黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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再会

最初に一人の魚人がかかってきた。

槍を引っ提げていたが、身をよじって躱しつつ斬るとあっさり倒せた。

そしてこれを皮切りに、一斉に敵が襲ってきた。

 

ギリギリまで引き付けてジャンプし、術を使う。

「雷法 [月下豪雷]」

 

そして間髪入れず、技を撃つ。

「[雷月落とし]」

 

まだ生きてる奴が少数ながらいたので、収めかけた刀を再び抜く。

「奥義 [蒼龍刀]」

 

これで、俺を囲んできた奴は全て倒した。

ちょいと見てみると、水兵組も善戦していた。

 

…と、こっちに敵の残党が飛びかかってきた。

 

「[カタルシスウェーブ]!」

 

ラニイが鎌で撃ち落としてくれたおかげで助かった。

「レジェンド、私の戦いぶり、よーく見ててよね!」

何か変な呼び名つけられてるんだが…というのはさておき、どうやらキャルシィとラニイの戦いぶりを間近で見られそうだ。

黒夢の水兵長と吸血鬼狩りの水兵…

その戦いぶり、見せてもらおうか。

 

まずキャルシィは、かかってきた海騎士の剣を受け止めつつ、後ろからきた敵を数人まとめて蹴り飛ばし、

「斧技 [ハイパームーン]」

 

斧を構えて宙返りして前後方の敵を攻撃し、高々とジャンプして、

「斧技 [マッハドライブ]」

 

斧を投げ落として一人を倒す。

さらにそのまま両手を広げ、赤青緑黒白と色んな色に光る球を作り出した。

「奥義 [クレプスクルム・ドリーム]」

 

その球を落として敵にぶつけ、一撃で倒して見せた。

 

さて、ラニイはまず水兵の敵を相手取っていた。

「[ゼーヴィントラッシュ]!」

敢えて水属性の攻撃を撃ち込み、

「[シャッテンブルグ]」

後ろから切り抜ける。

 

「地法 [ロックダウン]」

相手の身体を岩を打ち付けて固定し、

「奥義 [ジェットブラック・ライド]!」

黒い斬撃を放って敵を一気に倒した。

 

もちろんアレイも負けてはいない。

「[拡散氷矢]!」

拡散する矢を撃って広範囲の敵を攻撃し、

「氷法 [フローズンクラスト]!」

術で複数体を凍らせて動きを止めつつダメージを与え、それで倒しそびれたものを、

「氷法 [フリーズモール]!」

別の術で即死させた。

 

 

かくして、数分もしないうちに40人はいた乗組員のほとんどを撃破した。

「こ、このバケモンどもがぁぁ!!」

やけになってかかってきた海君を適当に始末すると、もう甲板に敵はいなくなった。

こうなると、次のステップは…

 

「あらあら、ずいぶん乱暴なお客さんねぇ」

ほいきた、ボスのご登場だ。

 

「…船長!」

やはり、アレイはすでに船長に会っていたのか。

 

「あんたがこの船の…って、えっ…?」

キャルシィは何か、船長に違和感を感じたようだ。

そして次の刹那、こう呟いた。

「もしかして…母さん…?」

 

ラニイはその言葉に酷く驚いたようだった。

「長、間違いないのですか!?」

 

「…ええ、間違いない。一時も忘れることのなかった顔だもの…」

まあ、よくあるパターンだわな。

さあ、水兵長さん。どうするよ?

 

「あら、キャルシィ…久しぶり。

大きくなったわね。リヒセロは元気にしてる?」

 

「か、母さん…どうして…?」

 

「どうしてもこうしても…簡単な事。私達は楓姫に呪いをかけられ、この船と共に海をさまよう呪霊にされたのよ」

 

「楓姫に…?

じゃ、あいつをぶっ飛ばせば元に戻るのね?」

 

「いいえ…そうじゃない。だって…」

奴はここで、今のありのままの姿を露わにした。

 

「今の私は、最上位の呪霊であると同時に、最高位に準ずる位を授かった吸血鬼なのだから!」

やはりそういう事だったか。

生前、強い力を持っていた呪霊は、時に負の吸血鬼に変化する事がある。

そして、そうなると倒すのがさらに面倒になる。

「最高位に準ずる…ってことは、ディープ…!?」

さすが、ラニイはよく知っている。

 

「そう…私の名はメグ・ヴァルト・ジーム…ディープランクの吸血鬼!

この名と姿、そして力は、全て楓姫様からいただいたもの!仮にあの方が倒れたとしても、私は私であり続ける!というか、あの方を倒すなんて絶対に許さない!」

奴は、そう言って高位の吸血鬼の象徴である蝙蝠ようの翼を広げた。

 

「ヴァルト…!?そんな!」

ラニイが嘆くのも無理はない。

ヴァルトは負の吸血鬼の一族の苗字で、ベクセリア一族と並び負の吸血鬼の二大勢力と言われる有力一族だ。

その姓を持ったということは、既に完全に負の吸血鬼に変わり果てたという事。

すなわち、もはやあれはキャルシィの母ではない。

 

「母さん…どうして…!どうして…!」

悲しみの声を上げるキャルシィ。

だが、どんなに嘆いても事実は変わらない。

 

「あのね、キャルシィ。あなたは吸血鬼を誤解してるわ。吸血鬼は、素晴らしい存在よ…」

 

「…」

 

「変に警戒する必要はないわ…。彼らは、かつて水兵だった私を心良く迎え入れてくれた。あなたの事も、悪いようにはしないでしょう。

この体は実に素晴らしいわ。どんな傷を負っても再生するし、たかだか数百年、長くても数万年しか生きられない水兵とは違って半永久的に生きられる…。

あなたさえ受け入れてくれれば、私は思う事はないわ」

 

「…どういうこと?」

 

「私は、一時もあなた達の事を忘れたことはなかった。また、母娘揃って幸せな生活を送りたい。そう、強く思っていた。

そして今、ようやくそれが叶うチャンスが来た。

キャルシィ、まずはあなたが私と同じ存在になりなさい。そしたら、次はリヒセロも変えてあげましょう。そうすれば、また昔のように暮らせるわ、この船の上で。

限りある貧弱な水兵ではなく、永遠の素晴らしい力を持つ吸血鬼となって、一緒に暮らしましょう。

きっと、あの方も喜んで下さる。さあ、こっちに来なさい」

奴は手を広げ、牙を剥き出しにした。

 

「母さん…」

 

ここで、アレイがキャルシィに言葉を投げ掛ける。

「キャルシィさん、惑わされちゃダメです!

禁忌を侵して、吸血鬼になるなんて絶対に…!」

 

「アレイの言う通りです!あれはもう、母親ではありません!

アンデッドの言葉に乗ってニームの皆を裏切るなんて、絶対に許される事ではありません!

長、踏みとどまってください!」

ラニイも必死で説得しようとする。

 

「あんた達は黙ってなさい!」

しかし、翼の攻撃を受けて吹き飛ばされてしまった。

 

「っ…!長…!」

 

「ごめんね、あなたの友達を傷つけてしまって。

でもね、これもあなたが生者であるからなのよ。あなたが吸血鬼になりさえすれば、彼女らもこれ以上傷つくことはないし、もう死の恐怖に怯える必要もなくなる。何より、さっきから言ってる通り、また母娘で暮らせるわ。町の事が気になるなら、みんなを同胞に変えてしまえば解決よ。ね?いい事ずくめでしょう?」

 

キャルシィは、震えながら呆然と立ち尽くしていた。

 

「勇気が出ないの?ならいいわよ。私からやってあげる。

さあ、力を抜いて…」

そう言って、メグはキャルシィに歩み寄る。

そして…

 

 

アレイとラニイの悲鳴が響き渡る。

メグは優しい笑みを浮かべたまま、キャルシィを抱きしめてその牙を首に突き立て―

 

 

 

られなかった。

 

「か…」

 

「ん?どうしたの…」

 

「[カーストリバース]!」

 

すんでの所で、キャルシィはメグを術でふっ飛ばした。

 

「長!」

 

「キャルシィさん…!」

ラニイ達が安堵の声を上げる。

敢えて沈黙を決め込んでたんだが…いやあ、よかったよかった。

 

「っ…キャルシィ…!」

 

「ごめんね、母さん。私が好きだったのは、昔の水兵長だった時の母さんなの。

今の母さんは、とても好きにはなれない。

今の母さんは、死霊騎士と同じ…アンデッドに身を落とした、化け物よ!」

キャルシィはそう叫び、斧を構えた。

 

すかさず、言葉を発して刀を抜く。

「よく言ったキャルシィ!それでこそ水兵のリーダーだ!」

 

すると向こうは、俺を殺意の眼差しで見てきた。

「っ…お前は…!?

そうか、お前が私の娘を…水兵達を(たぶら)かしたのね!」

 

「おやおや、人聞きが悪いな。俺は何もしちゃあない、全部彼女らが自分自身で考え、たどり着いた答えだ!

なあそうだよな?ラニイ!アレイ!」

 

「その通り!もう、あなたは長の母親ではない。

忌まわしい負の吸血鬼よ、観念しなさい!」

 

「水兵の規律…海潮の心得にありましたね。

『海潮の心得の十四、堕ちた水兵

いかなる理由があっても、不死者の一味に加わってはならない。これを侵したものを堕ちた水兵とする』…

そして、こんな一節もありましたね…

『一度堕ちた水兵は、決して許してはならない。また、捨て置いてはならない。堕ちた水兵には、いかなる手を使っても裁き、また、救いを与えよ』…。

メグさん、あなたが元に戻れないのなら、私達があなたを殺してでも救います!」

 

奴は唸り声を上げ、捻れた禍々しい槍を取り出した。

 

「なら仕方ないわね…あんた達全員、殺してやる!

キャルシィ!母親に楯突いた事、後悔しなさい!」

 

「私だって、こんな事したくない…でも、もう母さんが母さんに戻ってくれないなら、仕方ない!

母さん!アレイが言った通り、あなたを…殺してでも助ける!」

 

 

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