黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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捜索

ショッキングな事実だった。

まさか、幽霊船の船長が先代のニームの長だったなんて。

 

かつて三聖女を助け、彼女らと共に楓姫を打ち倒した、ニームの長。

彼女が、よりにもよって呪霊…

それも、吸血鬼になってたなんて。

 

私にとってもショッキングな事だけど、キャルシィさん達がこれを知れば、さぞや辛いだろう。

数千年ぶりに会えた母が、アンデッドの船の船長になっていたら…

それはきっと、親を目の前で殺される以上に辛い体験だろう。

 

「キャルシィさん…」

私は、この忌まわしい船の長の娘の名前を呼びながら気を失った。

 

 

 

 

         ◆

 

 

日没が迫ってきたので、アレイを迎えに行こうと部屋を覗いてみたのだが、いなかった。

女王に聞けば、一人で出かけたという。

 

一瞬、勝手な事をしないでほしいものだ、とも思ったが、思えばアレイは14歳。色々とモノに興味が出てきて、落ち着かない時期なのだろう。

俺もアレイの歳の頃は色んなことに興味が出て、落ち着いてられなかったものだ。

 

まあ、人間と水兵を同じ物差しで測る事は出来ないが。

 

ラニイと一緒に王宮の外を探し回ったが、アレイはどこにもいなかった。

そのうち時が過ぎ、日没は既に過ぎていた。

 

「いないわね…どこに行ったのかしら」

 

「そんな遠くに行くとは思えないんだがな…」

と、ここで1つの仮説が浮かんだ。

 

「もしかしたら…」

 

「え?なに?」

 

「もしかしたら、一足先に船に乗ったんじゃないか?」

 

「…いや、そんなまさか。だって、あの船は夕方か夜明けにしか…」

 

「アレイにはカランの涙石を持たせてる。そしてあの石は、幽霊船を呼び寄せる呪いのアイテムだ。一人で出歩いてるうちに、船を呼び寄せて乗せられた可能性は十分にある」

 

「…」

呪いというワードを聞いてすんなり受け入れるのは、経験のある吸血鬼狩りらしい。

 

「なら、一旦長の所に行きましょう」

 

「え、そりゃあなんでだ?」

 

「長の力を借りれば、アレイが今どういう状況なのかわかる。上手くいけば、そのまま幽霊船に乗り込めるかもしれない」

 

「…?」

 

「とにかく、すぐに神殿へ行きましょう!あなたが海中でも平気なうちは、アレイは無事なはずだから!」

 

 

 

 

神殿へ行くと、キャルシィは玉座に鎮座していた―

まるで、俺達が来ることを知っていたかのように。

 

「あら、あなたは。今日はどうしたの?」

 

「アレイが今、どうなってるか見せてもらえるか!?」

 

「ちょっと待って、まずは状況の説明をお願い」

 

これはラニイがやってくれた。

「彼らはイージアの海姫の王宮付近で、幽霊船を呼び寄せるアイテムを手に入れたそうです。アレイは、それを持って一人で海中をうろついていたのですが、突然消えてしまいました。それでもしかしたら、幽霊船に乗ってしまったのではないかと思いまして…」

 

「なぜ、彼女は一人で出歩いていたの?」

 

「それはわかりませんが…とにかく、彼女が今どうなっているのか、気になるんです!どうか、お見せ下さい!」

 

キャルシィは腕を組み、

「…なるほどね。わかった、映してみましょう」

目を閉じた。

 

そして、俺達の目の前の景色も変わる―

 

 

 

 

至る所が朽ち果てた、ボロボロの帆船。

その甲板には、無数の海人…

の、アンデッドがいた。

 

「これは…」

 

「呪霊だな、間違いなく。

しかし、こんなに色んな種類の海人がいるとは…」

 

言い終わる前に、ラニイが言ってきた。

「それより、アレイは!?」

 

「あ、そうだ、アレイ…!」

すると、場面がザーッと流れるように切り替わり、船内が映し出された。

 

そこは、恐らくは船の牢獄。

あちこちボロボロだが、牢の檻だけはまともだ。

そしてその中の1つに、アレイがいた。

 

「アレイ…!」

 

「捕まったのか…でも無事なようでよかった」

 

アレイは牢の片隅で、悲しげな顔で座り込んでいた。

 

「アレイ…!あっ、でもそうか…」

 

「大丈夫よ。長の夢は現時点の現実とリンクしてるから、普通に干渉できるわ。

アレイ!聞こえる!?」

 

アレイはラニイの声が聞こえたのか、顔を上げた。

「え、ラニイさんの声…?どこ…?」

 

「後ろよ後ろ!牢の向こう!」

 

アレイは振り向き、そして驚いた。

「…!龍神さんも!?どうやって…」

 

「キャルシィに夢を見せてもらってるんだ。今、俺達はニームにいる」

 

「そうですか…。

勝手な事をしてしまってごめんなさい」

 

「謝る必要はない、無事でいてくれたんだからな。

てか、今どういう状況なんだ?」

 

「王宮の近海を泳いでる途中で幽霊船を見つけて…逃げたんですが、捕まってしまったんです。

そして、船長に…」

 

「船長に…?」

 

「あ、いえ、何でもないです。

とにかく、私は船の一員になるよう迫られ、それを拒絶したらこの通り投獄されてしまったんです。

この檻には強力な魔法がかかっていて、私では破壊できません。…どうか、助けて下さい!」

 

「助ける、って言っても…」

ラニイが言葉に詰まった。

 

「大丈夫です、これを!」

アレイはカランの涙石を取り出し、差し出してきた。

 

「これは…」

 

「これがあれば、幽霊船に乗れるはずです!

この船は、夜明けには海に潜ってしまいます!なのでどうか、それまでに…!」

 

「…!わかった!」

ラニイは石を受け取り、強く頷いた。

 

 

 

 

 

「…はっ!」

視界がまばゆい光に覆われ、ワープする。

夢から覚め、神殿に戻ってきたのだ。

 

「…キャルシィ!」

 

「…なかなかまずい事になったわね…」

奴も今のを見ていたらしい。

 

「長、私達はすぐに海へ出なければなりません!何卒お許しを!」

 

「わかってる。でも、1つ条件があります」

 

「それは、一体…!?」

 

「私も連れていきなさい。今の夢でわかった。私も幽霊船に乗らねばならない理由がある。

そして、探らねばならない事実があるわ」

 

「…わかった、一緒に行こう!」

 

「長が同行して下さるなら、心強いです!

さあ、行きましょう!」

 

 

 

ラニイとキャルシィに先導してもらい、キリセの外海までやってきた。

すでに夜も更けた。

はらはらと雪が降り出し、潜りたくなるほどに寒い。

「この辺なら大丈夫でしょう…」

 

「それで、どうすれば幽霊船は来てくれるの?」

 

「たぶん、適当に待ってれば来ると思うが…」

 

その直後、北の方角の闇に白くぼわっと光る船が現れた。

 

「あれかしら…」

 

「この時間にこの海域を船が通ることはありえない。

…間違いなさそうね」

船はみるみる迫ってきた。

 

「…で、どうするよ?このままだと捕まるぞ!」

 

「捕まる前に、こっちから乗り込んでいってやるわ!」

ラニイは一度潜り、船に向かって泳ぎだす。

 

「賛成ね。行くわよ!」

キャルシィに手を引かれ、俺も船に向かって泳ぎだす。

途中でなんだかわからないイカリのようなものが触手みたいに攻撃してきたが、二人はそのすべてを容易く躱して船に向かっていく。

 

そして俺達は船の後ろに回り込み、船体に張り付き、透過魔法を使って壁をすり抜け、船内に侵入した。

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