかったね。しかし、鳩尾を殴られても気絶しないとは…まだ7歳だというのに、将来が末恐ろしいよ。あの極悪非道の男・美空 隆臣(みそら たかおみ)が唯一心を許した存在…教育係・高木 冬真(たかぎ とうま)の子…君を生かしておいたら、いずれ君は我々の驚異になるだろう。君には、ここで死んでもらうよ」
そのことばを聞いて、やまとお兄ちゃんの近くにいた男の人がカタナをふり上げた。
やまとお兄ちゃん……ッ…!
ーーーガタッ……ガタンッ…!!
イスから立ったボクのカタを、となりにいた男の人がつかんでまたすわらせた。
「やだ…!はなして!」
「どこに行くつもり?君が行って、何が出来るの?やまとお兄ちゃんのお父さんだって、アイツに勝てなかったんだからさぁ。刀を持ってる大人相手に、丸腰のガキが勝てる訳がないじゃないか」
ボクじゃ…やまとお兄ちゃんを…たすけられない…
手におちた水に、自分がないてるって気づいた。
「………ッ…く………ぅ……」
「あ~あ…泣いちゃった。これだから、ガキって苦手なんだよなぁ…日下部さん、アンタ…高木とかいうガキの反応見る為に、わざとやってんだろ……あんまし、意味なかったみたいだけどな」
わざと…?
イミなかった…?
「………むかつくんだよ!何なんだ、お前!もっとガキらしくビビれよ!泣けよ!おい、日下部の旦那!コイツ、何で刀向けてもこんな平然としてんだよ!?」
【大和side】
………こわくない……と言ったら、ウソになる…
今も気をぬいたら、きっと足がふるえて立っていられない…
「本当に、可愛い気のない子供だね。もっと泣き喚いてくれた方が、こっちは面白いんだがね…もう、刀は降ろしていい。いつまでも、血をそのままにしてたら錆びるぞ?」
刀を持った男がはなれ、日下部が私の前に立つ。
ここで私が泣きわめいたら、朔也様が…
これ以上、朔也様を不安にさせたくない。
「日下部様…あなたに、聞きたい事があります。なぜ、このような事を…?朔也様を、どうなさるおつもりなのですか?」
「……………君は、本当に7歳なのか?どうするも何も、朔也君はあの極悪非道の男を誘き出す餌なのだ。あの男がここに来るまでは、生かしておくつもりだよ。どうだい?安心したかな?」
おびき出すえさ…
安心なんて、できるわけない。
「1つ目の質問に答えてもらってません。なぜ、このような事を?」
「あ~!イラつく!マジで全っ然可愛くねぇ!話なんてまどろっこしい事してねぇで、早いとこ殺っちまおうぜ!」
刀の手入れをしていた男が、私を指さしてどなっている。
その声を、どこか他人事のように聞いていた。
日下部が朔也様をえさと言った時ぐらいから、遠くでサイレンの音がする。
きっと、ここに向かっている。
日下部も男2人も、まだ気づいていない。
「まあ待て。こんな事した理由はね、美空 隆臣が俺から全てを奪ったからだ。あの男…俺が必死で守ってきた会社を、あっさりと見限りやがった!あまつさえ、会社を倒産させて社員を路頭に迷わせたのだ!だからこそ、今度はこっちがあの男の全てを奪ってやる!目の前で、跡継ぎである朔也君を殺したら…あの男の絶望する様が目に浮かぶわ!」
くるっている…
とても、正気とは思えない…
朔也様の方を見ると、日下部の話を聞いてまたなみだを流していた。
「ご……ごめ………い……ッ…く……ごめんなさい…」
泣きながらあやまる朔也様を見て、部屋の中がしずかになった。
聞こえるのは、近づいてきたサイレンの音…
「おい、日下部さん。アンタが呑気に話してるから、警察来ちまったぜ。ガキを生け捕りにしたら、アンタが恨んでる男が助けにくんじゃなかったのかよ?」
………何も分かっていない。
あの御前様が、何の用意もしないで1人で来るわけがない。
朔也様だけでも、無事に助け出してほしい…