黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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最期の光

「残念ね…。母として、娘に最後の教育をしてあげようと思ったのに」

 

「堕ちた水兵に教わる事なんかない!てか、この期に及んで母親面するなんて大した根性ね!」

 

「失礼な言い方ね…私とあなたは血の繋がった母娘。それは紛れもない事実じゃない」

 

「確かにそれはそうね。でも、あなたはもう水兵ではない!今となっては、私達は血縁があるだけの他人!情をかける必要も理由もない!

私はニームの水兵の長として、あなたを堕ちた水兵として、処刑するのみ!」

 

「そう…なら私の答えも簡単よ。

…あんた達を全員殺す!そして、そこの男以外はみんな変えてやるわ!」

 

「やってみなさいよ…」

一旦翼を閉じるキャルシィ。

そのすぐ後ろには、俺達がついている。

そして、

生者(わたしたち)の力を見せてあげる!」

翼が広がったその瞬間、全員で飛び出す。

 

 

「[電光斬り]!」

まずは俺が先行する。

 

「[ネザースプラッシュ]!」

メグは槍の先を瞬間的に液化させ、飛び散らせてきた。

 

見事食らってしまった。

このタイプの攻撃は避けるのが難しい。

 

いつもなら、一撃でも食らうとほぼ終わりなのだが、幸いにも今は一人ではない。

「[ブリザードレイ]!」

アレイが俺のかわりに攻撃兼足止めをやってくれた。

 

「くっ…こざかしいマネを…!」

奴が雪と氷を引き剥がしている間に手早く回復を行い、再び技を仕掛ける。

 

「[飛ばし斬り]!」

刀で斬りつつ、時間差で魔力の塊を飛ばして追撃する。

 

「[マルチスレイ]!」

向こうがやってきたのは、魔力で無数の槍を生み出し攻撃する技。

これは分身で対処する。

「月術 [影の月]」

 

複数生み出した分身に攻撃を受け止めさせ、その間に攻撃する。

…つもりだったのだが、その前にラニイが割り込んで攻撃してきた。

 

「[リビングシックル]!」

名前からしてアンデッドに特効がありそうな技だ…と思いながらも追撃する。

「[サバイバーパワー]!」

この技は、基本的にアンデッドにしか効かないが、保証されたダメージを確実に与える事が出来る。

 

「へえ…それをやってくる。じゃあ、私も!」

奴は飛び上がり、目を閉じて両手を広げる。

 

「死霊霊術 [シャーマンズロード]!」

甲板に無数の不浄霊(低級の死神の一種)が現れる。

「っと!」

 

こいつらは掴まれると厄介なので、思いっきりジャンプして回避しつつ術を使う。

「雷法 [月下豪雷]」

不浄霊は耐久は低いので、並程度の威力の術でも十分倒せるのだが、敢えて強めの術を使う。

 

さらにメグは、

「[死者の世界(ネクロワールズ)(デイ)]!」

屍人と呼ばれるアンデッドを一面に召喚してきた。

「三人とも、飛べ!」

 

屍人自体は不浄霊より強力なアンデッドだが、地面に召喚するタイプの技はジャンプすれば回避出来る。

そして、回避しつつ術者に攻撃すればいいのだ。

 

「[蒼電の響き]!」

 

「[淵源の波盾]!」

 

「[黄昏の明星]!」

術は防がれたが、キャルシィが援護してくれた。

さらに…

「[迅風触発]!」

ラニイも技で加勢してくれた。

その結果、押し切る事ができた。

 

「うぅっ…!」

 

「[スターアロー]!」

バランスを崩したメグを、アレイの技が襲う。

そして、

 

「ぎゃっ!」

翼を完全に切り裂かれ、奴は甲板に落ちた。

「星術 [シューティングスター]!」

ダメ押しの術を受け、メグは床に臥した。

 

 

 

「う…うぅ…っ…」

 

うつ伏せとなったメグに、俺達は一歩一歩近づいていく。

 

「っ…あんた…達…!!」

奴は紅い瞳をぎらつかせ、こちらを睨む。

しかし、何も言う事は無い。

…少なくとも俺は。

 

「先代の長…なぜ、あなたはそうなられてしまったのです?

例え呪霊にされたとしても、そこから更に進んで自ら負の吸血鬼になる必要はないでしょうに…」

 

「…っ!」

 

「メグさん。あなたには町の水兵だけでなく、キャルシィさんとリヒセロさんがいたはず。なのになぜ、大切な人達を切り捨てる選択をしてしまったのですか?

楓姫に呪いをかけられ、抗えなかったのはわかります。しかし、負の吸血鬼となる事を受け入れたのはあなたの落ち度。

非礼ですが、あなたは精神力が弱かったのだと思います。

酷い言い方ですが、結果的にあなたには水兵長を名乗る資格はなかったのではないでしょうか」

 

アレイの言葉を聞いた途端、メグは燃え上がるような怒りの言葉を吐いた。

「…何を!お前に私の何がわかる!!

元々外部の人間だった、小娘のお前に!!」

 

「そうですね…確かに私は後から水兵となった身。あなた方水兵長の気持ちはわかりません。

しかし、外部の人間だったからこそわかる事があります。

それは…」

 

アレイは自身の胸に手を当てた。

その手に、小さな白い光が現れる。

 

「弱い者が人の上に立てば、いずれその集団は潰れるということです」

 

メグは牙を剝いてアレイに掴みかかろうとした。

しかし、その胸から溢れる光を受けてもがき苦しみ、出来なかった。

 

「かつて、生の始祖に言われたでしょう。

"いかなる時も、皆を正しく導ける長となって下さい"と。

あなたが自身の弱みを克服出来れば、ニームはきっと繁栄する。あれは、そういう意味の言葉です。

シエラが今のあなたを見たら、何と言うか。

それはわかりません。しかし、少なくとも私からすれば、あなたはあの時と何も変わっていない。いや、寧ろ堕落している。

あの時のあなたには、守るべきものがあった。大切なものがあった。でも、今はそれすらもない。

今のあなたは、水兵の長以前に生者でもない」

 

アレイは、掌をメグに向けた。

そこから放たれる光を浴び、メグは苦痛にあえぐ。

 

「…皆さん、チャンスです。

もう、終わらせましょう」

 

言われるまでもなかった。

 

「奥義 [キルミーサイド]」

 

「奥義 [エイムスターアロー]」

 

「奥義 [ブレードスライサー]」

銘々が今まで温存していた奥義をぶち込む。

 

ラニイがメグの翼を斬りつけ、アレイが胸を撃ち、俺が奴の周りを旋回しながら切り刻む。

そして最後に、3人で一気に斬りつける。

 

おっと、一人忘れていた。

「斧技 [ギガンティ・スピン]!」

 

キャルシィが斧を持ったまま回転し、メグを斬る。

そしてそのまま、

 

「奥義 [闇の断罪斧]!」

その首に技を決めた。

 

メグの体はすでに原型をとどめないほどになっていた。

しかし、まだ終わりではない。

「みんな!」

 

キャルシィが伸ばした手に、皆が手を重ねる。

そしてそれを上に上げ…

 

「合術 [偉大な先人の墓標(マザーツームマリン)]」

 

いずれの属性にも属さず、怒りも敵意も憎しみも悲しみもない、純粋な尊敬と愛の感情からなる光。

それを浴びたメグは、悲しげながらもどこか満たされたような表情を浮かべたまま、花と散っていった。

 

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